台湾における産後養生と女性の身体

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Title
台湾における産後養生と女性の身体
Author(s)
曾, 璟蕙
Citation
曾璟蕙:奈良女子大学社会学論集, 第22号, pp.73-89
Issue Date
2015-03-01
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/3995
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台湾における産後養生と女性の身体
曾 璟蕙
はじめに
台湾の伝統的な家族では,女性の地位が低く,家族の中で自分の地位を上げる1つの方
法は,新しい命を再生産することであった.女性は子ども(特に男の子)を産めば産むほ
ど地位を確立できるようになるため,伝統的な社会では出産することを重視し,それに伴
う伝統的な慣習も数多く見られる.
「坐月子」
(ぞーよーず)と呼ばれる産後養生はその代
表的な一例である.台湾では坐月子は通常1ヶ月間で,その間は髪を洗ってはいけない,
赤ん坊を抱っこしてはいけない,重いものを持ってはいけない,泣いてはいけないなどの
様々なタブーがあり,それらは女性を守るためだとされている.そして産後の期間中は存
分に休養し,出産によって失ってしまった体力を補い,そうすることで次の子を妊娠する
ことが目指されていた.また家族は新しい命の誕生によって,家族の継承を確実にするこ
とができるので,家族のメンバー(主に姑)は献身的に女性の面倒を見るものとされた.
しかし現在の台湾社会では,経済の高度成長によって環境がよくなり,栄養も十分とる
ことができ,肉類は貴重品ではなくなった.そして女性が従事する仕事は従来の農作業か
らサービス業に移り変わり,家族形態も従来の大家族から核家族になっている.また,か
つてのように数多くの子を出産するのでなく,限られた数の子どもしか出産しなくなり,
かつ出産後に女性の養生を助けるはずの姑が近くにいない場合もある.近年では赤ん坊を
姑に預けたくないという女性たちもいる.しかしながら,社会が近代化しても依然として
台湾の女性は家の継承という責任から逃れることができない.このように出産を取り巻く
台湾の社会的背景は大きく変化したが,家の継承つまり出産自体の意味づけは子どもの数
が減った分,むしろ大きくなっている.そして産後養生の場所は自宅から施設へと移り変
わり,産後養生の内容も西洋医学的な考えが加わり変化を見せている.
そこで本稿では,現在の台湾社会の産後養生の現状を女性たちの視点から明らかにし,
産後養生が社会の近代化にもかかわらず,いっそう豪華に行われるようになっている理由
を明らかにする.
1 台湾の伝統的な産後養生
翁玲玲によれば,産後の養生とは,中国,台湾にみられる伝統的な行事で,出産直後の
身体になされる特別な世話のことである.産後養生の文化は養生を実践することにかかわ
るイデオロギー,価値,規範,慣習を含んでいる(翁玲玲 1992)
.産後養生は,産後に身
体が虚弱となっている女性に適切な食事,休養,環境などを提供し,日常生活に戻すため
の休養期間(通常1ヶ月間)である.それは,家族の新しいメンバーを社会に認知しても
らうための準備期間であり,褥婦にとっては夫の家族の中に,自分の身分と地位を改めて
定義し築くための期間と言える(田聖方 2006).
台湾の伝統的な家族文化では,女性は結婚後,夫と夫の両親と一緒に暮らすことが一般
的である.台湾は父系制をとっており,息子が両親の老後の面倒をみることを期待される
と同時に,親夫婦は若夫婦の身の回りの支援をするものとされている.このような考えを
前提に,家族はできる限り女性への協力をする.金銭的な協力はもちろん,心理的または
実質上の生活面での協力もある. 家族の多くは女性の世話と同時に赤ん坊の面倒もみ,女
性は産後の期間中に母親としての役割を身につけ,体力の回復を果たす.台湾では,夫婦
共働きを続けることが一般的であるため,女性は出産後に仕事をやめたり,一時的に休職
するのではなく,速やかに職場へ復帰したいと考えている.そこで,女性は産後養生をし
っかりと行って体力を回復し,スムーズに社会へ復帰することを目指すのである.
台湾では,伝統的には,出産は家庭で行われていたので,産後養生は,出産直後から家
庭において行われていた.
女性は出産後に家から出ずにできる限りに横になって休養する.
姑は特殊な料理を用意し,女性の身の回りの面倒(身体を拭く,腹帯の着用など)や家事,
赤ん坊の面倒に至るまでの世話全般を行う.代表的な産後の食べ物は麻油鶏(マーユージ)
と薬膳スープである. 麻油鶏とは,鶏を丸ごと 1 羽お酒で時間をかけて煮込むもので,薬
膳スープは薬草を1リットルの水でじっくり煮込み,最終的にわずか 500 ㏄の分量にした
ものである.姑はこのような産後の料理を毎日用意するのが一般的である.
伝統的な産後養生は,大きく分けると食べ物と行動の規範から成り立っている.養生の
期間中の飲食上のタブーとしては,塩辛いもの・冷たい食物,堅い食物,毒性のある食物,
辛い食物,生水などを摂らないようにすることが挙げられる.逆に食事として摂るのか望
ましいものは,ごま油,生姜,お酒などの熱性の食物である.薬膳の養生を守れば,体内
に溜まっている血と痛みを取り除くことができ,さらに,身体を温めることによって血液
の循環が良くなるとされる.そうして褥婦の身体は産前の状態に戻り,母乳の分泌も促さ
れるとされている(黃久華 2003,黃筱玲 1999,翁玲玲 1992)
.
