ヘルシンキ宣言

ヘルシンキ宣言
71
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CALASSOCI
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ON
ヘルシンキ宣言
人間を対象とする医学研究の倫理的原則
1
964年6月 第18回 WMA総会(ヘルシンキ,フィンラ
ンド)で採択
に根本的に基づくものである.
6.人間を対象とする医学研究の第一の目的は,疾病の
1
97
5年1
0月 第29回 WMA総会(東京,日本)で修正
原因,発症および影響を理解し,予防,診断ならびに
19
83年10月 第35回 WMA総会(ベニス,イタリア)で
治療(手法,手順,処置)を改善することである.最
修正
善と証明された治療であっても,安全性,有効性,効
19
89年9月 第4
1回 WMA総会(九龍,香港)で修正
199
6年1
0月 第4
8回 WMA総会
(サマーセットウェスト,
南アフリカ)で修正
200
0年1
0月 第52回 WMA総会(エジンバラ,スコット
ランド)で修正
率性,利用可能性および質に関する研究を通じて継続
的に評価されなければならない.
7.医学研究はすべての被験者に対する配慮を推進かつ
保証し,その健康と権利を擁護するための倫理基準に
従わなければならない.
2
00
2年1
0月 WMAワシントン総会(米国)で修正(第
29項目明確化のため注釈追加)
20
04年10月 WMA東京総会(日本)で修正(第30項目
明確化のため注釈追加)
8.医学研究の主な目的は新しい知識を得ることである
が,この目標は個々の被験者の権利および利益に優先
することがあってはならない.
9.被験者の生命,健康,尊厳,全体性,自己決定権,プ
200
8年1
0月 WMAソウル総会(韓国)で修正
ライバシーおよび個人情報の秘密を守ることは医学研
20
13年10月 WMAフォルタレザ総会(ブラジル)で修
究に関与する医師の責務である.被験者の保護責任は
正
常に医師またはその他の医療専門職にあり,被験者が
同意を与えた場合でも,決してその被験者に移ること
序
文
1.世界医師会(WMA)は,特定できる人間由来の試料
はない.
1
0.医師は,適用される国際的規範および基準はもとよ
およびデータの研究を含む,人間を対象とする医学研
り人間を対象とする研究に関する自国の倫理,法律,規
究の倫理的原則の文書としてヘルシンキ宣言を改訂し
制上の規範ならびに基準を考慮しなければならない.
てきた.
国内的または国際的倫理,法律,規制上の要請がこの
本宣言は全体として解釈されることを意図したもの
であり,各項目は他のすべての関連項目を考慮に入れ
て適用されるべきである.
2.WMAの使命の一環として,本宣言は主に医師に対
宣言に示されている被験者の保護を減じあるいは排除
してはならない.
1
1.医学研究は,環境に害を及ぼす可能性を最小限にす
るよう実施されなければならない.
して表明されたものである.WMAは人間を対象とす
1
2.人間を対象とする医学研究は,適切な倫理的および
る医学研究に関与する医師以外の人々に対してもこれ
科学的な教育と訓練を受けた有資格者によってのみ行
らの諸原則の採用を推奨する.
われなければならない.患者あるいは健康なボラン
ティアを対象とする研究は,能力と十分な資格を有す
一般原則
3.WMAジュネーブ宣言は,
「私の患者の健康を私の第
一の関心事とする」ことを医師に義務づけ,また医の
国際倫理綱領は,
「医師は,医療の提供に際して,患者
る医師またはその他の医療専門職の監督を必要とする.
1
3.医学研究から除外されたグループには研究参加への
機会が適切に提供されるべきである.
1
4.臨床研究を行う医師は,研究が予防,診断または治
の最善の利益のために行動すべきである」と宣言して
療する価値があるとして正当化できる範囲内にあり,
いる.
かつその研究への参加が被験者としての患者の健康に
4.医学研究の対象とされる人々を含め,患者の健康,福
利,権利を向上させ守ることは医師の責務である.医
師の知識と良心はこの責務達成のために捧げられる.
