フィールドロボティクス ―インフラのメインテナンスと

社会インフラの維持管理と自然災害
のためへのロボット技術の適用
~ フィールドロボティクスのアプローチ
2015年台日科学技術フォーラム
~新時代の産学官連携の構築:ロボット活用社会に向ける課題と展望~
2015年9月7日-9日
油田信一(ゆた しんいち)
芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任教授
自己紹介:
油 田信一
( ゆた
しんいち )
1975年 慶應義塾大学大学院工学研究科(電気工学)修了、工学博士
1975年 東京農工大学 電子工学科 助手
1978年 筑波大学 電子・情報工学系 講師
1992年 同 教授
1999年 同 機能工学系 教授
2004年 同 理事・副学長 (研究、産学官連携、社会貢献担当)
2006年 同 システム情報工学研究科教授
(2006-2010年)産学リエゾン共同研究センター長
2012年 芝浦工業大学 電気工学科 教授(特任)
2012年~ 土木研究所招聘研究員、つくば市顧問
2014年~ (株)富士ソフト取締役(社外)、次世代無人化施工技術研究組合理事長、
NEDO嘱託(インフラ維持PL)
2015年 芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任教授
専門はロボット工学。
30年にわたって研究用自律移動ロボットプラットフォーム「山彦」の開発と、
自律移動ロボット技術や、ロボット技術の応用の研究を進めてきた。
IEEE Fellow (2000, Robotics & Automation Society)
日本ロボット学会フェロー(2004)
2009年 日本機械学会賞(技術)
2009年 IROS Harashima Award (IEEE)
「ロボット」に(厳密な)定義はない
人に「ロボット」と呼ばれると「ロボット」になる
• どのような機械が「ロボット」と呼ばれているか:
 ロボットのイメージの機械
 ロボット技術を用いた機械
 ロボット研究者・メーカが作った機械
 夢の機械・開発中の機械
実現されるとロボットではなくなる
どういう機械ならロボットと言えるか
• 産業用ロボット
• 全自動洗濯機
• パワーシャベル
• 2足歩行機械
• 空を飛ぶ機械
• テレビゲーム
• 自動運転の自動車
• 自動掃除機
• 遠隔操作の機械
ロボット技術が社会に果たすべき役割
• 社会課題の解決
• ロボット学 = ソリューション提供の
ための研究開発
ロボットの役割:ロボットを役立てるために
• 人間の代わりとして
•
人間にできることを代替
• 機械として
• 人間にできないことをする
求められるロボット(技術)の役割
• 改めて: 3K 仕事
• キケンな仕事
• キツイ仕事
• キタナイ仕事
-----人がやりたくない(物理的)仕事
ロボット技術が追求する機能の特徴
魔法使いの能力 = 20世紀型価値観の成果
•
•
•
•
空を飛ぶ
くらいところを明るく照らす
重いものを運ぶ
遠くの状況を見る/遠くの人と話す
人の能力
•
•
•
•
= ロボットが追求する機能
歩いてどこかへ行く
器用に手を動かして何かを作る
ものを見て判断する
人の気持ちが分かる
従来の多くの研究開発の立場
(伝統的科学技術=20世紀型科学技術)
シーズ
好奇心
応用(Push型)
基礎科学
要素技術
役立つシステム
役立つロボット
解決法(Pull型)
ニーズ
社会の要求
現在のロボット学・ロボット技術がとるべき
開発の立場
シーズ
好奇心
応用(Push型)
基礎科学
要素技術
役立つシステム
役立つロボット
解決法(Pull型)
ニーズ
社会の要求
ロボットの作業環境
工場から
自然環境・
日常生活
空間へ
• 工場・生産ライン
• 物流ライン
•
•
•
•
•
建設作業現場
農業・林業
市街地
公共の建物
家庭
• 産業用ロボット
工場内
- 工業生産活動をサポート
• フィールドロボット
建設、農業、災害時
- 人の仕事をサポート
• サービスロボット
家庭内、一般の生活環境
- 通常の生活をサポート
フィールドロボットの例
農作業ロボット
調査・探査ロボット
建設系現場のロボット
フィールドロボティクスの立場
• (工場から出て)自然環境の中で働くロボットの
技術
• 現場で役に立つ調査・作業の実現
• あるがままの(自然な)環境で働くこと
 ロボットのためには整備が出来ない稼働環境
 技術のキーは、作業そのものの難しさより、
対応するべき環境の条件
これから重要となるキーワード=維持+安心
• 現在の(科学技術に支えられた)快適な環境の確保・維持
こそがチャレンジ
• 社会のインフラとなっている設備の維持(メインテナンス)
エネルギー網、通信網、輸送網、交通網、原材料製造
• メインテナンス技術の重要性と課題
• 維持の切断(日常に潜む危機)の回避 :
• インフラ維持のためのコスト負担の軽減
• 災害時への対応
• 二次災害を避けて実情の調査と応急的復旧
最近のインフラ対応ロボット技術:日本における背景
• インフラの老朽化
(例) 笹子トンネルの事故
• 災害への対応能力の強化
(例)・ 東日本震災と
福島第1原発の事故(2011)
• 頻発する異常気象
紀伊半島豪雨(2011)、2014年8月台
風11号など
• 火山噴火と土石流
雲仙普賢岳
インフラの維持管理/(自然)災害時の調査・復旧
に対応するロボットの技術要素
 アクセス技術(現場に行く)
 検査対象や作業現場に機械をアクセスさせる
移動技術(地上、空中、壁面、水中 ...)
