Escherichia coli sakai strain

1) 試験管内(In vitro)殺菌効果確認試験の結果
試験方法
被検菌
病原性大腸菌※
腸管出血性大腸 O157
Escherichia coli IFO3972(糞便由来)
Escherichia coli sakai strain
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地で培養した被検菌のシングルコロニーを釣菌し、LB 培地を用いて、37℃、17~24 時間培養し、遠心分
離機を用いて集菌し、2 回滅菌生理食塩水で洗浄した後、滅菌生理食塩水で希釈し、被検菌濃厚懸濁液(7
Log10cfu/mL)としました。尚、菌液の調製は濁度を確認する方法により調製することで、その菌数が一定量としました。
2)試料液の調製方法
本試験においては、『次亜塩素酸ナトリウム水溶液(食品添加物)〔市販品〕 』を用いて、殺菌力を比較してみました。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ヨードカリ滴定法により有効塩素濃度を確認し、接触時のそれぞれの有効塩素濃度が、
0.01 ppm、0.1 ppm、1 ppm、10 ppm、50ppm、100 ppm、200 ppm になるように、それぞれ調製し、これらを試験用の試料
液としました。尚、調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液の塩素濃度は、『ピポパ メビウス』を用いて測定し、確認しまし
た。
3)被検菌接触方法効果評価方法
各試験用の試料液 9.0 mL に、各被検菌濃厚懸濁液(7.0 Log10cfu/mL) 1.0mL を加えて均一に混合し、保管した後、1
分毎、5 分毎、10 分毎に、再度均一に混合し、各 1.0 mL を採取し、その採取液を、滅菌済の 0.01 mol/L チオ硫酸ナト
リウム溶液(各種緩衝液で調製)9.0 mL 中に加えて中和し(殺菌及び静菌効果をなくすため)、均一に混合した後、各2
枚のシャーレに各々1.0 mL ずつ分取し、引き続き、常法にしたがい混釈培養法によって、マッコンキー培地を用いて、37℃、
24 時間 培養しました。その後、本培地に形成された定型的コロニーをカウントし、二枚の平均数を生残菌数として測定し
ました。
以上の試験を 3 回実施し、その結果を、菌数の乗数と、標準偏差として記載しました。
1
本部三慶株式会社
結果<その1>
表1 病原性大腸菌 Escherichia coli IFO3972 に対する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の殺菌効果
単位:Log10cfu/mL±標準偏差
設定濃度
※1
200ppm
100ppm
50ppm
10ppm
1ppm
0.1ppm
0.01ppm
ピポパ メビウス
による確認結果
210ppm
100~110 ppm
50~60ppm
―
―
―
―
接触時
pH
9.64
9.15
8.89
8.28
6.35
6.31
6.21
接触時間
1分
5分
10 分
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
7.12±0.05
<2.00
<2.00
<2.00
3.80±0.36
<2.00
<2.00
4.68±0.39 4.79±0.30 4.01±0.36
5.72±0.33 5.68±0.30 5.25±0.55
0分
-:測定範囲外のため、未測定
表2 腸管出血性大腸菌 O157(Escherichia coli sakai strain)に対する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の殺菌効果※2
単位:Log10 cfu/mL±標準偏差
設定濃度
※1
200ppm
100ppm
50ppm
10ppm
1ppm
0.1ppm
0.01ppm
ピポパ メビウス
による確認結果
210ppm
100~110 ppm
50~60ppm
―
―
―
―
接触時
pH
9.64
9.15
8.89
8.28
6.35
6.31
6.21
接触時間
0分
1分
5分
10 分
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
6.97±0.15
<2.00
<2.00
<2.00
3.00±0.86
<2.00
<2.00
4.31±0.19 4.29±0.20 3.51±0.46
5.22±0.53 4.88±0.50 4.85±0.57
-:測定範囲外のため、未測定
※1 接触濃度は、初液の濃度として有効塩素濃度を記載
※2 香川大学 医学部 分子微生物学研究室で実施
以上の結果から、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、試験管内(In vitro)という条件下では、病原性大腸菌、並びに、腸管出
