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奈良県のダリア
誌名
奈良県農業総合センター研究報告
ISSN
18821944
著者
藤井, 祐子
有馬, 毅
巻/号
43号
掲載ページ
p. 71-74
発行年月
2012年3月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
奈良農総セ研報
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三
三
日
奈良県のダリア
ー球根・切り花・苗生産への取り組み支援一
普及技術課花き指導係
1.ダリア生産の歴史と現状
藤井祐子・有馬毅
特に奈良県は作付け面積・出荷数量ともにトップの
奈良県におけるダジアの球楳生産は,県北東部に位
寵する宇陀市および山添村を中心に行われている.
産地となっている(第 1図).また,切り花は,第 2
菌に示されている都道府県で生産されている.
球線生産の歴史は古く,山添村では, 1
9
2
5年頃,商
社がオランダから輸入した球根を,敷島農園の城戸
芳友氏が栽培したのが始まりとされている.戦時中,
一時中断したものの, 1
9
5
1年頃から生産を再開し,
球根の輸出も盛んに行われていた.現在,山添村で
は,主に勝原,三ヶ谷地域で約 2
5戸の生産者が球根
養成を行い,国内種苗会社に出荷している.
一方,宇陀市榛原(
1日 榛原町)では, 1
9
5
0年,木田
数量(千本)
芸
高 2図
∞
ダリア切り花生産の作付け溜務および出荷数蚤 (2 8年度,奈良 F
義務ベ)
農菌(奈良県橿原市)からの委託を受け,球根生産を 7
名で始めたのがはじまりとされている.翌 1
9
5
1年に
2. 球根生産量日本一産地の危機
0名)
は,榛原ダリア耕作組合を設立(組合員数約 6
このように奈良県の地域特産物ともいえるダリア
し,球根からの養成による生産が拡大した. 1
9
5
5年
球根だが,近年,生産現場では球振のウイルス汚染
には榛原ダリア組合(現,榛原花井組合)を結成し,
による生育不長,球根収量の減少が大きな問題とな
1
9
6
0年 "
'
1
9
7
5年頃にはアメリカへ輸出もしていた.
9名,組合保持品種
現在,榛原花井組合は組合員数 1
は約 3
5
0品種(主要 2
0
0品種)となっており,組合員の
っていた.そこで,農業総合センターではウイルス
株(茎頂培養株)を用いて挿し芽増殖する技術を開
うち
発し提案した.第 3 図,第 1表にみられるように,
6名は球根だけでなく
6月下旬 "
'
1
1 月中旬
に切り花を出荷している.
に汚染された球根を茎頭培養し,そこから得られた
茎頭培養された球殺を用いることで,従来球根に比
榛原および勝原,三ヶ谷地域では,
される過程
べ欠株率が減少し,切り花の生育が旺盛になること
で品種育成も盛んに行われてきた(現存するもので約
が明らかとなった.そこで,榛原花子子組合では
5
0 品種).県内生産者が育種した代表的なものに,
年前よりこの茎頂培養株を用いた揮し芽増殖技術に
守秦原の里¥ ‘祝舟¥‘美榛'や,極小輪のわい性
取り組み始めた.現在,いったん茎頃培養した品種
5
種‘トップミックスシリーズ'がある.
2
0
0
8年に奈良県が行った全閣のダリア球根と切り
花生産調査によると,球根生産を行っているのは,
奈良県,兵庫県,秋田県の 3県が上位を点めており,
蛮 穣 (a)
第 1図
数量(千まま)
ダリア球根生産の作付け高額および出荷数議 (
2
0
0
8年産,奈良擦翻ベ)
第 3図
茎]頁培養によるダリアの生育改善(品穏‘祝盃, )
(従来の球根に比べ,芸頂培養株から増やした球根を用いると,
生育が格段に良くなる.)
奈良県農業総合センター研究報告 第 信 号 (2012年 3月)
(
7
2
)
はウイノレスによる再汚染を防ぐため,網室ハウス内
で親株を保存,更新するなど,第 4図に示したよう
なしくみで、種球生産を行っている.
3. 新技術導入による球棋の生産安定と産地の
さらなる発展へ
県内の輪ギク生躍を主体とした産地である葛城市
第 1署
長 茎I
翼i
音;髪によるダリアの生育政審効果
欠株謀
品1
重
名
(
目
)
においては,これまで冬季の補完作目として栽培さ
議大切花長
(cm)
茎頂I
告書霊由来主事
節罪男長
ウイル正発症E
事
れてきたチューリップ等の球根切り花の販売単価が
(cm)
(
見
)
低迷し,新しい冬季補完作自への転換要望が高まり
95
1
6
72
1
3
1
1
3
1
6
9
7
1
4
つつあった.全国的にも冬切りダリアの需要が高ま
ソフトムード
従来琢
6
3
茶漬培養由来琢
25
者に冬切りダリア生産の導入を勧めるとともに,榛
モナコS
従来球
1
3
調査倒体数は 1区
る動きが背景にあったことを見すえ,葛城市の生産
1
5
m株
原花井組合には,茎頂培養株を用いた挿し芽増殖技
術を利用して冬切り生産用のセノレ苗を生産すること
挿し芽苔を定植.病虫害防j
徐等,
ウイノレス再持染対策を徹底.
