解説-1 Ⅰ 編成方針・授業時数 1 はじめに 本校の教育

Ⅰ
編成方針・授業時数
1
はじめに
本校の教育課程にかかわる特色は次の8点である。
①本校生徒において十分とは言えない「表現力や思考力」「事象を単純化したり,抽象化して考え
た り , 解 釈 す る 力 」を 育 成 す る た め に , 各 教 科 に お い て , 単 元 末 等 に 課 題 解 決 的 な 学 習 を 位
置付けた。
②本校生徒において十分とは言えない「全身持久力」等の体力を高めるために,総合的な学習の
時間に「健康・体力」の単元を設定するとともに,放課後にトレーニングをする時間を設ける
など,生徒が主体的・協同的・継続的に取り組むことができるようにした。
③総合的な学習の時間の単元の内容を大きく見直し,その中で身体測定・健康診断や体力測定
を実施できるようにする等して,ゆとりある時数を実現した。
④各教科等で 1015 時間という時数に対応するため,行事の見直しと整理を進めるとともに,毎
週金曜日に1日8コマの日課(以下,スーパーフライデー)を設定し,その中で柔軟に活動
を展開するものとした。スーパーフライデーでは,時数を確保するだけでなく,生徒が自分
自身を適切に管理する資質・能力を身に付けることができる場とした。
⑤キャリア教育の研究と実践に取り組んできた経緯や,平成 23 年 1 月の「中央教育審議会『今
後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)』」を受け,各教育活動
において,キャリア発達に関わる基礎的・汎用的能力を位置付け,各教育活動とキャリア教
育との関連を明確にし,指導の充実を図った。
⑥本校の生徒は,旭川市および近郊の多くの小学校から入学していることから,友人関係が形
成しづらいという実態がある。このことから第1学年において,仲間づくりを支援したり,
協調性をはぐくむ活動を取り入れたりすることを指導の重点とした。
⑦「研究大会」を毎年実施し,教科や道徳などで先進的な教育活動の実践に取り組んでいるこ
とから,その成果をもとに指導計画を改善していく。
⑧「教育実習」が本校の大きな業務となっていることから,各教育活動との関連を図り,相互
に充実し,共に成果が得られる計画を作成していく。
2 教育課程の編成方針
(1)ねらい
本教育課程は,次の3点をねらいとする。
①学校教育目標の実現を目指す。
②学校及び生徒,保護者,地域の実態に応じた教育を行う。
③本校の特色を明確にする。
(2)方針
平成 24 年度の教育課程を編成するにあたり,次の4点を方針とする。
①学校教育目標及び本校を取り巻く様々な要因 ,生徒,保護者の実態,附属学校として
の使命などを十分に踏まえ,特色ある教育課程を編成する。
②全面実施初年度のため,新指導計画・新評定計画の妥当性を検証する期間とする。
「特
別活動」「総合的な学習の時間」の評価は3観点で行う。
③本校で長年積み上げてきた実践と研究の成果を活かす。
④教育課程を「各教科」
「道徳」
「特別活動」
「総合的な学習の時間」の4つで構成し,
「各
教科 」「 道徳 」「特 別活動 」「 総合的 な学習の時 間」の関連 を明確にす る。また ,「キ ャ
リア教育」
「食育」「健康教育」「特別支援教育」との関連についても,教育推進計画と
して教育課程に位置付ける。
解説-1
(3)関係法令
教育課程を編成するにあたり,関係法令の内容を踏まえなければならない。本校が踏まえた
主な関係法令と,特に重要と考える条文を以下に示す。
○日本国憲法
○教育基本法
(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受 け さ
せる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自
立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資
質を養うことを目的として行われるものとする。
○学校教育法
第三十条 小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度にお
いて第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
2 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及
び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、
