将来の給付の訴えについて

論
説
将来の給付の訴えについて
―― 履行期未到来の敷金の返還を求める訴えの適否 ――
春 日 川
路
子
Ⅰ はじめに
給付の訴えの対象となりうるのは,原則としてすでに履行期が到来して
おり,効力が発生していると考えられる権利や請求権である。だが例外と
して期限や条件が付されていると考えられるものであれば,いまだに履行
期が到来しておらず,効力が発生していないものについても訴えを提起す
ることができる。つまり履行期が到来している場合には現在の給付の訴え
となり,反対に履行期がいまだ到来していない場合には将来の給付の訴え
(民事訴訟法
条)を提起する。
この二つの訴えのあいだには,その適法性を判断する際にも差異があ
る。現在の給付の訴えの場合には,権利がすでに発生していることおよび
当該権利に対する侵害が生じていることを根拠として訴えの利益が認めら
れ,したがって訴えは原則的に適法とされる。それに対して将来の給付の
訴えの場合には,訴えの利益である「あらかじめ請求する必要」だけでは
なく,判例によって定立された「将来の給付の訴えの対象となりうる請求
権としての適格」が要求される場合があり,なかでも継続的不法行為に基
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
づく将来の損害賠償を求める訴えは多くの場合に不適法と判断されてい
!
る。
確かに判例によって定立された要件により,将来の給付の訴えが適法と
なる場合が明確にされ,将来給付の対象になりえない請求権や将来給付を
求めることのできない事案もまた明らかとなった。しかしながら当該要件
が適用される範囲や訴えの利益との関係,さらにはどのような場合,また
は,請求権について将来の給付の訴えを提起することができるのかとの根
本的な問題はいまだ十分に検討されていない。将来給付に関するこうした
疑問を明らかにして,個々の事例についてなされた判断を体系化すること
ができれば,将来の給付の訴えの有効利用につながり,より多くの紛争を
適切に解決する一助になると考える。
このような問題意識をもって将来の給付の訴えが適法となる限界を検討
するために,本稿では履行期未到来の敷金返還請求権に着目した。最高裁
は,賃貸借契約が継続しているうちに提起された敷金返還請求権が存在す
"
ることの確認を求める訴えを適法と判断している。だがこの事案において
は確認の訴えによって請求権の存在を確認するよりも,債務名義となる給
付判決を得られる将来の給付の訴えを提起して,あらかじめ給付判決を得
たほうが紛争をより効果的に解決できるのではないかとの疑問が残る。
本稿では,この疑問の前提となる履行期未到来の敷金の返還を求める将
来の給付の訴えの適法性を検討する。まずドイツ民事訴訟法典(以下,ZPO
とする)の将来の給付の訴えの規定および学説,裁判例を検討する。日本
法の立法者は将来の給付の訴えを導入するにあたり ZPO の規定を参考に
した経緯があり,また ZPO では日本法よりも詳細な将来給付の研究がな
されている。加えて履行期未到来の敷金返還を求める訴えを不適法と判断
した判例が存在しており,これらの理由から ZPO における将来給付の検
討は日本法においても一定の指針になると考えられる。次に日本法上の将
来の給付の訴えの沿革を確認し,請求権としての適格との要件を定立した
いわゆる大阪国際空港事件上告審判決およびその影響をうけた後の裁判例
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
を踏まえ,敷金返還請求権の適法性を判断する要件を定立する。最終的に
は,具体的な事例に定立した要件を当てはめ,将来の給付の訴えの適法性
を論じる。
Ⅱ ドイツ民事訴訟法上の将来の給付の訴え
.規定の沿革
年ドイツ民事訴訟法典(Civilprozessordnung,以下 CPO とする)が
制定された当時は,民事訴訟法は判決に基づいて執行を行うための規定を
有するに過ぎず,将来給付を定める条文は存在しなかった。それに対して
民事訴訟法とはかかわりなく認められていたのが,プロイセン法や普通法
にその原型を見出すことのできる解約訴訟や将来の反復的給付の訴えで
!
あった。こうしたプロイセン法や普通法の規定が参考になり,将来の給付
の訴えは
年の法改正時に民事訴訟法上に規定されることとなった。
その際すでに原型が存在していた履行期が到来していない請求権と反復的
給付請求権のための訴えに加えて,一般規定として不履行のおそれ(現行
法上は,適時の給付がなされないおそれ)がある場合に許容される将来の
給付の訴えもまた導入された。これらの条文は現行法にも受け継がれ,今
"
日まで大きな変更が加えられることなく通用している。
これらの将来の給付の訴えの規定目的は,通説的には一定の要件の下で
履行期到来前に債務名義を手に入れることを許容して,原告の権利保護を
#
図ることにあると理解されている。これらの条文による訴えは,すべて現
在発生してはいるがいまだに履行期が到来していない請求権につき提起で
$
きる。履行期未到来の請求権が現在の給付の訴えによって訴求された場合
には理由なしとして棄却されるのが原則であるが,将来の給付の訴えに
よって訴求された場合には請求が認容される可能性がある。このようにい
まだ履行期の到来していない請求権が対象となる将来の給付の訴えは,原
告に権利保護の機会を与えるものと理解されており,当事者平等取り扱い
( )
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巻 ・ 号(
)
および武器平等の原則に基づいて,被告にはいまだに履行期の到来してい
!
ない反対債権による相殺の主張が認められる。そして被告が即時の認諾を
なし,その際に当該訴訟が被告によって引き起こされたのではないと認め
られる場合には,ZPO
#
ない。この場合
"
条により原告が訴訟費用を負担しなければなら
条の要件である訴訟が被告によって引き起こされたと
$
の事実については,原告が立証責任を負う。また将来の給付の訴えの条文
%&
は労働裁判所の判決手続にも適用することができる。
加えて ZPO
条の訴えを例にとれば,訴状に表示された暦日が判決
の前に到来した場合には,裁判所は申立ての変更がなくとも現在の給付の
判決をすることができる。それに対して,すでに履行期が到来した請求権
であるとして提起された給付の訴えが訴訟の途中に初めて履行期が未到来
'
であることが判明した場合には,原則的に棄却判決がなされる。これを回
避するために原告は必ず訴えを変更しなければならないとの見解もある
(
が,この変更は ZPO
)
条 号の訴えの縮減 にあたるため,新たな申立
てなしに現在給付に条件が付される質的により少ない裁判,すなわち将来
*
給付判決が許されるとの見解が通説である。
ZPO
条以下には 種類の訴えが規定されているが,本稿での検討の
中心となるのは一回的給付である。よって以下では反復的給付を求める
条文である ZPO
条については詳述せず,確定期限付の権利や住居の
用途に用いられていない土地や空間の明渡等を求める場合に適用される
ZPO
条,および,将来給付の一般規定と解されている ZPO
条につ
いて ZPO を概観する。
⑴
ZPO
将来の給付を求める訴え
条によって将来の給付の訴えを提起する場合には,履行期が暦
日にかかって到来する請求権,つまり確定期限付請求権が対象となる。加
えて,暦日の到来以外に反対給付等の法律行為の付款が付されていないこ
と,および,金銭債権の主張もしくは居住目的ではない土地または空間の
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
!
明渡請求権であることとの要件を満たす必要がある。なお,本条にいう暦
日の到来は執行開始要件を定める ZPO
"
#
条に対応している。
本条による将来の給付の訴えが提起可能な場合には,原則として確認の
$
利益は認められず,確認の訴えを提起することはできないとされる。上述
のように,本条が適用されるのは行使の可否が反対給付の有無に左右され
ない請求権であり,とりわけ確定期限の付された金銭債権の支払い,また
は住居用途には用いられない空間の明渡しを請求する場合に限定されてい
る。そして ZPO
条の場合には,反復的給付請求権にのみ適用できる
ことに加えて,判決の基礎となった事情について生じた将来の変更に対応
するために ZPO
%
条の変更の訴えが規定されている。これらは特別な
事情がない限り期限が到来しさえすれば確実に行使できる請求権であり,
反復的給付の場合にはのちの事情変更に対応する手段が用意されている。
したがって権利法律関係を確定するにとどまる確認判決を与えるよりも,
執行力をも有する給付判決によるほうが効果的な紛争解決につながるとい
える。そして確実性があるため原告に給付判決を与えても,主文と異なる
状況が生じたことを理由として変更の訴えまたは請求異議の訴えを提起し
なければならないという被告の負担は ZPO
&
条より少ないと考えられ,
確認の利益が否定されるといえる。
⑵
適時の給付がなされないおそれを理由とする訴え
将来の給付の訴えの一般規定として理解されているのが
条である。
本条はいまだに履行期の到来していない給付請求権について適用可能であ
るという点ではほか二つの将来の給付の訴えと同一であるが,ZPO
および
条
条の適用が否定される反対給付に係る請求権や期限の付された
'
請求権,停止条件付請求権が対象となる点で異なっている。反対に本条が
(
適用されないものとして,通説は将来発生する請求権,BGB
権存続中の効果]
,BGB
条[負担実行の拒絶]および BGB
条[取戻
条[先
訴の抗弁]といった,被告単独では消滅させることのできない性質をもつ
( )
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)
不確定的延期的抗弁(unbestimmt vorübergehenden dilatorischen Einrede)の
!
