公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 9 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-173619
(P2015−173619A)
(43)公開日 平成27年10月5日(2015.10.5)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A23L
1/31
(2006.01)
A23L
1/31
A
4B042
A23L
1/318
(2006.01)
A23L
1/318
審査請求 未請求
(21)出願番号
特願2014-51685(P2014-51685)
(22)出願日
平成26年3月14日(2014.3.14)
請求項の数4 OL (全14頁)
(71)出願人 000226976
日清食品ホールディングス株式会社
大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号
(72)発明者 吉田
和樹
大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号
日清食品ホールディングス株式会社内
(72)発明者 齋藤
友宏
大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号
日清食品ホールディングス株式会社内
(72)発明者 中山
貴照
大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号
日清食品ホールディングス株式会社内
(72)発明者 田中
充
大阪府大阪市淀川区西中島4丁目1番1号
日清食品ホールディングス株式会社内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】即席乾燥味付肉及びその製造方法
(57)【要約】
【課題】
即席乾燥味付肉の製造方法において、原料肉への味付け
工程を1回に簡略した場合の問題点であった食感や復元
性を改善し、味付け工程を1回に簡略した場合でも、食
感、復元性に優れた即席乾燥味付肉及びその製造方法を
提供する。
【解決手段】
原料肉に対して、調味材料と結着材料を混合したピッ
クル液を注入または、混合し、蒸気にて加熱し、凍結し
、カットし、乾燥する味付け工程を一回にした即席乾燥
味付肉の製造方法であって、調味材料と結着材料を混合
したピックル液の可溶性固形分含量を22∼38に調整
し、ピックル液の原料肉への添加量を原料肉の重量に対
して45∼80重量%と添加することにより解決する。
【選択図】図1
( 2 )
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【特許請求の範囲】
合、風味、食感、復元性に優れた即席乾燥味付肉が得ら
【請求項1】
れる反面、加工工程の増加に伴う製造時間の増加や製造
原料肉に対して、調味材料と結着材料を混合したピック
ロスの増加などの問題があった。また、原料肉の味付け
ル液を注入または、混合するピックル液添加工程と、
に使用した調味液の廃棄物が多くなるなどの問題があっ
前記ピックル液添加工程の後、ピックル液を添加された
た。
原料肉を蒸気にて加熱する蒸気加熱工程と、
【0005】
前記蒸気加熱工程の後、加熱された原料肉をカットする
従来、味付けを1回で行う方法が知られている(例えば
カット工程と、
、特許文献1∼3)。特許文献1では、100℃以上の
前記カット工程の後、カットされた原料肉を乾燥する乾
温度で加熱した白醤油または淡口醤油をピックル液に溶
燥工程と、を順次行う即席乾燥味付肉の製造方法であっ 10
解して畜肉類に注射して畜肉類に風味を付与する方法が
て、
記載されている。しかしながら、この方法では、常温保
前記ピックル液の可溶性固形分値が22∼38であり、
存を前提とした乾燥肉ではないため、柔軟性、保存性を
前記ピックル液の原料肉への添加量が原料肉の重量に対
持たせるための糖類の添加量が少なく、乾燥を行った場
して45∼80重量%であることを特徴とする即席乾燥
合には、柔軟性、保存性共に満足いくものではなかった
味付肉の製造方法。
。
【請求項2】
【0006】
前記蒸気加熱工程において、蒸気による加熱温度が90
特許文献2では、生肉に対し、砂糖添加量が5重量%以
∼100℃であることを特徴と
上となるように砂糖溶液をインジェクションした後、加
する請求項1記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
熱して得た原料肉を3mm以下の厚さにスライスし乾燥
【請求項3】
20
する乾燥肉の製造方法が記載されている。しかしながら
