3.平成26年度の活動評価と課題 (1) 図書館利用 え、それに見合った図書館のあり方が求められる。 平成 26 年度は、平成 25 年度に中原図書館が武蔵小杉 (3) ICT推進によるサービスの向上と図書館管理運 駅前に移転・開館したことによる混雑がやや落ち着いた 営の効率化 ため、中原図書館の利用者人数はやや減少したが、貸出 人数・貸出点数とも前年度より増加、貸出冊数は約 172 ここ数年、川崎市立図書館ではICT推進を最重要施 万冊で前年度比4%増加した。これは指定都市の図書館 策の一つとして取り組んでおり、中原図書館では、移転 でも単独施設の貸出冊数としては 20 都市の中で第6位 に伴い、自動書庫、自動貸出機、自動予約棚、BDS(無 と大健闘した。市立図書館全体では、前年度に比べ約 断持ち出し防止装置)等を設置した。平成 25 年 9 月に 1.6%の増、個人利用人数は川崎市全体の人口は約 0.9% は市立図書館全館のコンピュータ機器の更新を行うと の増であるのに対し、 川崎市立図書館全館の平成 26 年度 ともに、中原図書館以外の図書館にも自動貸出機やBD の個人利用登録総人数は約 57 万5千人 (前年度比約7% Sを導入した。また、平成 25 年度末には各地区館の利 増)であり、人口増以上に図書館の登録者数は伸び続け 用者用インターネット端末の更新を行った。自動貸出機 ている。貸出人数は約 273 万人(同3%減)で減少した。 の利用率は自動予約棚のある中原図書館は約 80%の利 利用人数・貸出人数が減少傾向にあるものの、市立図書 用があるが、他の自動予約棚の無い館では幸図書館が約 館の個人貸出冊数合計は、約 677 万冊で増加しており、 36%と利用率が高いが、他の館で概ね 20%程度利用に留 6年連続で 600 万冊を超えている。 まっている。ICT化の推進により図書館管理運営の効 予約受付冊数は約 197 万冊、 前年度比約3%増であり、 率化を図り、自動貸出機の利用者を増やすと同時に、I 中原図書館だけでなく市立図書館全体で増加した。予約 CTを利用しない利用者やICTに馴染めない利用者 された蔵書は、各図書館間を頻繁に行き来して提供・返 へのマンパワーによる支援も必要である。 却されるため、市立図書館間を運搬される冊数が予約数 (4) 「読書のまち・かわさき」の積極的な展開 に呼応している。平成 26 年度の予約・回送冊数は約 276 万冊(前年度比約3%増)で、これは市立図書館全蔵書 平成 20 年度より「読書のまち・かわさき」事業の取組 冊数の約 1.4 倍となる数字であり、蔵書が各館を巡って が一層広範になり、市立小中学校、大学、議会図書室、 合理的に回転している様子をうかがわせる。一方、物流 J1リーグ川崎フロンターレ、商工会議所、区役所、市 面での増強をはかるため、 平成 25 年度から2トントラッ 民活動センター等との連携業務、図書の交換・再利用、 ク2台体制での運行を実施した。 二ヶ領用水関係各種市民団体・機関等との連携事業等を 団体貸出については、前年度より貸出回数・登録団 積極的に展開してきた。 体・貸出冊数とも増加し、224 団体に 4,046 回、32,633 市立小中学校の関係では、小中学校全校及び特別支援 冊の貸出があった。 学校 2 校が図書館総合システムで運用されている。 また、授業への資料提供、調べもの学習・職業体験・ (2) 市民の旺盛な資料・情報利用の意欲と関心の広さ 見学等の受入、学校図書館コーディネーター・ボランテ 市立図書館ホームページのアクセス件数は約 335 万 4 ィアの研修への協力等を行ったが、 「子ども読書活動推進 千件(前年度比約5%増)に増えており、資料検索ペー 計画」 (第2次)に基づき、中原図書館を中心とする公共 ジへのアクセスも、約 167 万回(前年度比約 17%増) 図書館側の参画を一層強化する必要がある。 に増えている。図書館の蔵書利用の中にはベストセラー 学校への授業支援として資料の団体貸出の他に、 「読 のように短期的に利用希望が集中するものもあるが、イ 書のまち・かわさき」事業をより推進するため、学校か ンターネット等で古い蔵書を検索し借り出す利用も多 ら要望の多いテーマに沿った資料をあらかじめ選書し、 く、多種多様なタイトルの図書が息長く利用され続けて セットにして貸出す「授業支援図書セット」の貸出を行 いる。この現象は電子的技術の高度化、検索・予約の利 った。 