血性大腸菌 O157 を 5 分間、若しくは 10 分間、薬剤に接触させることで、完全に殺菌するためには、1ppm 以上の濃度が
必要であるという結果が得られました。
2
本部三慶株式会社
2) 野菜エキス(白菜エキス)共存下での、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の殺菌効果比較確認試験の結果
試験方法
被検菌
病原性大腸菌
腸管出血性大腸 O157
Escherichia coli IFO3972(糞便由来)
Escherichia coli sakai strain
野菜エキスの調製方法
野菜エキスとしては、市販白菜を用いて調製し、白菜は市場で産地が明確である新鮮なものを購入し、下記の手順
で調製しました。
《白菜エキスの濃度調製方法》
殺菌効果確認試験実施時に、共存する白菜からの溶出物質と、その量が、どの程度あるのかを確認し、その影響
を考慮した上で、殺菌効果を比較してみました。尚、この時の白菜エキスの濃度を、どのように測定し、どのような基
準値を設けておくことが、必要なのかということについて検討してみました。
1. 白菜を細かくカットして、カット済みの白菜を用意する。
2. 10L 量のイオン交換水を用意し、プラスチックの容器に入れる。
3. この中にカット済みの白菜を 1kg 宛投入し 10 分間浸漬・洗浄する。この操作を繰り返し実施する。
4. 処理するごとに用意したイオン交換水は減少し、最終的には処理が進むにつれて浸漬することが出来なくなる。
その時点で終了とする。
5. この終了時の洗浄水の外観的な濁度と、溶出エキスの紫外部吸収値を分光光度計で測定する。
過剰に白菜を細かくカットしていることと、洗浄水の減少に対して、現場では新たな水を洗浄水として追加するであろ
うことを考慮しますと、少なくとも白菜から、この濃度以上の溶出物質を含むエキスは出てこないと考えます。
したがいまして、殺菌条件としましては、この濃度を本試験条件として採用するというのは、どうでしょうか?
以上の考えと、検討結果から、濁度と紫外線吸光値を測定し、この値を基準値にしようと考えており、調製した液を
「白菜エキス液」とし、本件一連の試験に、供試することを考えてみました。
注:白菜の洗浄は、白菜の成分が溶出(抽出)しやすいように、断面積を大きくするべく、約 5mm 幅で裁断し、
5kg の白菜を、10L のイオン交換水に 10 分間浸漬し、2 回目以降は、同じ洗浄水に、新しい白菜を、同様
に浸漬し、裁断方法としましては、これ以上細かく裁断することは出来ないというところまで、細かく行いました。
したがいまして、これ以上の溶出(抽出)はないと考えています。
3
本部三慶株式会社
《白菜エキスの濃度調製状況》
1. 裁断した白菜 300gと、滅菌水※300g をジュサーミキサー(TESCOM 製 TM704)に入れ、1 分間粉砕し、ジュース状態に
しました。
※滅菌水:イオン交換水をオートグレーブを用いて、121℃・30 分間で処理
2. 本ジュースを、滅菌した不織布(橋本クロス株式会社製 ミラクルワイパーUP2840)を用いてろ過し、自然ろ過して得られ
た液を、『1/2 濃度白菜エキス』とします。
3-A.この『1/2 濃度白菜エキス』を、滅菌水を用いて、10 倍希釈した『1/20 濃度白菜エキス』と、100 倍希釈した『1/200
濃度白菜エキス』を調製し、これ以降、本調製方法で得られたジュース状の粉砕品を、『白菜エキス』とします。
4
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3-B.白菜を洗浄した際の、洗浄水中に溶出(抽出)されてくる白菜の成分等による洗浄水の濁り具合について確認し、3
―A.で作成した『1/20 濃度白菜エキス』と比較してみました。
※ 白菜の洗浄は、白菜の成分が溶出(抽出)しやすいように、断面積を大きくする為に、約 5mm 幅で裁断しました
約 500g の白菜を、1L のイオン交換水に 1 分間浸漬し、2 回目以降は、同じ洗浄水に、新しい白菜を、同様に
浸漬しました。尚、裁断方法としましては、これ以上細かく裁断することは出来ないというところまで、細かくしました。
したがいまして、これ以上の溶出(抽出)はないと考えています。
《洗浄液の濁り状況》 左側:1/20 濃度白菜液 中央:各洗浄後の洗浄水 右側:イオン交換水
以上の確認試験において、洗浄 5 回目以降は、洗浄水が減少し、約 500g の白菜を全量洗浄することが出来ず、
3 回に分けて、洗浄することにしました。尚、実際の食品加工工場などの現場では、流水洗浄されるという方法が一
般的であり、このことから、これ以上の溶出(抽出)は、あり得ないと考えます。
また、1L のイオン交換水に約 500g の白菜を浸漬して洗浄するという方法であれば、連続 6 回洗浄しますと 3―A.