前記乾燥工程が、真空凍結乾燥であることを特徴とする
、原料肉にインジェクションする砂糖溶液の固形分含量
請求項1または2何れか一項記載の即席乾燥味付肉の製
が高いため、原料肉にピックル液が分散しにくく、味付
造方法。
けムラや復元ムラなどが起こり、食感も硬く、肉の繊維
【請求項4】
感がない食感となり、食感、復元性ともに満足のいくも
前記請求項1∼3何れか一項記載の製造方法により製造
のではなかった。特に、乾燥を真空凍結乾燥で行った場
された即席乾燥味付肉。
合には、復元ムラが顕著になり、復元性に問題があった
【発明の詳細な説明】
。また、スライス厚も3mm以下に制限され、肉厚な乾
【技術分野】
燥肉を製造することができないという問題があった。
【0001】
【0007】
本発明は、インスタント食品の具材として使用される即 30
特許文献3では、塊状の原料肉の内部に結着材料と調味
席乾燥味付肉及びその製造方法に関する。
材料を混合させることで着味工程の省略化や製造ロス、
【背景技術】
調味液の無駄を無くす乾燥調味肉の製造方法が記載され
【0002】
ている。
インスタント食品(例えばカップ入りラーメン)が大い
しかしながら、この製造方法では、1回で味付けを行う
に普及しており、その具材として長期常温保存可能な即
ため、ピックル液の固形分含量が高くなりすぎ、原料肉
席乾燥味付肉(例えば乾燥チャーシュー)が用いられて
への分散性が悪く、特許文献2同様に食感、復元性とも
いる。このような即席乾燥味付肉は、湯掛け調理や鍋炊
に満足のいくものではなかった。
き調理、電子レンジ調理等により簡単に復元し喫食可能
【先行技術文献】
となる。近年では、本格思考が高まり、より風味、食感
【特許文献】
の良く、厚みのある即席乾燥味付肉を求める要望が高ま 40
【0008】
っている。
【特許文献1】特開平3−222476
【0003】
【特許文献2】特開昭57−11518
従来、この種の即席乾燥味付肉の製造方法は、特許文献
【特許文献3】特開2000−32956
3の図2や特許文献4の図1及び図2に記載されている
【特許文献4】特開2003−225515
ように原料肉への味付けは、ピックル液をインジェクシ
【発明の概要】
ョン等により加える工程とカットした原料肉を調味液に
【発明が解決しようとする課題】
浸漬させる着味工程と2回に分けて行うのが一般的であ
【0009】
った。
本発明は、即席乾燥味付肉の製造方法において、原料肉
【0004】
への味付け工程を1回に簡略した場合の問題点であった
しかしながら、原料肉への味付けを2回に分けて行う場 50
食感や復元性を改善し、味付け工程を1回に簡略した場
( 3 )
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合でも、食感、復元性に優れた即席乾燥味付肉及びその
以下、本発明の実施の形態に係る即席乾燥味付肉の製造
製造方法を提供すること、並びに該製造方法によって製
方法を工程順に具体的に説明する。なお、本発明は以下
造工程を簡略化することにより、製造期間の短縮、製造
の実施形態に限定されるものではない。
ロス、廃棄物の削減を可能とすることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
1.原料配合
【0010】
本実施形態に係る原料肉については、豚だけでなく、牛
本発明の発明者らは、調味材料と結着材料を混合したピ
、鶏、などの畜肉を使用することができる。即席乾燥味
ックル液を加水により薄め、原料肉へのピックル液の充
付肉が乾燥チャーシューの場合は、豚肉を用いる。また
填量を増やすことにより、味付け工程を1回に簡略した
、使用する部位については、特に限定されず、バラ、ヒ
場合の問題点であった食感や復元性が改善することを発 10
レ、ロース、かた、かたロース、もも、そともも等を使
見し、鋭意研究した結果、ピックル液の固形分含量を調
用できる。また、肉の他に豚脂、牛脂などを混合するこ
整し、原料肉へのピックル液の充填量を増やすことで、
ともできる。
味付け工程を1回に簡略した場合でも、食感、復元に優
【0018】
れた即席乾燥味付肉を製造できることを見出し本発明に
本実施形態に係るピックル液の原料は、調味材料と結着
至った。
材料を含む。
【0011】
【0019】
すなわち、本発明は、原料肉に対して、調味材料と結着
調味材料としては、食塩、醤油、みりん、グルタミン酸
材料を混合したピックル液を注入または、混合するピッ
ナトリウム等の他、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコー
クル液添加工程と、前記ピックル液添加工程の後、ピッ
ル、水あめなどの糖類、胡椒、シナモン、グローブ、フ