日常生活のタブーは大きく 3 つに分けられ,身体の回復のためのタブー,身体の湿・寒
を防ぐためのタブー,感染を防止するためのタブーとなっている.
表 1 産後養生の期間中の行動のタブー
褥婦の身体回復のためのタブー
身体の湿・寒を防ぐため 感染を防止するためのタブ
のタブー
ー
階段を登らない
お風呂に入らない
他人の家の訪問を控える
性生活の禁止
髪を洗わない
民間の行事に参加しない
本を読まない
冷たい水にふれない
夜中に外出しない
泣かない
風に当たらない
しゃがんで食事をしない
なるべく横になる
しゃがまない
重い物を持たない(赤ん坊も含
めて)
表1に挙げたように,産後の一定期間中に,女性が衣食住に関して気を付けなければい
けない点が多々あり,それは全て女性の身体の回復のためとされる.これらの規範は中国
の伝統医学の考え方を元に発展してきたもので,中医の莊淑旂(1996)によれば,女性にと
って初めて生理を迎える時,出産の時,更年期という3つの時期は最も重要な養生の時期
だとされている.中国医学ではこの期間を利用し,きちんと身体を養生をすれば,身体の
体質をより良く改善することができるとされている.何よりも最大の転換期間は産後の一
定期間であり,この期間に伝統的な養生をすると,産前の身体の状態に回復するだけでな
く,さらには妊娠前の体質を直すことすらできるとされている.このような中国医学に基
づく伝統的な養生の実践は,現在の台湾の医学の専門家たちに,どのように評価されてい
るのかを次に述べる.
2 産後養生に対する近代医学の見方
産後養生の考え方や習慣は中医学に基づくものではあるが,近代医学の立場からもその
プラスの面が評価されている.例えば,産婦人科医の鄭志堅は,産後の養生を実践するこ
とによって,元の体質を改善することができると述べ,産後の2週間における身体の生理
的な変化が重要であり,きちんと養生を実践することによって,産前より肌質が良く,体
型もスリムな体型になると指摘している(鄭志堅 2013)
.また産婦人科医の洪泰和は,養
生の期間を利用し,きちんと養生を受けることによって,母乳の分泌に良い効果がもたら
され,
さらに育児の自信も身につけることができると述べている.
また栄養士の許美雅は,
伝統的な産後の養生における飲食の規範は,従来の肉中心の食事から,現在は栄養バラン
スの良い食事へと変化しており,タブーと思われがちの食物でも少量なら食べても良いと
述べている. 例えば,水を飲んではいけないという規範は,過去の水の衛生上の理由で,
禁止されたのかもしれず,むしろお酒のほうが安全であったということが考えられる.そ
して飲食上の規範は女性の身体を守り,
体質と体型を調整するのに役立つと述べている
(許
美雅 2014)
.
つまり,伝統的な産後の養生に関しては,近代医学も肯定的な評価を行っており,伝統
的な養生規範に対しては,衝突どころか,むしろ養生を実践することによって,身体に良
い効果があると指摘している.このように,伝統的な産後養生は,古くからの伝統的な慣
習及び中国医学の論述に基づく慣習だけではなく,
栄養士の許の考え方にみられるように,
近代的な考え方及び西洋医学の論述も加えられて少しずつ変化しつつあるといえる.つま
り,中医学と近代医学の考え方がうまく組み合わされて,産後養生が両方の立場から支持
されているのである.過去の迷信に近い養生内容は,新たに医学的な解釈を与えられるこ
とで,一層の効果を期待されるようになっていることがわかる.
3 産後養生の施設化
台湾では,産後養生は古くから実践されてきた大事な習慣であるが,近年はその場所が
夫の家から施設へと移りつつある.従来産後の養生は夫の家族(主に姑)が行うもので,
それは,日々の農業労働に加えて新たな家族の成員を出産した女性に対して,夫の家族が
感謝の気持ちで身の周りの面倒や特殊な飲食などを用意したからであった.だが,姑の健
康状態や年齢によっては世話できない場合があり,その場合女性らは家の近くにある施設
で,身の回りの面倒や飲食の面倒を見てもらうことがあった.そのような施設は月子セン
ター(月子中心)と呼ばれ,産後の養生期間の1ヶ月間を意味する,月子という名をつけ
られていた.月子センターでは,女性は身体を休養させながら赤ん坊の世話のしかたを経
験者から教えてもらい,母親としての役割を学習することができた.このような月子セン
ターがいつ頃から存在したのかについては,記録がないため,はっきりしたことはわから
ない.だが,1980 年代にはあちこちにこのような小規模の民間の施設が見られた.
ところが 1995 年に台湾の行政院衛生署は,産後により良い施設を提供し管理するために,
月子センターを登録し始めた.1995 年には登録の基準に見合う月子センターは1軒しかな
かったが,2013 年には 100 軒の登録が見られるようになっていた.また,衛生署は 1998
年に月子センターを医療機関と見なし,月子センター(月子中心)の名前を産後護理セン
ター(産後護理之家)と変えた.現在では,産後護理センターと言えば医療行為が法律に
よって認められる施設を指しており,産科医と看護士が常駐し,衛生署が定める規則で運
営される専門の産後養生施設である.産後2ヶ月未満の褥婦に医療専門のスタッフ,また
は団体が休養と療養の場を提供し,全面的な養生を提供する場とされている.養生の内容
は医療診察と問診,産科養生,個人生活養生,社会娯楽サービス,特殊飲食,栄養サポー
ト,赤ん坊の面倒などである(蘇喜,蕭世槐,湯靜怡 2002)
.