で作成した『1/20 濃度白菜エキス』と、ほぼ同等の濁りになるということがわかりました。
しかしながら、約 500g の白菜全量が洗浄液に漬かった状態で洗浄できるのは 4 回まで(洗浄水が少なくなり、白菜
が洗浄水に漬からなくなってしまいます。)であるということは、事前確認試験でわかっております。
したがいまして、洗浄を施すことによって溶出(抽出)されてくる 『白菜のエキス』は、3―A.で作成した『1/20 濃度
白菜エキス』よりも、“薄い”ということになります。
※尚、白菜の汚染度について確認してみましたが、大腸菌、及び大腸菌群は検出されませんでした。
5
本部三慶株式会社
4. 吸光度の確認
3-A.で作成した 1/2 濃度と 1/20 濃度の『白菜エキス』と、3-B.で採取した白菜の洗浄液(1 回目から 6 回目)を検
体を用いて、これらの吸光度を測定してみました。
測定方法
『1/2 濃度の白菜エキス』と『1/20 濃度の白菜エキス』と、『白菜の洗浄液(1 回目から 6 回目)を、ADVANTEC 社製
ろ紙〔No.1〕を用いて、自然ろ過することで、「白菜エキス」中の侠雑物を取り除き、こうして得られた“ろ液”』の3種類
の検体を用いて、兵庫県立工業技術センターにある吸光光度計で、200nm から 800nm までの波長域を、吸光度確
認試験として実施しました。
結果<その2>
吸光度
白菜エキスと白菜洗浄液の比較
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
エキス1/2
エキス1/20
洗浄1回目
洗浄2回目
洗浄3回目
洗浄4回目
洗浄5回目
洗浄6回目
波長(nm)
波長
エキス
1/2 濃度
エキス
1/20 濃度
洗浄
1 回目
洗浄
2 回目
洗浄
3 回目
洗浄
4 回目
洗浄
5 回目
洗浄
6 回目
270
13.0152
4.5234
0.9114
1.1224
2.4446
4.0634
5.4415
5.2675
以上の結果の通り、『白菜エキス』と白菜の洗浄液のどちらにも、波長 270nm 付近に極大吸収部があるという確認が得られ、
この波長 270nm の『1/20 濃度の白菜エキス』の吸光度は、4 回目と 5 回目の洗浄液の吸光度の間にあるということがわかり、
5 回目と 6 回目の洗浄液の吸光度は、ほとんど変らないということがわかり、洗浄による白菜の成分の溶出(抽出)は、洗浄 5
回目で最大になるということが分かりました。
しかしながら、実際には、洗浄を 5 回繰り返すと 5 回目には、洗浄水がほとんどなくなり、白菜に洗浄水がかからず、結果とし
て全量洗浄することは出来ませんでした。したがいまして、実際の洗浄では、5 回目に、新しい洗浄水を追加添加しなければ
なりません。このことから考えましても、4 回目の洗浄が、白菜の成分の溶出(抽出)の最大であると考えます。
そこで、波長 270nm で吸光度4以上ある『白菜エキス』を用いて、次亜塩素酸ナトリウムの効果を確認し、他の殺菌剤も、
同じく次亜塩素酸ナトリウムと同等、もしくは、それ以上の効果を有しているのかどうかという確認試験を実施すれば、各殺菌
剤毎の殺菌効果を確認し、その上で、これらを比較することで、判断出来るのではないかと考えました。
以上のことから、3―A.で作成した『1/20 濃度白菜エキス』を用いて、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌効果確認試験を実施
することにし、この方法を用いて、この後の試験を実施して行くことにします。
6
本部三慶株式会社
7
本部三慶株式会社
《白菜エキスの調製方法》
1. 裁断した白菜 300gと、滅菌水 300g をジュサーミキサー(TESCOM 製 TM704)に入れ、1 分間粉砕し、ジュース状
態にしました。
2. 本ジュースを、滅菌した不織布(橋本クロス株式会社製 ミラクルワイパーUP2840)を用いてろ過し、自然ろ過して
得られた液を滅菌水で調製し、この時の濁度と、溶出液濃度は設定した基準値内((波長 270nm で吸光度4以
上))であるとしました。こうして得られた液を「白菜エキス液」として、これ以降の試験に供試することにします。
3. 白菜エキス液を用いて、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度 200ppm、又は 100ppm)が接触した際の有
効塩素の減少について、ヨードカリ滴定法と、「ピポパ メビウス」を用いて測定し、確認してみました。
《有効塩素減少確認結果》
次亜塩素酸ナトリウム濃度
(有効塩素濃度)
200ppm
100ppm
接触前
接触 5 分後
接触前
接触 10 分後
白菜エキス