クル液を添加された原料肉を蒸気にて加熱する蒸気加熱 20
ィンネル、スターアニス、ナットメグなどの香辛料、し
工程と、前記蒸気加熱工程の後、加熱された原料肉を凍
ょうが、にんにく、ねぎ、たまねぎ等の摩り下ろしや絞
結し、カットするカット工程と、前記カット工程の後、
り汁などが挙げられる。本実施形態においては、即席乾
カットされた原料肉を乾燥する乾燥工程と、を具備する
燥味付肉の風味や柔軟性、保存性を得るために、調味材
即席乾燥味付肉の製造方法であって、前記ピックル液の
料として、少なくとも食塩、糖類が必要となる。
可溶性固形分値が22∼38であり、前記ピックル液の
【0020】
原料肉への添加量が原料肉の重量に対して45∼80重
本実施形態においては、味付け工程が1回であるため、
量%であることを特徴とする即席乾燥味付肉の製造方法
復元時に充分な塩味を得るためには、原料肉に対して食
である。
塩相当量として2∼5重量%の塩分を添加することが好
【0012】
ましい。後述するピックル液添加工程において原料肉に
さらに、本発明における蒸気加熱工程は、蒸気による加 30
添加するピックル液の量は、原料肉に対して45∼80
熱温度が90∼100℃である
重量%であることから、ピックル液の塩濃度としては、
ことが好ましい。
2.5∼11重量%であることが好ましい。後述するピ
【0013】
ックル液の原料肉への添加量との兼ね合いから、より好
また、本発明における乾燥工程は、真空凍結乾燥である
ましくは、5.5∼8.0重量%であることが好ましい
ことが好ましい。
。
【発明の効果】
【0021】
【0014】
本実施形態においては、味付け工程が1回であるため、
本発明により味付け工程を1回に簡略した場合でも、食
即席乾燥味付肉に十分な柔軟性、保存性を持たせるには
感、復元性に優れた即席乾燥味付肉及びその製造方法の
、原料肉に対して糖類を乾物量として6重量%∼10重
提供が可能となり、また、該製造方法によって製造工程 40
量%添加することが好ましい。6重量%より少ないと充
を簡略化することにより、製造期間の短縮、製造ロス、
分な柔軟性、保存性を得られず、10重量%よりも添加
廃棄物の削減が可能となる。
すると乾燥しづらくなるため好ましくない。後述するピ
【図面の簡単な説明】
ックル液添加工程において原料肉に添加するピックル液
【0015】
の量は、原料肉に対して45∼80重量%であることか
【図1】本実施形態の即席乾燥味付肉の製造方法の1例
ら、ピックル液の糖類の配合量としては、乾物量として
を示した説明図である。
7.5∼22重量%であることが好ましい。後述するピ
【図2】一般的な即席乾燥味付肉の製造方法の1例を示
ックル液の原料肉への添加量との兼ね合いから、より好
した説明図である。
ましくは、13∼18重量%配合することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
【0016】
50
結着材料としては、食塩やピロリン酸ナトリウム、ポリ
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リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸
3.ピックル液添加工程
塩、大豆蛋白や卵白、乳蛋白などの動植物性蛋白、小麦
前処理した原料肉に調味材料と結着材料を含んだピック
粉、澱粉、加工澱粉、デキストリン、増粘多糖類、食物
ル液を添加する。添加方法としては、注射針を用いて直
繊維、トランスグルタミナーゼなどの酵素などが挙げら
接ピックル液を原料肉にインジェクションするか、ミン
れる。本実施形態では、後述するピックル液添加工程に
チ肉を用いた成形肉の場合には、ピックル液をミンチし
おいて原料肉に添加するピックル液の添加量が原料肉に
た原料肉に混合することで添加できる。ピックル液の添
対し45∼80重量%と多く添加する必要があり、これ
加量としては、原料肉の重量に対して45∼80重量%
らの結着材料添加することでピックル液を原料肉に保持
となるように添加する。45重量%未満の場合には、即
することができる。好ましい結合材料としては、調味材
席乾燥味付肉の風味や柔軟性、保存性に必要な量のピッ
料で挙げた食塩を除き、リン酸塩、動植物性タンパク質 10
クル液原料をピックル液に配合した場合、ピックル液の
が挙げられるが、これらの結着材料の他に、その他の結
固形分含量が高くなり、原料肉へのピックル液の分散性
着材料と組み合わせて使用することができる。原料肉に
が悪く、食感及び復元性が悪くなる。80重量%よりも
対するピックル液の添加量により、好ましい配合量が異
多く添加する場合には、原料肉にピックル液を保持させ
なるが、リン酸塩のピックル液の配合量としては、0.