主張されている請求権を挙げる。
さらに本条に基づく将来給付判決をなす前提として,判決に掲げられた
"
要件を除いて将来の給付義務が確実に存続することが要求される。これは
訴訟要件ではないが,この給付義務の存在が認められない場合には訴えは
却下される。またこのことを通説・判例は「給付がどのような状況下にお
いても確実に義務付けられるということではなく,予期しないことが生じ
ない限りは当該請求が義務付けられ続けるということで足りる」と説明す
#
る。
本条の訴えは,訴訟要件として適時の給付がなされないおそれ(Besorgnis
nicht rechtzeitiger Leistung)が存在する場合に適法となる。このおそれは
具体的には債務者の陳述や態度から適時に履行しないと判断される場合に
認められるものであり,その例としては債務者が請求権または給付債務の
$
存在を真剣に争う場合が挙げられ,債務者の履行しない理由や故意・過失
%
は問題とならない。また将来の債務者の支払不能や無能力,執行の困難性
が問題とならない点で仮差押えの必要性とは異なるとの説明がなされてい
&
る。この要件については原告が主張責任と証明責任を負い,さらに職権に
'
よる調査がなされる。事実審の口頭弁論終結時までにこの要件が定めるお
(
それが存在しない場合には,本案審理と本案判決をすることができず,訴
えは不適法と判断される。また主張されている請求権の不存在が明らかと
なった場合には,不履行のおそれの存否は調査されることなく請求は棄却
)
される。
さらに ZPO
条および
条とは異なり,本条の将来の給付の訴え
が提起可能であっても確認の利益は失われない。よって原告は本条の将来
の給付の訴えを提起するか,それとも確認の訴えを提起するのか選択でき
*
るとの見解が主張されている。その根拠として具体的内容が確定されてい
る請求権から,将来の敷金のようにいまだ内容や金額が不明確な請求権ま
で,さまざまな性質を持つ請求権が本条の対象になりうることが挙げられ
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
る。つまり,どういった内容の請求権がいつから行使できるのか,実際に
請求権が現実化する可能性は高いのか等の事情が全く不明確な場合にまで
債務名義となる給付判決を与えてしまうと,裁判が無駄となるおそれがあ
り,また被告にとっても請求異議の訴えを提起する必要が生じて過重な負
!
担となりうる。さらに,ZPO
条の趣旨は確認の訴えにより十分に紛争
を解決できるとの見込みを有している原告にまで将来の給付の訴えの提起
を強制するものではなく,そのような意思を持つ原告に給付の訴えが斥け
"
られる危険を負わせる必要はないことも指摘される。前述の場合には確認
の訴えにより請求権を確定させるほうがより適切に紛争を解決できること
から,原告は将来給付を求めるか請求権の存在を確認するかを選択できる
と理由づけられている。
.請求の訴状における特定性
将来の給付の訴えの機能は単に給付請求権の存在を確定するだけではな
く,債務名義となる給付判決を作り出すことにあり,最終的には執行手続
によって給付を実現することができる。だが ZPO は権利の確定を行う判
決手続と確定された権利の実現を図る執行手続とを明確に分離しているこ
とから,執行機関は権利判定機関が確定した債務名義の内容について立ち
入った調査をすることなく執行手続を開始しなければならない。そのため
判決手続においては,執行手続に必要な要素はどの程度特定されていれば
十分なのか,そしてそれをいつだれがどのように特定するのかが問題とな
る。特に本稿で問題となっている敷金返還請求権は金銭の支払いを求める
請求権であるため,訴状のなかで実際に被告が支払うべき金額を明らかに
する必要があり,さらに手続のどの段階までに当該金額を特定すべきなの
かも訴訟上問題となる。
この問題に関して参考となるのは,目的物引渡し時までの損害金の支払
いを求めた BGH, Urt. v.
.
.
=NJW
,
である。この事件に
おいては,解除条件の付された給付を求める場合には債権額が特定されて
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
いるといえるのか,そして請求がいまだ未定の内容を含むものであるとき
は誰が当該内容を特定する責任を負うのかが争点となった。
本件の原告はフォークリフト FD
と FD
の所有者であったが,そ
れらは所有権が留保された状態で訴外 D 有限会社に引き渡された。そし
て代金はいまだ完全には支払われておらず,買主たる D 有限会社は 台
のフォークリフトを修理するために被告の占有のもとにおいた。こうした
事情のもとで本件訴えにより原告はフォークリフトの返還とその遅延に基
づく 万 ,
マルクの損害賠償を請求した。
第一審はフォークリフト FD
ークリフト FD
に関しては損害賠償を認容したが,フォ
については訴えをすべて斥けた。控訴審は被告に判決
確定後の 週間以内という条件を付して,フォークリフト FD
を命じた。だが FD
の引渡し
についての損害賠償の支払いを求める訴えについ
ては,当該訴えにはフォークリフト引渡しまでという不確定な終期が付さ
れており,ZPO
!
条 項 号の特定された請求とはいえないとして不適
法却下した。さらに控訴審において追加された
年 月
日までの支
払いおよび将来の引渡し時までの支払い義務の確認を求める予備的請求を
も棄却した。原告の上告に対して,連邦通常最高裁判所(以下,BGH と
する)は原判決を破棄し,控訴審に差戻した。
BGH は「フォークリフトの引渡し時まで」という終期の付された請求
が訴状において十分に特定されていることを以下のように説明した。
「……
控訴審の法解釈のなかで引用された『労働力を回復するまで』という不明
確な定期金の支払いを求めたライヒ大審院の判例とは異なり,ここでは紛
争状態はたとえば強制執行にまで延期されるものではない。物が債権者へ
引き渡されたか否かは,むしろ通常は容易かつ確実に確定されるものであ
る。……解除条件には本件では強制執行の負担を軽減し,債務者を保護す
る特別の手段が欠けている。だが,それによって解除条件が申立てと判決
主文のなかで不適法となるわけではない。そのような状況下で,(解除条
件が成就した)にもかかわらず原告がさらに執行しようとした場合には,
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
むしろ債務者の負担で債務名義となった請求に請求異議の訴えによって
ZPO
条の適用を主張する。たとえ給付が実体法上本質的に変わらない
状況という留保つきで存在し,かつそれらを変更する場合には,通常は
ZPO
条の変更の訴えや ZPO
条の請求異議の訴えによって訂正の主
導権を執行債務者に握らせ続けることが判決主文に示されていなくとも,
(本件の給付は)継続する給付を債務名義にする通常の数多くの場合(養
育費,年金,賃料等)と変わりはない。……控訴審の見解とは異なり,損
害賠償の支払いを求める条件付きの申立ての許容性に疑いはないことが指
摘される」
。加えて BGH は,BGB
害の賠償を求める訴えは ZPO
引用して,「ZPO
条 項に基づく解除条件付きの損
条によって訴求できるとする多数説を
!
条の要件である不履行のおそれ は,債務者が請求を
真剣に争う場合には,すでに根拠付けられる」と判断した。
上述のように給付の訴えにおいては,請求の特定性は訴訟において訴訟
の対象を限定する機能を有しており,執行段階においては執行の要件を作
り出すことから重要な問題であるといえる。具体的には請求の趣旨に支払
われるべき金額,当該金額が履行期となる時点および支払いの開始時点が
"
含まれなければならない。
本件の事実審口頭弁論終結の時点では,フォークリフトの利用利益損害
賠償として被告が原告に支払うべき具体的金額がいまだ特定されておら
ず,給付の訴えの原則に従えば本案判決をすることは許されない。だが本
件の場合にはフォークリフトを利用できない状態が継続する期間と損害額
が密接に関係しており,単純な計算によって損害額を算定することが可能
であった。その際に具体的な賠償額を決定する要素となるのはフォークリ
フトの引渡しという事実だが,この引渡しの事実の証明を原告と被告のど
ちらの負担とするのかについて,控訴審と BGH の見解が分かれた。控訴
審は支払われるべき金額を特定するための基礎であることから,引渡しの
事実の証明についても原告が責任を負うものであり,それを欠く原告の請
求は不適法であると判断した。このような理解は,現在給付を求める場合
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
と同様である。だがそれに対して BGH は,フォークリフトの引渡しは容
易に確認できる事実であり,そのような解除条件が成就した暁には被告が
そのことを請求異議の訴えにより主張立証し執行を阻止すべきであるとし
て原告の請求を適法とした。請求のうち「未定の」要素は,それが請求を
基礎付ける事実である場合には原則として原告が立証責任を負い,場合に
よっては裁判所に請求の具体化を委ねること(たとえば ZPO
条による
!
損害賠償の算定を適用すること)ができる。さらに被告が立証責任を負う
"
事実に関しては,被告が明らかにする義務を負うと説明される。
.請求の特定可能性
本稿の検討の対象となっている敷金返還請求権は,ドイツ法上では賃貸
借契約が終了したのちに考慮期間と清算期間を経過して初めて履行期が到
#
来する停止条件付請求権であることから,反対給付にかかっていない請求
権が対象となる ZPO
条を適用することはできない。したがって履行
期未到来の敷金の返還を求める訴えは,将来給付の一般規定である ZPO
条の要件を満たす場合に提起できる。このことから,履行期未到来の
敷金の返還請求には ZPO
条に基づく訴えが適法となるために必要な
「請求の特定可能性」があるかが問題となる。
判例によって確立された要件である請求の特定可能性(Bestimmbarkeit
des geltend gemachten Anspruchs)は,ライヒ大審院による裁判である RG,
Urt. v.
$
=RGZ
. .
,
によって示された。さらにこの判例を引
用して,履行期未到来の敷金の返還を求める訴えを不適法と判断した裁判
例として BGH, Urt. v.
⑴
RG, Urt. v.
. .
. .