ヨードカリ滴定法
202.3ppm
102.3ppm
101.4ppm
8.4ppm
ピポパ メビウス
210ppm
90~100ppm
100~110ppm
―
-:測定範囲外のため、不明
以上の結果から、200ppm と 100ppm のどちらも、100ppm 程度減少するということがわかり、200ppm を 5 分間維持
するためには、初液の有効塩素濃度としては、300ppm 以上の濃度が必要になり、100ppm を 10 分間維持するに
は、初液の有効塩素濃度としては、200ppm 以上の濃度が必要になるということがわかりました。したがいまして、先
ずは、この有効塩素濃度で規定時間維持することが出来る可能性を、再現してみることにします。
次亜塩素酸ナトリウム濃度
(有効塩素濃度)
白菜エキス
ヨードカリ滴定法
ピポパ メビウス
接触前
300.7ppm
310ppm
200ppm
接触 5 分後
201.7ppm
200~210ppm
接触前
205.4ppm
210ppm
100ppm
接触 10 分後
105.2ppm
90~100ppm
以上の結果から、有効塩素濃度 200ppm を 5 分間維持するためには、初液の有効塩素濃度を 300ppm に設定し、
有効塩素濃度 100ppm を 10 分間維持するためには、初液の有効塩素濃度を 200ppm に設定すれば良いことが
分かり、本条件で殺菌効果確認試験を実施してみることにします。
8
本部三慶株式会社
《野菜エキス(白菜エキス液)を用いた殺菌効果確認試験方法》
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地の被検菌のシングルコロニーを釣菌し、LB 培地を用いて、37℃、17~24 時間培養し、遠心分離
機を用いて集菌し、2 回滅菌生理食塩水で洗浄後、滅菌生理食塩水で希釈し、被検菌濃厚懸濁液(7
Log10cfu/mL)とし、菌液の調製は濁度を確認する方法によって調製することで、その菌数が一定量になるように設
定しました。
2)試料液の調製方法
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ヨードカリ滴定法により有効塩素濃度を確認し、それぞれの有効塩素濃度が、
200 ppm 以上、維持できる接触時の濃度として 300ppm を設定し、100ppm 以上、維持できる接触時の濃度とし
て 200ppm を設定し、その他に、初液濃度が、150ppm、100ppm になるように、それぞれ調製し、これらを試験用の
試料液とします。尚、調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液の塩素濃度は、『ピポパ メビウス』を用いて測定し、確
認しました。
3)被検菌接触方法及び効果評価方法
滅菌済み試験管に、「白菜エキス液」を 5.0 mL ずつ分注しておき、各試験用試料液 5.0 mL を加えて均一に混合
し、保管後、5 分毎、もしくは 10 分毎に、再度均一に混合し、各 1.0 mL を採取し、本採取液を、滅菌済の 0.1
mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製) 1.0 mL 中に加え、中和し(殺菌、静菌効果もなくすため)、こ
れらを均一に混合した後、各2枚のシャーレに各々 1.0 mL ずつ分取しました。
引き続き、常法にしたがい混釈培養法によって、マッコンキー培地を用いて、37℃で、24 時間培養した後、本培地
に形成されたコロニーをカウントし、二枚の平均数を生残菌数として測定しました。
以上の試験を 3 回実施し、その結果を、菌数の乗数と、標準偏差として記載しました。
9
本部三慶株式会社
結果<その3>
表 1 病原性大腸菌(Escherichia coli IFO3972)に対する次亜塩素酸ナトリウム水溶液殺菌効果
単位:Log10 cfu/mL±標準偏差
設定濃度
※1
300ppm
200ppm※2
150ppm
100ppm
ピポパ メビウス
による確認結果
310ppm
210ppm
150ppm
100~110ppm
接触時pH
9.22
8.78
8.51
7.33
0分
5分
10 分
7.23±0.14
<2.00
<2.00
<2.00
4.91±1.13
<2.00
<2.00
<2.00
3.89±1.25
表 2 腸管出血性大腸菌 O157 (Escherichia coli sakai strain)に対する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の殺菌効果※3
単位:Log10 cfu/mL±標準偏差
設定濃度
※1