円
U
茎頂培養苗
球根養成網室
ピ
7
組合員臨場へ生産球として l品種最小ロットの 2
0
0球配布
G
I
~一一一~\
1球より 3球蓑成できるとして,
~
"
3年自秋
600球/品種を生産. 5
0
0
-----一一---球を販売,残り 1
0
0球を種球に.
第 4図 様原花井組合におけるダリア茎頂培養芭を用いた球根増殖のしくみ
藤井祐子・有馬
毅:奈良県のダリア
を提案した. 2
0
0
9年には,榛原花井組合が生産した
一球様・切り花・苗生産への取り組み支援
(
7
3
)
く,花き類の中で決してメジャーな品医であるとは
冬切り生産用セル芭を葛城市の生産者に販売供給す
る体制を整備した.冬切りダリアの生産を普及して
いくため,県内に豊富なダリア品種が保有されてい
る利点を生かし、これまで明らかにされていなかっ
た冬切り品種特性や,効率的な電照、方法を研究部門
と連携して解明,得られた試験データをもとに,地
域に適した品種を選定し,高品質で安定した栽培の
ための技術支援を行っている. 2
0
1
0年
, 2
0
1
1年の春
には,普及技術課が中心となって ]Aならけん,中
部農林振興事務所と連携しながら,冬切りダリアに
関心のある生産者に呼びかけ,現地問場見学と研究
部門からの品種特性試験結果報告を含めた栽培検討
会を実施した(第 5図).現在,葛城市内では,施設を
用いた切り花ダリアが 4戸で生産され, 1
1月中旬か
ら 6月にかけて出荷されている(第 6図).さらに,榛
原花井組合では冬切り生産用セノレ前以外に,一般消
費者向けポット苗も,種苗会社の通販アイテムとし
て契約生産,出荷している.
また, 2
0
1
0年からは,今まで農業総合センターで
斉組合で実施できるよう,茎頂培養技術習得のため
fp-思量眠障
実施していた茎頃培養から頗化までの工程も榛原花
の研修や施設設備への導入支援を行ってきた(第 7
図). 2
0
1
1年現在では,榛原花井組合として茎頃培養
設備を整備し,生産者自ら茎頂培養苗の生産に取り
組み始めている.
第 6図
葛城市での冬切りダリアの生育と出荷箱の様子
いえない.しかし,球根としてのダリアは,奈良県
の中山間地域である宇柁市,山添村の主要な転作作
物の 1っとして長く生産されてきた品目であり,第
1図の統計でみるように,全国的にも奈良県特有の
地域特産物と位置づけることができる.また,数多
い品種は長期間にわたり地道な生産体制の中で受け
継がれてきた貴重な遺倍資源でもある.ところが,
一時は 6
0名いた榛原花斉組合の組合員も,現住では
第
5
1
8
1 冬切りダリア品種および栽培検討会
3分の lに激減し,高齢化により平均年齢が 60歳を
超えており,現状のままでは産地の維持が厳しい状
4. まとめ
切り花としてのダジアは,チューリップ,ユリなど
{患の球技花き類や,切り花生産上位 3品 Eであるキ
ク,パラ,カーネーションに比べると生産量が少な
況にある.最近の榛原花井組合が取り組んだ茎頂堵
養を利用したセル苗生産は,この部分だけの実施を
考えると採算をとることは難しい.しかしながら,
ここまで組合が取り組んでこれたのは,豊富な品種
を維持しながらの球根生産体制が基盤にあり,ウイ
奈良県農業総合センター研究報告 第 4
3号 (
2
0
1
2年 3月)
(
7
4
)
流れも背景に,長年つちかつてきた球根生産の基盤
と新技術を組み合わせ,球根・挿し芽苗・切り花生
産における,奈良県ダリアのブランド力強化への産
地の取り組みを今後も支援していきたい.
引用文献副参考資料
1.奈良県農林部農業水産振興課. 2
0
0
9
. 平成 2
0年
産
全国のダジア球根生産作付け面積及び出帯数
生産戸数等について.
2
. 奈良県農林部農業水産振興課. 2
0
0
9
. 平成 2
0年
第 7図
茎頂培養技術習得のための実習
ルス対策としての茎頭培養が必要で、あったこと,
頂培養された苗の網室による維持や増殖体制の整備
が組合として可能であったこと,さらに,冬切り用
のセノレ苗生産は,球根の安定生産のために用意した
産
全国のダリア切花作付け面積及び出荷数量、
生産戸数等について.
3
. 西田尚子. 2
0
1
0
. 奈良県におけるダリア栽培の歴
6
史 . 日 本 ダ リ ア 曾 曾 報 第 6号 :
1
51
幽
4
.藤井祐子. 2
0
11.奈良県のダリア
球根・切り花・
設備や技術が流用可能で、あったことの 3点 が 主 な 理
苗生産への取り組み.日本ダリア曾
由となっている.生産者の高齢化などを考えると,
8
号:
1
7・ 1
現時点でダリアの球根産地が将来的に生き残ってい
5
.藤井祐子. 2
0
11.奈良県のダリア
曾報第 7
球捜・切り花・
けるための基盤を作っておく必要があり,今自の取
苗生産への取り組み支援一.農業総合センターニ
り組みはその第 1歩である.
ュース第 1
3
9号:1
幸いなことに,昨今,ダリアの切り花は,昔から
の仏花・お稽古花としてだけではなく,中大輪系を
中心にブライダル需要として人気が高く,市場での
切り花取扱最が年々増加している.そうした時代の