ることができない。また、充填量が多い場合には、後述
1∼1.5重量%程度、動植物性蛋白としては、2∼9
する蒸気加熱工程において、加熱によるドリップ量が多
重量%程度配合すればよい。
くなり、風味や歩留が低下ことや、後述する乾燥工程に
【0023】
おいて乾燥する時間が長くなるなどの問題があり、好ま
その他のピックル液の材料としては、酢酸、ワイン等の
しい添加量としては、原料肉に対し50∼60重量%と
醸造酒、パパインなどの蛋白分解酵素、重曹などの炭酸
なるように添加することが好ましい。
塩、アスコルビン酸ナトリウムやトコフェロールなどの 20
【0027】
保存料、亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの発色剤
4.浸透、成形工程
、香料等も添加することができる。
ピックル液を添加した原料肉を10℃以下で12∼24
【0024】
時間冷置し、ピックル液を原料肉全体に浸透させる。イ
上記のピックル液原料を用いてピックル液を調整するが
ンジェクションによりピックル液を原料肉に添加した場
、このときピックル液の可溶性固形分値が22∼38と
合には、冷置処理の前にピックル液を添加した原料肉を
なるように調整する。可溶性固形分値については、Brix
低温・減圧下にて数時間回転させながらピックル液を原
計にて測定すればよい。可溶性固形分値はBrix値とも言
料肉に浸透させるタンブリング処理を行うことができる
い、水溶液のおおよその固形分含量を測定するのに用い
。次いでピックル液を浸透させた原料肉を成形する。成
られている。可溶性固形分値が38よりも高くなるとピ
形方法としては、型枠やケーシングに充填する方法や糸
ックル液の固形分含量が多いため原料肉にピックル液が 30
巻き等が挙げられ、目的とする即席乾燥味付肉の形状と
分散しにくく、味付けムラや復元ムラなどが起こり、食
なるように成形することができる。
感も硬く、肉の繊維感がない食感となるため好ましくな
【0028】
い。従って可溶性固形分値が38以下であればよいが、
5.蒸気加熱工程
後述するピックル液の添加量が最大でも原料肉に対し8
成形した原料肉を蒸気により加熱する。蒸気条件は特に
0重量%であることから可溶性固形分値は22以上であ
問わないが70℃以上の加熱温度で品温が70℃以上に
ることが好ましい。後述するピックル液の原料肉への添
加熱すればよい。ここでいう加熱温度とは、原料肉がさ
加量との兼ね合いから、より好ましい可溶性固形分値と
らされる蒸気庫内の雰囲気温度をいい、品温とは、原料
しては、29∼37であることが好ましい。
肉の中心部の温度をいう。本実施形態において、肉厚な
【0025】
2.前処理
即席乾燥味付肉を復元したい場合には、蒸気による加熱
40
温度が90∼100℃であることが好ましい。このよう
原料肉の前処理として、始めに脂身や、筋膜、筋、骨等
に高い温度で加熱することにより、肉のタンパク変性は
をトリミングする。次にトリミングした原料肉に対して
進んでしまうが、即席乾燥味付肉を熱湯等により復元し
ジャガードやミートハンマー等を用いてテンダライズを
た際には、復元性がよくなり、加熱にかかる時間も短縮
行う。テンダライズすることで後述するピックル液添加
できる。より好ましくは95∼100℃であることが好
工程においてピックル液が肉全体に行渡り易くなる。ミ
ましい。
ンチ肉を用いた成形肉にする場合には、テンダライズし
また、復元性の改善に伴い、肉本来の風味や繊維感が増
た原料肉をチョッパー等によってミンチ肉にする。この
す。品温に関しては、70℃以上であれば充分殺菌でき
とき、原料肉の他に豚脂、牛脂などを別途原料肉に加え
るが、品温が高くなるほど復元性は良くなるため、肉厚
ることができる。
な即席乾燥味付肉を復元したい場合には、本実施形態で
【0026】
50
は、品温を80℃以上に加熱することが好ましい。
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【0029】
<ピックル液配合の検討>
6.カット工程
(実施例1−1)
蒸気加熱工程にて加熱殺菌した原料肉を冷却または凍結
豚バラ肉をトリミングし、ジャガードで筋を切断した後
し、スライサーやギロチンカッターにて目的の形状にカ
、注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を37に
ットする。カット形状は、特に限定なく、ダイス状や平
調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して50重量
板状など当業者が適宜設定できる。後述する乾燥工程が
%となるようにインジェクションした。
真空凍結乾燥である場合には、復元性が良く、8mm∼
【0035】
15mm角のダイス状やスライス厚3∼8mm程度の平
インジェクションした豚バラ肉を温度10∼14℃、−
板状の肉厚な形状にすることもできる。
【0030】
0.08MPa以下の減圧条件で6時間タンブリングを行
10
い、10℃以下で12時間静置した。静置した豚バラ肉
7.乾燥工程
の折径109mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材の
カットされた原料肉を水分が14%以下になるように乾
ケーシングに長手方向に56g/cmとなるように充填
燥する。乾燥方法は、熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥
した。
、真空凍結乾燥を行うことができる。熱風乾燥、マイク
【0036】
ロウェーブ乾燥に比べ真空凍結乾燥は、復元性がよく、
充填した豚バラ肉を蒸気により、70℃,60分、80
肉厚な即席乾燥味付肉を復元したい場合には、真空凍結