300ppm
200ppm※2
150ppm
100ppm
ピポパ メビウス
による確認結果
310ppm
210ppm
150ppm
100~110ppm
接触時pH
9.22
8.78
8.51
7.33
0分
5分
10 分
6.83±0.14
<2.00
<2.00
<2.00
4.61±1.03
<2.00
<2.00
<2.00
3.19±1.30
※1 有効塩素濃度として 200ppm を 5 分間維持できる濃度として 300ppm を設定
※2 有効塩素濃度として 100ppm を 10 分間維持できる濃度として 200ppm を設定
※3香川大学 医学部 分子微生物学研究室で実施
以上の結果から、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、あらかじめ設定した『白菜エキス』を用いて、有効塩素濃度 200ppm を 5 分
間維持していることを前提に、初液の濃度を 300ppm に設定し、これに 5 分間接触させる、もしくは、有効塩素濃度 100ppm
を 10 分間、維持していることを前提に、初液の濃度を 200ppm に設定し、これに規定時間接触させることで、病原性大腸菌、
並びに、腸管出血性大腸菌 O157 を、完全に殺菌することが出来るという確認が取れました。しかしながら、初液の濃度を
100ppm に調整した場合には、10 分間接触させましても、殺菌できないということが判明しました。
なお、pH が殺菌効果に与える影響があるのではないかと考え、接触させるpH 域を 3.0、5.0、7.0、9.0 に、それぞれ緩衝させ、
pH が与える影響について確認してみました。
10
本部三慶株式会社
次亜塩素酸ナトリウム溶液と大腸菌接触時の殺菌効果におけるpH の影響確認試験
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地の被検菌のシングルコロニーを釣菌し、LB 培地を用いて、37℃、17~24 時間培養し、遠心分離機を
用 い て 集 菌 し 、 2 回 滅 菌 生 理 食 塩 水 で 洗 浄 し た 後 、 滅 菌 生 理 食 塩 水 で 希 釈 し 、 被 検 菌 濃 厚 懸 濁 液 (7
Log10cfu/mL)とし、菌液の調製は濁度を確認する方法によって調製することで、その菌数が一定量になるようにしまし
た。
2)試料液の調製方法
次亜塩素酸ナトリウムは、大腸菌濃厚懸濁液と接触するときの有効塩素濃度として 400 ppm、200 ppm、100 ppm、
50 ppm になるように、それぞれ調整し、試験用の試料液としました。
3)被検菌接触方法及び効果評価方法
固液比 原料(白菜)重量:滅菌水重量=1:1 になるようにミキサーに入れ、ジュース状態にした後、このジュースを滅菌
不織布(橋本クロス㈱製:ミラクルワイパーUP2840)を用いて濾過し、自然濾過して得られた液を、液比 調整白菜エキ
ス重量:各緩衝液重量=1:1 になるように混合した場合、所定のエキス濃度(吸光度が 270nm で 4 以上)と、所定のp
H になるように調整した『白菜エキス』を 『pH 調整白菜エキス』とし、この『pH 調整白菜エキス』を滅菌済試験管に 4mL
ずつ分注した後、被検菌濃厚懸濁液を 1.0mL 宛加え、各試験用試料液 5.0 mL を加えて均一に混合し、保管後、5
分毎、もしくは 10 分毎に、再度均一に混合し、各 1.0 mL を採取しました。
その採取した液を、滅菌済の 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製) 1.0 mL 中に加え、中和し(殺菌、
静菌効果もなくすため)、これらを均一に混合した後、各2枚のシャーレに各々 1.0 mL 宛分取し、引き続き、常法にした
がい混釈培養法によって、マッコンキー培地を用いて、37℃で、24 時間培養しました。その後、本培地に形成されたコロ
ニーをカウントし、二枚の平均数を生残菌数とし、その結果を、菌数の乗数として記載しました。
<被検菌>
病原性大腸菌※
腸管出血性大腸 O157
Escherichia coli IFO3972(糞便由来)
Escherichia coli sakai strain
※IFO3972 には、病原性がないという確認が出来ておらず、病原性がある恐れがあるということからバイオセーフテ
ィーレベルを確認してみましたところ、レベル2になっていたため、病原性大腸菌と記載いたしました。
11
本部三慶株式会社
結果<その4>
表 1 病原性大腸菌(Escherichia coli IFO3972)に対する殺菌効果におけるpH の影響確認試験の結果
菌数:Log10 cfu / mL