=BGHZ
=RGZ
がある。
,
,
%
(事実の概要)
年
月
日に原告と被告は特許を取得した特殊な髭剃り用ブラ
シの製造につき契約を締結した。この髭剃り用ブラシの主な原料は合成樹
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
脂であり,原告は製造に必要な鋼のプレス型およびカミソリ部分のスケッ
チを被告に渡し,さらに ,
ライヒスマルクを前払いしたが,被告は一
向に髭剃り用ブラシの製造を開始しなかった。そのうちに第二次世界大戦
が開戦し,
年 月 日の政府の戦時措置により,ドイツ国内では輸
出目的で製品を製造する場合を除いて,合成樹脂の消費とプレス機械の使
用が禁止された。原告は本件契約により製造されることとなる髭剃り用ブ
ラシは主に輸出目的であるため製造可能であると主張し,被告に対して主
位請求として髭剃り用ブラシの製造,予備的に将来の髭剃り用ブラシの納
入を求める訴えおよび損害賠償の支払いを求める訴えを提起した。第一
審,控訴審ともに,原告の両請求を棄却した。それに対してライヒ大審院
は予備的請求である将来の給付の訴えを却下した。
(判
旨)
「ZPO
条の条文は,請求権につき期限が到来して初めて,または,
条件が成就して初めて弁済期の到来する「将来の給付」の訴求を可能にす
る。しかしながら,この訴えの一般的要件は権利保護の必要性の存在であ
る。それについて ZPO
条では要件として別個に,債務者が適時の給
付から逃れるおそれにつき正当な根拠があることが強調される。……だが
確立された判例との統一を図るには,将来の給付についての義務は,判決
において取り上げられた条件を除いて,その存在が確実でなければならな
いということが要求される。……確かに判例においては ―― ZPO
条は除いて ―― ZPO
条,
条に基づく将来の給付の訴えは……請求が
反対給付に左右される場合においても適法とされる。しかしながらその場
合において,反対給付は異論をさしはさむ余地なく特定できなければなら
ず,そのうえ予期しないことがなんら生じない限り,要求された給付が直
接に義務付けられることがあらかじめ確定されねばならない。だが(本件
では)このような事実は存在しない」
。
( )
香川法学
⑵
BGH, Urt. v.
. .
巻 ・ 号(
=BGHZ
)
,
(事実の概要)
被告とその兄弟は土地建物(以下本件建物とする)の前所有者であった
亡き母の共同相続人であり,その分割はいまだなされていなかった。
年
月
日の契約によって,原告側の訴訟保佐人(Streithelfer)である
父を代理人として,被告らは原告らとの間で最短でも 年の期間で本件建
物を賃貸した(以下本件契約とする)
。原告らは本件建物で香水店を営ん
でおり,
年の期間が満了した後,本件契約はその 項に従って期間の定
めなく継続し,
年の解約期間をもって月末に解約されるものとなった。
本件契約の 項では,「賃借人は賃貸人に賃貸借の終結まで担保として無
利子の敷金,すなわち 万ドイツマルク相当の ヵ月分の家賃を供託する
こと。なお賃借人が契約期間の終了前には退出せず,そしてなんら損害を
後に残していかない場合には,当該敷金は賃貸借関係が終了した後に再び
交付する」との取り決めがなされていた。原告らは小切手により敷金を交
付し,当該小切手は共同相続人らのために現金化された。
年に共同
相続人らは本件建物をある民法上の組合(以下譲受人とする)に譲渡し,
差引勘定の合意により譲受人に敷金を売買代金によって提供した。
年 月 日の通知により原告側の訴訟保佐人は被告らに
年 月 日
以降の本件建物の管理は C 株式会社に引き継がれたことを伝えた。C 株
式会社は原告らに
年 月
日の通知により(本件建物の)所有権が
譲受人に移転したことを通知した。その後譲受人の財産に関して破産手続
が開始されたため,原告らは本件契約の終了まで(原告らの)譲受人に対
する敷金返還請求権を行使できないことをおそれて,被告に将来の給付を
求めて訴えを提起した。当該請求は第一審および控訴審において認められ
なかった。(上告審において,原告らは本訴請求に加えて予備的に被告に
敷金返還義務が存在することの確認を求めており,この予備的請求は認容
されている。
)BGH は主位請求を却下した。
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
(判
旨)
「将来の給付にむけられた主位請求は不適法であり認められない。敷金
はすでに賃貸借関係の終了の際にではなく,賃貸借関係終了の後に引き続
き設けられた考慮期間と清算期間の到来後に履行期となるということを
除いても(Emmerich-Sonnenschein, Miete,
. Aufl., §
!
b BGB Rdnr.
を
,目下のところ現在の賃借人に,合意に基づき敷金によって担
参照せよ)
保される,いかなる内容の反対請求権が即時に賃貸借関係の終了時に存在
する可能性があるのかは予見されえない。
被告らはとりわけ,場合によってはあとになって ZPO
"
条の異議を主
張することは要求されない。なぜならば敷金返還の場合には,時間の経過
にのみかかっている給付は問題とならないからである。担保の合意から生
じる返還請求権は,賃貸人に敷金の被担保請求権がもはや存在しないとい
うことが確定されてはじめて,つまり担保の必要性が消滅してはじめて履
行期となる(Emmelich-Sonnenschein, §
b BGB Rdnr.
を参照せよ)
。
それゆえ賃貸人の反対請求権が敷金の返還を求める請求に反論することの
できる異議なのではなく,むしろ賃貸人の請求権が存在しないことが,担
保の合意に従い賃借人の(敷金)返還請求権の前提条件となる。
だが現在のところ,場合によっては生じる反対請求権を清算したのち
に,いったいあとまだ原告に返還されるべき敷金が残存することになるか
否かは予見されない。それゆえ ZPO
条に基づく訴えに必要な主張さ
れている請求の特定可能性が欠けている(RGZ
巻
頁[
頁以
下]
)
」
。
⑴判例の以前にも学説上は,ZPO
条による将来の給付の訴えを提起
する際には,期限または判決において取り上げられている条件を除いて,
#
請求権が存在していなければならないとの説明がなされてはいた。だが⑴
判決はさらに,訴求されている請求権について履行期を到来させる反対給
付が特定できず,当該請求権による給付が直接に義務付けられない場合に
( )
香川法学
は,ZPO
ZPO
巻 ・ 号(
)
!
条による将来給付判決はできないと判断した。この判例は
条の訴えを提起する際には条件の内容および請求権の内容が確定
していることを要するとして,ZPO のコンメンタールにしばしば引用さ
"
れている。
こうした先例を引用して,⑵判決は賃貸借契約がいまだ継続している状
態で提起された将来の敷金返還を求める訴えを不適法と判断した。つま
り,「将来賃貸借契約が終了した時点で,賃貸人の賃借人に対する反対請
求権を控除してなお敷金が残存する場合には,残存した敷金を返還せよ」
との請求のなかでは,現時点では賃貸人が反対請求権を有するのか否か,
およびその具体的金額が不明である。その結果として賃借人の敷金返還請
求権が具体化するのか否か,およびその金額もまた不明確であるため,将
来給付を求めることはできないと結論された。
上述のように ZPO
条による将来の給付を求める訴えの適法性は,
適時の給付がなされないおそれの存否だけではなく,請求の特定可能性の
存否によっても判断される。この請求の特定可能性の内容として,具体的
には請求権に付されている条件または反対給付の内容が明らかであるこ
と,当該条件がどのような場合に成就するのかが明確になっていること,
および,条件が成就した場合または反対給付がなされた場合に具体化する
請求権の内容が特定されていることが要求される。
請求の特定可能性は,確認の訴えと将来の給付の訴えとを区別する機能
があるといえる。ZPO は将来履行期が到来する請求権や将来にわたって
継続する給付に,将来給付と確認という二つの訴えによって対応してい
る。つまり,請求権の内容と具体的に給付される金額が確定しており確実
である場合には,将来の給付の訴えが適法と判断される。よって原告であ
る債権者はあらかじめ債務名義を履行期以前に取得することが可能とな
る。それに対して父親を交通事故によって失った未成年の子どもが,
歳の成年に達した以降に得ることとなる扶養に相当する損害賠償をあらか
#
じめ請求する場合のように,請求権につき履行期が到来するのか否かとい
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
うこと,および,当該請求権の内容,具体的には扶養料としていくら必要
となるのかということがいまだ確定されていない場合には,請求権が存在
することの確認のみが許容される。
以上の判例および学説から以下のことが判明する。すなわち履行期未到
来の敷金返還請求権は,その内容および履行期が到来して現実に行使でき
るようになるための条件や反対給付の内容が十分に特定されていない。加
えて具体的に給付されることとなる金額も訴状のなかで特定されておら
ず,金額の特定を被告に負担させるべき場合にもあたらない。したがって
ZPO においては,履行期未到来の敷金の返還を求める訴えは不適法と判
断される。
Ⅲ 日本法上の将来の給付の訴え
.規定の沿革
年に制定された CPO を日本語に翻訳したものに依拠していた
年(明治
年)の民事訴訟法は,CPO と同様に,将来の給付の訴えを認
める明文の規定を有していなかった。さらに条文のみならず,
「民事訴訟
は請求権を裁判上行使するということに過ぎず当該請求権を行使する主体
!
や時期等は実体法の規定に従うもの」であるとの見解もまた CPO から引
き継いでいたため,明治
年民事訴訟法は訴訟を提起できる場合に関す
る法律上の規定を欠いていた。そのため実務上の必要が生じていたことも
あり,期限付請求権は旧
"
条,条件付請求権については旧
定時の給付を目的とする債務については旧
$
#
条そして
条第 号といった執行開始
要件や執行文付与要件を定める条文を根拠として,請求権のうちいまだ弁
済期の到来していない部分についても請求できるとの取扱いがなされてい
%
た。だが,そもそも履行期未到来の請求権は給付の訴えの対象となりうる
&
のかとの問題につき見解の相違があり,そうした懐疑の生じていた状況を
改善するため,
年(大正
年)の法改正の際に将来給付を許容する
( )
香川法学
旧
巻 ・ 号(
)
条が規定された。当時は「将来給付請求権が履行せらるるを要する
時期に至るも債務者が之を履行せざるべき虞ある場合に於ても尚ほ債権者
が其履行の時期の至るを待ち其後始めて之を訴求せしむるは酷」である場
!
