リスクコミュニケーションは 何をめざし誰が担うのか 2015年3月18日 科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター 渡辺美代子 第3回国連防災世界会議 パブリックフォーラム内シンポジウム 「災害に強くしなやかな社会の創造を目指して」 リスクコミュニケーションとクライシスコミュニケーション 平常時 リスクコミュニケーション コンセンサスのためのコミュニケーション 有事への備え 危機発生時の危機管理や減災・防災に関する合意形成も含む 非常時 (緊急時) 回復期 クライシスコミュニケーション 組織的ケアのコミュニケーション リスクコミュニケーション コンセンサスのためのコミュニケーション 準有事のリスク管理や復興に関する合意形成や協働 リスクに関わる具体的な問題解決に向けて、平常時に 専門家、行政、市民が行うコミュニケーションの例 1 事例1 子どもたちの主体性を引き出す地震防災教育 大木聖子氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)ヒアリングから ■時期: 随時 ■場所: あきる野市立増戸小学校など ■取組主体: 大学教員(専門家)、小学生(市民) ■主催者: 東京大学地震研究所、あきる野市立増戸小学校など ダンゴ虫のポーズを教える 小さなリスクと大きなリスクを教える ・ダンゴ虫のポーズで怪我:小 ・ダンゴ虫のポーズで大怪我 or 死:大 自分の身の回りのリスクを考える 10分程度のショート訓練 家庭や地域社会のリスクを点検 ダンゴ虫のポーズ 大木研究室HPより転載 http://raytheory.jp/gallery/ 特徴:子供が主体的にリスクを見抜き、判断する力を養う 2 事例2 避難所運営のシュミレーション 大木聖子氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)ヒアリングから ■時期: 2012年10月~(年一回実施) ■場所: 南三陸町立歌津中学校 ■取組主体: 中学校教員他(事業者)、中学生(市民) ■主催者: 東京大学地震研究所、南三陸町立歌津中学校 中学生のみで避難所の模擬運営 ・シナリオを作らない 教師が対応すべきイベントを模擬発生させる ・「土砂崩れで車が埋まって助けが必要」 ・「急病人が出た」 ・問題行動の多い避難民 自分たちで考えて対応(正解なし) 避難所本部立ち上げの様子 災害後の役割を認識 リスクコミュニケーション事例調査報告書 http://www.jst.go.jp/csc/pdf/riskfactresearch.pdf 特徴:正解の無い問題を考え、終了後も長く問いかけが残る 3 釜石市津波防災教育 事例3 片田敏孝氏(群馬大学理工学府教授/広域首都圏防災研究センター長)ヒアリングから ■時期: 2009年度 ■場所: 岩手県釜石市 ■取組主体: 大学教員(専門家)、市(行政)、住民(市民) ■主催者: 群馬大学災害社会工学研究室、釜石市 津波防災教育カリキュラム作成 防災教育 ・想定にとらわれるな ・最善をつくせ ・率先避難者たれ 子供の防災意識が変わる 親の意識が変わる・地域の意識が変わる 保護者と避難場所点検の様子 リスクコミュニケーション事例調査報告書 http://www.jst.go.jp/csc/pdf/riskfactresearch.pdf 特徴:子供の意識を変えることで親の意識を変え、 さらに地域全体の防災に対する意識を変える 4 主体の多様性 事例1 行政 専門家 子どもたちの主体性を 引き出す地震防災教育 市民 事例2 避難所運営の シミュレーション 事例3 事業者 メディア 釜石市津波防災教育 カリキュラム リスクに関する情報を当事者に届けて血肉とするには、 リスクを日常生活に埋め込むことが必要 5 事例の構成要素 体験する・考える 家族や仲間に伝える 津波教育 既存の活動 避難訓練等 事例3 釜石市津波防災教育カリキュラム プログラム化 避難所 避難所運営のシミュレーション 知識を体系化 ダンゴ虫 子どもたちの主体性引出す 地震防災教育 事例1 事例2 災害時の行動が変わる 6 論点 • リスクコミュニケーションを社会としてどのように 実施していけばよいのか? – “当事者に届けて血肉とする”リスクコミュニケーション は、従来の「研究と開発」では担われにくい – 防災の研究開発の成果はリスクコミュニケーションを通し て役立つものが多い(特に一般の人が関わるもの) • 災害時の行動が変わるためには何が必要か? – 各自治体・各地域・各機関で新しいプログラムを作るのか 既存の活動(避難訓練等)を見直すのか – 災害時のリーダーは誰が担うのか 7
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