便性が向上するにつれ、市民生活における調べもの、調 大学連携については、 平成 21 年度末に協定を結んだ明 査研究的な用途・ニーズの拡大と図書館の特性がマッチ 治大学図書館の市民利用や平成 25 年6月に覚書を取り し始めてきたことが要因と考えられる。個人の読書だけ 交わした日本女子大学西生田図書館の多摩区民の利用は でなく、市民や地域の課題解決に役立つという役割が増 概ね順調に進んだ。 平成 22 年度末に協定を結んだ和光大 5 学附属梅根記念図書・情報館との間では、自動車文庫車 (6) その他 両の活用による相互の蔵書を相互の図書館カウンターで ・ボランティアグループとの協働でのおはなし会開催、 貸出できる連携事業を推進した。 平成 24 年度末に協定を 各種ブックリスト発行等を行った。 結んだ日本映画大学との相互利用についても連携事業を ・川崎市立図書館ホームページ、図書館だより、新着図 推進した。 書案内、市政だよりなどで積極的に広報を行った。 ・寄贈図書や図書館の除籍図書等のリユース、リサイク 平成 27 年2月には絵本作家・かこさとしさんをお迎 えし「絵本作家かこさとし川崎の思い出−1950 年代のセ ルを活発に行った。 ツルメント活動と子どもたち−」をテーマとして、読書 ・市立図書館、関係行政、関係外部機関等の研修に関し 普及講演会と展示会を開催した。 て実施または職員派遣を積極的に実施した。 ・自動車文庫の五力田ポイント・細山ポイントを 1 月に 川崎フロンターレとの間では、 「川崎フロンターレと本 開設した。 を読もう!」事業を継続・発展させた。 「ブックランド Todoroki」については等々力陸上競技場の改修のため平 4.平成27年度の活動目標 成 26 年度も開催できなかったが、選手、監督たちの推薦 図書リーフレット『キックオフ!“読書のまち かわさ 川崎市立図書館の活動については、前述の新中原図書 き”vol.6』 、特製しおりの発行・配布、読書啓発ポスタ 館の 4 つの運営方針に沿った事業展開と、市立図書館の ー掲示、フロンターレ・コーナー設置をしたほか、市立 現段階での大きな運営方針である「川崎市立図書館の運 小中学校や地区図書館での選手によるおはなし会や劇団 営理念と活動目標」 (平成 18・19 年度川崎市立図書館協 ひとみ座による人形劇等を行った。また、平成 25 年度に 議会答申) に明示されている下記7つの理念と 38 の目標 引き続き「帯コメント大賞」を実施した。 に沿って進めて行く。 (1) 市民の生涯学習を支える図書館 (5) 中原図書館の運営 (2) 市民の仕事や生活に役立つ図書館 (3) 川崎としての特色ある図書館 平成 25 年春に移転した中原図書館は、 「6つのコンセ プト」 により整備を行ってきたが、 その具現化に向けて、 (4) 学校図書館との連携を推進する図書館 平成 24 年 10 月に「4つの運営方針」を策定した「①市 (5) 市民に信頼され市民が支える図書館 民の生涯学習を支える拠点として、多種多様な資料を収 (6) 持続的で安定した効果的・効率的な運営をめざす図 書館 集・提供し、様々な課題解決に役立てます、②誰もが使 (7) 図書館職員の専門的能力と資質の向上をめざす図書 いやすい場やサービスを提供します、③特色ある川崎の 館 図書館活動を展開します、 ④市立図書館の業務を統括し、 効率的な管理運営を図ります」という4つの運営方針に より、貸出・閲覧サービスの充実、ビジネス支援の強化、 企画・運営事業のさらなる充実、職員の専門性向上など を目指して運営したが、運営方針に沿ってどこまで実現 できるか課題は多い。中原図書館だけでなく、市立図書 館全体の運営課題について、検証が望まれる。 中原図書館利用者の傾向については、これまでも子ど もから高齢者までと幅広い年齢層の方々に御利用いただ いていたが、特に平日の夕方以降の時間帯で、通勤通学 帰りのビジネスパーソンや学生の利用が多い。武蔵小杉 駅直結という利便性や平日の夜間の開館時間を午後9時 までとしていることなどが要因ではないかと考えている。 また、各図書館の老朽化対策として長寿命化を計画的 に進めて行く必要があるが、複数年計画の4年目として 平成 26 年度は高津図書館の電動書庫のリニューアル工 事を行った。 6
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