第2分科会 - 近未来保育研究所

第 2 分科会
平成23年度保育研究
配慮を必要とする子どもの保育の充実
~手がかからない子どもに必要な配慮を考える~
保育所名 香取市香取保育所
1
はじめ
対象児の2歳児A子は持ち物の支度や着替えも一人で淡々と行い、保育士の誘いに嫌がることは
ない。トイレも自立し、食事中遊んでしまうこともなく、午睡は一人で布団に入り静かにしている。
友達におもちゃを取られても「A子の・・・」と言うもののそれ以上抵抗しようとしない。A子は
保育士の手を煩わせることが少ない、いわゆる“お利口”タイプの子どもである。
A子と初めて会える入所式は風邪のため欠席し、母親と挨拶を交わす。その時、母親から「A子
は保育所が嫌いなんです。
」と話を聞く。昨年度の担任の話では、朝は泣いて登所することもあり、
表情の乏しさは気になるが、日中は元気に遊び、降所時も笑顔であったという。
今年度もA子の表情の乏しさが気になり、保育所を楽しみにしている様子はまだ伺えない。保育
士のかかわりによって時々笑顔を見せてくれることから、保育士がA子に積極的にかかわることで、
笑顔が増えるのではないか。保育士の積極的なかかわりと我慢しすぎない環境を作ることで、保育
所を楽しみにするようになるのではないかと考えられる。
そこで本研究では、
“お利口”タイプのA子に焦点を当て、A子が保育所を楽しみにすることを
目指し、保育士のどのようなかかわりがA子の笑顔につながり、保育所で意欲的に過ごすようにな
るのかを探ることを目的とする。
2
研究方法
①
②
A子の生活や遊びの様子、友達とのかかわりについて観察し、記録する。
保育者とA子のかかわりを記録する。保育者の働きかけによってA子がどのような表情を
し、どのような行動をとったのかに重点を置く。
③
研究方法①の変化は保育者のどのようなかかわりが影響したかを考察する。
3
対象児
2歳児A子(2歳11ヶ月)
クラスは2歳児5名(女児5名)
、1歳児4名(男児1名・女児3名)計9名の混合クラスで
ある。2歳児は全員在所児、1歳児は全員新入所児である。
(6月より1歳児男児1名、11月より2歳児男児1名、2月より1歳児男児1名・2歳児女児
1名が加わり13名となる。
)
4
事例と考察
A子の生活や遊びの様子、友だちとのかかわりがどのように変化したのかを分かりやすくするた
め、a,登所の様子、b,身の回りの始末、c,食事、d,排泄、e,保育者へのかかわり、f,遊び・友だち
とのかかわりに分類し、月ごとのA子の様子を記録する。
その結果、徐々に自己主張したり、保育者に対してふざけたり、A子なりに甘えてきたり、生活
面でもただ淡々と行うのではなく、意欲的に行う姿が見られたり、遊びも楽しんでいる様子が見ら
れ、笑顔がとても増えた。昨年度のA子を知る職員は表情が豊かになったと感じており、母親もA
子が保育所を楽しみにしていることを話してくれた。
では、保育者のどのようなかかわりがA子の笑顔に、そして意欲的に過ごすことにつながったの
だろうか。
事例より、①A子を気にかけていることを言葉や態度ではっきり伝えたこと、②頑張り過ぎない
環境を作ったこと、③ふざけられる雰囲気を作ったこと、④A子の甘え方に気づき受け入れたこと
という、4つのかかわりのポイントがあったと考えられる。
第 2 分科会
5
まとめ
4月、笑顔が少なく何でも淡々とこなしていたA子に「A子ちゃんもできたね」や泣いて登所し
たA子に「せんせい まってるよ」と①A子を気にかけていることを言葉や態度ではっきり伝えて
きたことで、A子と保育者の間に信頼感が生まれ、6月にはふざける姿を見せるようになる。ふざ
ける姿を受け入れ、③ふざけられる雰囲気を作ったことで、受け入れられている自分にA子は気づ
いたのではないだろうか。そして、9月になると保育室を出る保育者の後をついてくるというA子
なりの甘えを示すようになり、④A子の甘え方に気づき受け入れたことで「きて~」「やって」と
素直に甘えを示すようになってきたのではないかと考えられる。4月より②頑張り過ぎない環境を
作ったことも、心に余裕が生まれふざけたり甘えたりする姿にもつながったと推測できる。
4つのかかわりのポイントは独立したものではなく、それぞれが関連し合っており、現在のA子
の笑顔や意欲的に過ごす姿へとつながったと考えられる。
6
今後の課題
手がかからないからといって、保育士を必要としないのではない。子どもは誰でも保育士の愛情
を受けたいと思っている。今回は人数の少ないクラスであったが、人数が多いクラスでも同様であ