判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、
特に意を用いなければならない。
第四十九条 第三十条第二項、第三十一条、第三十四条、第三十五条及び第三十七条から
第四十四条までの規定は、中学校に準用する。この場合において、第三十条第二項中「前
項」とあるのは「第四十六条」と、第三十一条中「前条第一項」とあるのは「第四十六
条」と読み替えるものとする。
○学校教育法施行規則
第七十二条 中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳、特別活動及び総合的な学
習の時間によって編成するものとする。
2 必修教科は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭及び外国語
(以下この条において「国語等」という。)の各教科とする。
3 選択教科は、国語等の各教科及び第七十四条に規定する中学校学習指導要領で定めるそ
の他特に必要な教科とし、これらのうちから、地域及び学校の実態並びに生徒の特 性そ
の他の事情を考慮して設けるものとする。
第七十三条 中学校(併設型中学校及び第七十五条第二項に規定する連携型中学校を除
く。)の各学年における必修教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの
授業時数、各学年における選択教科等に充てる授業時数並びに各学年におけるこれ らの
総授業時数は、別表第二に定める授業時数を標準とする。
(310 編成方針・時数-6 に掲載)
○中学校学習指導要領
○中学校学習指導要領解説総則編
第2章 教育課程の基準
第1節 教育課程の意義
「…学校において編成する教育課程は,教育基本法や学校教育法をはじめとする教育課
程に関する法令に従い,各教科,道徳,総合的な学習の時間及び特別活動について それ
らの目標やねらいを実現するよう教育の内容を学年に応じ,授業時数との関連にお いて
総合的に組織した各学校の教育計画である。」
第2節 教育課程に関する法制 1 教育課程とその基準
「…各学校においては,国として統一性を保つために必要な限度で定められた基準に従
いながら,創意工夫を加えて,地域や学校及び生徒の実態に即した教育課程を責任をもっ
て編成,実施することが必要である。」
解説-2
(4)学校教育目標
本校の学校教育目標は次のとおりである。
自立をめざす生徒~よく見,よく聞き,よく思い
この目標の実現に向け,知,情,意,体の4つの観点から本校の目指す生徒像を設定して
いる。それは,次の4点である。
①常に探究し,創造する生徒(知)
②豊かな心をもち,他を思いやる生徒(情)
③志をもち,たゆまぬ努力をする生徒(意)
④強健な身体を養い,たくましく生きる生徒(体)
これらの姿を目指して生徒をはぐくむにあたり,平成 24 年度の重点を次の通りとした。
平成 24 年度
平成 24 年度
経営の重点目標
①家庭や地域,他附属等との連携に基づく
「旭 川 に あ る 附 属 中 学 校 な ら で は の 教 育 」
と「誰からも認められ,受け入れられる新
たな時代にふさわしい公教育」
②学習指導要領の趣旨やねらいを確実に実
現する創意ある教育課程の編成・実施及
び管理・検証
指導の重点目標
①自己を正しく振り返り新たな学習を見通
し よ く 設 計 す る 「自 分 自 身 を 適 切 に 管 理
する資質・能力」を高める指導体制の整備
と充実
② 「確 か な 学 力 」を 確 実 に は ぐ く み , 更 に 高
める各教科における指導方法の工夫・改
善及び評価の確立
(5)本校を取り巻く様々な要因
本校では,様々な先進的な取組を通して,今後の教育の在り方を探っている。このような
取組による教育計画や指導実践,成果や課題などは,様々な面で教育活動のモデルとして,
多くの学校からの求めがある。
このことから,本校は,教科はもちろん全ての教育活動において,指導計画の整備や実践 ,
反省,改善に取り組み,地域や日本の教育を牽引し発展させる役割を担っていく。
(6)生徒の実態
本校では,附属旭川小学校から 70 名程度,公立小学校から 50 名程度が,旭川市全域およ
び近隣の町から入学している。このことから,第1学年において,一般にいうところの「中
1ギャップ」をはじめとし,友人関係や学級集団の形成,活動に様々な課題を抱えている。
このことから,第1学年のすべての教育活動において,好ましい人間関係づくりを支援し,
