2019年度中期電線需要見通し

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2019年度中期電線需要見通し
調査統計専門委員会
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1.予測の前提と作業方法
減速懸念や、円高の再来、原油価格の上昇、電気等
調査統計専門委員会では、2015年8月までの状
況を基に2019年度における銅及びアルミ電線の需
のエネルギー価格の更なる上昇等の懸念材料も考え
られる。
予測の手法としては、内需は2019年度における
要予測を行った。
まず、予測の前提となる日本経済見通しについて
日本経済の状況、各種公知情報を用いた回帰分析に
は、民間調査機関による中期予測の指標をベ-スと
基づく委員各社のアンケ-ト結果から、統計的手法
することとした。予測の前提とした主なマクロ経済
により集約し、内需の部門別予測を行った。また、
指標を表1に示す。
輸出部門については、国際問題専門委員会幹事会の
アンケ-ト結果をベ-スとし国内外の状況を想定し
表1.2019年度需要見通しの前提とした
て予測を行った。
日本経済マクロ指数
2014年度から2019年度迄の
年平均伸び率
2.2019年度電線需要予測結果
銅電線、アルミ電線の全体の2019年度需要動向
実質GDP成長率
+1.2%
は次のとおりと予測した。
民間最終消費支出
+0.2%
2019年度の銅電線出荷量
民間企業設備投資
+3.0%
内 需
704千トン(+0.3%)
民間住宅投資
-0.1%
輸 出
24千トン(-5.1%)
公的固定資本形成
+0.1%
合 計
728千トン(+0.1%)
鉱工業生産指数
+1.4%
( )内は2014年度から2019年度までの年平均伸び率
足元の日本経済は、2014年4月の消費税率の引
2019年度までの穏やかな日本経済成長見通しを
き上げ後、駆け込み需要の反動減が大きく、特に個
受け、電線需要についてもマクロの伸びには届かな
人消費が落ち込み、夏以降景気の回復に弱さが見ら
いものの穏やかに伸びていくと見込み、728千トン
れた。しかし、年末以降は、原油価格の下落や雇用
と予測した。需要部門別では2014年度実績に対し、
環境の改善が図られ、徐々に生産や輸出が持ち直し
通信部門、自動車部門、輸出部門は減少、電気機械
ている。2015年度に入り、回復にやや一服感がみ
部門は横ばい、電力部門、建設・電販部門、その他
られるものの景気は穏やかな回復基調が続いている。
内需部門が増加という結果となった。
2019年度までの経済動向については、海外経済
の穏やかな拡大を受けて輸出が伸び、原油価格の低
2019年度のアルミ電線出荷量
下や円安などに支えられ、経済活動は回復していく
内 需
24千トン(+2.1%)
と見込まれる。東京五輪の経済効果や国土強靭化計
輸 出
2千トン(-2.8%)
画等による公共投資拡大なども期待し、全般に穏や
合 計
26千トン(+1.7%)
かな成長を続けるものと考えられる。一方で、中国
経済の下ぶれ、ユーロ圏経済の悪化など世界経済の
( )内は2014年度から2019年度までの年平均伸び率
アルミ電線は、輸出部門が減少となるが、内需は
電力部門もその他内需部門も増となり、全体では増
と予測した。
(4)自動車部門
2019年度の国内自動車生産台数は、海外生産へ
の移管、若年層の車離れや人口減少による国内需要
減から伸びは期待できず、890万台(2014~2019
各需要部門別の出荷見通しは、以下のとおりであ
る。
年平均伸び率-1.5%)と予測した。原単位は、ア
ルミ化、小型・軽量化の進展により減と見込む。当
部門の2019年度電線出荷量は67千トン(2014~
(1)通信部門
2019年平均伸び率-1.5%)と予測した。
通信部門は、メタルから光へのシフトという方向
性は継続し、低位安定が続くと見込み、当部門の
2019年度出荷量は11千トン(2014~2019年平均
伸び率-2.5%)とした。
(5)建設・電販部門
建設・電販部門は、民間住宅投資は人口や世帯数
の減少により減とみるものの、東京五輪による特需
は引き続き残り、再生可能エネルギー関連や耐震整
(2)電力部門
備、強靭化等インフラ整備なども堅調に推移すると
電力会社の経営環境は不透明なものの、設備投資
考える。東京五輪開催までには建設投資によるピー
は 回復し 、高 経年設 備の 更新需 要を 期待し て、
クが立つ年もあると思われるが、中期的には緩やか
2019年度銅電線出荷量は60千トン(2014~2019
な伸びにとどまるとし、2019年度銅電線出荷量は
年平均伸び率+1.3%)とした。
351千トン(2014~2019年平均伸び率+0.6%)
一方、アルミ電線の2019年度出荷量は、19千ト
とした。
ン(2014~2019年平均伸び率+1.0%)とした。
(6)その他内需部門
(3)電気機械部門
電気機械部門は、重電、家電、電子・通信、電装
その他内需部門は、民間設備投資が堅調であり、
リニアなど鉄道関連の需要増が期待できることから、
品、その他の小部門に分け、回帰分析の手法により
2019年度銅電線出荷量は55千トン(2014~2019
予測した。
年平均伸び率+1.4%)と予測した。
小部門別にみると、以下のとおりである。
重電部門:電力向けの回復と、電気小売業の自由化
や電力会社への供給に参入する民間業者投資や再