る。何でもよくできるように見えても、子どもたちそれぞれにつまずきはある。一人ひとりの子ど
もの特性を見極め、必要な所で援助できる保育士を目標にこれからも成長していきたいと思う。
第 2 分科会
「配慮を必要とする子どもの保育の充実」
~つながれ!ひろがれ!支援の輪~
市原支会 市原市鶴舞保育所 副 所 長 齋藤 ひとみ
市原市馬立保育所 主任保育士 齋藤 純子
1.はじめに
市原市は千葉県のほぼ中央に位置しており、臨海工業地帯のある北部と、豊かな自然に囲まれた
南部に分かれている。北部では、待機児童が増えている一方で、南部では少子化が進む地域もある。
今回、南部にある南総・加茂地区の6保育所が「配慮を必要とする子どもの保育の充実」という
テーマをもとに、研究に取り組んだ。
2. 設定理由
近年、配慮を必要とする子どもが増えているように感じる。市原市南部にある、小規模・中規模
保育所にも在籍しているのが現状である。このような子ども達を保育していく中で、子どもの発達
や成長を助けていくために、どのような支援の仕方があるのか話し合いをした。
保育所だけではなく保護者や各専門機関が連携を取っていくことで子どもの発達や成長を促す
ことが望ましいという思いから、
『連携』に視点を置き研究を進めていった。
3.研究方法
① 保護者に研究の意図を理解してもらい、協力を得る。
② 配慮を必要とする子どもに対し、個別支援計画を3ヵ月おきに立てて保育の実践をし、経
過や考察をもとに見直しをしていく。
③ 保育経過記録を取り、子どもの行動や思いを考察していく。
④ 6保育所が、それぞれの事例を持ち寄り話し合い、共通理解を深める。
⑤ 発達支援センターの職員からの助言をもとに、子どもや保護者との関わり方を考えていく。
4. まとめ
個別支援計画を立てて保育をしていくことで、援助の仕方が明確になり子どもに対する理解が深
まっていった。配慮を必要とする子どもだけでなくクラスの子ども達にも変化が現れ、共に成長す
る姿が見られた。保育士自身の意識も変わり、一人ひとりの子どもに対してより丁寧な関わりを持
つことができ、職員間の共通理解のもとで支援することができた。
保育所・保護者・専門機関がスクラムを組むことが、結果的に子どもへの支援へと繋がっていっ
たと思う。しかし保護者には様々なタイプがあり、理解を得られなかったケースもあった。これか
らも保護者の心に寄り添い、一緒に考えていく姿勢を持ち続けて支援の輪を繋げ、共に育ち合う保
育を目指したいと思う。
第 2 分科会
配慮を必要とする子どもの保育の充実
~過ごしやすい環境と寄り添う保育~
海匝支会
ひかり保育園保育士
〃 主任保育士
大和田 佳苗
秋 元 悦 子
[はじめに]
旭市は、千葉県の最東端の銚子市に隣接し、西は匝瑳市とも接し人口6万9千人の小都市で東総
地区として農業、漁業、工業を中心に栄え近年は少子化の影響も出ている地区でもあります。
[設定理由]
数年前から「この子ちょっと変わっている。」「気になるね。」と言う声が職員間で囁かれるよう
になりました。同じ事を伝えても通じない、わかってもらえないと言う場面を繰り返すうちに研修
会等の参加や職員会議でも目を向け、女の子の事例を元に取り組む事にしました。
どうやってその子を支援したらよいか手立てが見つからず、公的機関・専門機関・医療機関への
受診、本児への診断に至るまでの母親の心の葛藤、その子の困り感を少しでも減らし、安定した園
生活が送れる様努めようという事で研究を進めました。
[研究方法]
1, 前年度の担任との引き継ぎ・親への働きかけ
0~2歳児までの児童票、観察・経過記録、受診結果(発達検査)等の情報収集・生育歴等を
振り返る
2, 子どもの困り感、クラスの様子を伝える (連絡ノート・口頭)
3, 連携機関への取り組みと具体的な指導方法(絵カード、タイマー等の使用)
4, 個別指導支援計画及び指導記録の様式を検討
5, 職員間での共通理解
[まとめと課題]
子どもの困り感に気づく=子どもと一対一の関係でじっくりと関わる事を保育の振り返りとし
て反省し、決められた研修会だけにとらわれず専門機関で開催する研修会へも積極的に参加し、ア
ドバイスを頂き又、担任がドクターの所へ出向いて指導法を聞き、保護者と共に問題を共有しその
子の成長の為によりよい手立てで保育を進める事が出来ました。
課題としては、これからは保育園だけの問題で終わるのではなくいろいろな機関と連携すること
で子どもの成長を質の良い保育で支えられるよう、職員一同で継続して保護者との連携を丁寧に行
い保護者支援をしていきたいと思います。