合に将来の給付を請求できると解されており,本条を適用できる請求権と
して,期限付請求権や条件付請求権とならんで不作為を求める請求権を訴
求する場合もまた挙げられていた。とりわけ不作為を求める請求権は,将
来の時点において何かをなさないことを請求するものであるから,将来給
付を認めなければ訴求できないと理解され,これは将来の給付の訴えを肯
"
定する根拠としても引き合いに出されていた。
このような経緯で日本法に導入された将来の給付の訴えは,現行民事訴
訟法においてもほぼ同一の文言のまま通用し続けている。また現行法の
条は,「あらかじめ請求する必要がある場合」という要件が ZPO の
#
つの将来給付の訴えの形態を包含していると理解されている。すなわち
ZPO が予定している確定期限のみが付された請求権や扶養料請求権のよ
うな反復的請求権も民事訴訟法
条の対象に含まれ,加えて金銭の支払
$
い,物の引渡しや明渡し,不作為をも訴求できる。
訴えの利益は「あらかじめ請求する必要がある場合」に認められ,これ
は主張された請求義務の性質および内容,債務者たる被告の態度等を考慮
して具体的に判断される。訴えの利益が認められる典型例としては,定期
行為(民法
条)や扶養料に代表される履行が遅延した場合の損害が重
大なものの場合や,債務の存在を争うなどして,履行期の到来時または条
件の成就時に債務者の任意の履行が期待できない事情が存在する場合があ
%
る。
この訴えの利益とならび,訴えにおいて主張されている請求権の性質お
よびその内容もまた,将来給付の適法性を判断する際に問題となる。具体
的には,請求権に期限や条件が付されているか,反対給付にかかっている
かおよび請求権の基礎たる関係が成立しているか否かが考慮されており,
特に基礎たる関係が成立していれば将来発生する請求権も訴求可能であ
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
!
る,と説明される。
従来はこうした要素から判断されていた将来の給付の訴えの適法性に,
請求権としての適格という新たな観点を示したのが,大阪国際空港事件上
告審でなされた大法廷判決である。
.請求権としての適格
⑴
判例の示した要件
大阪国際空港の周辺住民が国に対して航空機の飛行差止めや損害賠償等
を求めた大阪国際空港事件上告審判決(最大判昭和
巻
号
"
年
月
日民集
年とする)において最高裁大法
頁,以下,最大判昭和
廷は,将来の給付の訴えは期限付請求権や条件付請求権のように,「既に
権利発生の基礎をなす事実上および法律上の関係が存在し,ただ,これに
基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者
において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発
生にかかっているにすぎず,将来具体的な給付義務が成立した時に改めて
訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要とし
ないと考えられる」請求権について提起できるとの原則を確認した。その
上で,継続的不法行為に基づく損害賠償請求権については,賃貸借契約終
了後の賃料相当損害金のように,請求権の基礎となる事実関係および法律
関係がすでに存在しており,その継続が予測され,請求権の成否およびそ
の内容につき債務者たる占有者に有利な影響を生ずるような将来における
事情の変動があらかじめ明確に予測できるような事由に限られ,これにつ
いては請求異議の訴え(民事執行法
条)によりその発生を証明しての
み執行を阻止できるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない
場合には,将来の給付の訴えを提起できると説示した。それに対して,同
一態様の行為が将来も継続されることが予測されても,損害賠償請求権の
成否およびその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,事
情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
とらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられる場合に
は,「本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権とし
ての適格を有するものとすることはできない」とした。そして以上の要件
を当てはめ,原告らの航空機等の騒音に基づく損害賠償請求のうち事実審
口頭弁論終結後に生ずべき損害の賠償を求める部分は,権利保護の要件を
欠くものであり,その部分についての訴えは却下されるべきと判断した。
この「請求権としての適格」の理解には,学説の対立がみられる。訴え
の利益と請求適格を要求する見解は,あらかじめ請求する必要性の存否と
は別個に,請求適格と呼称される原告により主張されている請求権の性質
!
およびその内容が将来給付の訴えに適するかを判断するという。それに対
して訴えの利益のみを要求する見解は,あらかじめ請求する必要性の存否
を判断するなかで,原告により主張されている請求権の性質およびその内
"
容を考慮すると説明する。
上記見解の相違は,最高裁により示された請求適格という要素を将来の
給付の訴えの利益との関係でどこに位置づけるべきかという点にある。具
体的には請求適格という実体法的要素と訴えの利益という訴訟法的要素の
双方がそろって初めて適法性が認められると解するのか,それとも一定の
場合には実体法的要素が備わっていなくとも訴えの利益さえあれば本案判
決を許容できると考えるのかとの結論の違いが生じる。請求適格を将来の
給付の訴えの利益との関係でどのように捉えるかとの問題は,将来の給付
の訴えの目的のみならず,訴えの類型や訴えの利益の本質論,さらには民
事訴訟の目的論までさかのぼって体系的に検討されるべき問題であり,こ
の点についての検討は本稿の目的からは逸れるため別の機会に譲らなけれ
ばならない。だが前述のとおり,将来の給付の訴えの適法性を判断する際
には,請求権の性質ないしは性格を考慮すべきという点では両者は一致し
ている。よって説明の仕方の違いと評価することも可能であろう。
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
⑵
敷金返還請求権を最大判昭和
年の基準によって判断すること
の適否
上述のように学説上は複数の理解があるものの,最大判昭和
年にお
いて示された請求適格は,実際の事件においては継続的不法行為に基づく
!
"
将来の損害賠償請求のみならず,将来の不当利得返還請求や下級審ではあ
#
るが将来の建物明渡請求の事案においても訴えの適法性を判断する基準と
して用いられている。だが当該 要件の適用範囲をいたずらに拡張するべ
$
きではないという見解も主張されており,その根拠として判決理由中にも
示されているように,これらは「継続的不法行為に基づき将来発生すべき
損害賠償請求権」について適用される要件であるとの点が指摘される。
確かに敷金返還請求権は将来の時点において,付されている条件が成就
して履行期が到来するか否かが不明確であり,具体的金額を口頭弁論終結
時に確定することが困難である点において,継続的不法行為に基づく損害
賠償請求権と類似している。しかし敷金返還請求権は一回的給付を求める
請求権であり,賃貸借契約に付随してなされる敷金契約によりその内容が
定まることから,停止条件が成就する以前にも基礎を有していると考えら
れる。また同様の一回的給付を求める請求権であっても,正当事由が存在
し続けるか否かが問題となる土地の明渡請求権とは異なり,請求権を根拠
づける事実が一定の時期まで継続することを厳格に判断する必要はないと
いえる。加えて敷金返還請求権は停止条件付請求権であることから,ドイ
ツでの議論を参考にすれば条件が成就するか否かもまた問題になると考え
られるが,最大判昭和
年の示した要件の中にはこの点を判断する要素
が見受けられない。よって最大判昭和
年の要件ではこの点を適切に判
断することができないといえる。よって継続的不法行為に基づく損害賠償
請求権の適法性を判断する請求適格は,将来の敷金返還請求権の適法性を
判断する際には妥当せず,敷金返還請求権が将来の給付の訴えにおける請
求権としての適格を有しているか否かを判断する際には,最大判昭和
年が示したものとは異なる要件によるべきである。
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
以上の検討から,継続的不法行為に基づく将来の損害賠償請求権とは別
個の請求適格を考える必要が生じるが,その際には敷金返還請求権と同様
に停止条件の付された金員の給付請求権が問題となった最判昭和
月
日判例時報
号
!
頁(以下最判昭和
年
年とする)の判例が参考
になると考えられる。
最判昭和
年
月
日判例時報
号
頁
(事実の概要)
X らの先代である A は昭和
年ころに B 会社を設立し経営にあたっ
た。同会社の株式は便宜上他人名義であり,代表取締役も形式的に Y と
していた。昭和
年ころに Y は A の求めに応じ自らが保有する B 会社
の株式で当時 D 会社に担保として差し入れられていた本件株式
,
株
を書面により無償で A に贈与し,代表取締役を辞任した。その後 A は B
会社の代表取締役に就任したが,昭和
表取締役に就任した(なお昭和
年 月に解任され,再び Y が代
年 月に B 会社の定款が変更され株式
を譲渡について取締役会の承認手続を要する旨が規定されている)
。昭和
年に A は本件贈与に基づき Y に対して本件株式に関する訴えを提起し
たが,昭和
年 月に A が死亡し A の妻 X らが相続した。X らは
.
Y は A のために B 会社の取締役会に対し B 会社株式の X らへの譲渡の承
認手続をせよ,
.右株式譲渡の承認があったときは,Y は X らに対し
指図による占有の移転をせよ,
.右株式譲渡手続および株券の占有移転
の強制的実現(執行)が不能となったときは,右不能となった株式につい
て,一株当たり ,
円の割合による金員を支払え等の請求を定立した。
これに対し第一審は請求のうち および については認容し,
ては一株当たり金
につい
円の限度で認容した。また の代償請求については
カッコ書きで「B 会社に対し右譲渡承認の手続をしたが,その承認が得ら
れなかった場合はこれ(執行不能)に含まれず,履行遅滞等を理由に損害
賠償を求め得るか否かは本訴とは別個の問題である」旨を注記している。
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
Y による控訴は棄却されたため,Y が上告した。
(判
旨)
原判決中,X らの金員支払請求に関する部分を破棄,一審判決を取消し
て訴えを却下。その余りの訴えを棄却。一審判決主文第二項を「右株式譲
渡の承認があったときは,Y は X らに対し,それぞれ右各株式数に相当
する株券につき,Y が D 会社に対して有する返還請求権を譲渡し,かつ,
同社に対して,以後右株券を X らのために占有せよと通知せよ。
」と変更
した。
「……原審の右判断のうち,……代償請求を認容すべきとした部分は是
認することができない。けだし,執行不能を条件とする代償請求は,本来
の給付請求権の執行不能を条件とする将来の給付請求であるので,あらか
じめ請求する必要がある場合に限り提起できると解すべきところ,前記株
式譲渡承認申請手続請求は,意思表示をすべきことを求めるものであるか
ら,これを命ずる主文の強制執行は,民事執行法第
条 項本文により
判決の確定をもって完了し,前記指図による占有移転請求も,意思表示を
すべきことを求めるものであるが,その意思表示が訴外会社の取締役会の
承認という被上告人らの証明すべき事実の到来にかかる場合であるから,
これを命ずる判決主文の強制執行は同項ただし書により被上告人らが右承
認の事実を証明する文書を提出して執行文の付与を受けたときに完了する
ものである。しかも右訴外会社取締役会の承認を得られない場合は代償請
求の条件たる執行不能に該当しないから,原審が認容すべきものとした代
償請求は,いずれも条件たる本来の給付請求の主文の強制執行自体が不能
となることはあり得ず条件成就の可能性が存在しないことになるので,あ
らかじめ請求する必要が認められず,将来給付の訴えとしての訴訟要件を
欠く不適法なものであるといわざるをえない」
。
最判昭和
年以前の学説においては,請求に付されている条件の成就
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
する可能性が将来の給付の訴えの適法性を左右するのかとの問題はあまり
検討されていなかった。そのため,類似する知事の許可を条件とする農地
の移転登記請求訴訟を参考にして議論が展開されてきた。
知事の許可を条件とする移転登記を求める訴えの適法性については,最
高裁判決が存在する。最判昭和
年 月 日民集
巻 号
頁は,
土地の売主である被告がなした上告を棄却する判決のなかで,知事の許可
を条件とする移転登記請求は将来給付であるとして,判示事情の下におい
!
