公開特許公報 特開2015

〔実 8 頁〕
公開特許公報(A)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-166337
(P2015−166337A)
(43)公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A01N 25/12
(2006.01)
A01N
25/12
101 4H011
A01P 13/00
(2006.01)
A01P
13/00
A01N 59/08
(2006.01)
A01N
59/08
A
A01N 59/00
(2006.01)
A01N
59/00
C
審査請求 未請求
請求項の数5 OL (全12頁)
(21)出願番号
特願2015-13316(P2015-13316)
(71)出願人 000002004
(22)出願日
平成27年1月27日(2015.1.27)
昭和電工株式会社
(31)優先権主張番号
特願2014-26862(P2014-26862)
東京都港区芝大門1丁目13番9号
(32)優先日
平成26年2月14日(2014.2.14)
(33)優先権主張国
日本国(JP)
(71)出願人 000127879
株式会社エス・ディー・エス
バイオテッ
ク
東京都中央区東日本橋一丁目1番5号
(74)代理人 100064908
弁理士
志賀 正武
(74)代理人 100094400
弁理士
鈴木 三義
(74)代理人 100163496
弁理士
荒 則彦
(74)代理人 100146879
弁理士
三國 修
最終頁に続く
(54)【発明の名称】顆粒状除草剤および顆粒状除草剤の製造方法
(57)【 要 約 】
【課題】安定性に優れ、長期間除草性能を持続できる顆粒状除草剤を提供する。
【解決手段】本発明の顆粒状除草剤は、塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、結
着材とを含み、その80質量%以上の形状が、最長径/最短径=1.0∼1.5を満たし
、粒径が2mm以上である顆粒状除草剤。
【選択図】なし
( 2 )
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【特許請求の範囲】
【特許文献2】特開平5−186308号公報
【請求項1】
【発明の概要】
塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、結着材と
【発明が解決しようとする課題】
を含み、
【0004】
その80質量%以上の形状が、最長径/最短径=1.0
しかしながら、顆粒状の物質が特定のサイズ以下となる
∼1.5を満たし、
と、燃焼性が高く、また衝撃により爆発するなどのリス
粒径が2mm以上である顆粒状除草剤。
クが生じやすくなり、取り扱いに注意が必要であるとい
【請求項2】
う問題があった。また消防法上の危険物と判定された場
前記結着材が、チキソトロピー性を有する化合物である
請求項1に記載の顆粒状除草剤。
合には、輸送・保管・製造などあらゆる工程において特
10
殊な設備の設置や取り扱いが義務付けられており、生産
【請求項3】
コストが嵩んでしまうという問題があった。
塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウムと、結着材と
【0005】
を含む混合物に、水を加えて混練する混練工程と、
また、顆粒は通常の作製方法では、その形状が俵状に形
混合された混合物を押し出し、ペレットを形成する押し
成されてしまうため、衝撃に弱い。そのため、輸送・保
出し工程と、
管・製造などあらゆる工程で割れが生じ、顆粒状除草剤
前記ペレットの形状を最長径/最短径=1.0∼1.5
のサイズが所定の形状以下のサイズとなることが頻繁に
を満たすように造粒する造粒工程と、
生じていた。すなわち、予定していた除草効果の持続性
造粒した顆粒を2mm以上のサイズに分ける分類工程と
を維持することができなかった。またサイズが小さくな
、
れば、消防法上のリスクもより高くなるという問題があ
分類後の顆粒を乾燥させる乾燥工程とを含む顆粒状除草 20
った。
剤の製造方法。
このため、安定性が高く、長期間除草性能を持続できる
【請求項4】
顆粒状除草剤の開発が求められていた。
前記混練工程において、前記混合物の総重量に対して、
【0006】
7/100∼20/100の重量の水を加える請求項3
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、安定性
に記載の顆粒状除草剤の製造方法。
に優れ、長期間除草性能を持続できる顆粒状除草剤を提
【請求項5】
供することを目的とする。
前記押し出し工程における押し出し速度を、300cm
【課題を解決するための手段】
/sec∼450cm/secとする請求項3または4
【0007】
のいずれかに記載の顆粒状除草剤の製造方法。
本発明者らは、鋭意検討の結果、顆粒状除草剤の形状お
【発明の詳細な説明】
30
よびサイズを所定の形状にすることに注目した。顆粒状
【技術分野】
除草剤のサイズを大きくすることは、乾燥工程の長期化
【0001】
および処理工程数が追加される問題を生じ、分散性の向
本発明は、顆粒状除草剤および顆粒状除草剤の製造方法