5.医学の進歩は人間を対象とする諸試験を要する研究
悪影響を及ぼさないことを確信する十分な理由がある
場合に限り,その患者を研究に参加させるべきである.
1
5.研究参加の結果として損害を受けた被験者に対する
適切な補償と治療が保証されなければならない.
ヘルシンキ宣言
72
リスク,負担,利益
1
6.医療および医学研究においてはほとんどの治療にリ
スクと負担が伴う.
験者に対する報奨ならびに研究参加の結果として損害
を受けた被験者の治療および/
または補償の条項に関
する情報を含むべきである.
人間を対象とする医学研究は,その目的の重要性が
臨床試験の場合,この計画書には研究終了後条項に
被験者のリスクおよび負担を上まわる場合に限り行う
ついての必要な取り決めも記載されなければならな
ことができる.
い.
1
7.人間を対象とするすべての医学研究は,研究の対象
研究倫理委員会
となる個人とグループに対する予想し得るリスクおよ
び負担と被験者およびその研究によって影響を受ける
23.研究計画書は,検討,意見,指導および承認を得る
その他の個人またはグループに対する予見可能な利益
ため研究開始前に関連する研究倫理委員会に提出され
とを比較して,慎重な評価を先行させなければならな
なければならない.この委員会は,その機能において
い.
透明性がなければならず,研究者,スポンサーおよび
リスクを最小化させるための措置が講じられなけれ
その他いかなる不適切な影響も受けず適切に運営され
ばならない.リスクは研究者によって継続的に監視,
なければならない.委員会は,適用される国際的規範
評価,文書化されるべきである.
および基準はもとより,研究が実施される国または複
1
8.リスクが適切に評価されかつそのリスクを十分に管
数の国の法律と規制も考慮しなければならない.しか
理できるとの確信を持てない限り,医師は人間を対象
し,そのために本宣言が示す被験者に対する保護を減
とする研究に関与してはならない.
じあるいは排除することを許してはならない.
潜在的な利益よりもリスクが高いと判断される場合
研究倫理委員会は,進行中の研究をモニターする権
または明確な成果の確証が得られた場合,医師は研究
利を持たなければならない.研究者は,委員会に対し
を継続,変更あるいは直ちに中止すべきかを判断しな
てモニタリング情報とくに重篤な有害事象に関する情
ければならない.
報を提供しなければならない.委員会の審議と承認を
得ずに計画書を修正してはならない.研究終了後,研
社会的弱者グループおよび個人
1
9.あるグループおよび個人は特に社会的な弱者であり
究者は研究知見と結論の要約を含む最終報告書を委員
会に提出しなければならない.
不適切な扱いを受けたり副次的な被害を受けやすい.
プライバシーと秘密保持
すべての社会的弱者グループおよび個人は個別の状
況を考慮したうえで保護を受けるべきである.
2
0.研究がそのグループの健康上の必要性または優先事
項に応えるものであり,かつその研究が社会的弱者で
2
4.被験者のプライバシーおよび個人情報の秘密保持を
厳守するためあらゆる予防策を講じなければならな
い.
ないグループを対象として実施できない場合に限り,
社会的弱者グループを対象とする医学研究は正当化さ
れる.さらに,そのグループは研究から得られた知識,
実践または治療からの恩恵を受けるべきである.
インフォームド・コンセント
25.医学研究の被験者としてインフォームド・コンセン
トを与える能力がある個人の参加は自発的でなければ
ならない.家族または地域社会のリーダーに助言を求
科学的要件と研究計画書
2
1.人間を対象とする医学研究は,科学的文献の十分な
知識,その他関連する情報源および適切な研究室での
めることが適切な場合もあるが,インフォームド・コ
ンセントを与える能力がある個人を本人の自主的な承
諾なしに研究に参加させてはならない.
