平成27年 1月発行 CHANCE NO.9

進路指導部便り
CHANCE
NO.9(平成27年1月30日)
こんにちは。理療科職員の丸田です。年度末に向け、進路や学期末考査な
ど、皆さん忙しい時期になっていると思います。今回の CHANCE では、理療科・
保健理療科の皆さんが日々学習されている理療について改めて考えたいと思
います。
「理療に携わることの責任」
現在は健康保持や疾病の予防・治療の目的で行われるあん摩マッサージ指
圧は施術行為として国が認めたものであり、それに対して整体・カイロプラ
クティックなどの手技による、いわゆる医業類似行為は本来行ってはならな
い行為です。しかし、現実はこれが広く利用されています。街を歩けば、リ
ラクゼーションやボディーケアなどの店舗が多く見られます。また、整骨院
も数多く見かけると思います。このような医業類似行為が広く受け入れられ
るようになってきている一方、施術を受けて危害を受けたという事例も数多
く出てきています。以下に記した、独立行政法人国民生活センターで報告さ
れている、医業類似行為の施術による危害についての事例を見ることで、国
民の健康の維持増進に関わるあん摩・マッサージ・指圧や鍼灸などの理療に
携わるということがどういうことなのか、改めて考えていただきたいと思い
ます。
【事例1】指圧・マッサージ店で全身の指圧マッサージを受けたところ肋(ろ
く)軟骨を骨折した
行きつけの指圧・マッサージ店で全身の指圧マッサージを 1 時間半受けた。
終了直前にブキッと音がして息をつけない痛みを感じたが、1~2 分で通常に
戻ったので激痛があったことを言わず帰宅した。その夜発熱し痛みが出たた
め整形外科を受診したら肋軟骨骨折で加療に 1 カ月を要すると診断された。
【事例2】中国式マッサージを受けたところ、腰をまっすぐにできないほど
痛くなった
初めて中国式マッサージを受けた。帰宅後に全身に倦怠感があり、寝る時
には異常に腰が痛くなり寝返りも打てなくなった。翌朝、腰をまっすぐにで
きないほど痛くなったので店舗に連絡したところ、もう一度来てみたらどう
かと言われ、再度施術してもらった。しかし帰宅後に足にしびれを感じて不
安になったため、翌日別の整体院に行って施術を受けた。マッサージ店に症
状を伝え、施術代を返金して欲しいと言ったが、「こちらは間違いなくきち
んと施術している。」と電話を切られた。
【事例3】接骨院でカイロプラクティックを受けて肋軟骨を負傷、頸椎捻挫
接骨院でカイロプラクティックのコースを受け、肋軟骨を負傷した。その
後めまいが出て、頸椎捻挫の診断書も出た。自治体の法律相談、弁護士、国
の法律相談、警察、保健所に相談したが、どこも因果関係がはっきりしない
と交渉等はだめだった。このことで体調不良となり退職に追い込まれた。
【事例4】接骨院に行ったら痛みがひどくなったが、病院に行かず通院を続
けるよう言われた
肩こりが続き接骨院に行ったところ、捻挫と言われた。通院するうちに痛
みがひどくなり、物を持とうとしても手が震えたり睡眠中に激痛で目覚めた
りするようになった。先生に話したが、「捻挫から四十肩になっている。提
携病院を紹介してもよいがきちんと固まっていないと注射は打てない。自分
に対する信頼性がないから治りが悪い。」と言われた。現時点では病院に行
くよりこのまま通う方が良いと思い、通い続けた。今月初めに整形外科を訪
れたら「左肩関節周囲炎石灰沈着性凝固肩」と診断され注射を打たれた。今
まで無理に引っ張ったり伸ばしたり不適切な治療をしてきたので炎症を起こ
したと思う。
【事例5】広告を見て整体サービスを受けたところ腰が痛くなった
体のゆがみを直すとの広告を見て整体サービスを受けた。しかし、逆に腰
が痛くなり病院に通っている。よくよく聞くと施術した人は資格を持ってい
ないらしい。資格を持っていないのは問題ではないか。
以上は報告されている危害例の一部です。報告されている事例数を見ると、
国家資格を有する施術者による危害よりも無資格の施術者による危害が多く
報告されています。その一因として、あん摩マッサージ指圧や柔道整復につ
いては法的な資格制度があり、国家資格を有する者しか施術を行うことがで
きないのに対して、整体やカイロプラクティックなどについては法的資格制
度がないため、施術者の技術等がばらばらであることが考えられます。しか
し、注意すべきは、有資格者の場合も少なからず危害報告がなされていると
いう点です。適切な医学的知識や技術に基づいて施術が行われないと、骨折
等の重大な健康被害が生じるばかりか、被害について訴訟になった場合、精
神的ストレスが原因で休職や退職を余儀なくされるなど、患者の一生に影響
を及ぼすようなことにもなってしまいます。保健理療科・理療科の皆さんは、
3年間をかけて、本校で医学的な知識や技術を習得し、国家試験を受験して
国家資格を得るわけですから、患者の健康の維持増進に関わる責任があるの
だということを意識しながら、日々の学校生活に取り組んでいただけたらと
思います。