平成27年度 品川区立鮫浜小学校経営方針 校長 菊地 勇之輔 1 学校経営の基本理念 《まず子供ありき》 『子供には学ぶ義務があり、教職員には教える責任がある』 -確かな学力と豊かな社会性・人間性を身に付けさせ、一生懸命やり抜く強い意志力を育む学校- 「安心、安全、安定的成長」を一番の原則としたうえで、全教職員が共通認識のもと、学習・生活の全ての 場面で具体的な指導を重ね、教えるべきことを確実に教えることで、正しい考え方を正しく行動に移し、誇り をもって実践できる子供を育成する。 そのために、以下の3点を挙げる、 ①基礎・基本の定着と活用する力の育成に努める。 ②保幼小中一貫教育の充実に努める。 ③地域・保護者の信頼を高めることに努める。 (1) 小中一貫教育に対する基本的な考え方 「教師の意識改革、管理職の資質向上と経営能力開発」「義務教育の質の向上」を目指した品川区教 育改革プラン 21 の推進により、教職員の意識改革等一定の成果が見られるようになった。特に、8年を 経過する小中一貫教育全区展開により、小・中学校の教員間に根強く存在した相互不信や不干渉主義 から生じる責任転嫁からの脱却が図られ、小中教員相互の意思疎通や共通理解が進んできた。一方で、 連携型一貫校である本校では、各種行事等を通じての児童・生徒の交流や教員の授業参観といった連 携が中心となり、9年間を見通した系統的なカリキュラム編成については、意識は見られるものの具体的 な取り組みはまだ道半ばである。さらなる義務教育の質の向上を図るためには、教師のカリキュラム開発 能力、教材開発能力の向上と管理職のカリキュラムマネジメント能力の向上が不可欠である。 (2) 本校の現状と課題 本校児童の課題は、学力面では、素直な感性をもち、学習への興味関心が高い一方で、受け身の学 習になりがちで、コミュニケーション能力、課題を自分のものとする意欲、考える力・構成力といった力が 十分に身に付いておらず、基礎・基本の定着に個人差が大きく、家庭学習の習慣化も十分ではないこと があげられる。 これは、小規模で固定化された人間関係の中で生活する子供にとっては、明確な意思表示をしなくと も互いに心情を理解できてしまう。また、保護者の中には、小規模校として一人一人の児童を丁寧に見 取ることを期待し、学校に任せておけばよいという意識が強かったり、家庭環境が厳しく、子供に時間を かける余力がない家庭が散見されたりするといった背景が考えられる。 個別にきめ細やかな支援を期待して本校に入学する家庭も多く、基本的な生活習慣が身に付いてお らず、自己肯定感がもてずに中学校進学後に十分に力を発揮しきれない生徒が見られるようになる、と いった課題もある。 1 教師集団は、真摯に子供と向き合い骨身を惜しまず職務に精励しているが、全学級単学級であるが ゆえに同一条件下で相互に切磋琢磨する場が限定されている。また、少数ということで組織としての機 能が十分に生かされないという課題にもつながっている。 地域は、地元の学校としての誇りをもち、学校に対して非常に協力的であるが、おおらかでざっくばら んな気風があり、言語環境は必ずしも良好とはいえず、コミュニケーション能力の育成が必要である。 これらの課題を克服するために、以下の5点を挙げる、 ①連携型一貫校としての特色を、学力向上、社会性の定着というカリキュラムマネジメントの視点から 構築する。 ②教員の経営参画意識の向上を図る。 ③服務の厳正と教育公務員としての自覚の徹底を図る。 ④各種の連携を通して教育活動の質的な向上を図る。 ⑤教材・教具を適切に管理し活用を促進する。 2 小中一貫教育目標 地域に誇りをもち自分の人生を切り開くことができる確かな学力と正しい判断力を身に付けた、人間性豊 かな児童・生徒の育成を目指し、連携する小・中学校は次の教育目標を掲げる。 ○進んで学ぶ子 ; 義務教育9年間を見通し、基礎的な知識・技能を身に付けさせるため、反復学習を 徹底するとともに、個に応じた指導方法の工夫・改善を行う。また、基礎・基本の知 識・技能を活用した論理的な思考力や表現力を身に付けさせるために、各教科の 関連を明らかにした横断的な指導を行う。 ○心を磨く子 ; 社会で必要とされる基本的生活習慣、規範意識を身に付けさせるために、連携校で共 通の学習規律・生活規律の徹底を図る。