ては,原告にはあらかじめ請求する必要があるものと判示した。この判旨
については,「この条件の成就が確実であるか否かの問題と,右許可を条
件とする所有権移転登記請求手続の請求についての将来履行の給付義務の
存否,若くは,之について予め請求をなす必要の有無の問題とは,必ずし
も密接不可分の関係にあるものと見なければならぬ法文上の根拠はなく」
,
確かに知事の許可を得られる可能性が全くない場合にまで,請求を認容す
るのは不当と考えられる,だが「右の許可を得られる可能性が存する限り
は,これを条件とする将来履行の請求については,必ずしも右の可能性の
大小を考える必要はない」という見解が示されており,その根拠を「仮に
原告がこの訴訟で勝訴の判決を得ても,将来知事の許可が得られなけれ
ば,右の判決を得たことが実益がなかったことに帰着するだけのことで
あって,相手方たる売主としては,右の確定判決の存在自体により何らの
"
痛痒を感ずる事柄でもないからである」と説明する。こうした見解を受け
て学説においては,条件付請求権を将来の給付の訴えにより訴求する場合
には,条件成就の可能性が低いものの全くないわけではない状況において
#
も,比較的広く適法性が認められてよいと考えられている。本件最判昭和
年の結論もこうした従来の見解に整合すると評価できるだろう。
Ⅳ 履行期未到来の敷金の返還を求める訴えの適法性
以上の議論を踏まえてこの章では以下の事例を設定し,本案判決が許さ
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
れるか否かを具体的に検討する。なお当該事例の設定に当たっては,最判
平成
(事
年 月
日民集
巻 号 頁の事実の概要を参考とした。
例)
X は昭和
年 月 日に訴外 A から本件建物を月額
万円で借り受
けた(本件契約)
。本件契約の締結に当たり,X は A に対し本件契約より
万円を交付した。その際 X
生じる債務を担保するために敷金として金
!
と A はいわゆる敷引特約を締結し,本件契約終了時に最高でもその二割
を償却した残金
万円を返還することを合意した。Y は昭和
年 月
日に A から本件建物の所有権を取得し,本件契約の賃貸人の地位を承
継した。平成 年 月
日に Y は X に対して賃料増額の調停を申し立
て,当該手続の中で本件敷金差入れの事実を否定し,また,差入れの事実
が認められたとしても返還義務は負わないと主張したため,X は本件契約
の終了に先立ち,Y に対して敷金の返還を求めて訴えを提起した。
.適法性を判断する要素
上述のように,最大判昭和
年とは異なる性質を有する将来の敷金返
還を求める訴えの適法性を判断する際には,最高裁の示した つの要件か
らなる請求適格の判断基準をそのまま当てはめるのは適切ではない。よっ
て本稿では,将来の敷金返還請求権の請求適格を,⑴請求の特定性,⑵条
件成就の可能性,そして⑶主文の通りに請求権が具体化する蓋然性という
"
点の判断要素から検討する。
これらの要素は,以下のことを踏まえて設定したものである。まず請求
の特定性は,確認の訴えと給付の訴えの差異から導き出される要素であ
る。確認の訴えは争いのある法律関係を既判力によって確定させる訴えで
あり,その場合にはたとえ給付請求権が確認の対象となっていたとして
も,金額や支給方法等が具体化しておらず不明確であることは,確認の利
#
益を認める際には妨げにならないと解される。それに対して特に金銭の支
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
払いを求める給付の訴えの場合には,ドイツの事例ではあるが BGH, Urt.
v.
.
.
,
=NJW
でも争点となったように,被告が支払うべ
き具体的金額が訴状において特定されなければならない。このことは,判
決手続の段階では被告が争うべき対象を明確にする機能を有しており,ま
た執行の段階では被告の義務の範囲を明らかにする。本稿の履行期未到来
の敷金返還を求める訴えは金銭の支払いを求める訴えであり,請求の範囲
を明らかにするために,請求の趣旨に具体的な金額を表示する必要がある
と考える。
次に条件成就の可能性および主文の通りに請求権が具体化する蓋然性
は,最大判昭和
年において示された請求適格を参考にして,敷金返還
請求権と最大判昭和
年において問題となった継続的不法行為に基づく
将来の損害賠償請求権との性質の差異から要求される要素である。停止条
件付請求権についてみれば,条件が成就して請求権につき履行期が到来す
る可能性が全くない場合にまで本案判決をなすことは,被告にとっても負
担が大きく不当といえる。また主文の通りに請求権が具体化する蓋然性
は,表現こそ異なるものの,最大判昭和
!
年の請求適格においても要求
されていると解される。この蓋然性が低い場合には,たとえ勝訴判決を得
たとしても原告が再び訴訟を提起する可能性があり,加えてこの二つの要
素が満たされない場合には,将来給付を命じる判決が無駄となる可能性が
高いため,そうした訴えにつき本案判決をする裁判所の負担も大きいとい
える。
この要素のうち一つでも欠ける場合には,将来給付を求める訴えは不適
法却下される。なおこれらの要素は敷金返還請求権の適法性判断を念頭に
おいて定立したものではある。だが上述のように,各要素は給付の訴えの
性質や条件に関する民法の解釈に依拠しており,他の給付を求める停止条
件付請求権,とりわけ一回的な金銭の支払いを求めるものについても適用
できると考える。以下各要素の内容を順に説明する。
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
⑴
請求の特定性
上述の通り,将来の給付の訴えは給付の訴えの一種であるため,訴状の
必要的記載事項として給付を求める具体的行為の内容や具体的金額が訴状
!
において特定されていることを要する。このことは先に引用した BGH,
Urt. v.
.
.
=NJW
,
および日本の判例・学説から共通して
導き出されるものである。すなわち給付の訴えを提起する場合には,被告
にどのような給付を求めるのか,そしてそれが金銭の支払いである場合に
は金額が一義的に特定される必要があり,それが不明確な場合には本案判
"
決は許されないといえる。なおドイツにおいては,ZPO
条の将来の給
付の訴えを提起する場合には請求の特定可能性のあることが要求される。
だがドイツの判例を具体的に検討すると,この要素は請求の特定性とは別
個の要素であるといえ,むしろ後述する条件成就の可能性ないしは主文の
通りに請求権が具体化する蓋然性の二つを総称したものであると考えられ
る。
⑵
条件成就の可能性
これは最判昭和
和
年
月
日判例時報
号
頁(以下,最判昭
年とする)を参考にして定めた要素である。つまり,停止条件の付
された給付請求権を将来の給付の訴えによって主張する場合には,一定の
条件成就の可能性が要求される。ドイツの RG, Urt. v.
,
. .
=RGZ
において示された請求の特定可能性という要件は,この要素と以
下に挙げる主文の通りに請求権が具体化する蓋然性をまとめた要件と解す
るのが妥当である。しかしドイツの見解とは異なり,この可能性と主文の
通りに請求権が具体化する蓋然性とは区別して検討する必要がある。その
根拠としては,実際の訴えにおいては,多くの場合どういった主文となる
かが予見できないとの事情が挙げられる。すなわち引換給付を命じる判決
のように,主文において条件が明確に表示されている場合だけではなく,
条件が明確にされていない場合があることを想定すると,条件が成就する
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
可能性があることを要素として挙げて,意識的に検討する必要があるとい
える。また最判昭和
年は条件成就の可能性がない場合にはあらかじめ
請求する必要がないと判断しているが,同様の理由から訴えの利益とも区
別して判断するのが適切と考える。
この要素において具体的には,請求権に付されている条件について成就
する可能性があることを要求する。これにより先に挙げた最判昭和
年
の場合のように,条件成就の可能性が全くない場合がこの要素により排除
されるのは明らかである。しかし問題となるのは,どの程度条件が成就す
る可能性があればこの要素により排除されないのかということである。こ
の点については,条件が成就しない場合には原告は強制執行を申し立てる
ことができないにとどまり,被告に請求異議の訴えの提起という負担が課
せられるわけではない,よってこの点については条件が成就する可能性が
低くともゼロではない限り,広く適法性を認めるのがよいとの見解が主張
!
されている。この見解は全く正当であるが,先に指摘したように,必ずし
も被告の負担は請求異議の訴えを提起することだけに限定されるわけでは
ない。たとえば条件が成就する可能性および権利を現実に行使できる可能
性が非常に低い場合のように,無駄となる公算の高い訴訟に付き合わされ
ることもまた,被告および裁判所にとっては負担になるといえる。よって
条件が成就する可能性としては十中八九という高いものまでは要しないも
のの,数値にして
⑶
パーセント以上を要求するのが適切と考える。
主文の通りに請求権が具体化する蓋然性
この要件は大阪国際と最判昭和
たドイツの RG, Urt. v.