産後護理センターの分類は,法律では大きく3つに分けられている.1つめは,総合病
院の附属産後護理センターである.総合病院で出産した後,女性は同じビル内にある附属
の産後護理センターへ移動することになる.2つめは,産婦人科クリニックの産後護理セ
ンターである.女性はクリニックで出産した後,産後養生のための専属フロアーへ移動す
る.この2種類の産後護理センターは,衛生署に定める規則に従って設立されたもので,
施設内では,医療処置や医療行為が認められている.この2つの施設では出産と産後の養
生を同時に1つの場所で行うことができる特徴がある.3つめは,民間経営の産後護理セ
ンターで,女性は病院で出産をし,退院直後に移動して施設に入所する.また,民間経営
の産後護理センターはさらに2つに分けられ,消防署が定める規則に従う施設では,医療
行為が禁じられているが,衛生署が定める規則に従う施設では,医療行為を行うことがで
きる.このように,伝統的な産後養生施設であった月子センターの一部は産後護理センタ
ーへと変わり,内容も医療行為を伴わない身の周りの面倒から医療行為を含むケアへと移
りかわりつつある.
以上のように現在の台湾社会では,
産後養生は自宅での家族によるものから専門施設へ,
さらに医療専門家によるものへと移り変わりつつある.もし,産後の養生が飲食や行動の
タブーを守ることだけであるなら,現在家で産後養生を行うことは,かつてよりも容易に
なるはずである.例えば,現在では冷たい水を触らずにおくことや,特別の養生料理を家
で調理せずに購入することも可能だからである.だが,現在産後護理センターは年々増加
し,施設の設備も豪華になっている.その背景にはどのような理由があるのかを次節以下
で明らかにしたい.
4 調査方法
4.1 調査概要
現在の台湾社会の産後養生の現状と女性たちの入所理由を明らかにするために,産後の
女性たちに聞き取り調査を行った.調査の方法は中国語による半構造化面接で,あらかじ
め質問項目を設定し,それに基づいて質問をすると同時に,調査対象者にできるだけ自由
に語ってもらった.質問内容は,大きく分けて,調査者の基本属性,これまでの出産経験,
産後養生の経験についてであった.中でも,産後養生の経験に関しては,飲食の面,養生
の面,生活の振る舞い,自身の体の養生,赤ん坊のケア,養生を実践する場所について詳
しく語ってもらった.
協力者は,台湾に在住する最終出産から3年以内にある女性たちである.調査協力者の
選定にあたっては,年齢,家族構成,職業等の基本属性に偏りを生じないよう配慮しなが
ら,知人,及びさらにその知人に紹介してもらい,結果的には合計 32 人の協力者を得た.
調査時期は 2012 年 7 月から 2013 年 12 月までであった.
調査場所は,
本人の自宅(11 人),
喫茶店(19 人), 産後護理センター(2 人)である.全員一対一で面談し,夫婦で来た場合
には夫に離れてもらい,妻の方だけに話を聞いた.所要時間は1人につき1時間から3時
間であった.
4.2 協力者の属性
表-2は,調査協力者の基本属性を表にしたものである.協力者は末子の出産から3年
以内の人たちであり,20 代が1人,30 代が 31 人と 30 代が大半を占めた.調査協力者の平
均年齢は 31.9 才であった.最終学歴は短期大学卒が5人,大学卒が 27 人で,学歴は台湾
全体の平均よりも高いと言える.子どもの平均人数は 1.3 人で最大は2人であった.就業
の有無については,正規社員 11 人,自営業 13 人,専業主婦8人であり,大半が仕事に就
いていた.産後養生の期間として,女性たちが通常とは異なる世話を受けたのは2週間か
ら1か月間であった.調査時点での産後からの日数は,産後3週間目から2年 11 ヶ月まで
であり,産後1ヶ月未満が2人,1か月から6か月未満が6人,6ヶ月から1年未満が8
人,1年以上が 16 人であった.産後養生の場所は,妻の実家が1人,夫の実家が4人, 産
後護理センターが 27 人で,産後護理センターが数多くを占めている.居住地域は台中市
17 人,台中県7人,高雄市6人,台北市2人であり,全員が都市部に居住している.また
32 人のうち2人は,調査時点で産後養生中で,23 人は調査時点ですでに仕事に復帰してい
た.
聞き取りの内容を整理したところ,以下のような内容が共通の関心事として取り出され
た.1つは,女性たちが出産の際に多くの医療介入を受けていること.2つめは対象者の
多くが産後に傷の痛みを訴えていること,3つめは産後の母子分離を当然と考えているこ
とである.そこで以下で,それぞれの内容について,女性たちの言葉を引用しながら詳し
く述べていきたい.協力者の名前は全て仮名である.
5 調査結果
5.1 出産における医療介入
協力者の 32 人のうち,
経膣分娩をしたのは 16 人,帝王切開を受けたのは 16 人であった.
また会陰切開術は 32 人のうち最初から帝王切開を予定していた3人を除く 29 人全員が受
けていた.そのほかに剃毛は 29 人,浣腸は 32 人全員がうけた.もともと帝王切開での出
産を予定していたのは 32 人中3人で,他の 13 人は,胎児の位置異常や産道の狭さという
理由で分娩中に帝王切開になっていた.医療処置は,女性の示す僅かな微候に応じて与え
られており,赤ん坊が出てくるのに時間がかかると帝王切開が勧められ,女性が痛みを訴
えると麻酔が勧められていた.例えば,女性たちは次のように述べている.