なお、電力部門を除く内需のアルミ電線は、5千
トン(2014~2019年平均伸び率+7.4%)と予測
した。
生可能エネルギー向けは堅調に推移するとみて、
2014~2019年平均伸び率+1.7%と見込む。
(7)輸出部門
家電部門:個人消費はほぼ横ばいに推移し、海外生
国際問題専門委員会幹事会でのアンケ-ト結果で
産シフトの進展は継続するとみて、年平均伸び率
は、超高圧ケーブルや直流CVケーブル等、世界的
-1.2%と見込む。
にインフラ向け需要が期待できるものの、生産拠点
電子・通信部門:高性能品の国内での製造は維持さ
の海外シフトは進行し、ローカルメーカーを中心と
れるとみて、年平均伸び率-0.2%と見込む。
した現地調達が多くなり大きな伸びは見込めないと
電装品部門:自動車の高機能化の進展はあるものの
し、2019年度銅電線出荷量は24千トン(2014~
国内自動車生産台数の減により、年平均伸び率-
2019年平均伸び率-5.1%)、アルミ電線は2千ト
1.1%と見込む。
ン(2014~2019年平均伸び率-2.8%)と予測し
結果、2019年度銅電線出荷量は160千トン(2014
た。
~2019年平均伸び率0.0%)とした。
図1
2019年度主要部門別出荷見通し
千トン
400
340.1
350
351
2014年度実績
300
2019年度予測
250
200
160.1 160
150
100
50
56.3
12.5
72.2
60
67
51.3
55
31.2
11
24
0
通 信
電 力
電気機械
自動車
建設電販
その他内需
輸 出
2019年度中期見通し 部門別 2014~2019年度年平均伸び率
2019年度中期見通し 部門別 2014~2019年度年平均伸び率
1.4%
1.3%
0.6%
2.0%
0.0%
-2.0%
-4.0%
-6.0%
0.0%
-2.5%
通 信
電 力
電気機械
表2
-1.5%
自動車
建設電販
-5.1%
輸 出
その他内需
中期電線需要見通し
(出荷ベース)
年 度
部 門
通
信
電
力
電 気 機 械
重
電
家
電
電子・通信
電 装 品
そ の 他
自
動
車
建 設 ・ 電 販
2013
2014
2019
2015
実績
実績
構成比
13.5
( 17.0)
55.4
(%)
12.5
1.7
( 18.1) ( 75.7)
56.3
7.8
見通し
11
( 18)
58
2015年9月
単位:千トン
19/14 19/15
構成比
(%)
1.5
( 75.0)
8.1
予測
構成比
(%)
11
1.5
( 19) ( 73.1)
60
8.2
年平均
年平均
伸び率
伸び率
(%)
-2.5
( 1.0)
1.3
(%)
0.0
( 1.4)
0.9
160.4
37.1
14.7
26.3
54.2
28.2
160.1
36.8
13.8
28.3
53.9
27.3
22.1
160
38
13
28
53
28
22.3
160
40
13
28
51
28
22.0
0.0
1.7
-1.2
-0.2
-1.1
0.5
0.0
1.3
0.0
0.0
-1.0
0.0
75.7
72.2
10.0
69
9.6
67
9.2
-1.5
-0.7
338.4
340.1
47.0
342
47.7
( 3.8)
( 3.5) ( 14.6)
( 4) ( 16.7)
その他内需
54.0
51.3
7.1
53
7.4
( 20.8) ( 21.6) ( 90.4)
( 22) ( 91.7)
内
需
計
697.4
692.4
95.7
693
96.7
( 2.3)
( 2.3) ( 9.6)
( 2)
( 8.3)
輸
出
20.1
31.2
4.3
24
3.3
( 23.2) ( 23.9) ( 100.0)
( 24) ( 100.0)
合
計
717.5
723.5
100.0
717
100.0
(注) 1.( )内はアルミ電線を示し外数。
2.四捨五入のため、計と合わない場合がある。
351
48.2
( 5) ( 19.2)
55
7.6
( 24) ( 92.3)
704
96.7
( 2) ( 7.7)
24
3.3
( 26) ( 100.0)
728
100.0
0.6
0.7
( 7.4) ( 5.7)
1.4
0.9
( 2.1) ( 2.2)
0.3
0.4
(-2.8) ( 0.0)
-5.1
0.0
( 1.7) ( 2.0)
0.1
0.4
図2
部門別出荷推移
万トン
100.0
輸出
その他内需
93.6
建設・電販
5.1
90.0
自動車
86.6
3.9
7.1
電気機械
電力
7.0
80.0
通信
72.4
71.7
70.0
68.7
68.3
2.8
4.3
7.5
7.1
2.3
3.9
71.7
72.8
3.3
3.3
7.4
7.6
8.4
7.1
45.2
42.1
60.0
50.0
41.2
44.9
47.2
40.0
48.2
47.0
47.7
10.0
9.6
22.1
22.3
7.8
8.1
1.7
1.5
7.6
9.8
30.0
10.2
10.7
10.5
25.7
9.2
23.7
20.0
25.1
23.1
22.4
22.0
10.0
10.1
8.3
0.0
10.3
2.2
2.2
2000
8.5
2.0
2.2
2005
7.7
2010
1.9
2012
2013
2014
8.2
1.5
2015
(見通し)
(左側の数字は内外需計を100とした構成比%)
2019
(予測)
年度