. .
年から導き出されるものであり,ま
=RGZ
,
も同様の要素を要求して
いる。この蓋然性は条件成就の可能性よりも高度のものが要求されると考
えられる。なぜならここで作成された主文に基づいて既判力の客観的範囲
が定まり,それがのちに強制執行の範囲をも確定するからである。また条
件が成就しない場合には請求権を執行手続により実現できないにとどま
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
り,請求権を貫徹できないとの負担を原告である執行債権者のみが負うこ
ととなる。それに対して主文の通りに請求権が具体化しない場合には,原
告のみならず被告が負担を負って請求異議の訴えを提起して当該確定判決
を変更しなければならない可能性がある。敷金返還請求訴訟を例に挙げれ
ば,条件が成就せず履行期が到来しない場合には,原告が強制執行を申し
立てることができないだけである。だが敷金返還請求権の履行期は到来し
たものの,口頭弁論終結時までの審理をもとに主文に表示された金額より
も明渡後に実際に残存した敷金の金額が少なかった場合には,被告側から
請求異議の訴えを提起して強制執行の不許を求める必要がある。これは最
大判昭和
年において問題とされた状況と同一のものであり,被告の保
護という立場からも高度の蓋然性をもって主文の通りに請求権が具体化す
ることが確定される必要がある。
そして言うまでもないことだが,将来給付の訴えが適法であると判断さ
れるためには,訴えの利益であるあらかじめ請求する必要が要求される。
しかしながら請求適格という要素に初めて言及した最大判昭和
年や当
該判例を引用する裁判例においては,請求適格がないことが認められた時
点で,訴えの利益の存否について判断することなく当該訴えを不適法と判
断している。それもあって前述のように請求適格として訴えの利益とは別
個の要件を設定して検討することへの賛否,および,それに伴い請求適格
を訴えの利益との関係でどこに位置づけるのかとの問題に関しては,学説
上いまだに見解の一致を見ない状況である。本稿では,請求適格は訴えの
利益とは別個の要素として検討するのが適切であるとの立場から検討を加
!
える。確かに,請求適格という要素は民事訴訟法
条から直接に導きだ
されるものではなく,またあらかじめ請求する必要性との関係を理論的に
論じるにはなお議論を深める必要がある。しかし最大判昭和
年により
請求適格という要素が示されたことにより,従来は明確とはいえない基準
により適法性が判断されていた将来給付の問題が明らかになり,盛んに議
論されるようになったといえる。将来の給付の訴えの適法性判断に関する
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
議論がいまだ足りない現状においては,個別具体的な事情の考慮と並ん
で,意識的に客観的かつ明確な基準を設定する必要があると考える。した
がって本稿においては,上記 要件にあらかじめ請求する必要を加えた
つの観点から将来の敷金返還請求の適法性を検討する。
.事例への当てはめ
⑴
請求の特定性
本件の事例においては,請求の特定性は認められるといえる。敷金返還
請求権は金銭債権であることから,具体的な金額を訴状に表示することが
要求されるが,本件の事実から原告には最高
!
万円の敷金返還請求権が
存する可能性のあることは明白である。確かにこの
万円という金額に
は,「最高でも」という一種の条件が付されている。だが給付訴訟を提起
する際には請求権の最高額や,請求が認容される可能性が少ないと思われ
る場合であっても,最大額を主張することは一般的に行われており,特定
性の判断を左右するようなものではないと考える。よって原告は訴状に少
なくとも返還を請求する敷金の最高額を表示することができ,これにより
請求は十分に特定される。
⑵
条件成就の可能性
上述のように,無駄な訴訟に付き合わされるという被告の負担を軽減す
るために,条件成就の可能性もまた要求されると考えられる。事例におけ
る条件とは,「本件賃貸借契約締結に際して差し入れた金
万円から本
件契約上の債務額を控除してもなお敷金が残存すること」であり,またこ
の条件は本件契約上の債務額が
万円を下回る場合に成就する。なお一
般に敷金から当然に控除される本件契約上の債務には,賃貸借目的物の毀
"
損による損害賠償も含まれるが,中でも大きな比重を占めるのは不払いの
賃料や契約終了後の賃料相当損害金であるとされる。
それでは将来建物の明渡しがなされた際には,賃料の不払いや賃料相当
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
損害金を中心とする本件契約上の債務が存在しないこと,または,当該債
務額が
万円を下回るということを口頭弁論終結時に一定の確実性を
もって判断できるのか。これは不可能であると言わざるを得ない。訴訟を
提起するまでは賃料が毎月支払われていたとしても,それだけを根拠に今
後も原告が賃料を支払い続けるか否かを確実に判断できるわけではない。
本件契約が終了するまで確実に賃料が支払われる可能性もあるが,例えば
解雇に基づく収入の減少や企業であれば経営の悪化等により支払いが滞る
ことも考えられる。そして賃貸借目的物の毀損による損害賠償の金額も,
契約が終了するまではその具体的金額を確定できない性質のものといえ
る。よって敷金の残存については一定程度確実性のある判断ができないた
め,本稿の基準に照らして条件成就の可能性があるとはいえない。反対に
条件が成就する可能性があると認められる場合としては,
「原告側に残存
する債務を履行すること」のように,原告の行為が条件となっている場合
を挙げることができる。この場合には原告の意思を合理的に解釈すれば,
原告が残債務を履行して自身の給付請求権を実際に行使できるようにする
可能性は高いといえる。確かに敷金の残存も,債務不履行がないこととい
う原告の行為にかかっていると評価することも可能ではある。しかし先に
も触れたように,敷金返還請求権は賃貸借目的物の損傷の補修費用のよう
に原告の行為だけではなくほかの要素により左右される側面もあるため,
原告の行為にかかっているという点のみから条件成就の可能性を認めるこ
とは困難と考える。
⑶
主文の通りに請求権が具体化する蓋然性
この要件において検討されるのは,条件が成就して履行期が到来した場
合に主文に示された通りの状況となるか否かである。訴状には最高額であ
る
万円という表示がなされるとして,このような請求の特定は適法で
あると結論づけた。もしこれが現在の給付を求める訴えであれば,審理の
中で本件契約上の債務額についてもその存在および具体的金額が確定さ
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
れ,主文には残存する敷金の金額が表示され既判力をもって確定される
が,将来給付を求める場合にはどうなるのか。ひとつには,このような場
合にはそもそも主文において金額を表示して特定することができないとの
結論が考えられる。最高裁は金銭の支払いを求める場合には金額が一義的
に確定していることを要求しており,たとえば敷金が残存することは確実
だがその具体的金額を口頭弁論終結時に一定の確実性をもって確定するこ
とができない場合には,主文の通りに具体化する蓋然性がないと判断する
ことになろう。
また口頭弁論終結時までに提出された資料に基づいて,具体的金額を確
定し,主文に表示することができたとしても,それはあくまでも口頭弁論
終結時点での金額であり,その後の事情を考慮したものではない。そのた
め条件成就の可能性の判断とも関係するが,たとえ条件の成就は確実だと
してもその内容が主文の通りであるか否かということは不明であり,まし
てやそうした主文の通りの状況にいたるという高度の蓋然性は認められな
い。確かに,賃借人に返還される敷金の具体的金額は金銭給付を求めるも
のではある。だが請求権の具体化と損害額が密接に関係しており,単純な
計算によって損害額を算定することのできる賃貸借契約終了後の明渡まで
の賃料相当損害金請求権とは異なり,敷金は請求権に付されている条件が
成就すれば直ちに具体的金額が算出されるという性質のものではなく,主
文の通りに具体化する蓋然性があるとはいえない。それに対して主文の通
りに具体化する蓋然性が高いものとしては,特定物の引渡しを求める場合
が考えられる。
⑷
あらかじめ請求する必要
以上のように,本稿においては原告により主張されている請求権の性質
やその内容に関係する事項を請求適格と呼称して検討を加えてきた。その
結果,本稿で問題となっている履行期未到来の敷金返還請求権の請求適格
は認められず,そのような請求権を訴求する将来の給付の訴えは,これま
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
での裁判例に従えば不適法であると判断される可能性が高い。だが民事訴
訟法
条は訴えの利益として「あらかじめ請求する必要」を要求してい
る。履行期がいまだ到来していない状況で敷金返還を請求する原告にはあ
らかじめ請求する必要が認められるのか。この点についても検討を加え
る。
請求適格に対して,訴えの利益の存否は原告被告間の個別具体的な事情
をも考慮して判断されるといえる。本件では,被告たる賃貸人が敷金差し
入れの事実を争っており,たとえ本件契約終了後の建物明渡時に敷金が残
存したとしても被告はその敷金を任意に返還しない可能性がある。また本
件の参考となった最判平成
年 月
日民集
巻 号 頁における賃
貸借目的物は,一般住居用の建物と比較して高額の敷金の交付を要求され
ることの多い商業用建物であり,賃借人にとってはまとまった額となるこ
うした敷金が確実に返還されるか否かは重要な問題といえる。加えて近
時,敷金や更新料といった賃貸借契約に付随する金銭を巡る紛争が表面化
!
する傾向にあり,民事裁判が提起されるケースも少なくない。こうした動
向からも明らかなように,賃貸借契約に関する金銭を法律に従って取り扱
い,返還されるべきものは賃借人に返還するということは社会的な要請で
もある。以上の要素は将来の給付の訴えの利益を肯定する方向に働くと考
えられる。
それに対して,条件の内容および請求権の性質についてのこれまでの検
討からは,本件の将来の給付の訴えは多分に不確実な要素を含むというこ
とが明らかとなった。こうした場合にまで,被告に請求異議の訴えを提起
"
させるという負担を課すのは不当とも考えられる。よって本件においては
訴えの利益はないと判断される可能性が高い。また傍論ではあるが,BGH,
Urt. v.
