不便益システム 研究所 - UNN関西学生報道連盟

発行日 2015 年 1 月 12 日 (C)UNN 2010
VOL.235
不便さがもたらす効用「不便益」を研究する集団がある。京都大の川上浩
司(ひろし)教授が代表を務める不便益システム研究所だ。便利さを追求す
る中で軽視されてきた不便益を用いて新たなデザインを目指す。メンバーは
およそ 10 人で情報学や心理学、教育学など多種多様な分野の研究者が集ま
り不便益の理論化や不便益を生かした製品の開発を行っている。
素数ものさし大ヒット
不便益研究の始まり
川上教授は京大工学部出身。学生時代は人工知
今まで開発・監修した不便益アイテムで一番の大
不便が生活を豊かにする?
ヒットは素数ものさしだ。目盛りは素数のみで使用
者は隠された数を見つけなければならない。ところ
が使いにくさが逆に受け一時は売り切れになるほど人気を
能の研究をし、便利なものだけを追求していたと
いう。しかし同大助教授時代に恩師の片井修教授
からの「これからの時代、便利なことだけを追求してい
不便益システム
研究所
博した。その他、知的書評合戦として近年広がりを見せて
いるビブリオバトルやスマートフォンのパスワードをジェス
チャーにできるアプリなども開発。川上教授は「これらの作
品を通じて不便益という考えが世の中に浸透してほしい」と
いう。
素数ものさし(定価 577 円。つまり…)
ては駄目だ」という言葉に衝撃を受け、徐々に不便益
の考えを受け入れるようになった。
「便利だったらハッ
ピーというわけではない。人工知能の発達によって考え
ずに済むようになるのが本当に良いことなのか疑問を抱
くようになった」。不便益の研究をしていると懐古主義
とよく間違えられるというが川上さんは「単なるノスタ
ルジーではない」と強調する。
「昔に戻れということで
はない。それでは大学で研究する意味がない」と話し不
川上教授は論理学やネットワーク理論といっ
便の良い部分だけを生かした次の社会を考えているとい
た数学を用いて不便益の理論化を目指してきた
う。
が、10 年たった今でもいつ完成するかの見通
不便益の発想を手助けする
しが立たないという。しかしもし理論が完成すれば、製品に意図的に不
『不便益カード」
便益をもたらしたり、ある商品がなぜ人気があるのかを考察するのに役
(不便益システム研究所
公式 Web ページより)
立つ。「不便益を持ち込めば楽しいハッピーな社会が出来るはず」
。まだ
まだ研究は道半ば。川上教授らの挑む不便益の壮大な研究は始まったば
ジェスチャーをパスワード
にできるアプリ「不便ぇキー」
のロック解除画面
かりだ。 (聞き手=丸岡真人)
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