また、正しい人権感覚をもち、自らの生き方を 考え、進んで進路を切り開こうとする態度を身に付けさせるために、系統的な市民科の 指導を行う。 ○元気でやりぬく子 ; 家庭との連携を通して、基本的な生活習慣の確立により健康への意識をもたせ 体力向上のための活動と健康指導を年間を通じて計画的に実施する。 (1) 学習内容の確実な定着と社会で生きる力の育成に努める。特に、表現力を学力につなげ、深く考え 困難な課題も自分で乗り越える強い意志力を育てる。 ①けじめのある授業を行い、基礎・基本の学力定着を図る。 ②望ましい生活習慣の基礎を教え、基本的な社会性の定着を図る。 ③成功体験を重視し、個性と能力、自信と意欲を引き出す。 ④教師が相互に啓発し、指導の組織性を高める。 (2) 子供の命と安全を守り、心身ともに健全な成長を図るために、保護者・地域・関係諸機関と連携し組 織的な対応に努める。 ①全教職員が危機管理能力を高め、校内事故ゼロ、体罰・服務事故ゼロとする。 2 ②地域の実態を把握し、防災教育、交通安全を含めた安全指導を徹底する。 ③全校体制でいじめ・不登校ゼロを目指す。 ④地域の教育力を積極的に取り入れた授業等を推進する。 ⑤子供が楽しく参加する地域行事等を通して、学校愛・地域愛を育てる。 (3) 学年のまとまりごとの指導目標 【第1学年から第4学年】 ・学習の基礎・基本をしっかりと学ばせるとともに、正しい学習習慣や学習規律を身に付けさせる。 ・言語活動を重視し、自分の考えをもつとともに、相手の考えを正しく聞くことができる能力を育成する。 ・集団生活へ適応させていくために、学校のきまりや正しい生活習慣を身に付けさせるとともに、他者を 認め、協力し合って行動する能力を育成する。 【第5学年から第7学年】 ・学習の基礎・基本をさらに徹底して定着させるとともに、言語活動を重視しながら問題解決学習や体験 学習を通して、課題をとらえ解決するための思考力・判断力・表現力を育成する。 ・自分の役割を自覚し、相手の考えを理解しながら、より望ましい人間関係を築く能力を育成する。 ・社会の一員としての自覚をもたせ、社会や集団のルールやマナーを守る態度を身に付けさせる。 ・身近な人権問題に気付き、いじめや暴力など人権が無視されるような言動は絶対に許さない態度を身 に付けさせる。 【第8学年から第9学年】 ・言語活動を通して思考力・判断力・表現力を育てる指導をさらに充実させるとともに、自ら課題を設定し、 主体的に解決する能力を育成する。 ・社会の一員として地域社会に関心をもち、積極的に参画・貢献する態度を育成する。 ・自らの意思をはっきりともち、相手の立場や考えを理解して全体を考え、より良い方策を導き出せる能 力を育成する。 3 目指す学校の姿 ①「安全」;子供の命を預けていられる安心 ②「健康」;子供の心身の成長がみられる安心 ③「健全な人間関係」;子供が仲良く楽しく過ごせる安心 ④「基礎的学力」;子供が生活する上で必要とする知識と能力・技能が身に付けられる安心 ⑤「豊かな感性と知性」;子供の個性と人間性が豊かに育まれる安心 ⑥「基本的市民性」;子供が社会の中で自己実現するために必要な力が身に付けられる安心 ⑦「学校生活の情報」;子供の学校での生活の様子がよくわかる安心 保護者・地域・同窓生が求めるこれら7つの安心に応え、子供たちに確かな学力と社会性を身に付けさ せる。子供たちが自らの個性や能力を存分に発揮し、最後まで粘り強くやり抜くことで、満足感や達成感を 味わえる様々な活躍の場のある学校。がんばることは気持ちが良いこと、ルールを守ることが気を楽にして 生活できること、豊富な成功体験による自己肯定感を子供たちに実感させることのできる学校を実現する。 3 (1) 子供のもつ個性と多様な能力を引き出し、学習内容の確実な定着と社会で生きる力の育成に努める。 特に、子供の表現力を学力につなげ、深く考え困難な課題も自分で乗り越える強い意志力を育てる。 ① けじめのある授業を行い、基礎・基本の学力定着を図る。 課題に対して集中して粘り強く取り組む姿勢を育てることは、全学年共通の課題である。「学習のき まり」を徹底して指導し、落ち着いた授業を行うことで集中力が増し、基礎・基本を身に付ける下地を つくる。この上に、ICTを活用する等、指導方法をさらに工夫・充実させ、学力を向上させる授業を行う。 