. .
=BGHZ
,
では,被告たる賃貸人について破産手
続が開始されたという事情が生じていたものの,BGH はそのことが不履
行のおそれを基礎づけるのか否かについては言及していない。破産手続の
開始とあらかじめ請求する必要の関係については,なお検討を要する。
( )
香川法学
巻 ・ 号(
)
Ⅴ おわりに
以上の検討から,日本法においても履行期未到来の敷金の返還を訴求す
る訴えは不適法であるとの結論が導きだされた。すなわちいまだ履行期の
到来していない敷金返還請求権は,口頭弁論終結時において請求権の内容
を確定できず,たとえ将来において請求権について履行期が到来したとし
ても主文の通りに敷金が残存する可能性もまた高くはないため,最高裁の
表現を借りれば将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有しない
といえる。したがって将来の給付の訴えは不適法であり,本件の X とし
ては民事訴訟法
条によって訴えを変更して敷金返還請求権が存在する
ことの確認を求めるか,もしくは本件建物を明け渡して敷金返還請求権に
ついて履行期が到来した後に,敷金返還を求める現在の給付の訴えを提起
するという手段をとることになる。
日本法よりも体系的な議論の存在するドイツ法においてさえ,将来の給
付の訴えは例外的な訴えであり,実務でも影のような存在として取り扱わ
!
れている。加えて数少ない将来給付の事案においても,問題となるのは
ZPO
条や
条の適用であり,
条はほとんど利用されていないと
いう。たしかにドイツ法上は請求権が存在することの確認を求める訴えが
一般に利用されており,加えて仮差押え等の他の手続が効果的に用いられ
ているとの事情の違いが存在する。だが将来の給付の訴え,特に ZPO
条の適時の履行がなされないおそれがある場合の訴えが積極的に用いられ
ない一因として,本案判決が許されるのか否かすら実際に訴えを提起して
みるまではわからないという,将来給付に対する予測の困難性や不確実性
もまた挙げられるだろう。
将来の給付を求める訴えと一口に言っても,確定期限付請求権から条件
が成就する可能性が低い請求権まで,幅広い請求権が対象となる可能性が
あり,また当事者の訴えを提起する事情も多種多様である。こうした理由
から,将来給付の許容性は画一的な基準では判断できないという主張は正
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
当といえるだろう。だが民事訴訟に対しては個別具体的な事案に即した判
断と同様に,訴訟手続およびその結果に対して一定の予測が立つことも要
求されており,そのためには客観的に判断できる基準を示す必要がある。
今のところそのような基準として,最大判昭和
年が示した 要件が広
く用いられてはいるものの,上述のようにこの要件では適切に判断できな
い事案も存在することが明らかとなった。本稿を契機として,今後も将来
給付の適法性を判断する基準について研究を深めたい。
!
一例として,最大判昭和
月
日民集
巻
号
年
月
日民集
頁,最判平成
年
巻
月
号
頁,最判平成
日集民
号
"
最判平成
#
角森正雄「将来の給付の訴えについて」富山大学紀要富大経済論集
年
月
日民集
巻
号
年
頁
頁
巻
号(
)
頁,内山衛次「将来の給付の訴え」福永有利=井上治典ほか編『民事訴訟法の史
的展開
$
鈴木正裕先生古稀祝賀』
(有斐閣,
)
頁
Rauscher,Wax,Wenzel/Becker-Eberhard,Münchener Kommentar zum Zivilprozessordnung,
( . Auflage), C. H. Beck,
,§
%
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
&
角森正雄「ドイツ民事訴訟法
Rn.
Rn.
−
条における将来の給付の訴えについて Roth
判事の所説の紹介」富山大学紀要富大経済論集
'
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
(
ZPO 第
巻
号(
)
,
頁
Rn. ,
条(即時認諾(Sofortiges Anerkenntnis)における費用)
被告が自らの行為によって訴えの提起を誘発したのではない場合において,被告が
直ちに認諾するときは,訴訟費用は原告の負担とする。春日偉知郎=三上威彦訳,
法務大臣官房司法法制部編『ドイツ民事訴訟法典』
(法曹会,
)
内 山・前 掲 注
・
,
,
( . Aufl. Band ), J. C. B. Mohr,
*
Stein, Jonas/Roth(oben Fn.)§
+
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
, 労働裁判所法第
条
項
)
,
頁
頁,Stein, Jonas/Roth, Herbert, Zivilprozeβordnung
,§
Rn.
Rn.
Rn.
文(総則)は「第一審の判決手続については,この法
律に別段の定めがない限り,区裁判所の手続に関する民事訴訟法の規定を準用する」
と規定する。
- Rosenberg, Schwab/Gottwald, Zivilprozessrecht( . Aufl.), C. H. Beck,
,§
Rn.
, Murach, Jens-Olrik, Rechtsschutzprobleme bei der Klage auf künftige Leistung nach
( )
香川法学
den§§
−
巻 ・ 号(
ZPO, gradez!verlag,
!
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
"
ZPO 第
)
, S.
Rn.
条(訴えの変更に当たらない場合)
請求の基礎の変更なくして,以下のことがなされた場合には,訴えの変更とはみな
さない。
本案又は附帯請求について訴えの申立てを拡張又は縮減するとき。春日=三上
訳・前掲注
・
頁
#
内山・前掲注
・
$
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
%
ZPO 第
頁,Becker-Eberhard(oben Fn.)§
Rn. ,
条(執行開始のための要件)
Rn.
ff.,内山・前掲注
・
,
頁
項
請求権の主張が暦日の到来にかかるときは,その暦日が経過した場合に限り強制執
行を開始することができる。春日=三上訳・前掲注
・
&
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
Rn.
'
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
Rn.
(
Musielak/Foerste, Kommentar zur Zivilprozessordnung,
,§
)
被告の不利益に関して Murach(oben Fn.
角森・前掲注
+
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
(
. Aufl., Verlag Franz Vahlen,
Rn.
*
,
頁
・
)S.
ff. を参照した。
頁
Rn. ,Stein, Jonas/Schumann, Zivilprozeßordnung
. Aufl. Band )
, J. C. B. Mohr,
,§
Becker-Eberhard(oben Fn.)§
Rn.
Rn. ,用語の日本語訳につき角森・前掲注
・
頁を参照した。
-
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
Rn. , RGZ
,
,佐古田真紀子「ドイツに
おける将来の給付の訴えの適法性について⑵」旭川大学経済学部紀要第
号(
)
頁
.
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
/
BGH, Urt. v.
0
内山・前掲注
1
Stein, Jonas/Schumann(oben Fn.
Rn.
.
・
Rn.
=NJW
.
,
頁
)§
Rn.
, Becker-Eberhard(oben Fn. )§
も同旨。また執行が困難となることが差し迫る場合には,仮差押え(Arrest)に
より債権者に保護を与えるとする。
2
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
3
Rosenberg, Schwab/Gottwald(oben Fn.
4
Becker-Eberhard(oben Fn. )§
(第
5
版,弘文堂,
RG Urt. v.
. .
)
Rn.
)§
Rn.
Rn.
,また松本博之=上野泰男『民事訴訟法』
頁(松本博之執筆部分)も同旨。
=RGZ
,
, Stein, Jonas/Roth(oben Fn. )§
( )
Rn.
,
将来の給付の訴えについて(春日川)
Stein, Jonas/Schumann(oben
(oben Fn. )§
Fn.
)§
,否 定 説 と し て は Becker-Eberhard
Rn.
Rn.
!
被告の不利益に関して Murach(oben Fn.
"
ZPO
)S.
ff. を参照した。
条による将来の賃金の支払いを求める訴えが提起可能な状況において提起
された,雇用契約が存続することおよびそれに基づく請求権を有していることの確
認を求める訴えを適法と判断したものとして,RG, Urt. v.
=RGZ
. .
,
がある。
#
ZPO 第
条
項
訴状は以下の事項を記載しなければならない。
提起された請求の対象および原因の特定された記載並びに特定された申立て。
春日=三上訳・前掲注 ・
$
頁
現行法の「適時の履行がなされないおそれ」は,
年の法改正以前には「不履
行のおそれ(Besorgnis der Nichterfüllung)
」と表現されていた。
%
Gottwald, Peter, Pfaller, Markus, Anmerkung, JZ
&
ZPO 第
条(損害調査,債権の額)
,
項
当事者間で,損害が発生したか否か,並びに損害又は賠償すべき利益がいかなる額
であるかについて争いがあるときは,裁判所は,これについて,すべての事情を評
価して,自由な心証により判断する。申立てのあった証拠調べを命じるべきか否か
およびその範囲,並びに,職権により鑑定人による鑑定を命じるべきか否かおよび
その範囲については,裁判所の裁量に委ねる。裁判所は損害又は利益に関して挙証
者を尋問することができる。第
を準用する。春日=三上訳・前掲注
条第
・
項第
文,第
項から第
項までの規定
頁
'
Gottwald, Pfaller, Anmerkung(oben Fn.
(
Emmerich, Volker, Sonnenschein, Jürgen, / Emmerich, Miete ( . Aufl. ), Walter
,§
Gruyter & Co.,
堂,
)
)
)S.
de
b Rn. ,
鳥谷部茂(右近健男編『注釈ドイツ契約法』,三省
頁
Knoll, Ernst, Entscheidung des Reichsgerichts in Zivilsachen Gruppe Ι Bürgerliches
Recht der Schuldverhältnisse Teil , Walter de Gruyter & Co.,
, S.
ff. を参照し
た。
*
本判決の翻訳に際し,佐古田・前掲注
+
BGB 第
⑴
b 条[敷金]
(現行法では第
・
頁を参照した。
条に相当)
住居の使用賃貸借関係において使用賃借人が自己の義務の履行のために使用賃
貸人に担保を提供すべきときは,その担保は,第
て,
月の賃料の
項第
文に規定する場合を除い
倍を越えてはならない。別に清算されるべき付随費用は,考慮
しない。金員を供与すべきときは,使用賃借人は,
月均等払いの分割給付とする
ことができる;最初の分割給付は,私用賃借関係開始の時が弁済期となる。
( )
香川法学
⑵
巻 ・ 号(
)
住居の使用賃借関係において担保として供与すべき金員を使用賃貸人に交付し
たときは,使用賃貸人は,その金員を自己の財産から分離して,信用機関に
月の
解約告知期間付貯蓄預金として通常の利率で寄託しなければならない。その利息は,
使用賃借人に帰属する。利息は,担保を増大させる。
⑶
使用賃借人の不利益となる合意は,その効力を生じない。
⑷
省略
鳥谷部・前掲注
!