 人は遠方から監視・操作
 現地が危険な場合(高所、二時災害の恐れ、放射能など)
 計測・作業技術(仕事をする)
 検査・監視のための対象の計測
 軽作業(計測のため/維持・更新のため)
 無人で行う(本格的な)作業・施工など
 実環境で実際に役立つ統合システムの構築
 ハードウェア、ソフトウェア、制御系、ユーザインタフェースの統合
災害対応ロボットの例:ロボット工学の立場から
人が入れないところでの調査・対処システム
アクセス技術
• 福島第一原子力発電所事故
(TEPCO HPより)
Quince
Talon
(QinetiQ)
Brokk-90
(Brokk)
災害対応ロボットの例:ロボット工学の立場から
人が入れないところでの調査・対処システム: アクセス技術
活火山エリアの調査(UAVの長距離飛行 現場実証:東北大チーム,2014)
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災害対応ロボットの例:ロボット工学の立場から
人が入れないところでの調査・対処システム
遠隔操作技術
• 火山災害における
無人化施工
火山災害に対処する無人化施工
雲仙普賢岳の被害と作業:降灰と火砕流
白い普賢岳
島原市内の様子
DEITz
火砕流による被害
DEITz
土石流発生
谷や山腹に積もった火山堆積物等が、
長雨によって大量に流出
DEITz
平成5年の水無川流域
DEITz
1993
無人化施工システム
作業現場 (オペレータは非搭乗)
遠隔操作室 (安全な場所)
無線等による通信
雲仙普賢岳での無人化施工
1993年〜
・建設省技術評価制度
・試験フィールド制度
【工種】
・除石工事
・大規模土工
・RCC工法による砂防堰堤
建設
雲仙普賢岳復旧/復興工事
 極めて高い2次災害のリスク
 火山災害/土砂災害に対応可能な施工技術の模索
 大規模土工を可能とする施工技術
建設省試験フィールド制度により、無人化施工を本格的に実
施
雲仙普賢岳復旧/復興
→ 近代無人化施工発祥の地
熊谷組赤松谷11号床固工
現在の水無川流域
雲仙・普賢岳噴火災害に伴う被害状況
死者41名、行方不明者3名、負傷者12名、建物被害2511戸、被害額2299億円
火砕流の発生回数9432回、土石流の発生回数62回、総流出土砂量約760万m3
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雲仙復興以後の無人化施工(代表例)
 北海道・有珠山噴火災害(2000)
洞爺湖温泉街 火山灰等で壊滅的被害

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

小笠原 三宅島噴火災害(2000)
新潟県中越地震(2004)
岩手/宮城地震(荒砥沢:2010)
鹿児島県南大隅深層崩壊(2010)
 紀伊半島豪雨(2011-2012)
無人化施工に学ぶべき技術の役立て方
• イザというときに対応出来る体制。
• アライブな状態の機械、運搬体制
• 訓練されたオペレータ
(理由)
• 非常時用と言いながら、常に使われている
• 事前災害では常に非常時がある
(国交省の工事発注だが、作業はビジネスとして
成立)
無人化施工と情報化施工
- 施工技術の新しい方向(ロボット化)
メインテナンスロボットの例:ロボット工学の立場から
仮設足場の不要な検査・維持システム
アクセス技術
• アーチ橋の点検・塗装
• 化学プラントにおける配管の腐食検査
最近の日本における
災害対応/インフラ維持のためのロボット技術
~ 技術開発と利用のアクティビティ
 無人化施工+遠隔調査
 火山噴火 (雲仙普賢岳1996~)
 大規模崩落(土砂崩れ、土砂ダム) (例えば2011紀伊半島豪雨)
 福島第1原子力発電所の安定化/廃炉 (2011~)
 国土交通省・経済産業省連携による次世代インフラ用ロ
ボットの開発・導入の促進 (2014~)
 NEDOインフラロボットプロジェクト
 国交省 インフラ用ロボットの現場実証(技術公募に基づく)
 SIP(戦略的イノベーションプログラム=内閣府)のインフラ
維持管理マネージメント技術 (2014~) (4)ロボット技術
国土交通省・経済産業省連携による次世代インフラ用ロボットの開発・導入の促進
経済産業省/NEDOの取り組み(2014~)
プロジェクト名:インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト
NEDOインフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム
開発プロジェクト (2014~)
NEDO
運営委員会
NEDO、PL、SPL、
有識者
下山SPL
①インフラ状態モニタリン
グ用センサシステム開発
油田PL
②イメージング技術を用い
たインフラ状態モニタリング
システム開発
油田PL
③インフラ維持管理用
ロボット技術・非破壊
センサ装置
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インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト
③インフラ維持管理用ロボット技術・非破壊検査装置開発
NEDO