また、中学校との連携の中で、中学入学までに身に付けさせる基礎・基本を確認し、身に付いている かどうかの検証をする。 ② 望ましい生活習慣の基礎を教え、基本的な社会性の定着を図る。 本校児童には、自分の気持ちや考えを素直に表現できなかったり、互いに遠慮をして自ら進んで行 動しなかったりする面がみられ、「表現力を高める工夫」に取り組んできた。また、挨拶、場に応じた言 葉遣い、集団行動でのルール、給食マナー、清掃の仕方など基本的で望ましい生活行動を、「生活 のきまり」を基本とした全学年共通の指導内容と方法により日常的に積み重ねてきている。さらに、全 教育活動を「市民科」の目標から捉えなおし、全体計画と指導計画を系統的に見直して、社会性豊か で克己心あふれる子供の育成を意図的、計画的に行っていく。 ③ 成功体験を重視し、個性と能力、自信と意欲を引き出す。 子供が社会で生きていくために必要な力は、いわゆる教科の基礎・基本の学力とともに、豊かな感 性や芸術性、運動能力、人間関係形成のためのコミュニケーション能力など様々である。日常の教育 活動の中で工夫した指導を実践し、各種のコンクールやコンテスト、地域行事、地域運動クラブ等へ の参加を促すことで、子供たちの経験、特に成功体験を増やすようにし、自信と意欲のあふれる生き 方ができるようにする。 ④ 教職員が相互に啓発し、指導の組織性を高める。 小規模校であるため、教職員の職務分担は多岐に渡っているが、誰もが労を惜しまず、学校全体を 視野に入れて綿密な計画を立て職務遂行に全力を尽くしている。そして、その一つ一つについて共 通理解を怠らず、相互扶助の精神で校務を成し遂げようとする姿勢は、組織体としての学校の姿を実 証している。また、教職員それぞれが各自のキャリアや校務分掌に応じて、開発的な取り組みに挑戦 したり、互いの実践ノウハウや感性等を学びあう意欲的な姿もみられる。こうした相互啓発の姿勢を学 校風土として定着させるとともに、定期的に行う学年団会議、学力向上委員会等を通じて、より一層の 組織的で実践力のある教育活動を展開していく。 (2) 子供の命と安全を守り、心身ともに健全な成長を図るために、保護者・地域・関係機関と連携し組織 的な対応に努める。 ① 全教職員が危機管理能力を高め、校内事故をゼロとする。 日常的な校内施設の安全点検を励行するとともに、特に、十分な教材研究と児童理解の上に立った 教育活動を心がけ、指導中の事故防止に全力を尽くす。 ② 地域の実態を把握し、安全指導を徹底する。 交通事故や不審者被害を防ぐために、計画的に地域巡回を行い、交通事故等も含めた地域の安全 状況を把握するとともに、5年生で地域安全マップを作成し、子供自らが安全に対する意識を強くもつ 4 ように指導に生かす。また、地域祭礼等夜間の地域行事には、全教職員が巡回にあたる。 ③ 不審者被害を防ぐ防犯意識、防災意識と万全の体制の確保。 全教職員が防犯意識をもって外来者への挨拶や声かけを励行するとともに、不審者進入を想定した 訓練を行い、非常事態に落ち着いて対処できるように備える。また、「まもるっち」の充電・携帯の徹底 を指導し、保護者の協力も徹底する。さらに、巨大地震・津波を想定した集団下校訓練・引き取り訓 練・近隣高層マンションへの一時避難訓練等を行い、災害時に備える。 ④ 全校体制でいじめ・不登校ゼロを目指す。 全教職員が受容と共感に満ちた教育相談的な態度で児童に接し、わずかな表情や言動の変化を 見逃すことなく、情報を共有化し、全校体制で早期発見・解決に当たる。特に、特別支援コーディネー ター、養護教諭、通級学級担当、スクールカウンセラー、関係機関との連携を密に取り、専門的な見 地から助言を受けるとともに、常に管理職や同僚に報告・連絡・相談を行い、一人で問題を抱えること のない開かれた学級・専科経営を行う。 ⑤ 地域の教育力を積極的に取り入れた授業等を推進する。 地域学習における地域教材の整理を進め、学校全体として地域教材を系統的に活用できる体制を つくる。さらに、読書指導、鮫浜タイム、校外学習、学校行事など様々な教育活動において、ゲストティ ーチャーや保護者ボランティア、保護者等の同行による協働教育を進んで計画・実践するように努め、 多くの人と関わることで子供に社会性を見に付けさせる。 ⑥ 子供が楽しく参加する行事等を通して、学校愛・地域愛を育む。 