「私は自然分娩をお願いしたけど,出産の時に,赤ん坊の頭がなかなか下に降りてこない
ために,医者に帝王切開にしたほうがいいと勧められた.このまま待っても,うまいこと
方向を変えない可能性もあると言われたので」
(陳さん)
.
「子どもを産むときに,看護士は子宮口がどれぐらいに開いていたのかを確認していたけ
ど,4時間がたっても1センチしか開いてなかったので,医者は産道が狭いから帝王切開
にしたほうがスムーズに産めると言ったの」
(林さん).
「分娩台で待機していたけど,陣痛の痛みが耐えられなくて,6時に無痛分娩の注射を受
けたの.麻酔が効いてるときは,痛くなかったけど,2時間過ぎてもまだ産めなくて,す
ごい時間がかかった.麻酔の注射をうけると,いきむときに力の入れ方がわからなくなる
から,すごく大変でした」
(王さん)
.
「息子を産むときは,会陰を切られましたよ.でも,力の出し方が悪いからか,息子の頭
が大きすぎたのか,切られたけどまた裂傷してしまって.それにきれいに縫えなかったみ
たい.今は傷のところに吹き出ものみたいなものができている」
(黄さん)
.
このように,医者は陣痛の間に少しでも異常が見られると,すぐに帝王切開を勧め,他
の方法を提案しないことがわかる.陣痛の痛みに対しては,麻酔の注射が勧められるが,
女性は麻酔の状態では力の入れ方が分からず,出産が長びくことになる.また,会陰切開
術は,帝王切開を予定していた3人以外の全員が受けていたことから,必要性に基づいて
行われたというよりは,
ルーチンに行われていることが示唆される.
本稿の協力者たちは,
出産の際に内容は異なるが,さまざまの医療処置を受けており,何の医療処置も受けずに
出産した人は皆無であった.
5.2 傷の痛み
インタビューした協力者の多くが, 産後護理センターに入所する理由として,傷の痛み
をあげていた.出産の痛みと言えば,通常は陣痛の痛みを考えるが,協力者の多くが自然
の陣痛以外に,医者による医療処置の痛みを挙げていた.例えば会陰切開や帝王切開の手
術後の痛みである.帝王切開では,麻酔によって痛みが軽減されると思われがちだが,麻
酔から醒めた後の痛みが強く,産後の身体の動きに大きな影響を与えていた.また,会陰
切開の傷も,帝王切開の傷も,きちんと定期的に検査を受けなければ感染する可能性が高
いと指摘されているため,女性たちは傷の痛みと回復のためには,病院内で手当てを受け
るのがより安全で安心できると考えている.
例えば,張さん(35 歳)は,調査時はすでに産後2年 11 か月たっていたが,当時の出
産経験を1つも忘れることなくよく覚えていた.彼女は自身の出産経験を料理にたとえて
フルコース料理だと語った.それは出産には,自然分娩コースと帝王切開コースがあり,
自然分娩コースは浣腸,剃毛,会陰切開などの処置を受け,分娩するまで陣痛の痛さを我
慢するコースである.一方で,帝王切開コースは,決まった日に手術を受けが,その事前
の準備として,浣腸,断食と全身麻酔が行われる.帝王切開コースは陣痛の痛みを経験し
なくて済むものの,麻酔から覚めた後に,傷の痛さを我慢するコースだと述べていた.す
なわち,どちらの分娩を選択したとしても,医療処置の内容は異なるものの,身体の痛み
は必ずついてくると張さんは述べていた.彼女は,最初に自然分娩コースを選んだにも関
わらず,結果的に帝王切開コースになったため,
自らの出産をフルコースだと述べている.
「帝王切開の後に,病室に戻ったけど,麻酔から醒めた時の痛み,もう身体が痛くて,重
くて,起きることなんてできませんでした.自分の身体じゃないみたい.トイレ行くとき
に,下は会陰切開の傷があるから,するたびに,痛いのよ.ベッドから降りようと思って
も,お腹の傷が痛くて,動けない状況でした.もう思い出したくないような経験です」.
張さんは出産の経験からもうすぐ3年近くが経とうとしているにも関わらず,当時の出
産経験を思い出しては,恐怖の表情を浮かべた.そして出産の間に体験した痛みと産後の
傷が回復するまでのつらさをもう2度と経験したくないと言い切った.彼女は,
「会陰切開
をされたときには麻酔していたので,全然痛くなかったですが,ハサミで切った瞬間の音
は一生忘れないわ」と怖ろしそうに語っていた.このように,女性たちは身体の痛みを産
後にまで引きずっており,そのために産後の回復が引き伸ばされることになっている.
林さん(31 歳)は2回目の出産で,前回帝王切開であったために,今回も帝王切開を受
けた.彼女は帝王切開の後,ほとんどベッドに横になったままで,身の周りのことをすべ
て施設のスタッフにしてもらった.
「麻酔から醒めたとき,ものすごく痛かった.身体が重くて動けない状態だった.最初の
1週間は,
もう何もできない寝たきりの状態でした.
ベッドから降りようとしてみたけど,
傷口が痛くて歩けず,赤ん坊の母乳をあげるときも,車いすで下の階へ行きました.