集団で生活し学んでいくベースを形成していく。とりわけ,4~5月に仲間づくりや集団づ
くりを重点とした宿泊研修を行う。第1学年で培った社会性をもとに第2学年では,自己を
見つめ,他者との関わりから自己を向上させることにより,集団の向上に努める態度と能力
の育成を図る。そして,第3学年では,社会と将来を見つめ,自己実現に努める態度と能力
をはぐくむ。
これらの取組を充実させるために,具体的には,道徳教育の各学年の重点目標を生徒の実
態に基づいて定めたり,「教育相談」を年間3回実施したりするなどの方策をとった。
さらに,本校では,数年前に実施した「NRT,CRT及び道徳性検査」「全国学力調査 」
やここ数年継続的に実施している「全国体力・運動能力調査」をもとにし,生徒の実態を次
頁のようにまとめた。
解説-3
○知的好奇心は高く,概ね学力は身に付いているが,他の観点に比べ,表現力や思考力が
やや低い。
○事象を単純化したり,抽象化して考えたり,解釈することがやや不足している。
○思いやりの心や信頼関係を築く面に弱さがあり,奉仕の精神も十分とは言えない。また,
他者への配慮や集団としての意識が薄い。
○自分の目標の実現に向け努力しようとする態度が身に付いている。ただ,目先の目標や
成果にとらわれる。
○考えて運動することはできるが,全身持久力等が低い。
これらのことに対応する方策も設定した。「表現力や思考力がやや低い」「事象を単純化した
り,抽象化して考えたり,解釈することがやや不足している」ことについては,校内研究にて
学習指導と評価の改善を図ることで改善しようと取り組んでいる。「奉仕の精神も十分とは言
えない」ことの改善を目指して,各学年で勤労体験学習・職場体験学習を実施することにした。
「目先の目標や成果にとらわれる」「全身持久力等が低い」ことの改善を目指して,総合的な学
習の時間において,コンパス《将来設計》の内容を充実させたり,グローカルにおいて《健
康・体力》の単元を設定したりした。
(7)保護者の実態
様々なアンケートや意識調査から,本校の保護者の実態を次のように考えている。
○教育熱心で学校の教育活動に協力的である。
◯子どもに,自律心や思いやりの心を持った優しい人になってほしいと願っている。
◯学校に対して,体験的な活動の充実と確かな学力の定着を願っている。
PTA活動は活発であり,本校に対して様々な求めや期待がある。本校では,これらのこ
とを踏まえ,さまざまな教育的効果や目標の達成を目指し,特色ある教育活動の充実に取り
組んできた。例えば,修学旅行において,東京周辺の施設をめぐり見聞を広げたり望ましい
人間関係の形成を目指したりした。また,旭川市内の 120 あまりの事業所の協力による勤労
体験学習・職場体験学習を全学年において実施することとした。さらに,校内研究にて学習
指導と評価の改善を図ることはもちろん,放課後に週3回のセミナーを実施して,生徒の学
び伸ばしと学び直しを支援する。
(8)附属学校としての使命
本校には,次の3つの附属学校としての使命がある。
①中等普通教育を行う。
②北海道教育大学学生の教育実習を行う。
③教育の理論及び実際に関する研究及びその実証を行う。
①は,義務教育を実施する中学校として果たす使命である。②は,北海道教育大学の附属
学校としての使命であり,このことから,5月,8月,9月,2月に様々な形で教育実習が
行われる。本校の教育活動は,これらの実習との関連から構想し,計画を作成している。③
は,先進的な取組を通して地域や日本の教育を牽引する使命である。このことから,研究主
題を設定し,教科を中心として研究実践を積み上げ,6月に教育研究大会を行っている。
解説-4
(9)学校評議員会
本校では,年に数回,学校評議員会を開催し,外部から学校運営について意見を求めてい
る。近年の指導,助言について,簡潔にまとめると次のようになる。
○学校評価は,学校の改善に役立つことが重要であり,評価のための評価になったり,負担
感を感じるものであったり,また,数値目標を高く掲げすぎてはならない。
○新しい学習指導要領に基づいた教育実践は,附属学校の先駆的な役割に,公立の学校が期
待している。一方,影響力もあることから,慎重に取り組む必要がある。
○総じて生徒に「思考力・判断力・表現力」等はもとより,意欲や熱い志、他を思いやる心 ,
たくましい身体などを育成する確かな学校教育の推進において着実な成果をあげている。
○今後、学校は、更なる研鑽に努め,新しい時代にふさわしい教育の創造に一層尽力するこ
とが大切である。
実際には,詳細な指導,助言の部分もふまえ,学校運営の向上に寄与できる学校評価の要