℃,30分、95℃,20分、100℃,75分と段階的
乾燥を行うことが好ましい。真空凍結乾燥を行う場合に
に加熱温度を上昇させながら、豚バラ肉の品温が100
は、カットされた原料肉をトレーに並べて再度凍結する
℃になるまで加熱した。
。真空凍結乾燥した原料肉は、水分が3%以下と低く脆
【0037】
いため、湿度を調整した庫内で水分が4∼14重量%と 20
加熱殺菌した豚バラ肉を冷却し、−25℃の凍結庫にて
なるように調湿し、柔軟性を持たせた後、即席乾燥味付
10時間凍結した。凍結した豚バラ肉を−5℃程度にな
肉とすることができる。
るまで解凍し、スライサーを用いて肉厚が40mmとな
【0031】
るようにスライスした。
8.その他工程
【0038】
乾燥した即席乾燥味付肉は、異物検査、微生物検査等の
スライスした豚バラ肉をトレーに並べ、再びー25℃の
検査を経て、バルク状にケース梱包されるか、個食用に
凍結庫にて品温が−20℃になるまで凍結した。凍結し
パックされてケースに梱包され、インスタント食品の製
た豚バラ肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が
造工場に輸送され、インスタント食品に使用される。
一定になるまで真空凍結乾燥し、48℃の調湿庫で調湿
【0032】
し、即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
図1は本実施形態の即席乾燥味付肉の製造工程の1例を 30
【0039】
示した図であり、図2は、一般的な即席乾燥味付肉の製
(実施例1−2)
造方法を示した図である。図1、2で示すように原料肉
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を38に調
への味付け工程が1回に簡略することにより製造時間が
整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して45重量%
短縮され、工程が少なくなることにより、製造ロスや廃
となるようにインジェクションする以外は、実施例1−
棄物を削減することができる。
1の方法に従って製造した。
【0033】
【0040】
以上のように、結着材料と調味材料を混合したピックル
(実施例1−3)
液の固形分含量を調整し、原料肉への添加量を増やすこ
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を35に調
とにより、味付け工程を1回に簡略化した場合の問題で
整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して50重量%
あった食感や復元性が改善し、本発明により味付け工程 40
となるようにインジェクションする以外は、実施例1−
を1回に簡略した場合でも、食感、復元性に優れた即席
1の方法に従って製造した。
乾燥味付肉の製造可能となる。また、本実施形態により
【0041】
即席乾燥味付肉を製造することにより、従来の方法と比
(実施例1−4)
較して製造工程を簡略でき、製造期間の短縮、製造ロス
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を41に調
、廃棄物の削減が可能となる。
整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して60重量%
【実施例】
となるようにインジェクションする以外は、実施例1−
【0034】
1の方法に従って製造した。
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明す
【0042】
る。
(比較例1−1)
(実験1)
50
豚バラ肉をトリミングし、ジャガードで筋を切断した後
( 6 )
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10
、注射針を用いて一回目の味付けとして表1で示した醤
評価2が悪い、評価1が著しく悪い、とした。以後の実
油を含まない、可溶性固形分値を35に調整したピック
験の官能評価も同様に行った。
ル液を豚バラ肉の重量に対して42重量%となるように
【0050】
インジェクションした。
実験1に使用したピックル液および調味液の配合を表1
【0043】
及び表2に示す。
インジェクションした豚バラ肉を温度10∼14℃、−
【0051】
0.08MPa以下の減圧条件で6時間タンブリングを行
【表1】
い、10℃以下で12時間静置した。静置した豚バラ肉
の折径109mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材の
ケーシングに長手方向に56g/cmとなるように充填 10
した。
【0044】
充填した豚バラ肉を蒸気により、70℃,60分、80
℃,30分、95℃,20分、100℃,75分と段階的
に加熱温度を上昇させながら、豚バラ肉の品温が100
℃になるまで加熱した。
【0045】
加熱殺菌した豚バラ肉を冷却し、−25℃の凍結庫にて
10時間凍結した。凍結した豚バラ肉を−5℃程度にな
るまで解凍し、スライサーを用いて肉厚が40mmとな 20
るようにスライスした。
【0052】
【0046】
【表2】
スライスした豚バラ肉を2回目の味付けとして表2で示
した調味液にスライスした豚バラ肉の重量に対し400
重量%の30分浸漬し、浸漬後、目開き1mmのメッシ
ュにて5分間液切りした。
【0047】
液切りした豚バラ肉をトレーに並べ、再びー25℃の凍
結庫にて品温が−20℃になるまで凍結した。凍結した
豚バラ肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が一 30
定になるまで真空凍結乾燥し、48℃の調湿庫で調湿し