」
彼女はこのように述べ,手術後にベッドから降りようと思ったが,痛いのと傷の治りが
悪くなるのを恐れて動かずにいたと言う.しかし,それは彼女にとって,とても退屈な時
間であった.少しずつ身体を動かしたくても,傷を治すために我慢する.帝王切開は,産
後の痛みが大きいが,何より深刻なのは,健康な女性が帝王切開の手術を受けることによ
って,一気に患者/病人として扱われるようになることである.女性たちが車いすに乗って
移動する姿は彼女らが健康な女性としてではなく,病人として扱われていることを表して
いる.
さらに女性たちは産後の痛みに対処し,傷の手当てを受けるためには,医療の力が必要
だと考えるようになっている.例えば陳さん(36 歳)は,妊娠する前から身体の具合が悪
かったために,産後養生は義理の母に頼まず,専門の施設を選んだ.彼女はその理由を次
のように述べている.
「傷の治りはやっぱり,医者にまかした方がいいと思います.何か感染がある場合は,養
生センターに常駐する医者がすぐ見てくれるし,すごく安心できます.家にいると,傷の
具合が悪かったら義理の母も助けられないし,わざわざ病院まで行くのも面倒ですしね.
しかも,手術後は本当に痛いので,あまり動きたくなかったの」
.
陳さんは,さらにもう1つの理由として,自宅での産後養生で生じるストレスをあげて
いる.
「ここ(施設)にいると,料理もたくさんあって,さっぱりしたものばかりです.自宅に
いたらもちろん安くすむけれど,もし万が一に姑の料理が口に合わなかったら,申し訳な
いじゃない.出産が終わってから,お腹の傷が本当に痛くて,イライラするし,姑と喧嘩
にもなるからね.なので多少お金がかかるけど,施設にしたのよ」.
彼女によれば,出産に伴う傷を治すには医者の治療が必要であり,また傷の痛みに伴う
苛立ちで姑とぶつかることがないように,施設を選んだと述べている.陳さんは妊娠中か
ら帝王切開にすることを決めており,
産後の傷の治療についても大きく医者に頼っていた.
身体の傷は医者によってつけられたものであり,それを治すのも医者だと陳さんは考えて
いた.
この3つのケースをまとめると,産後の傷の痛みは協力者たちにとって大きな苦痛とな
っており,その傷を治すために医者や施設に頼るようになっていた.出産に伴う痛みは,
本来は自然な陣痛の痛みで出産の終了とともになくなるものだが,過度な医療処置を受け
ることで,痛みが産後の期間にまで影響を与えていた.このようなことから現在の産後養
生は,出産時の医療介入の傷を回復させるための期間となっていると言える.
5.3 産後の母子分離
本稿の協力者 32 人のうち,自宅で養生をしたのは5人で, 産後護理センターで養生し
たのは 27 人であった.27 人の全員が子どもを新生児室に預かってもらっており,母子同
室にした人は皆無であった.産後護理センターでは,子どもを自分の部屋で面倒を見る母
子同室か,子どもを新生児室に預ける別室かを選ぶことができるのだが,母子同室を選ぶ
人がほとんどいないことを考えると,実質的に産後護理センターは母子を分離する状況を
作り出している.このことは,女性たちが赤ん坊の面倒を見るのは自分だけの役目ではな
く, 産後護理センターの役目でもあると考えていることを示している.
宋さん(34 歳)は,第2子の出産の後,上の子どもを姑に預ってもらい, 産後護理セ
ンターに入所した.彼女は母子別室の選択をしたが,その理由は,自分の時間を確保して
ゆっくり休みたかったからだと述べている.また,産後養生を終了後もスムーズに職場に
復帰するために,少しの間でも仕事の準備をしたかったからだと述べていた.
「産後護理センターにいた時には,毎朝7時ぐらいに起きて,身支度をしたら,スタッフ
が朝ごはんを部屋に運んでくる.食事後,すぐに母乳の用意をし始めます.乳房をきれい
に拭いてから器械の中に置くと,自動的に母乳が絞り出されるの.その母乳を哺乳瓶に入
れて授乳室へ向かうのよ.赤ん坊の授乳時間は決まっていて,ここは朝の9時,午後1時,
夕方5時の3回なの.その時間になると,隣のお母さんと一緒に授乳室へ行くの. 授乳室
に入ると,直接に乳房を赤ん坊にふくませているお母さんもいれば,哺乳瓶を使って赤ん
坊に飲ませているお母さんもいる.どっちも母乳だし,自分に一番楽なやり方でやってい
るのよ.もしあまり飲まなくても,先に用意した母乳があるから,看護士が代わりにあげ
てくれるわ」
.
彼女は赤ん坊を集中養生室に預け,母乳は器械を用いて絞り,哺乳瓶に入れてから赤ん
坊に飲ませていた.それは,哺乳瓶を利用することで,授乳の責任を他人と分担すること
ができるからである.例えば授乳に行った時に赤ん坊がたくさん飲まなくても,すでに絞
ってあった母乳を後で看護士に飲ませてもらうことができる.さらに,哺乳瓶を用いるか
直接に授乳するかは,都合に合わせて自分で決めることだと宋さんは述べている.産後の
女性にとって,赤ん坊に母乳をやることが大きな役割であるが,搾乳の器械を用いて哺乳
瓶で母乳をやることで,その責任を他人と分担することができるのである.
