185 研究ノート マウス前庭神経内側核からの上行性投射 橋 本 欣 弥 神戸学院大学大学院 修士課程 年 BDA)とコレラトキシンサブユニットB(CTb) を用い,マウスの前庭神経内側核からの上行性投射について調べた.BDAを前庭神経内側核に注入す [要約]標識物質としてビオチン化デキストランアミン( ると,順行性標識線維および標識終末が視床の束傍核とその周辺部の不確帯,赤核前位核,視床下部後 CTbを不確帯から赤核前位核にかけての領域に注入すると,前 部および視蓋前域核に観察された.次に 庭神経内側核の吻側部では同側性優位に, 中央部では反対側性優位に多数の逆行性標識細胞が見られた. 不確帯,赤核前位核域は大脳皮質運動野や小脳から入力を受けていることから,前庭神経内側核は視床 の運動中継核だけでなく,これらの視床周辺部の領域を介しても随意運動の調節に関与していると考え られる. キーワード:前庭神経内側核,不確帯,赤核前位核,視床下部後部,視蓋前域核 な役割を果たしていると考えられてきた[ Ⅰ.まえがき 前庭神経核は,第 , ]. 前庭神経核からの上行性の投射に関しては,城山 脳室底にあり,舌下神経核 らによる PHA−L(インゲンマメのレクチン)を の上方から外転神経核の高さの間に位置する.前 用いた詳細な研究がある[ 庭神経核群は縦走する つの細胞柱として配列 核から背側視床への上行性投射については詳しく し,外側の細胞柱には下核,外側核,および上核 述べているが,背側視床以外,例えば腹側視床や の 視床下部への投射についての記載はほとんど見ら る. 核が,内側の細胞柱に内側核 つが区別され MVN)は, つの亜核のうち前庭神経内側核 ( ].彼らは前庭神経 れない.そこで今回我々は前庭神経核のうち前庭 前庭小脳(片葉,小節および虫部垂)や対側の前 神経内側核から背側視床,腹側視床および視床下 庭神経内側核や上核からの入力を受け[ ],内 部後部への上行性投射を明らかにする目的で,順 側前庭脊髄路として脊髄へ投射するほか,脳幹や 行性標識物質としてデキストランビオチン 規管や卵形嚢や球形嚢からの平衡感覚や加速度に BDA)を,逆行性標識物質としてコレラトキシ ンサブユニットB(CTb)を用いた注入実験を行 関する感覚情報を受け取り,その情報をさらに頸 ったので報告する. 視床へも投射している[ MVNは,三半 ] .また 部の筋へ伝達し,また前庭動眼反射の際は頭部の 位置情報や眼球の位置と頸部の筋との協調に重要 ( なお,今回の実験は神戸学院大学動物実験委員 会の承認のもとに行った(承認番号 A − )
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