、2回味付け工程を行った即席乾燥味付肉(乾燥チャー
【0053】
シュー)を製造した。
実験1の官能評価結果ならびに5分復元後の水分につい
【0048】
て表3に示す。
(比較例1−2)
【0054】
注射針を用いて表1で示したに可溶性固形分値を41に
【表3】
調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して42重量
%となるようにインジェクションする以外は、実施例1
−1の方法に従って製造した。
【0049】
40
これらのサンプルをポリスチレン製の容器にいれて35
0mlの熱湯を注加し、蓋をし
て5分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は
、ベテランのパネラー5人によって5段階評価で食感、
復元性について官能評価を行った。評価は、食感は、硬
さ、肉の繊維感、弾力性を総合評価し、評価5が非常に
【0055】
良好、評価4が良好、評価3が概ね良好、評価2が悪い
比較例1−1は、味付け工程を2回に分けて製造したも
、評価1が著しく悪い、とした。また、復元性について
のだが、復元ムラもなく戻りもよく良好であった。食感
は、全体的な水の入りや復元ムラを総合的に評価し、評
は、肉本来の繊維感や弾力感を感じ良好であった。
価5が非常に良好、評価4が良好、評価3が概ね良好、 50
【0056】
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比較例1−2は、味付け工程を1回に簡略し、味付け工
【0063】
程を2回に分けて行った場合と原料肉に対して添加する
(実施例2−3)
原材料量が等量となるようにピックル液を調整したもの
蒸気による加熱を95℃,110分行い、品温が90℃
で、ピックル液の可溶性固形分値は41であった。これ
に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方
を比較例1−1と同じ原料肉に対して42重量%となる
法に従って製造した。
ようにピックル液をインジェクションした。復元後の食
【0064】
感は硬く、肉本来の繊維感がなく、ハムのような詰まっ
(実施例2−4)
た食感になり、肉に粘りが発生した。また、全体的な水
蒸気による加熱を98℃,95分行い、品温が90℃に
の入りも悪く、味付けムラや復元性が悪い部分が目立っ
た。
達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法
10
に従って製造した。
【0057】
【0065】
実施例1−1では、ピックル液の可溶性固形分値を37
(実施例2−5)
に調整し、原料肉に対して50重量%となるようにピッ
蒸気による加熱を100℃,65分行い、品温が80℃
クル液をインジェクションしたものだが、食感は、肉本
に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法
来の繊維感や弾力感を充分感じ良好であった。復元性に
に従って製造した。
ついても全体的な水の入りも良く、復元ムラもなく良好
【0066】
であった。
(実施例2−6)
【0058】
蒸気による加熱を100℃,85分行い、品温が90℃
実施例1−2では、ピックル液の可溶性固形分値を38
に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法
に調整し、原料肉に対して45重量%となるようにピッ 20
に従って製造した。
クル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感
【0067】
は、やや硬さが残るものの肉の繊維感や弾力感を感じ概
(実施例2−7)
ね良好であった。復元性は、僅かにムラがあるが全体的
蒸気による加熱を100℃,135分行い、品温が10
に復元しており概ね良好であった。
0℃に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の
【0059】
方法に従って製造した。
実施例1−3では、ピックル液の可溶性固形分値を35
【0068】
に調整し、原料肉に対して50重量%となるようにピッ
実験2の官能結果を表4に示す。
クル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感
【0069】
は、実施例1−1と比較しても、適度な弾力感があり、
【表4】
肉本来の繊維感があり、非常に良好であった。復元性に 30
関しても、復元ムラもなく、全体的な水の入りも非常に
良く、非常に良好であった。
【0060】
実施例1−4では、ピックル液の可溶性固形分値を29
に調整し、原料肉に対して60重量%となるようにピッ
クル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感
、復元性は、実施例1−3ほどではないが良好であった
。
【0061】
(実験2)
【0070】
40
実施例2−1は、蒸気による加熱温度が80℃で品温が
<蒸気加熱条件の検討>
80℃になるまで加熱したもので加熱にかかった時間は
(実施例2−1)
、130分であった。復元後の食感は、やや硬さが残る
蒸気による加熱を80℃,130分行い、品温が80℃
ものの肉の繊維感や弾力感を感じ概ね良好であった。復
に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方
元性は、全体的な水の入りがやや悪いが全体的に復元し
法に従って製造した。
ており、復元ムラもなく概ね良好であった。
【0062】
【0071】
(実施例2−2)
実施例2−2は、蒸気による加熱温度が90℃で品温が
蒸気による加熱を90℃,130分行い、品温が90℃