実験ならびに必要に応じた動物実験に基づき,一般に
26.インフォームド・コンセントを与える能力がある人
認知された科学的諸原則に従わなければならない.研
間を対象とする医学研究において,それぞれの被験者
究に使用される動物の福祉は尊重されなければならな
候補は,目的,方法,資金源,起こり得る利益相反,研
い.
究者の施設内での所属,研究から期待される利益と予
2
2.人間を対象とする各研究の計画と実施内容は,研究
測されるリスクならびに起こり得る不快感,研究終了
計画書に明示され正当化されていなければならない.
後条項,その他研究に関するすべての面について十分
研究計画書には関連する倫理的配慮について明記さ
に説明されなければならない.被験者候補は,いつで
れ,また本宣言の原則がどのように取り入れられてき
も不利益を受けることなしに研究参加を拒否する権利
たかを示すべきである.計画書は,資金提供,スポン
または参加の同意を撤回する権利があることを知らさ
サー,研究組織との関わり,起こり得る利益相反,被
れなければならない.個々の被験者候補の具体的情報
ヘルシンキ宣言
の必要性のみならずその情報の伝達方法についても特
別な配慮をしなければならない.
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の参加拒否または研究離脱の決定が患者・医師関係に
決して悪影響を及ぼしてはならない.
被験者候補がその情報を理解したことを確認したう
2.バイオバンクまたは類似の貯蔵場所に保管されてい
3
えで,医師またはその他ふさわしい有資格者は被験者
る試料やデータに関する研究など,個人の特定が可能
候補の自主的なインフォームド・コンセントをできれ
な人間由来の試料またはデータを使用する医学研究の
ば書面で求めなければならない.同意が書面で表明さ
ためには,医師は収集・保存および/
または再利用に対
れない場合,その書面によらない同意は立会人のもと
するインフォームド・コンセントを求めなければなら
で正式に文書化されなければならない.
ない.このような研究に関しては,同意を得ることが
医学研究のすべての被験者は,研究の全体的成果に
ついて報告を受ける権利を与えられるべきである.
27.研究参加へのインフォームド・コンセントを求める
不可能か実行できない例外的な場合があり得る.この
ような状況では研究倫理委員会の審議と承認を得た後
に限り研究が行われ得る.
場合,医師は,被験者候補が医師に依存した関係にあ
プラセボの使用
るかまたは同意を強要されているおそれがあるかにつ
いて特別な注意を払わなければならない.そのような
33.新しい治療の利益,リスク,負担および有効性は,以
状況下では,インフォームド・コンセントはこうした
下の場合を除き,最善と証明されている治療と比較考
関係とは完全に独立したふさわしい有資格者によって
量されなければならない:
求められなければならない.
28.インフォームド・コンセントを与える能力がない被
証明された治療が存在しない場合,プラセボの使用
または無治療が認められる;あるいは,
験者候補のために,医師は,法的代理人からイン
説得力があり科学的に健全な方法論的理由に基づ
フォームド・コンセントを求めなければならない.こ
き,最善と証明されたものより効果が劣る治療,プラ
れらの人々は,被験者候補に代表されるグループの健
セボの使用または無治療が,その治療の有効性あるい
康増進を試みるための研究,インフォームド・コンセ
は安全性を決定するために必要な場合,
ントを与える能力がある人々では代替して行うことが
そして,最善と証明されたものより効果が劣る治
できない研究,そして最小限のリスクと負担のみ伴う
療,プラセボの使用または無治療の患者が,最善と証
研究以外には,被験者候補の利益になる可能性のない
明された治療を受けなかった結果として重篤または回
ような研究対象に含まれてはならない.
復不能な損害の付加的リスクを被ることがないと予想
29.インフォームド・コンセントを与える能力がないと
思われる被験者候補が研究参加についての決定に賛意
を表することができる場合,医師は法的代理人からの
される場合.
この選択肢の乱用を避けるため徹底した配慮がなさ
れなければならない.
同意に加えて本人の賛意を求めなければならない.被
験者候補の不賛意は,尊重されるべきである.