薬剤
滅菌水
次亜塩素酸
ナトリウム
設定
濃度
-
200 ppm
150 ppm
100 ppm
50 ppm
25 ppm
pH 3.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
<2
<2
<2
<2
6
6
植菌時の
菌数
6
6
6
6
6
6
pH 5.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
<2
<2
4
2
6
6
pH 7.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
4
2
4
4
6
6
pH 9.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
4
2
4
4
4
4
6
6
表 2 腸管出血性大腸菌 O157 Escherichia coli sakai strain に対する殺菌効果におけるpH の影響確認試験の結果
菌数:Log10 cfu / mL
薬剤
滅菌水
次亜塩素酸
ナトリウム
設定
濃度
-
200 ppm
150 ppm
100 ppm
50 ppm
25 ppm
pH 3.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
<2
<2
<2
<2
6
6
植菌時の
菌数
6
6
6
6
6
6
pH 5.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
<2
<2
2
2
6
6
pH 7.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
<2
<2
2
2
4
4
6
6
pH 9.0
5 min 10 min
6
6
<2
<2
2
2
4
4
4
4
6
6
表 3 pH 変化の結果
薬剤
滅菌水
次亜塩素酸
ナトリウム
設定
濃度
-
200 ppm
100 ppm
50 ppm
pH 3.0
pH 5.0
pH 7.0
pH 9.0
0分
5 分
10 分
0分
5 分
10 分
0分
5 分
10 分
0分
5 分
10 分
3.0
3.1
3.0
3.0
3.0
3.2
3.1
3.0
3.0
3.2
3.1
3.0
5.0
5.1
5.0
5.0
5.0
5.1
5.0
5.0
5.1
5.2
5.1
5.1
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
7.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
9.0
8.8
9.0
以上の結果から、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、緩衝させるpH 域を、酸性域に調整することによって、より低濃度で、
殺菌効果が得られるということがわかり、また、緩衝させたpH は、濃度による影響は受けないということも確認できました。
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3)白菜に接種した
病原性大腸菌 Escherichia coli IFO3972(糞便由来) 及び
腸管出血性大腸 O157( Escherichia coli sakai strain) に対する殺菌効果比較試験の結果
試験方法
被検菌
病原性大腸菌
腸管出血性大腸 O157
Escherichia coli IFO3972(糞便由来)
Escherichia coli sakai strain
《カット済みの白菜を用いた殺菌処理濃度の確認》
カット済みの白菜(30mm×60mm) 100g を、固液比 1:10 の割合で、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度
200ppm、又は 100ppm)に、白菜を接触させた時の有効塩素の減少について確認してみました。
《有効塩素減少確認結果》
次亜塩素酸ナトリウム濃度
(有効塩素濃度)
200ppm
100ppm
接触前
接触 5 分後
接触前
接触 10 分後
カット済みの白菜
ヨードカリ滴定法
205.7ppm
167.2pm
101.6ppm
60.8ppm
ピポパ メビウス
210ppm
160~190ppm
100~110ppm
60~80ppm
以上の結果から、200ppm と 100ppm のどちらも、40ppm 程度減少するということがわかり、200ppm を 5 分間維持させ
るためには、初液の有効塩素濃度としましては、240ppm 以上の濃度が必要になり、100ppm を 10 分間維持させるた