90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時
に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方
間は、130分であった。復元後の食感は、適度な弾力
法に従って製造した。
50
感があり、繊維感も感じ、良好であった。復元性につい
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ても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好であっ
強く感じ非常に良好であった。
た。
【0076】
【0072】
実施例2−7は、100℃で品温が100℃になるまで
実施例2−3は、蒸気による加熱温度が95℃で品温が
加熱したものだが、加熱にかかった時間は、135分で
90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時
あった。復元後の食感は、実施例2−6と比較し柔らか
間は、110分であった。復元後の食感は、適度な弾力
くなり、弾力感が弱くなるが肉本来の繊維感があり良好
感があり、繊維感も感じ、良好であった。復元性につい
であった。復元性については、非常に良好だが、水の入
ても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好であっ
りが良好すぎて食感が柔らかくなるように感じた。風味
た。また、風味に関しても肉の味を感じ良好であった。
【0073】
に関しては、実施例2−4と比較し、僅かに弱いが良好
10
であった。
実施例2−4は、蒸気による加熱温度が98℃で品温が
【0077】
90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時
以上のように実施例の結果から、ピックル液の固形分含
間は、95分であった。復元後の食感は、適度な弾力感
量を調整し、原料肉へのピックル液の充填量を増やすこ
があり、繊維感も強く、非常に良好であった。復元性に
とで、味付け工程を1回に簡略した場合でも、食感、復
ついても全体的な水の入りも非常によく、復元ムラなく
元に優れた即席乾燥味付肉を製造できることがわかる。
非常に良好であった。また、風味に関しても肉の味を強
また、蒸気による加熱温度が高いほど食感、復元性に優
く感じ非常に良好であった。
れた即席乾燥味付肉を製造でき且つ加熱時間を短縮でき
【0074】
ることがわかる。
実施例2−5は、蒸気による加熱温度が100℃で品温
【0078】
が80℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった 20
なお、本願発明は、前記実施形態に限定されるものでは
時間は、65分であった。復元後の食感は、弾力感がや
なく、実施段階ではその要旨を
や強いものの、繊維感が強く、良好であった。復元性に
逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さ
ついても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好で
らに、前記実施形態には種々の段
あった。また、風味に関しても肉の味を感じ良好であっ
階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件に
た。
おける適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得
【0075】
る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つか
実施例2−6は、蒸気による加熱温度が100℃で品温
の構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる
が90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった
形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする
時間は、85分であった。復元後の食感は、適度な弾力
課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述
感があり、繊維感も強く、非常に良好であった。復元性 30
べられている効果が得られる場合には、この構成要件が
についても全体的な水の入りも非常によく、復元ムラな
削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され
く非常に良好であった。また、風味に関しても肉の味を
得るものである。
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【図1】
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【図2】
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フロントページの続き
Fターム(参考) 4B042 AC03
AC05
AC06
AC09
AD04
AE03
AE04
AG02
AK01
AK04
AK16
AP02
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AP13
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AP21
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