研究終了後条項
30.例えば,意識不明の患者のように,肉体的,精神的
3
4.臨床試験の前に,スポンサー,研究者および主催国
にインフォームド・コンセントを与える能力がない被
政府は,試験の中で有益であると証明された治療を未
験者を対象とした研究は,インフォームド・コンセン
だ必要とするあらゆる研究参加者のために試験終了後
トを与えることを妨げる肉体的・精神的状態がその研
のアクセスに関する条項を策定すべきである.また,
究対象グループに固有の症状となっている場合に限っ
この情報はインフォームド・コンセントの手続きの間
て行うことができる.このような状況では,医師は法
に研究参加者に開示されなければならない.
的代理人からインフォームド・コンセントを求めなけ
ればならない.そのような代理人が得られず研究延期
研究登録と結果の刊行および普及
もできない場合,この研究はインフォームド・コンセ
3
5.人間を対象とするすべての研究は,最初の被験者を
ントを与えられない状態にある被験者を対象とする特
募集する前に一般的にアクセス可能なデータベースに
別な理由が研究計画書で述べられ,研究倫理委員会で
登録されなければならない.
承認されていることを条件として,インフォームド・
3
6.すべての研究者,著者,スポンサー,編集者および
コンセントなしに開始することができる.研究に引き
発行者は,研究結果の刊行と普及に倫理的責務を負っ
続き留まる同意はできるかぎり早く被験者または法的
ている.研究者は,人間を対象とする研究の結果を一
代理人から取得しなければならない.
般的に公表する義務を有し報告書の完全性と正確性に
31.医師は,治療のどの部分が研究に関連しているかを
説明責任を負う.すべての当事者は,倫理的報告に関
患者に十分に説明しなければならない.患者の研究へ
する容認されたガイドラインを遵守すべきである.否
ヘルシンキ宣言
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定的結果および結論に達しない結果も肯定的結果と同
合,患者または法的代理人からのインフォームド・コ
様に,刊行または他の方法で公表されなければならな
ンセントがあり,専門家の助言を求めたうえ,医師の
い.資金源,組織との関わりおよび利益相反が,刊行
判断において,その治療で生命を救う,健康を回復す
物の中には明示されなければならない.この宣言の原
るまたは苦痛を緩和する望みがあるのであれば,証明
則に反する研究報告は,刊行のために受理されるべき
されていない治療を実施することができる.この治療
ではない.
は,引き続き安全性と有効性を評価するために計画さ
れた研究の対象とされるべきである.すべての事例に
臨床における未実証の治療
3
7.個々の患者の処置において証明された治療が存在し
ないかまたはその他の既知の治療が有効でなかった場
おいて新しい情報は記録され,適切な場合には公表さ
れなければならない.
実験動物の飼養及び保管等に関する基準
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実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準
平成1
8年環境省告示第8
8号
最終改正:平成2
5年環境省告示第8
4号
第1 一般原則
1 基本的な考え方
動物を科学上の利用に供することは,生命科学の進
展,医療技術等の開発等のために必要不可欠なもので
あるが,その科学上の利用に当たっては,動物が命あ
茨 実験等
動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の
用その他の科学上の利用に供することをいう.
芋 施 設
実験動物の飼養若しくは保管又は実験等を行う施
るものであることにかんがみ,科学上の利用の目的を
設をいう.
達することができる範囲において,できる限り動物を
鰯 実験動物
供する方法に代わり得るものを利用すること,できる
実験等の利用に供するため,施設で飼養又は保管
限り利用に供される動物の数を少なくすること等によ
をしている哺乳類,鳥類又は爬(は)虫類に属する
り動物の適切な利用に配慮すること,並びに利用に必
要な限度において,できる限り動物に苦痛を与えない
動物(施設に導入するために輸送中のものを含む)
允 管理者
方法によって行うことを徹底するために,動物の生
実験動物及び施設を管理する者(研究機関の長等
理,生態,習性等に配慮し,動物に対する感謝の念及
の実験動物の飼養又は保管に関して責任を有する者
び責任をもって適正な飼養及び保管並びに科学上の利
を含む)をいう.