めには、初液の有効塩素濃度としましては、140ppm 以上の濃度が必要になるということがわかり、この有効塩素濃度
で規定時間維持することが出来るのかどうかについて、次の再現試験を実施しました。
次亜塩素酸ナトリウム濃度
(有効塩素濃度)
200ppm
100ppm
接触前
接触 5 分後
接触前
接触 10 分後
カット済みの白菜
ヨードカリ滴定法
241.3ppm
216.2ppm
140.9ppm
101.3ppm
ピポパ メビウス
240~250ppm
200~210ppm
140ppm
90~100ppm
以上の結果から、有効塩素濃度 200ppm を 5 分間維持するためには、初液の有効塩素濃度を 240ppm に設定し、
有効塩素濃度 100ppm を 10 分間維持するためには、初液の有効塩素濃度を 140ppm に設定すれば良いということ
がわかり、本条件で殺菌効果確認試験を実施することにしました。
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《カット済みの白菜を用いた殺菌効果確認試験方法》
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地の被検菌のシングルコロニーを釣菌し、LB 培地を用いて、37℃、17~24 時間培養し、遠心分離
機を用いて集菌し、2 回滅菌生理食塩水で洗浄した後、滅菌生理食塩水で希釈し、被検菌濃厚懸濁液(7
Log10cfu/mL)としました。尚、菌液の調製は濁度を確認する方法によって調製することで、その菌数が一定量にな
るようにしました。
2)試料液の調製方法
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ヨードカリ滴定法により有効塩素濃度を確認し、それぞれの有効塩素濃度が、
200 ppm 以上、維持できる接触時の濃度として 240ppm を設定し、100ppm 以上、維持できる接触時の濃度とし
て 140ppm を設定し、その他に、50ppm 以上を 10 分間維持できる接触時の濃度として 90ppm と、初液濃度
50ppm を設定し、これらを試験用の試料液とし、調製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液の塩素濃度は、『ピポパ メ
ビウス』を用いて測定し、確認しました。
3)被検菌接触方法及び効果評価方法
カット済みの白菜 100g に、大腸菌懸濁液約 10cc を、カット済み白菜の葉の表と裏に均一に、手動噴霧器を用い
て、噴霧接種させ、この時、噴霧する大腸菌懸濁液は、菌数 7 Log10 cfu/mL に調製した上で、試験に供試しまし
た。
尚、菌液噴霧後の白菜と、試験用試料液の個液比が 1:10 になるように、各試験用試料液を準備し、その各試
験用試料液中に、菌液噴霧後の白菜を浸漬し、保管後、5 分毎、もしくは 10 分毎に、浸漬した白菜から規定量
を採取し、常法にしたがい、被検菌の消長を確認しました。
又、付着菌数は、噴霧直後と、固液比 1:10 になるように滅菌水で洗浄した後の付着菌数も確認しておくことにし、
以上の試験を、3 回実施し、その結果を、菌数の乗数と、標準偏差として記載しました。
結果<その5>
表 1 病原性大腸菌(Escherichia coli IFO3972)付着に対する殺菌効果 単位:Log10 cfu/mL±標準偏差
噴霧菌液菌数
7.75±0.16
噴霧直後付着菌数
6.65±0.26
pH/時間
薬剤
5分
10 分
ヨードカリ滴定法
ピポパ メビウス
滅菌水
-
-
6.28±0.90
6.20±0.88
6.01
240ppm※1
240~250ppm
<2.00
<2.00
9.81
200ppm
200ppm
<2.00
<2.00
9.82
次亜塩素酸
140ppm※2
140ppm
<2.00
<2.00
9.65
ナトリウム
100ppm
100~110ppm
<2.00
<2.00
9.61
50ppm
50~60ppm
9.41
3.16±0.41
2.91±0.92
表 2 腸管出血性大腸菌 O157
※3
(Escherichia coli sakai strain)に対する殺菌効果
単位:Log10 cfu/mL±標準偏差
薬剤
滅菌水
次亜塩素酸
ナトリウム
噴霧菌液菌数
噴霧直後付着菌数
ヨードカリ滴定法
ピポパ メビウス
-
-
240ppm※1
240~250ppm
200ppm
200ppm
140ppm※2
140pp
100ppm
100~110ppm
50ppm
50~60ppm
pH/時間
6.01
9.81
9.82
9.65
