山口千尋

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Vol.
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(右)
山口千尋 山口はるか
(左)
私も世界へ行きたい︱︱。山口千尋はい
口の家族はボート一家。父は元U︱
日本
つの間にかそう思うようになっていた。山
だったが、結果は 位。直前の体調不良が
めて 河 口 湖での 代 表 決 定 戦に 挑んだ 千 尋
そして3年生の6月。すべての思いを込
た。夢だった日本代表が見えてきた。
準々決勝に進出し、2年では準優勝となっ
生の時からインターハイに出場。1年時は
で活躍を﹂という思いで練習に励み、1年
かった。﹁入部するからにはインターハイ
が、気持ちに火がつくのに時間はかからな
千尋が話す。軽い気持ちで始めたボートだ
を家族で応援して楽しかったからかな﹂と
を決める時期になってからです。兄の試合
ろうと思ったのは、中3の秋くらい。進路
ボート 一筋というわけではなかった。﹁や
とはいえ、千尋もはるかも小さい頃から
然、
家ではボートの話題が多くなるという。
日本大学ボート部で競技を続けている。当
国選抜優勝、日本代表の経歴を持ち、現在
全員津久井高校に進学。長兄の健太は、全
子どもたち、健太、千尋、はるかの3人も
校ボート部で知り合った。そして生まれた
代表の選手で、母も選手。2人は津久井高
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て、
月
日と
日に 行われる 相 模 湖レ
国体に出場。千尋は高校最後のレースとし
インターハイ後、姉妹はダブルスカルで
がないです﹂
と千尋は無念さを押し殺した。
れるかがポイントだったんですが⋮。仕方
年。2人の差をいかにフォローし、埋めら
るかに 対し、﹁はるかはボートを 始めて 半
﹁経験が 足りなかった ﹂とうなだれるは
準決勝進出は果たせなかった。
い。結局、最後まで修正することができず、
かが波を読みきれず、艇がまっすぐ進まな
きった津久井高ペアだったが、バウのはる
で 迎えた 翌 日の 準 々 決 勝。 好スタートを
2人でスタートの確認を行い、万全の状態
突破ラインの3位でゴールした。その後、
ピッチがかみ合い、ぐんぐんと加速。予選
予選はスタートこそ失敗したが、2人の
る。息が合わないとスピードには乗れない。
るかがバウ︵後方︶で艇をコントロールす
がストローク︵前方︶で推進力となり、は
千尋にとって最後のインターハイ。千尋
かった。本当にそう思います﹂
とうつむく。
のときからもっと 体 力をつけておけばよ
で話す。その言葉を聞いたはるかは﹁中学
るようにならないと﹂と千尋は厳しい表情
ら手先まで、動きをイメージしながら漕げ
﹁スタミナも 筋 力も 足りません。 体 幹か
からタイムがガクンと落ちる。
だ体力が追いついていないはるかは、途中
ピードを維持する持久力が必要不可欠。ま
スピードまで上げる瞬発力と、最後までス
ボート競技には、スタート直後にトップ
ら、
はるかにも同じ経験をしてほしかった﹂
ラスになったのは間違いありません。だか
ほぐし、盛り上げてくれた。その経験がプ
連れて行ってもらいました。先輩が緊張を
﹁ 私も 1 年の 時は、 先 輩に 全 国 大 会まで
カル︵二人乗り︶に出場することを選んだ。
り︶ではなく、はるかとのペアでダブルス
ンターハイでは、シングルスカル︵一人乗
父や兄の後を追う夢が敗れた彼女は、イ
なりました﹂と肩を落とした。
原 因だったが、
﹁ 完 全に 負け。 自 信もなく
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いつかは超えたい﹂と遠慮がちに応えた。
るかは、﹁ 力の 差がありすぎます。でも、
と笑う千尋。突然、姉に勝負を挑まれたは
ば、最初で最後の真剣勝負をしたいですね﹂
はるかも 同じレースに 出場する。﹁できれ
で力の限り漕ぐことに決めた。もちろん、
けた相模湖漕艇場。最後はシングルスカル
ガッタにも出場する。舞台は3年間通い続
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1.練習は相模湖漕艇場がメイン。
「県の施設で設備が充実している上に、OB
も手伝ってくれる」
と菅原顧問は環境のよさに感謝する 2.練習中は
「遅い!」
「フォームしっかり!」
と千尋の大きな声が飛ぶ。姉妹の信頼関係があるからこ
そ、部員2人でも厳しくなれる 3.今年は2人でボート部の活動を続けてきた。
それでも、
「インターハイは家族旅行みたいだった」
とリラックスして戦えた
2人は家でも家族から意見をもらえるという。
「家族だけど競技の
偉大な先輩。気づかない点を指摘されたりして、
なるほどと思う」
記 録 に は 残 らな い
もう ひ と つ の 物 語
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果たせぬ夢は妹へ
部員2人のバトンタッチ
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ワンダフル プレーヤーズ
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部員が少なくてもいい、
なかなか勝てなくてもいい。
一生懸命に練習して、
自分を成長させたい― 。
生アスリートがたくさんいる。
津久井高校ボート部も
神奈川県内には、
そんな思いで部活動に励む高校
その一つ。
部員は、
山口千尋
(3年)
とはるか
(1年)
の姉妹だけだ。
実は、
2人の父と兄は、
かつては同じ
津久井高校ボート部に在籍し、
日本代表に選ばれ
た名選手。
「 私も父や兄のようになりたい」。
そんな
夢を抱き続けた姉と、
その思いを託された妹の物語
をここに紹介しよう。
撮影◉ 高木成和 文◉ 高橋博之
津久井高校ボート部