「卒業式祝辞(概要)」 (平成27年3月)

[平成 27 年 3 月 1 日実施]
卒業式祝辞(概要)
校長
神戸秀巳
創立 88 年、草創 128 年を迎えた伝統ある秦野高校は、本日第 67 回卒業証書授与式を
迎えました。353 名の卒業生の皆さん、そしてご列席いただきました保護者をはじめ関係
者の皆様、ご卒業まことにおめでとうございます。
私は昨年第 29 代の校長として着任し、皆さんの様子を見守ってきました。そして、
「二十年後の然るべき日本の姿を思い描きながら、人を育て、社会を育て、未来を育てる
学校づくりを進める」と宣言した強い想いを胸に抱きつつ、皆さんに様々なメッセージを
発してきました。
「高校は3年間。しかし、卒業生は生きている限り。」と繰り返し言ってきました。皆
さんには‘根っこ’となり‘支え’となる秦野高校があり、時間を共有し、語り合い、行
動を共にした仲間がいます。決して孤独ではありません。ぜひそのことをいつまでも忘れ
ないでください。
人生を競争に例える人がいますが、私は違うと思います。競争は人よりも早いこと、多
いことなどが求められます。しかし、人生は「自分がいかに満足した、充実した日々を過
ごせたか」や「自分はどれだけ周囲の人々や社会に貢献できたか」が最も大切なことであ
り、多くの場合、早さや多さはそれほど重要な要素ではありません。
高校生活を締めくくる節目の本日、心を込めて一つの言葉を皆さんに贈ります。「汝
(なんじ)、何のためにそこに在りや」という言葉です。「あなたは何のためにそこにい
るのですか」という意味です。
今から 50 年ほど前に、秋田県立秋田高校の鈴木健次郎校長は、「いついかなる時にも、
誰に問われても、すぐにはっきり断言のできる毎日の生活であって欲しい」との想いから、
この言葉を用いて繰り返し生徒たちに問いかけました。この言葉は人々の胸を打ち、やが
て秋田高校から全国に広がり、様々な場で使われるようになりました。私が初めて耳にし
たのは、5年前の岩手県での研修のときでした。
「あなたの存在意義は?」という言い方を私はします。皆さんには自分の将来を主体的
に考え、はっきりとした目的と意識を持って自分の人生に立ち向かって欲しいと思ってい
ます。とはいえ、様々な場面で迷い、とまどうのは当たり前のことです。また、途中で進
む方向が変わることもよくあることです。それらのことは決して悪いことではありません。
しかし、学校や他の人が何かをしてくれるのを期待する受身の姿勢ではなく、何をすべ
きかを自らの頭で考え、心で感じ、自らの責任で判断し、自分の言葉で表現し、積極果敢
に挑戦し、皆さんが自分の力で人生を切り拓いていくことを私は強く望んでいます。
そして、「誠意」「正義感」「使命感」を身に付け、他者との関わりの中で、他者への
思いやりを育てて欲しいと心の底から願っています。
「この世に存在する意義を持たない人はいない」と私は思っています。ただ現時点で、
自分の存在意義が見つかっていない人、自分の存在意義に気づいていない人はおおぜいい
ます。ある意味、「人生は自分の存在意義を見つける旅」ではないかと私は考えています。
以前、皆さんに江戸時代の終わり頃に生きた坂本龍馬の言葉を紹介しました。「人の世
には道は一つということはない。道は百も千も万もある。」と坂本龍馬は言っています。
人生が人それぞれであるように、存在意義も人によって違います。他の人と同じである必
要はないのです。他の人と違うからといって、あせる必要はないのです。
前にも言いましたように、「前を向き続ける全ての人に必ず宝物は現れ」ます。どうぞ
失敗を恐れすぎず、前を向いて進む勇気を持ち続けてください。
「見渡す範囲」すなわち視野が広がり、「ものごとを見たり考えたりする立場」すなわ
ち視点が引き上げられれば、「未来への扉」が次々と開かれ、今までよりももっとワクワ
クするものが目にとまります。それを追究したくなり、行動に移せることはとてもすばら
しいことです。但し、自分が本気で選んだという事実をしっかりと受け止め、自分で責任
を負う覚悟を持たなければなりません。決して他人のせいにしてはいけません。そのこと
から目をそらしてはいけません。
メッセージの最後に、坂本龍馬と同じ時代に生きた吉田松陰の言葉を紹介します。「夢
なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功な
し。ゆえに、夢なき者に成功なし。」
卒業生の皆さんが、高い志を持ち、夢の実現に向けて、充実した人生を送られることを
期待しています。
さて、秦野高校がこれまで積極果敢な教育活動を展開することができましたのは、生徒
はもちろんですが、秦野高校の活動をご理解いただき、多大なご協力とご支援を賜りまし
た保護者の皆様のおかげです。そして、秦野高校を支えてくださっている地域の皆様の応
援のおかげです。多くの皆様のご厚意に対し、職員を代表して、お礼と感謝を申しあげま
す。どうもありがとうございます。
◆現在をあきらめることは未来をあきらめること。
◆大事なのはできるかできないかではなく、やるかやらないかである。
◆できない理由を考えるより、できる方法を考える。