劉さん(30 歳)は,産後3週間施設に滞在した.最初の1週間ぐらいは,身体の回復が
とても良く,傷の治りも順調であったが,彼女は乳腺炎の痛みに耐えかねて,搾乳器を用
いることにした.
「母乳がよく詰まって乳腺炎になったので,看護士に話してみたら,搾乳する器械を勧め
られた.この器械は吸引の強弱を調整することができるので,詰まる時は少しパワーをあ
げると,母乳が出てくるのよ.乳首が直接に赤ん坊に触れないので,本当に楽でした.母
乳をやめたいと思っていた時期があったけど,この器械があれば続けられると思ったの.
母乳が赤ん坊にとっては一番いいと医者と看護士に言われたからね」
.
彼女は母乳のつまりによる痛みから,直接母乳を与えることを断念して搾乳器を使うよ
うになったが,それは母子にとっては良いことだと述べていた.その理由は,器械によっ
て母乳がスムーズに出るようになり,かつ乳首が赤ん坊に直接に触れないために,痛みを
軽減できるからである.産後の女性は身体の傷の痛みのみならず,乳首を吸われる痛みも
我慢しなければならないが,施設は女性たちに搾乳器を勧めることで,速やかにそれらの
問題を解決していた.母乳のストレスを抱えていた女性たちには搾乳器は好評であり,ま
た出産後に仕事への復帰を望む女性たちにも母子分離は好都合とされていた.
黄さん(30 歳)は,夫の両親が自宅から歩いて 15 分ぐらいの距離に住んでいるが,出
産後まる1か月間産後護理センターに入所した.その理由は,義理の母に気づかいをする
よりも,産後養生を他人に任せるほうが良いと考えたからである.
「仕事に復帰したら,子どもの面倒は義理のお母さんによく頼るので,産後の時間ぐらい
は他の人に頼もうかなと思って,家の近くにある産後護理センターにしたの.施設にいる
時は,都合のいい時に赤ん坊を部屋に連れてくるだけで,私が休みたい時とか自分のこと
をしたい時には,施設の人が赤ん坊の面倒を見てくれる.赤ん坊は生まれてから,いろん
な人に面倒見てもらっているので,義理のお母さんに預ける時も,スムーズでした.あま
り泣きもしなかったしね.本当にかわいいの,面倒見やすい子です」
.
このように,女性たちは施設で赤ん坊と別室で過ごし,看護士と共同で赤ん坊の面倒を
みていることがわかる. 産後護理センターは女性の身体の回復をを中心に置き,赤ん坊の
面倒は母親だけの役割ではなく,看護士と共に行う仕組みになっている.女性たちはその
ようにすることで,先々職場に復帰しやすくなると考えている. つまり産後護理センター
は母子分離をすることによって,母と子を密着させず,母子が次のステージにスムーズに
移行するのを助ける場所となっている.次のステージとは,母親が職場に復帰することで
あり,そのためには母と子を最初から密着させずに分離するほうが都合が良いと女性たち
は考えている.なぜなら,そうすることで母親以外の人々を育児に参加させることが可能
となり,かつ女性たちは赤ん坊との距離を置くことで子どもに対する愛情を深めることが
できると考えているからである.
6 考察
妊娠・出産・産後という連続的な流れの中で,現代社会では妊娠と出産は完全に医療の
中のできごととなっている.だが産後は,医療がいまだ影響力を及ぼしていない分野だと
言われてきた.そして産後は,妊娠・出産ほど医療化されていないからこそ,文化として
のリプロダクションの側面が今でも残っているとされてきた(松岡 2009).しかし,現在の
台湾では,産後養生も医療化されつつある.その理由として挙げられるのは,第1に出産
自体が医療化され,過度な医療処置が加えられているからである.例えば 2010 年の台湾行
政院衛生署の統計によると,帝王切開率は 35.97%であり,会陰切開術はほぼ 100%に行
われている.そのほかに,無痛分娩のための麻酔も数多くみられる.分娩中に行われた医
療処置は,産後の女性の身体に大きな負担をかけ,会陰切開や帝王切開の回復に長い時間
がかかるようになっている.そして産後にそのような身体の傷を治すために,さらに医療
支援が必要とされるため,女性たちは家で養生をするよりは,医療が行える施設にしたほ
うが傷が治りやすいと考えるようになっている.
また,産後護理センターは,出産したのと同じ建物でゆっくり休養することができる点
が好都合とされている.産後には看護士とスタッフとともに,養生のフロアーへ移動する
だけであり,女性は誰にも邪魔されない個室で休養することができる.また,施設内では,
育児,母乳栄養,ヨガ,トレーニングレッスン,などのクラスも行われるため,女性は自
分の都合に合わせて好きなサービスを利用することができる.さらに養生の期間中に,母
子のどちらかが病気になった場合でも,護理センターであれば,その場で医療を受けるこ
とができる.また養生の期間中は外に出ないように言われるため,施設で養生を受けるほ
うが,対応しやすくなると考えられている.
さらに,産後護理センターでは,母子がそれぞれ別個に医療を含むケアを受けられるよ
うになっている.従来のように自宅での養生であれば,女性は常に赤ん坊の面倒を見なけ
ればならず,また姑の助けがあっても意見が合わない場合は,精神的にも大きな負担にな
る.赤ん坊の夜中の授乳やおむつ替えなどは,休養中の女性には大きな負担であるが,施
設であれば,
赤ん坊の世話を看護士に任せることができる.