ZPO 第
①
,
,
頁
条(請求異議の訴え(Vollstreckungsabwehrklage))
判決によって確定された請求自体に関する異議は,債務者が,訴えの方法によ
り第一審の受訴裁判所において主張しなければならない。
②
この異議は,異議の事由が,本法律の規定により遅くとも異議を主張しなけれ
ばならない口頭弁論の終結後に初めて生じ,かつ,故障申立てにより主張すること
がもはやできない限りにおいてのみ,許される。
③
債務者は,その提起すべき訴えにおいて,訴え提起のときに主張することがで
きたすべての異議を主張しなければならない。春日=三上・前掲注
"
・
頁
Jonas, Martin, Die Zivilprozeßordnung in der Fassung der Bekanntmachung vom .
(
November
. Aufl. Band )Verlag von J. C. B. Mohr,
#
佐古田・前掲注
$
一例としては,Becker-Eberhard(oben Fn. )
§
・
,§
Ⅱ
頁
Rn. , Stein, Jonas/Roth(oben Fn.
)Rn.
%
BGH, Urt. v.
. .
(oben Fn. )§
&
Rn.
=BGHZ
=BGH
,
NJW
, Stein, Jonas/Roth(oben Fn. )§
,
, Becker-Eberhard
Rn.
雉本朗造「将来ノ給付ノ訴」(雉本朗造『民事訴訟法論文集』,内外出版株式会社,
)
'
明治
,
頁
年民事訴訟法第
条
請求の主張か或る日時の到来に繫るときは其日時の満了後に限り強制執行を始むる
ことを得
若し執行か債権者より保証を立つることに繫るときは債権者か保証を立てたること
に付ての公正の証明書を提出し且其謄本を既に送達し又は同時に送達したるときに
限り其執行を始むることを得
亀山貞義『民事訴訟法〔明治
年〕正義(下−Ⅰ)
』(日本立法資料全集
山社出版,復刻版第
)
(
明治
刷,
年民事訴訟法第
別巻
)(信
頁
条
執行力ある正本は判決の確定したるとき又は仮執行の宣言ありたるときに限り之を
付與す
判決の執行か其旨趣に従ひ保証を立つることに繫る場合の外他の条件に繫る場合に
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
於ては債権者か証明書を以て其条件を履行したることを証するときに限り執行力あ
る正本を付與することを得
!
明治
亀山・前掲注
年民事訴訟法第
・
頁
条
左の判決に付ては職権を以て仮執行の宣言を為すへし
第
養料を支払ふ義務を言渡す判決但訴の提起後の時間および其提起前最後の三
个月間の為め支払ふへきなるものなるときに限る
お後掲する細野長良『民事訴訟法要義 第
条
"
号との記載があったが,
条
亀山・前掲注
・
巻』
(厳松堂書店,
,
)
頁。な
頁には
号の誤りではないかと考えられる。
松本博之=河野正憲ら編『民事訴訟法〔大正改正編〕⑷』
(日本立法資料全集
(信山社出版,
店,
)
資料全集
)
頁,細野長良『民事訴訟法要義 第
頁,山内確三郎『民事訴訟法の改正〔大正
別巻
)
(復刻版第
頁には,旧法
刷,信山社出版,
巻』(
)
版,厳松堂書
年〕
』第二巻(日本立法
) ∼
頁。とりわけ山内・
条は債務名義となる判決が給付の日時到来前になされることを
も予定していると解することができる,したがって旧法上も将来の給付の訴えは提
起することが可能であったとの記述がみられる。
#
細野・前掲注
・
頁,山内・前掲注
$
細野・前掲注
・
頁
%
雉本・前掲注
・
・
頁,細野・前掲注
頁
・
頁。なお ZPO 上でも不作為の請求
は将来の給付の訴えにより訴求する,Becker-Eberhard(oben Fn. )§
&
)
斉藤秀夫編『注解民事訴訟法⑷』
(第一法規出版株式会社,
執筆部分)
,新堂=福永編『注釈民事訴訟法⑸』(有斐閣,
Rn.
)
頁(林屋礼二
頁(上原敏夫執
筆部分)
'
賀集唱=松本博之ら編『基本法コンメンタール民事訴訟法
社,
)
(
前掲注
)
兼子一『民事訴訟法体系』
(増訂版,酒井書店,
)
*
長谷部由起子・本件判評・民事訴訟法判例百選第
版(
『基本法コンメンタール民事訴訟法
俊・本件判評・民事訴訟法判例百選第
法学教室
』
(第
版,日本評論
頁(松本博之執筆部分)
号(
版(
』
)
頁(松本博之執筆部分)
,
頁
)
頁以下,笠井正
頁以下,川嶋四郎・本件判評・
) 頁以下,松浦馨・本件判評・民事訴訟法判例百選Ⅰ(
頁以下,加茂紀久男・本件評釈・最高裁判所判例解説民事篇昭和
)
年度(
)
頁以下を参照した。
+
一例として,伊藤眞「将来給付」判例時報
,
一例として,高橋宏志『重点講義民事訴訟法
号(
頁,川嶋四郎『民事救済過程の展望的指針』
(弘文堂,
-
同様の航空機による騒音の事案として,最判平成
頁,最判平成
年
月
日集民
号
)
上』
(第
年
頁。
版,有斐閣,
)
月
)
頁。
日民集
巻
号
頁,航空機以外の騒音の事案として,
( )
香川法学
名古屋高判昭和
年
月
)
巻 ・ 号(
日下級裁判所民事裁判例集
道新幹線公害事件),大阪高判平成
年
月
日民集
巻
巻
∼
号
号
頁(東海
頁(国道
号
線事件)
!
最判昭和
号
"
年
月
頁,最判平成
東京地判平成
号
#
日集民
年
年
月
月
号
頁,最判平成
日判時
号
日判時
号
年
月
日民集
巻
頁
頁,東京地判平成
月
日判タ
頁
坂口裕英・最判昭和
号(
$
)
年
月
日集民
号
頁判例評釈・民商法雑誌
巻
頁
事実の概要および判旨につき山本和彦・判評・判例時報
号(
)
頁以
下を参照した。
%
沢井種雄・判評・民商法雑誌
&
沢井・判評・前掲注
'
内山・前掲注
(
なお消費者契約法
・
・
巻
号(
)
頁以下を参照した。
頁以下
頁,山本・判評・前掲注
・
頁
条との関係で,敷引特約の有効性については議論があるが,
本事例においては考慮しないものとする。園部厚『わかりやすい敷金返還紛争解決
の手引』
(民事法研究会,
)
)
頁を参照した。
要件の定立に際して内 山・前 掲 注
・
*
・
頁 以 下,お よ び 山 本・判 評・前 掲 注
頁を参照した。
滝澤孝臣編『判例展望民事法Ⅲ』
(判例タイムズ社,
)
頁(内山真理子執
筆部分)
+
最大判昭和
年
月
日民集
巻
号
頁においては,
「将来具体的な給
付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立
証することを必要としないと考えられるようなもの」と表現されている。
,
前掲注
-
最判昭和
集
.
巻
『基本法コンメンタール民事訴訟法
年
号
内山・前掲 注
・
/
月
日民集
巻
号
』
頁(加藤新太郎執筆部分)
頁,最大判昭 和
年
月
日民
頁
・
頁,山 本・判 評・前 掲 注
・
頁,沢 井・判 評・前 掲 注
頁以下
請求適格と訴えの利益の関係につき同様の見解をとる近時の研究として,今津綾
子「将来の給付の訴えにおける判決の効力(一)
」民商法雑誌
巻
・
号(
)
頁がある。
0
参考とした最判平成
年
め敷引特約により償却される
このことから
月
日民集
巻
号
頁において,原告はあらかじ
万円を控除した金額を請求の趣旨に表示していた。
万円の返還を求めることが原告の意思であると解されるため,そ
れに倣った。
( )
将来の給付の訴えについて(春日川)
!
品川孝次『契約法上巻』
(補正版,青林書院,
"
近時の敷金や更新料の支払いをめぐる最高裁判例としては,最判平成
日民集
巻
成
月
#
年
号
頁,最判 平 成
日民集
巻
号
年
月
)
頁
日民集
巻
号
年
月
頁,最 判 平
頁がある。
こうした見解に対して,将来の給付の訴えによって得られた債務名義の執行力を
排除する場合には,請求異議の訴えを再審の訴えのように理解して,被告たる債務
者が前訴でなされた将来の予測を含む判断が口頭弁論終結後の事情変更により著し
く変更し,もはや妥当しないことを主張・立証できれば,請求権の成否およびその
内容・金額等について新しい訴えのなかで審理されるとの見解も主張されている,
松浦馨「将来の不法行為による損害賠償請求のための給付の訴えの適否」
(新堂ほか
編『判例民事訴訟法の法理
$
中野貞一郎先生古稀祝賀』,有斐閣,
)
頁
Henssler, Martin, Die Klage auf künftige Leistung im Wohnraummietrecht, NJW
S.
, Murach(oben Fn.
)S.
ff.,佐古田・前掲注
・
(かすがかわ・みちこ
( )
,
頁
法学部講師)