上を目指すために顆粒状物質を微細化するという従来の
に関する。
流れからも反するため、ほとんど検討されていなかった
【背景技術】
。
【0002】
これに対し本発明者らは、顆粒状除草剤の形状およびサ
水田、畑等に生える雑草を除草するための除草剤として
イズを所定のサイズとし、特定の成分を有する顆粒状除
、塩素酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムのいずれかを
草剤を形成することで、安定性が高く、長期間除草性能
含有する除草剤が使用されてきた(例えば、特許文献1
を持続できることを見出し、本発明を完成させた。
)。これらの除草剤は、調整や取り扱いの容易性から液 40
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の
状のものが主流であった。しかし、長時間の持続性を得
手段を提供する。
るためには、顆粒状の除草剤が好ましい(例えば、特許
【0008】
文献2)。
(1)本発明の顆粒状除草剤は、塩素酸ナトリウムと、
また顆粒状の除草剤は、水田、畑に均一に分散させるた
炭酸水素ナトリウムと、結着材とを含み、その80質量
めに、その顆粒サイズを小さくする検討が進められてい
%以上の形状が、最長径/最短径=1.0∼1.5を満
る。
たし、粒径が2mm以上である。
【先行技術文献】
【0009】
【特許文献】
(2)上記(1)に記載の顆粒状除草剤は、その構成要
【0003】
素である結着材がチキソトロピー性を有する化合物であ
【特許文献1】特開2010−047489号公報
50
ってもよい。
( 3 )
JP
3
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【0010】
【発明を実施するための形態】
(3)本発明の顆粒状除草剤の製造方法は、塩素酸ナト
【0016】
リウムと、炭酸水素ナトリウムと、結着材とを含む混合
以下、本発明を適用した顆粒状除草剤および顆粒状除草
物に、水を加えて混練する混練工程と、混合された混合
剤の製造方法について、図を適宜参照しながら詳細に説
物を押し出し、ペレットを形成する押し出し工程と、前
明する。
記ペレットの形状を最長径/最短径=1.0∼1.5を
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわか
満たすように造粒する造粒工程と、造粒した顆粒を2m
りやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示
m以上のサイズに分ける分類工程と、分類後の顆粒を乾
している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際
燥させる乾燥工程とを含む。
【0011】
とは異なっていることがある。また、以下の説明におい
10
て例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそ
(4)上記(3)に記載の顆粒状除草剤の製造方法では
れらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない
、前記混練工程において、前記混合物の総重量に対して
範囲で適宜変更して実施することが可能である。
、7/100∼20/100の重量の水を加えてもよい
【0017】
。
(構成成分について)
【0012】
本発明の顆粒状除草剤は、塩素酸ナトリウム、炭酸水素
(5)上記(3)または(4)のいずれかに記載の顆粒
ナトリウムおよび結着剤を含む。塩素酸ナトリウムは、
状除草剤の製造方法では、前記押し出し工程における押
化学式NaClO3 で表され、ナトリウムの塩酸塩であ
し出し速度を、300cm/sec∼450cm/se
る。炭酸水素ナトリウムは、化学式NaHCO3 で表さ
cでもよい。
れ、ナトリウムの炭酸水素塩であり、重曹とも呼称され
【発明の効果】
20
る。いずれも除草効果を有する化合物である。
【0013】
塩素酸ナトリウムは、高い除草効果を有する。一方炭酸
本発明の顆粒状除草剤は、塩素酸ナトリウムと、炭酸水
水素ナトリウムは、高い耐燃焼性を有する。そのため、
素ナトリウムと、結着材とを含み、その80質量%以上
塩素酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを同時に含有す
の形状が、最長径/最短径=1.0∼1.5を満たし、
ることで、高い耐燃焼性と高い除草性を同時に実現でき
粒径が2mm以上である。顆粒状除草剤が塩素酸ナトリ
る。
ウムと炭酸水素ナトリウムを同時に含むため、高い耐燃
【0018】
焼性と高い除草性を同時に実現できるという効果を実現
結着剤は、除草効果を有する化合物同士を繋ぎ合わせ、
することができる。
顆粒状に成型するための役割を示す。結着剤としては、
またその形状が球状に近く、そのサイズが2mm以上で
化合物同士を繋ぎ合わせることができれば特に限定され
あるため、機械的安定性が高く、衝撃を受けても割れ難 30
ないが、例えば、ザンサンガム、ラムザンガム、ローカ
い。そのため、消防法上の制約を受けることがない。ま
ストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ウェラン