用に努めること.また,実験動物の適正な飼養及び保
印 実験動物管理者
管により人の生命,身体又は財産に対する侵害の防止
及び周辺の生活環境の保全に努めること.
2 動物の選定
管理者は,施設の立地及び整備の状況,飼養者の飼
養能力等の条件を考慮して飼養又は保管をする実験動
物の種類等が計画的に選定されるように努めること.
3 周 知
実験動物の飼養及び保管並びに科学上の利用が,客
観性及び必要に応じた透明性を確保しつつ,動物の愛
護及び管理の観点から適切な方法で行われるように,
管理者を補佐し,実験動物の管理を担当する者を
いう.
咽 実験実施者
実験等を行う者をいう.
員 飼養者
実験動物管理者又は実験実施者の下で実験動物の
飼養又は保管に従事する者をいう.
因 管理者等
管理者,実験動物管理者,実験実施者及び飼養者
をいう.
管理者は,本基準の遵守に関する指導を行う委員会の
第3 共通基準
設置又はそれと同等の機能の確保,本基準に即した指
1 動物の健康及び安全の保持
針の策定等の措置を講じる等により,施設内における
本基準の適正な周知に努めること.
また,管理者は,関係団体,他の機関等と相互に連
茨 飼養及び保管の方法
実験動物管理者,実験実施者及び飼養者は,次の
事項に留意し,実験動物の健康及び安全の保持に努
携を図る等により当該周知が効果的かつ効率的に行わ
めること.
れる体制の整備に努めること.
ア 実験動物の生理,生態,習性等に応じ,かつ,
4 その他
実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で,
管理者は,定期的に,本基準及び本基準に即した指
適切な給餌及び給水,必要な健康の管理並びにそ
針の遵守状況について点検を行い,その結果について
の動物の種類,習性等を考慮した飼養又は保管を
適切な方法により公表すること.なお,当該点検結果
については,可能な限り,外部の機関等による検証を
行うよう努めること.
第2 定 義
この基準において,次の各号に掲げる用語の意義は,
当該各号に定めるところによる.
行うための環境の確保を行うこと.
イ 実験動物が傷害(実験等の目的に係るものを除
く.以下このイにおいて同じ.
)を負い,又は実験
等の目的に係る疾病以外の疾病(実験等の目的に
係るものを除く.以下このイにおいて同じ)にか
かることを予防する等必要な健康管理を行うこ
と.また,実験動物が傷害を負い,又は疾病にか
実験動物の飼養及び保管等に関する基準
76
かった場合にあっては,実験等の目的の達成に支
努めること.
障を及ぼさない範囲で,適切な治療等を行うこ
ア 管理者は,実験動物が逸走しない構造及び強度
と.
の施設を整備すること.
ウ 実験動物管理者は,施設への実験動物の導入に
イ 管理者は,実験動物管理者,実験実施者及び飼
当たっては,必要に応じて適切な検疫,隔離飼育
養者が実験動物に由来する疾病にかかることを予
等を行うことにより,実験実施者,飼養者及び他
防するため,必要な健康管理を行うこと.
の実験動物の健康を損ねることのないようにする
ウ 管理者及び実験動物管理者は,実験実施者及び
とともに,必要に応じて飼養環境への順化又は順
飼養者が危険を伴うことなく作業ができる施設の
応を図るための措置を講じること.
構造及び飼養又は保管の方法を確保すること.
エ 異種又は複数の実験動物を同一施設内で飼養及
エ 実験動物管理者は,施設の日常的な管理及び保
び保管する場合には,実験等の目的の達成に支障
守点検並びに定期的な巡回等により,飼養又は保
を及ぼさない範囲で,その組合せを考慮した収容
管をする実験動物の数及び状態の確認が行われる
を行うこと.
ようにすること.