成果評価委員(外部有識者委員)
(ロボット開発評価委員(兼務))
東大 淺間教授
大阪大 大須賀教授
早稲田大学 菅野教授
中央大学 大隅教授
東京電機大学 栗栖教授
国総研 木村様
土木研究所 藤野様
個別進捗報告
(年3回程度)
全体連絡会
(年3回程度)
PL:芝浦工業大学
油田信一教授
オブザーバー
経済産業省
国土交通省
安全技術アドバイザー
長岡技科大 木村准教授
有人宇宙システム 大賀様
環境技術支援ネットワーク 奥田様
産総研 加藤様、中坊様
電波技術アドバイザー
NICT 三浦様
橋梁維持管理
水中維持管理
災害調査
インフラ診断ロボットシステム(ALPI)の
研究開発
水中構造物の近接目視等
を位置計測しつつ安定に実
施可能なテザー伸展操舵型
ROVの研究開発
土石流予測を目的とした火山災害地域のリア
ルタイムデータベースを実現するセンシング技
術の開発と実用化
(株)開発設計コンサルタント、 法政大
学、 岡山大学、(ステラ技研(株)、SP
QR(株)、(株)シスミック、(株)JPビジネ
スサービス)
音カメラを活用した橋梁点検ロボット
の研究開発
(株)熊谷組、 (株)応用技術試験所、
(株)移動ロボット研究所、 東京エレクト
ロンデバイス(株)、 名古屋大学
複眼式撮像装置を搭載した橋梁近接
目視代替ロボットシステムの研究開発
富士フイルム(株)、(株)イクシスリサー
チ (一財)首都高速道路技術センター
マルチコプタを利用した橋梁点検シス
テムの研究開発
川田テクノロジーズ(株) 、(独)産業技
術総合研究所(株)、エンルート、大日本
コンサルタント(株)
(株)ハイボット、 (株)建設
技術研究所、 東京工業大学
可変構成型水中調査用ロ
ボットの研究開発
(株)キュー・アイ、 (株)日立
製作所、 (独)産業技術総合
研究所
東北大学、(株)エンルート、国際航業(株) (筑
波大学)
災害調査用地上/空中複合型ロボットシステ
ムの研究開発
(株)日立製作所、(株)エンルート、 八千代エン
ジニヤリング(株)、 (独)産業技術総合研究所
遠隔搭乗操作によるマルチクローラ型無人調
査ロボットの研究開発
(株)大林組 (慶應義塾大学、(株)移動ロボット
研究所)
引火性ガス雰囲気内探査ロボットの研究開発
三菱重工業(株) (千葉工業大学)
複合センサを搭載した推進・自走可能なワー
ム型多関節ロボットの研究開発
(株)タウ技研 (東京工業大学、東京工科大学、
神奈川県産業技術センター)
非破壊検査
超小型X線及び中性子
センサを用いたインフラ
維持管理用非破壊検
査装置開発
(独)産業技術総合研究
所、(株)日立パワーソ
リューションズ、静岡大学
国土交通省の取り組み
• インフラ用ロボットの現場実証
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国土交通省インフラロボット 現場実証実験(2014)
• 橋梁
国総研(つくば):10/14、 浜名大橋:10/28
新浅川橋(八王子):11/17,18
・トンネル 富士:10/31
・水中 多摩川:11/20、宮ケ瀬:12/2
・災害調査
赤谷(奈良)11/11,12
桜島(鹿児島)12/9,10
国総研TN 1/?
・応急復旧
雲仙普賢岳 12/11,12
2014 橋梁維持管理技術 現場実証実験状況1
国総研(10/14) 5件
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2014 橋梁維持管理技術 現場実証実験状況2
浜名大橋(10/28) 6件
海風の影響大。
位置制御難しい…。
→今後の課題
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2014 橋梁維持管理技術 現場実証実験状況3
新浅川橋(11/17,18) 9件
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2014 トンネル維持管理技術 現場実証実験状況1
◆実験対象トンネル
・青山トンネル ・韮尾根トンネル ・施工総研模擬トンネル
◆実験日:
・10月31日(施工総研模擬トンネル)
◆検証技術
・近接目視
6技術
・打音
6技術
(2)打撃部機構例
・その他
(3)マルチコプタでのTN壁面移動
2014 水中維持管理技術 現場実証実験状況2(ダム)
◆ロボット
ROV
◆近接目視代替
カメラ画像、ソナー、電磁波レーダー など
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2014 災害調査技術 現場実証実験状況1
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◆実験対象現場
・奈良五条市 赤谷地区の土砂崩落現場周辺
◆実験日:
・11月11日、12日
◆検証技術
・高精細な画像・映像や地形データ等の取得
6技術
・災害フェーズ1~4
フェーズ1:発災日当日
フェーズ2:発災後3日
フェーズ3、4:発災後7日以降、災害対策のための概略設計、詳細設計の調査
マルチコプタの例
SIP
(戦略的イノベーション創造プログラム)
SIP(戦略的イノベーション創造プログラム、2014~)
ご清聴ありがとうございました