治療は外科的手術です。お腹を切開し、出ているものをお腹の中に戻して腹直筋を縫い KAC 便り 合わせて終了です。しかし、他の組織との癒着や内臓の壊死を伴う場合は緊急性と難易度 の高い手術となり、危険性は高まります。そうなる前に、すこしでも臍ヘルニアがある場 合は早めに病院にいらして、手術の相談をしましょう。また、膨らんでいる部分がいつも 2015 年冬号 は柔らかいのに硬くなっていたり、押しても腹腔内に戻らなくなっていたり、痛みがあっ たりする場合は緊急性が高いと考えられますので、早急に動物病院を受診してください。 B.鼠径(そけい)ヘルニア(たまに見られます) 鼠径(そけい)ヘルニアは足の付け根の隙間から臓器 が押し出されている状態です。 愛らしい犬や猫の赤ちゃん、テレビや YouTube でもよく見かけますよね。 本来ならば足の付け根には血管、神経、精巣に繋がる管 今回は、赤ちゃんの先天性疾患の中でもよく見られるヘルニアについてご紹介します。 や子宮を支える靭帯などが通っていますが、悪化すると 犬猫は人と違って多胎動物のため、先天性疾患の発症率が人に比べて多いのです。 小腸や膀胱、子宮などが出てくる事もあります。 症状としては隙間が小さく、指先程度の小さな膨らみ足 ヘルニアのお話 A~C A.臍ヘルニア(よく見られます) 見た目で一番わかりやすいのが臍ヘルニアです。 の付け根に見られます。指で押すと引っ込む程度の小さ な膨らみで、膨らんでいる場所以外は無症状です。 進行していくと膨らみが大きくなったり、隙間が広がりヘルニア 内に小腸や膀胱などの臓器が入り込んでしまう場合があります。小 おへそのところがぷっくりふくらんでいるものは 腸が入り込むと腸閉塞を引き起こしたり、膀胱が入り込んでしまう 臍ヘルニアの可能性があります。臍ヘルニアは、 と排尿が出来ず、日常生活にも支障をきたしてしまいます。また、 お腹の部分の腹筋が閉じずに穴が開いた状態です。 押し出された臓器や組織が元に戻らなくなってしまうような症状 そこからお腹の中の脂肪や内臓が脱出して皮下が が出ると、痛みが伴っている場合があります。 膨らみます。穴が小さければ脂肪だけが出てきま すが、大きくなると腸や膀胱などの内臓が出てきやすくなります。内臓が穴に挟まってお 腹の中に戻れなくると、腸の通過障害、排便障害、排尿障害、しまいには臓器が壊死、と 3 番が鼠径ヘルニア 6 番が臍ヘルニア いった命に係わる問題に進行します。診断には視診、触診に加えてレントゲン検査や超音 波検査でヘルニアの中身を画像的に確認します。 ヘルニアの穴に腸が入り込んで 閉塞、壊死してしまう流れ C.横隔膜ヘルニア(まれに見られます) 横隔膜は赤ちゃんがお腹の中にいるときから少しずつ作られ、生まれるときにはしっか り胸とお腹を隔てて横隔膜として存在します。それが何らかの原因で作られず、横隔膜の 足りない部分からヘルニアをおこすことがあるのです。 小型犬によくある股関節脱臼 股関節脱臼は股関節の骨盤と大腿骨を繋いで いる靭帯が切れて大腿骨が通常の位置から外れ 症状は、ヘルニアの大きさ、入り込んでいる臓器や程度によって様々です。循環呼吸器 てしまった状態をいいます。 系症状(呼吸が浅く苦しそう、元気がなくうずくまっているなど)、消化器系症状(食欲不 通常、交通事故や高所からの落下などの大き 振、嘔吐、下痢、腹痛など) 、そのほかに肝臓が入り込んだ場合は肝障害を起こしたり神経 な外力が加わった時に起こることが多いですが、 症状が出たりすることもあります。 小型犬、特にトイ種(ポメラニアン、ヨークシャ 先天性の場合、始めははっきりとした症状が見られないことがありますが、徐々に成長 ーテリア、トイプードル、マルチーズ、チワワ するにつれて症状が出てきて緊急性が出てきます。そうなる前に気付いてあげるためには、 など)では先天的な骨格異常として骨盤と大腿骨 定期的に病院に来てレントゲン検査や超音波検査をしていきましょう。 のはまりが浅い子が多く、大きな外傷がなくても 先天性でない場合は、外傷(多くは交通事故や転落事故)が原因でなることがあります。 容易に脱臼してしまう場合があります。片側だけ 飼い主さんの注意でペットたちを事故から未然に防いであげられるよう気を付けましょう。 でなく両後肢起こる可能性をはらんでいます。 ヘルニアにはその他にも椎間板ヘルニア、会陰ヘルニアなどなど・・・たくさんありま す。どれも最終的には手術での治療になりますが、再 また、ホルモンの分泌異常、栄養不良が要因に なって起こる事もあります。 発の可能性もあるのです。ただのヘルニアと考えない 股関節のはまりが浅くなる病気として代表的 で、早期発見、早期治療を心がけましょう。 なのは、レッグペルテス病(虚血性大腿骨頭壊死 ヘルニアの他には・・・ 症)や股関節形成不全です。レッグペルテス病は小型の幼若犬、股関節形成不全は大型犬に 心奇形、肝障害、骨格奇形などなどあります。 多くみられます。 それはまたの機会に(^^)/ 診断は視診、触診、レントゲン検査で行います。また他の関節や内臓に問題が隠れてな いかも同時に確認します。 脱臼後は直ちに整復しないと痛みが続き足がつったように挙げ、歩行が困難になります。 現在、有限会社 KAC では、私達と一緒に働いてくださるスタッフさんを募集中です! 時間の経過と共に、筋肉の硬直や周辺組織の萎縮が進み、さらに長期化すると脱臼した場 詳しくはホームページをご参照ください。 所に偽関節を作り、関節が固まってしまいます。 関節がしっかりしている場合は、全身麻酔をかけて痛みや筋肉の緊張を和らげた上で、 外れた股関節をはめなおしバンデージで固定します。 永代橋アニマルクリニック 金町アニマルクリニック 江東区永代 1-9-1 葛飾区金町 2-29-6 ℡ 03-5875-8771 http://park14.wakwak.com/~kac / 2015 年 12 月 1 日 発行 ℡ KAC ビル 03-3609-7517 http://www.k-a-c.net/ しかしすでに股関節と大腿骨を繋ぐ太い靭帯が切れているため、この方法だけでは再発 することが多いのが現状です。その場合は大腿骨頭を切除する手術が適応となります。 元々関節に異常がある場合は、初めから手術を選択した方が良好な結果が得られるケー スが多いです。 術後、四肢をついて歩けるようになるまで短くとも 1 ヶ月程度かかり、屈伸運動のリハ ビリやケージレストが必要となります。
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