そしてこのような母子分離は,
養生後に職場復帰をする女性たちには育児を1人で背負いこまない環境を作る点で好都合
と考えられている.
このように考えると,現在の台湾における産後養生の医療化・施設化は,女性たちに「利
便性」を提供している.その結果,女性たちは産後にもさらに多くの医療を受けることと
なる.これまで産後は医療化が進んでおらず,伝統的な慣習が大きな役割を果たしている
と考えられてきたが,台湾では 90 年代以降,産後も医療化されつつあると言えよう.ただ
し,産後の養生には近代医療のみでなく,中国医学との柔軟な組み合わせが見られるのも
大きな特徴である.つまり,台湾の産後の養生は,中国医学の考え方に基づく習俗を近代
医学が否定せず,むしろ,それをうまく利用して現在のような形を作り上げていると言え
る.
では,なぜ台湾では,産後養生がこれほどまでに重視されるのであろうか.それは,台
湾では「家」の継承が非常に重要だからである.漢人社会は「家」を中心に展開しており,
家の継承は中華民族にとっては極めて重要な考え方であるため,女性は子供を産まなけれ
ばならないのである.夫の家族も次の子どもを期待するため,女性の身体を養生し再妊娠
を期待している.父系社会の台湾では,女性は次世代を再生産することが最も大事な役割
とされている.家族の継承には新しい命の誕生が必要であり,それを果たすことで女性は
家族の一員として正式に認められることになる .したがって,継承の役を担っている女性
の面倒は家族にとっては極めて重要な出来事でもあり,産後の養生は,家族全員の協力に
よって,次世代の繁栄を期待して行われる.現在の産後養生が施設化・医療化されて豪華
になっている背景には,女性たちの医療への期待と家の継承と繁栄を願う伝統的な台湾の
価値観の両者があるといえよう.
7 結論
伝統的な産後養生には,日常生活の振る舞いの規範と飲食の制限の2つがあった.これ
らの規範は,女性の身体を守る/養生する/強化するという機能をもっている.この規範を
守るために,産後の女性は横になって休養することが一番良いとされている.本稿の協力
者たちは,産後養生の期間中になるべく横になって休養することを守っていた.しかし,
その理由が従来のように,農作業に日々従事している女性たちに,少しでもゆっくり休め
るようにということから,現在では出産による身体の傷を治すためへと変化していた.
現在の台湾女性が施設で産後養生を実践する理由は,第1に,出産に伴う傷や身体の痛
みに対処するために施設での医療を受け,自分の身体を守るためである.出産の痛みは,
現在では陣痛の痛みよりはむしろ帝王切開や会陰切開後の痛みとなっており,産後長期に
わたって女性たちは身体を休養させねばならなくなっている.次に,女性たちは赤ん坊の
面倒を自分1人で行うのではなく,むしろ専門家がすることと考えている.産後護理セン
ターは,母と子を分けて面倒を見てくれるため,女性たちは赤ん坊の世話を看護士に任せ
て,ゆっくり休養することができる.そしてそのことが赤ん坊を他人に預けて職場復帰を
するのに便利だと考えられるようになっている.
出産に伴う医療処置がどうしても避けられない現在では,それに続く治療も医療の処置
を受けられる産後護理センターで行うことになる.伝統的な養生は出産に伴う疲労を回復
させるためであったが,現在の産後養生は,出産に伴う傷を治療するためにある.出産に
伴う傷の治療を伝統的な養生という名のもとに行うことで,医療化は産後にまで拡大され
ることになる.このような産後養生の考え方の背後には,子どもを産んで家を継承させな
ければならないという台湾の父系社会の考え方があると言えよう.
8 参考文献
(参考文献)
洪泰和 2013『懷孕・生産一定要知道的大小事』234-237.
黃久華 2003「産婦執行坐月子習俗遵循度與產後健康狀態之相關性研究」10-18.
黃筱玲 1999「做月子習俗之研究」65-73.
賴正均 1998「從中西醫及營養學觀點看産後的飲食宜忌」
『北市中醫會刊雜誌』44-45.
松岡悦子 2009「産後が何より大事-韓国の産後調理院」
『アジア遊学』
(119)74‐84.
許美雅 2014『坐好月子一定要知道的大小事』174-177.
蘇喜,蕭世槐,湯靜怡 2002「北市産後照顧機構之照顧品質調查」
『公共衛生雜誌』
(21):4
266-277.
田聖芳 2006「台灣婦女産後照顧之變遷-以北部為例」台北:國立台灣醫學院護理學研究所博
士論文.
翁玲玲 1992「漢人婦女産後作月子儀式的行為探討-兩個漁民社區的調查研究」70-73.
翁玲玲 2002「産婦,不潔與神明-作月子儀式中不潔觀的象徵意義」
『兩性平等教育季刊』
18:59-66.
莊淑旂 1996『坐月子的方法』38-41.
鄭志堅 2013『坐對月子,産後快瘦!』30-38.