領を策定した。また,大学や附属小学校,附属幼稚園との共同研究の取組を充実させ,今後
の取組の糸口としている。
(10)長年積み上げてきた実践
本校では,前述したとおり先進的な教育を推進してきたことから,様々な実績を積み上げて
きた。その一部を簡潔にまとめると次のようになる。
○教科指導の研究による成果として,創作や表現,製作,調査,実験などを充実させた課題
や問題を解決する指導,グループにより学び合い高め合う指導,自己と社会を見つめ,生
き方を考えたり,志を高めたりする指導などがある。
○目標準拠評価の実施に伴い,指導と評価の一体化を図るための指導や評価,計画の改善を
繰り返してきた。
○道徳教育では,学級の指導計画を整備するとともに,多様な学習活動を取り入れた道徳の
時間の充実に努めてきた。
○行事の実践では,東京における修学旅行,旭川市内における勤労体験学習などを実施して
きた。
これらの多くの実践について,様々な視点で見直し,改善を繰り返し,新たな目標や新た
な形で実施していく。
(11)研究の成果
本校の学校研究では,この 10 年,「志を高め『学びを生き方につなぐ力』の育成」,「志を
高め『自己を創る力』の育成」,「『自己を拓く力』の育成」「『考える力』の育成」「主体的に
『あらわす力』の育成」と研究主題を設定し教科指導の研究に努め,生徒の様々な能力を向上
させる手立てを工夫してきた。課題や問題を解決する学習,レポートや論文にまとめ発表す
る学習,思考を深め技能を活かす創造的な学習など有効性が確認された手立てについては,
指導計画に位置付け,これからも日常的な指導として定着させていく。
今年度は,各教科において単元末等に課題解決的な学習などを位置付け,「確かな学力」を
確実にはぐくみ,さらに高める指導方法として実践していく。
解説-5
3
教育活動の時数
本校の教育活動を計画するにあたり,学校教育法施行規則を踏まえ,必修教科の授業時数は
次のようにした。
授業時数
学活
理科
総合的な
学習の時間
道徳
数学
外国語
社会
第1学年
140
105
140
105
45
45
105
70
140
35
50
35
1015
第2学年
140
105
105
140
35
35
105
70
140
35
70
35
1015
第3学年
105
140
140
140
35
35
105
35
140
35
70
35
1015
・
美術
区分
音楽
国語
保健体育
技術 家庭
必修教科の授業時数
また,授業日数と授業時数及び各種の教育活動にあてる時数は,次の表のとおりである。
[時数集計]第1学年
授業日数:209
授業時数:1279
行事
カット等
95
100
必修
総合的な学習の時間
道徳
895
グローカル
35
コンパス
27
学活
23
残時数
35
69
[時数集計]第2学年
授業日数:211
授業時数:1285
行事
カット等
112
98
必修
総合的な学習の時間
道徳
875
グローカル
35
コンパス
30
学活
40
残時数
35
60
[時数集計]第3学年
授業日数:203
授業時数:1253
行事
カット等
99
109
必修
875
総合的な学習の時間
道徳
グローカル
35
解説-6
33
コンパス
37
学活
残時数
35
30
今年度の教育課程における時数の大きな特徴は残時数の増加である。昨年と比較してみると,
次の表のようになる。
各学年の残時数の昨年度との比較
第1学年
第2学年
第3学年
昨年度(平成23年度)
24
27
10
今年度(平成24年度)
69
60
30
このように,各教科等の時数が 1015 時間となっても,昨年度よりも多くの残時数を確保でき
た。第3学年でさえ,30 時間確保できているので,インフルエンザ等で5日間の学年閉鎖にな っ
たとしても,標準時数を十分に確保できる。来年度の3年生は,2年生で修学旅行を終えてい
るので,今年度以上に残時数が増えることになる。また,1・2年生は,今年度で既に 60 時間
以上の残時数があるので,この時数を使って,ゆとりある教育活動を展開できる。
このように多くの時数を確保できた理由は主に2つある。1つ目は,毎週金曜日に1日8コ
マの日課を設定するスーパーフライデーを実施したことによって,第1学年:24 時間,第2学
年:24 時間,第3学年:35 時間の時数を新たに生み出したことである。2つ目は,総合的な学
習の時間に「健康・体力」の単元を設定し,健康診断などこれまで行事として扱っていたものを
総合的な学習の時間として扱うことにしたことである。
解説-7
解説-8
解説-9
解説-10
解説-11