特集 学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 14 SMC 2010 に参加して 山 田 寿美江 Sumie YAMADA 情報メディア学科 2010 年度卒業 1.はじめに 私は 10 月 10 日から 13 日まで 4 日間,トルコの イスタンブールで開催された IEEE Systems, Man, and Cybernetics Society が主催する,人間と機械の 相互作用に関する最新の科学技術の情報交換を目的 図1 提案する AHP モデル とした国際会議 SMC 2010(2010 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics)に参 ゴール,評価基準,代替案の三層で構成されていま 加しました. す. そこで, 「Suitable Graphical User Interface Selection 提案モデルのゴールは,AV リモコン操作時のヒ based on Human Errors using Analytic Hierarchy Proc- ューマンエラーを減らすことです.評価基準はヒュ ess(階層分析法を用いたヒューマンエラーに基づ ーマンエラーの原因である,属性,知識不足,技量 く最適なグラフィカルユーザインタフェースの選 不足,し間違い,失念,考え違い,違反の 7 つで 択)」のタイトルで,口頭発表を行いました. す.代替案は,視覚支援,認知支援,運動支援,学 習の 4 つの機能を持つ GUI です. 2.発表の内容 未就学児と高齢者の 2 例を用いて,このモデルの 研究の目的は,ユーザが AV リモコン操作時に 起こすヒューマンエラーを減らすことです. 評価を行いました.その結果,高齢者には視覚支 援,未就学児には認知支援を考慮した GUI 設計が 家庭内には,年齢や視力,AV 機器に関する知識 適していることが分かりました. が異なる様々なユーザがいます.ところが,AV リ 次に,この計算アルゴリズムを,組込みプロセッ モコンの表示はメーカが万人向けに作っており,そ サとリアルタイム OS を搭載したリモコンの実験機 の GUI(Graphical User Interface,本研究では操作 に実装し,その有効性を確かめました. 画面を指す)は機器ごとに多種多様な設計になって まず,ユーザの特性とシステム環境に基づきユー います.そのため,必ずしも各ユーザにとって最適 ザに最適な GUI を生成します.次に,生成された な GUI であるとは言えません. GUI をユーザが操作している際のエラー検出を行 そこで本研究では,階層分析法 (Analytic Hierarchy います.検出するエラーは,誤入力,行動異常,目 Process, AHP)を用いて各ユーザに最適な GUI を 標未達成の 3 つです.いずれかのエラーが検出され 生成するためのモデルを提案しました.図 1 に提案 た場合,ユーザにエラーの原因について質問しま モデルを示します. す.その回答に基づいて,図 1 のモデルを用いた AHP は意思決定,戦略決定のための分析法で, AHP 計算を行い,改良された GUI を生成します. ― 54 ― 少しでも伝えられているということを実感しまし た. 発表後の質疑応答では,2 人から質問がありまし た.質問の 1 つは,ユーザがエラーを起こすたびに GUI を改良すると,ユーザが特定の GUI に慣れず に,かえってエラーを繰り返すのではないかという ものでした. しかし,この質問を理解することが難しく,正し く答えることが出来ませんでした.これは,まだま だ英語を聴く力も,考えた答えを伝える力も未熟な こと,自分の研究だけでなく,それに関わる幅広く 深い知識が不足していたのが原因だったと思いま 図2 す. 提案システムのフローチャート 発表後,共著者の先生方に質問を解説して頂き,本 研究の今後の課題として検討しようと思いました. 4.SMC 2010 に参加して 私はこれまでに,国際会議でポスター発表を 2 回,口頭発表を 2 回経験してきました.そして今回 が,学生生活の中で最後に参加する国際会議になっ 図3 たので,2 年半研究してきた集大成として,緊張と システムの実装画面 期待の気持ちを持って臨みました. 3 回目ということで,発表準備は昨年より順調に このシステムの処理の流れを図 2 に示します. 動作検証の結果,図 3 に示すように,提案モデル 進めることができました.また,緊張の余り早口に の AHP 計算結果に基づいた GUI が生成されまし なってしまうという課題がありましたが,本番は落 た. ち着いて発表することができました. 発表を終えて質問を見つめなおし,自分が定めた 以上より,所望の動作が実現でき,提案モデルが 目的を達すれば研究が完成した訳ではなく,完成し 有効であることが検証できました. たものを色々な視点から見て課題を見つけ,改良し 3.発表の様子 ていくことの大切さを学びました.このことを,卒 学会最終日の午後に,私を含む 6 件の発表が行わ 業研究に生かしていこうと思います. れました.1 人の持ち時間は発表 15 分,質疑 5 分 国際会議に参加したことで,研究内容やその方法 でした.6 件のうち,2 件が学生,4 件が大学の先 に対しても沢山学ぶことができました.卒業後も自 生や企業の研究員の方で,学部生は私だけでした. 分にとって大変なことでも,必ずプラスになると思 発表では,丁寧に説明し,研究を伝えたいという いながら挑戦していこうと思います. 思いを大切にしました.また,つたない英語ながら 最後に,このような機会を与えてくださった長谷 も,ゆっくり明確に話すことを意識しました.それ 教授,親切にご指導頂いた野中博士研究員,お世話 に対して,時折うなずいて下さっている方もおり, になった先輩方に感謝いたします. ― 55 ―
© Copyright 2024 ExpyDoc