表2
ケー
仮名
ス
年
最終学歴
子どもの人数
職業
居住地
出産方法
剃毛
齢
1
張さん
35
会陰
浣腸
切開
大学
1㊚2才 11 か月
飲食店経営
台中市
帝王切開
あり
あり
産後養生
産後ケア場所
期間
あり
3週間
産後ケアセンター
母
産後養生
子
料理
別
施設提供
室
2
宋さん
34
大学
1㊛3才
正規社員
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
2週間
産後ケアセンター
1㊛7か月
3
頼さん
34
大学
1㊛9か月
別
施設提供
室
専業主婦
台中市
帝王切開
なし
なし
あり
3週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
4
陳さん
30
大学
1㊚2才 10 か月
専業主婦
高雄市
帝王切開
あり
あり
あり
3週間
家/姑
同
外注
室
5
王さん
30
大学
1㊚1才3か月
専業主婦
高雄市
帝王切開
あり
あり
あり
1か月
実家
同
実母
室
6
張さん
38
大学
1㊛4才
大学事務
高雄市
帝王切開
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
1㊛4か月
7
林さん
30
短期大学
1㊚1才
黄さん
31
短期大学
1㊛2才9か月
施設提供
室
雑貨店経営
高雄市
帝王切開
あり
あり
あり
4週間
家/姑
1㊚5か月
8
別
同
姑
室
専業主婦
高雄市
自然分娩
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
9
張さん
35
大学
1㊚2才
専業主婦
高雄市
帝王切開
なし
なし
あり
1か月
産後ケアセンター
1㊚3週間目
10
劉さん
30
大学
1㊚3才
陳さん
30
大学
1㊛2才6か月
施設提供
室
正規社員
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
1㊛10 か月
11
別
別
施設提供
室
専業主婦
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
4週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
12
曽さん
30
大学
1㊚7か月
服屋経営
台中市
帝王切開
なし
なし
あり
3週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
13
施さん
30
大学
1㊚3才
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
別
施設提供
1㊚1才
14
金さん
31
大学
1㊛2才6か月
室
専業主婦
台北市
帝王切開
あり
あり
あり
4週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
15
王さん
36
短期大学
1㊛2才 10 か月
専業主婦
台中市
帝王切開
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
16
劉さん
30
大学
1㊚3才
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
家/姑
1㊚5か月
17
陳さん
30
短期大学
1㊚4才
黄さん
32
大学
1㊚4才
自営業
台中県
自然分娩
あり
あり
あり
3週間
家/姑
陳さん
33
大学
1㊛2才6か月
会社経営
台中市
帝王切開
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
頼さん
31
短期大学
1㊛2才7か月
姑
別
施設提供
室
正規社員
台中市
帝王切開
あり
あ
あり
3週間
産後ケアセンター
り)
20
同
室
1㊛2才3か月
19
外注
室
1㊚2才
18
同
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
別
施設提供
室
あり
1か月
産後ケアセンター
別
施設提供
室
21
周さん
31
大学
1㊛2才
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
別
施設提供
室
22
王さん
31
大学
1㊚2才
塾教師
台中県
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
1㊛4か月
23
陳さん
36
大学
1㊚4か月
別
施設提供
室
保育士
台中市
帝王切開
なし
なし
あり
3週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
24
呉さん
35
大学
1㊚9か月
正規社員
台中県
自然分娩
あり
あり
あり
1週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
25
頼さん
30
大学
1㊚7か月
自営業
台中県
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
別
施設提供
室
26
王さん
30
大学
1㊚1才 10 か月
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
2週間
産後ケアセンター
1㊚3週間目
27
黄さん
30
大学
1㊚5か月
別
施設提供
室
正規社員
台中県
自然分娩
あり
あり
あり
2週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
28
林さん
31
大学
1㊚2才
自営業
台中県
帝王切開
あり
なし
あり
1か月
産後ケアセンター
1㊚8か月
29
陳さん
29
大学
1㊚10 か月
別
施設提供
室
自営業
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
別
施設提供
室
30
呉さん
32
大学
1㊚3才
正規社員
台中県
帝王切開
あり
あり
あり
1か月
産後ケアセンター
1㊚5か月
31
劉さん
34
大学
1㊛1才5か月
別
施設提供
室
正規社員
台北市
帝王切開
あり
あり
あり
4週間
産後ケアセンター
別
施設提供
室
32
曽さん
33
大学
1㊚2才
中学校教員
台中市
自然分娩
あり
あり
あり
3週間
産後ケアセンター
別
室
施設提供
Postpartum Resting Period and Women’s Body in Taiwan
SOU Keie
Abstract
In Taiwan postpartum resting period constitutes a very important part in a woman's reproductive
life. Postpartum resting used to be observed at home with a help from a mother-in-law but it is
increasingly moving to a medical institution specialized in such a care. This article explains Chinese
medical theory behind postpartum resting and tries to illustrate reasons behind this move from home
to an institution. Interviews to 32 women living in urban areas in Taiwan were conducted with a
view to understand their experiences of postpartum period.
The following three points were commonly emphasized in women’s stories. First, women
experienced much medical intervention during labor and birth which resulted in bodily injuries
needing medical care. Second, due to prolonged pain caused by medical intervention during and
after birth, women want to have a luxurious resting environment accompanied with medical care.
Third, a postpartum care center provides separate care for mother and baby which enables women to
have enough rest while their babies are cared by a professional nurse. This detached way of raising
babies makes it easier for women to return to work, as babies become accustomed to bottle feeding
and care by persons other than their own mother in an institution.
In traditional Taiwanese society, a marrying-in woman establishes her position in the family only
after she bears a child, preferably a boy.
Thus, the custom of postpartum resting period is based on
a patriarchal idea that a woman’s fertility needs to be recovered by providing her enough rest in
order to ensure the next offspring.
(keyword:
postpartum resting
postpartum care center Taiwan childbirth)