9.61
9.41
7.65±0.10
6.72±0.16
5分
6.44±1.00
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
3.48±0.91
10 分
6.40±0.97
<2.00
<2.00
<2.00
<2.00
3.01±0.89
※1 有効塩素濃度として 200ppm を 5 分間維持できる濃度として 240ppm を設定
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※2 有効塩素濃度として 100ppm を 10 分間維持できる濃度として 140ppm を設定
※3 香川大学 医学部 分子微生物学研究室で実施
以上の結果から、被検菌を接種した白菜を用いた殺菌効果確認試験としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、有効塩素
濃度 100ppm を 10 分間維持していることを前提に、初液の濃度を 140ppm に設定し、この液に 5 分間接触させることで、
病原性大腸菌、並びに、腸管出血性大腸菌 O157 を、完全に殺菌することが出来るということがわかり、初液の濃度を
100ppm に設定し、これに 5 分間接触させるという方法でも、病原性大腸菌、並びに、腸管出血性大腸菌 O157 を、完全
に殺菌することが出来るということがわかりました。しかしながら、初液の濃度を 50ppm に調整した場合には、10 分間接触させ
ましても、殺菌できないという確認が取れました。
※ 参考資料として、白菜の部位によって、殺菌効果に違いが見られるのかどうかについて、確認してみました。その結果は、
次のページにまとめました。結果としましては、白菜の部位による殺菌効果の違いは、見られませんでした。
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【白菜の部位による殺菌効果の確認試験 (大腸菌を接種した野菜(白菜)を用いた In vivo での確認試験)】
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地の被検菌のシングルコロニーを釣菌し、LB 培地を用いて、37℃、17~24 時間培養し、遠心分離
機を用いて集菌し、2 回滅菌生理食塩水で洗浄した後、滅菌生理食塩水で希釈し、被検菌濃厚懸濁液(7
Log10cfu/mL)とし、菌液の調製は濁度を確認する方法によって調製することで、その菌数が一定量になるようにしま
した。
2)試料液の調製方法
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ヨードカリ滴定法により有効塩素濃度を確認し、それぞれの菌液と接触時に有効
塩素濃度が、50 ppm、100 ppm、200 ppm になるように、滅菌済みイオン交換水で希釈し、それぞれを試験用の試
料液としました。
3)被検菌接触方法及び効果評価方法
白菜の芯部(I)、芯部と青葉部(II)、青葉部(III)毎にカットしたカット済みの白菜 100g に、大腸菌濃厚懸濁液約
10cc を、カット済み白菜の葉の表と裏に均一に、手動噴霧器を用いて、噴霧接種します。この時、噴霧する大腸
菌懸濁液は、菌数 7 Log10 cfu/mL に調製した上で、試験に供試し、菌液噴霧後の白菜各部位〔白菜の芯部(I)、
芯部と青葉部(II)、青葉部(III)〕と試験用試料液の個液比が 1:10 になるように、各試験用試料液を準備し、その
各試験用試料液中に、菌液噴霧後の白菜を浸漬し、保管後、5 分毎、もしくは 10 分毎に、浸漬した白菜から規
定量を採取し、常法にしたがい生菌数を測定し、被検菌の消長を確認してみました。
※ 尚、付着菌数は、噴霧直後と、固液比 1:10 になるように滅菌水で洗浄した後の付着菌数も確認し、その結果につ
いて、菌数の乗数で記述し、得られた結果を表1に示しました。 但し、白菜の部位による殺菌効果の違いは、見られ
ませんでした。
表1
白菜の部位による殺菌効果の確認結果
菌数:Log10 cfu / mL
薬液
滅菌水
設定
濃度
―
200ppm
次亜塩素酸
ナトリウム
100ppm
50ppm
浸漬時間
0分
5分
10 分
0分
5分
10 分
0分
5分
10 分
0分
5分
10 分
I
5
4
4
5
<2
<2
5
<2
<2
5
3
3
各部位の生残菌数
II
5
4
4
5
<2
<2
5
<2
<2
5
3
3
III
5
4
4
5
<2
<2
5
<2
<2
5
3
3
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