PTAや同窓会、町会や児童センター等の組織と連携を深め、子供が楽しく過ごすことのできる行事 等への参加を促し、教職員も積極的に関わることで、学校・地域の一員であることを自覚させ、学校・ 地域への愛着を深めさせる。 ⑦ 学校に関する最新の情報を多様な方法で家庭や地域に発信する。 保護者は、子供の学校での様子が具体的にわかるほど、学校との共通理解は深まり、協働教育も深 められる。学級担任は、さめはま学習帳や連絡帳等で保護者との連絡を密にし、保護者の信頼を得ら れるように努める。また、学校・学年・学級便り等の広報紙のほかに、児童の作品等の掲示・展示や学 校掲示板、ホームページ等をこまめに更新し、学校が取り組んでいる教育活動の目的と意義、成果を 的確に家庭や地域に知らせ、理解と協力を得られるように努める。 (3) 全ての教職員が、子供の成長に大きな影響力を及ぼすことを自覚し、指導力と職務遂行力を高め、 学校の教育力校上に全力を尽くす。 ① 率先垂範 教職員一人一人が公務員・教育公務員として自覚をもち、服務に厳正であること。また、教職員の姿 は、児童にとって常に模範である。教育目標や生活指導目標など、児童に求める姿は、教職員自身 が自らにも求め実践しなければならないことであり、児童の範となる言動を心掛ける。 ② 自己研鑽 教師には高い指導力・授業力が求められる。児童と学校の実態を踏まえ、自らが果たさなければなら ない役割を深く認識し、日々の同僚との学び合いや切磋琢磨、諸研修会への積極的な参加等、自ら のキャリアプランを見直す。特に、小規模校である本校では、同学年の他の教員の授業を見る機会が 5 もてないため、連携グループ内の小学校へも積極的に授業参観等を行い、自らの資質・能力を高める ために一層の自己研鑽に励む。 ③ 授業力向上のための相互授業評価 専科教員を含めた低・中・高学年合同学年会を定期的に設定し、各教員が共に系統的な指導計画 に基づく指導及び授業改善に努める。特に、各学期に一回以上教員間での授業公開を行い、授業 指導方法の改善に生かす。 ④ 保小中連携による合同研修での教育力の向上 保幼小ジョイント期カリキュラムを確実に実践するとともに、東大井保育園とのスクールステイ事業年 間計画にしたがい、園児と児童の交流活動を通して就学前教育についての理解を深める。また、浜川 小学校・浜川中学校との合同研究により、各教科の系統性を明らかにした学習指導計画の作成とコミ ュニケーション能力の育成において言語活動に重点を置いた系統単元や教材開発を行い、就学前か ら義務教育9年間を見通した学校教育力の質的向上を図る。 ⑤ 授業評価 教師は常に授業を評価し、不断の工夫・改善・向上に努めなければならない。児童の学習成果のみ ならず、常に授業中の児童の姿そのものが第一義の授業評価の表れととらえ、授業の質と成果を真 摯に見つめる方法を開発・実践し、教師自身による自己評価を行う。特に、学校公開や学校行事等に おいて、保護者・児童にアンケートを継続的に実施し、実態の変容を把握し指導力の向上・充実に生 かす。 ⑥ 自己申告と自己評価の実践 学校の教育活動は、確かな教育計画と予算に基づき安定した状態で行われなければならない。教 職員一人一人が年間を見通して自己の職務を計画し、その着実な遂行に努めなければならない。特 に、教育課程・指導の重点の内容に基づき、それぞれの関わる教育活動を自己申告に具体的に明示 するとともに、学級・専科経営方針を策定し、その実践に努力する。 学校組織としても、教育課程の項目を自己評価する。また、外部評価による学校評価や保護者アン ケートの声などを真摯に受け止め、自己評価と合わせて常に学校の教育力の充実・向上を目指す。 ⑦ 説明責任 全ての教育活動が税金によって営まれる公立学校教育においては、誰もが施設設備や教材教具等 を効果的に使用するとともに、予算根拠を明確にして組織的・計画的に諸活動を行わなければならな い。教育効果を十分に達成するよう努め、その使途を事前に保護者に説明し理解を得ておくとともに、 教材費等で徴収した私費についても適正な執行に努めなければならない。指導の実態を週の指導計 画等に明記しておき、成果も様々な方法で明らかにして、常に説明責任を果たせるようにする。 6
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