芋 施設の構造等
オ 実験動物管理者,実験実施者及び飼養者は,次
管理者は,その管理する施設について,次に掲げ
に掲げるところにより,相互に実験動物による危
る事項に留意し,実験動物の生理,生態,習性等に
害の発生の防止に必要な情報の提供等を行うよう
応じた適切な整備に努めること.
努めること.
ア 実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲
堰
実験動物管理者は,実験実施者に対して実験
準
で,個々の実験動物が,自然な姿勢で立ち上がる,
動物の取扱方法についての情報を提供するとと
横たわる,羽ばたく,泳ぐ等日常的な動作を容易
もに,飼養者に対してその飼養又は保管につい
に行うための広さ及び空間を備えること.
て必要な指導を行うこと.
イ 実験動物に過度なストレスがかからないよう
奄
準
実験実施者は,実験動物管理者に対して実験
に,実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲
等に利用している実験動物についての情報を提
で,適切な温度,湿度,換気,明るさ等を保つこ
供するとともに,飼養者に対してその飼養又は
とができる構造等とすること.
保管について必要な指導を行うこと.
ウ 床,内壁,天井及び附属設備は,清掃が容易で
宴
準
飼養者は,実験動物管理者及び実験実施者に
ある等衛生状態の維持及び管理が容易な構造とす
対して,実験動物の状況を報告すること.カ管
るとともに,実験動物が,突起物,穴,くぼみ,
理者等は,実験動物の飼養及び保管並びに実験
斜面等により傷害等を受けるおそれがない構造と
等に関係のない者が実験動物に接することのな
すること.
鰯 教育訓練等
いよう必要な措置を講じること.
芋 有毒動物の飼養及び保管
管理者は,実験動物に関する知識及び経験を有す
毒へび等の有毒動物の飼養又は保管をする場合に
る者を実験動物管理者に充てるようにすること.ま
は,抗毒素血清等の救急医薬品を備えるとともに事
た,実験動物管理者,実験実施者及び飼養者の別に
故発生時に医師による迅速な救急処置が行える体制
応じて必要な教育訓練が確保されるよう努めるこ
を整備し,実験動物による人への危害の発生の防止
と.
2 生活環境の保全
に努めること.
鰯 逸走時の対応
管理者等は,実験動物の汚物等の適切な処理を行う
管理者等は実験動物が保管設備等から逸走しない
とともに,施設を常に清潔にして,微生物等による環
よう必要な措置を講じること.また,管理者は,実
境の汚染及び悪臭,害虫等の発生の防止を図ることに
験動物が逸走した場合の捕獲等の措置についてあら
よって,また,施設又は設備の整備等により騒音の防
かじめ定め,逸走時の人への危害及び環境保全上の
止を図ることによって,施設及び施設周辺の生活環境
問題等の発生の防止に努めるとともに,人に危害を
の保全に努めること.
加える等のおそれがある実験動物が施設外に逸走し
3 危害等の防止
茨 施設の構造並びに飼養及び保管の方法
た場合には,速やかに関係機関への連絡を行うこと
允 緊急時の対応
管理者等は,実験動物の飼養又は保管に当たり,
管理者は,関係行政機関との連携の下,地域防災
次に掲げる措置を講じることにより,実験動物によ
計画等との整合を図りつつ,地震,火災等の緊急時
る人への危害,環境保全上の問題等の発生の防止に
に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成する
実験動物の飼養及び保管等に関する基準
ものとし,管理者等は,緊急事態が発生したときは,
速やかに,実験動物の保護及び実験動物の逸走によ
る人への危害,環境保全上の問題等の発生の防止に
努めること.
4 人と動物の共通感染症に係る知識の習得等
77
以下「指針」という)に基づき行うよう努めること.
第4 個別基準1実験等を行う施設
茨 実験等の実施上の配慮
実験実施者は,実験等の目的の達成に必要な範囲
で実験動物を適切に利用するよう努めること.ま
実験動物管理者,実験実施者及び飼養者は,人と動
た,実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲
物の共通感染症に関する十分な知識の習得及び情報の
で,麻酔薬,鎮痛薬等を投与すること,実験等に供
収集に努めること.また,管理者,実験動物管理者及
する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に
び実験実施者は,人と動物の共通感染症の発生時にお
配慮すること等により,できる限り実験動物に苦痛
いて必要な措置を迅速に講じることができるよう,公
を与えないようにするとともに,保温等適切な処置
衆衛生機関等との連絡体制の整備に努めること.
5 実験動物の記録管理の適正化
を採ること.
芋 事後措置
管理者等は,実験動物の飼養及び保管の適正化を図
実験動物管理者,実験実施者及び飼養者は,実験
るため,実験動物の入手先,飼育履歴,病歴等に関す
等を終了し,若しくは中断した実験動物又は疾病等
る記録台帳を整備する等,実験動物の記録管理を適正
により回復の見込みのない障害を受けた実験動物を
に行うよう努めること.また,人に危害を加える等の
殺処分する場合にあっては,速やかに致死量以上の
おそれのある実験動物については,名札,脚環,マイ
麻酔薬の投与,頸(けい)椎(つい)脱臼(きゅう)
クロチップ等の装着等の識別措置を技術的に可能な範
等の化学的又は物理的方法による等指針に基づき行
囲で講じるよう努めること.
うこと.また,実験動物の死体については,適切な
6 輸送時の取扱い
実験動物の輸送を行う場合には,次に掲げる事項に
留意し,実験動物の健康及び安全の確保並びに実験動
物による人への危害等の発生の防止に努めること.
処理を行い,人の健康及び生活環境を損なうことの
ないようにすること.
2 実験動物を生産する施設
幼齢又は高齢の動物を繁殖の用に供さないこと.ま
ア なるべく短時間に輸送できる方法を採ること等に
た,みだりに繁殖の用に供することによる動物への過
より,実験動物の疲労及び苦痛をできるだけ小さく
度の負担を避けるため,繁殖の回数を適切なものとす
すること.
ること.ただし,系統の維持の目的で繁殖の用に供す
イ 輸送中の実験動物には必要に応じて適切な給餌及
る等特別な事情がある場合については,この限りでな
び給水を行うとともに,輸送に用いる車両等を換気
い.また,実験動物の譲渡しに当たっては,その生理,
等により適切な温度に維持すること.
生態,習性等,適正な飼養及び保管の方法,感染性の
ウ 実験動物の生理,生態,習性等を考慮の上,適切
に区分して輸送するとともに,輸送に用いる車両,
容器等は,実験動物の健康及び安全を確保し,並び
に実験動物の逸走を防止するために必要な規模,構
造等のものを選定すること.
疾病等に関する情報を提供し,譲り受ける者に対する
説明責任を果たすこと.
第5 準用及び適用除外
管理者等は,哺乳類,鳥類又は爬虫類に属する動物以
外の動物を実験等の利用に供する場合においてもこの基
エ 実験動物が保有する微生物,実験動物の汚物等に
準の趣旨に沿って行うよう努めること.また,この基準
より環境が汚染されることを防止するために必要な
は,畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は
措置を講じること.
畜産に関する育種改良を行うことを目的として実験動物
7 施設廃止時の取扱い
の飼養又は保管をする管理者等及び生態の観察を行うこ
管理者は,施設の廃止に当たっては,実験動物が命
とを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等
あるものであることにかんがみ,その有効利用を図る
には適用しない.なお,生態の観察を行うことを目的と
ために,飼養又は保管をしている実験動物を他の施設
する動物の飼養及び保管については,家庭動物等の飼養
へ譲り渡すよう努めること.やむを得ず実験動物を殺
及び保管に関する基準
(平成1
4年5月環境省告示第3
7号)
処分しなければならない場合にあっては,動物の殺処
に準じて行うこと.
分方法に関する指針(平成7年7月総理府告示第4
0号.