た同時に除草効果の持続安定性を高くすることができる
トガム、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム、
。
でんぷん、セルロース等の天然多糖類、ダイズ粉、穀物
【0014】
粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、ダバコ茎粉、クルミ殻粉、ふ
本発明の顆粒状除草剤の製造方法は、塩素酸ナトリウム
すま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣等の有機固
と、炭酸水素ナトリウムと、結着材とを含む混合物に、
体担体、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘度類(例えば
水を加えて混練する混練工程と、混合された混合物を押
、カオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(
し出し、ペレットを形成する押し出し工程と、前記ペレ
例えば、タルク、ピロフィライト等)、シリカ類(例え
ットの形状を最長径/最短径=1.0∼1.5を満たす
ば、珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン[含有微粉
ように造粒する造粒工程と、造粒した顆粒を2mm以上 40
珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で製品によ
のサイズに分ける分類工程と、分類後の顆粒を乾燥させ
り珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。])
る乾燥工程とを含む。そのため、上述の安定性に優れ、
、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、アタパルジ
長期間除草性能を持続できる顆粒状除草剤を効率的に形
ャイト及びゼオライト等の天然鉱物質類、レンガ粉砕物
成することができる。
、フライアッシュ、砂、クレー、硫酸バリウム、炭酸カ
【図面の簡単な説明】
ルシウム、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、アルミニ
【0015】
ウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート
【図1】本発明の一態様にかかる顆粒状除草剤の製造方
、スメクタイト、ベントナイト、ヘクライト、合成含水
法について模式的に示した模式図である。
珪酸等の無機鉱物性粉末、ポリエチレン、ポリプロピレ
【図2】危険物第一類確認試験のフローチャートである
ン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体等、硫安
。
50
、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、堆肥などを用
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いることができる。
(以下、「最長径」という)と、同顆粒における最も短
【0019】
い径(以下、「最短径」という)が、最長径/最短径=
中でも結着剤には、チキソトロピー性を有する化合物が
1.0∼1.5の範囲にある形状を指す。
好ましい。チキソトロピーとは、ゲルのような塑性固体
顆粒が略球状であることにより、燃焼性及び爆発性に対
とゾルのような非ニュートン液体の中間的な物質が示す
する安定性が増す原因については不明であるが、体積対
、粘度が時間経過とともに変化する性質のことを意味す
表面積の割合が変化することに起因するものであると考
る。具体的には、せん断応力を受け続けると粘度が次第
えられる。また顆粒が略球状であれば、物理的な衝撃に
に低下し液状になり、制止すると粘度が次第に上昇し、
対して力が分散されるため、物理的な安定性も高くなる
最終的に固体状になる性質を意味する。チキソトロピー
。すなわち、顆粒が輸送・保管・製造などあらゆる工程
性を有する化合物の具体例としては、カオリン、ベント 10
において割れてしまうことを抑制し、所定の除草成分の
ナイト等を含む粘度等が挙げられる。チキソトロピー性
持続性を維持することができる。
を有していれば、後述する混練工程において結着剤を均
従来、顆粒の形状については、特に何もしなければ俵状
一に分散させることが可能となり、さらに混練後は高い
に形成される。そのため、略球状にするためには、俵状
安定性を維持することができる。
の顆粒を略球状に変化させる工程を行う必要があり、工
またチキソトロピー性を有する化合物の中でも、結着剤
程数の増加につながる。そのため、形状を当該形状にす
としてベントナイトを用いることが好ましい。ベントナ
ることは、当業者が通常の知識に基づいて容易に発想さ
イトは入手が容易であり、低コストで顆粒状除草剤を作
れるものではなく、あえて工程を増やしてでも当該形状
製することができる。
にしたという点が本発明において非常に重要な点である
【0020】
。
また顆粒状除草剤における結着剤の重量比は、10質量 20
【0024】
%∼30質量%であることが好ましく、10質量%∼2
(顆粒の粒径について)
0質量%であることがより好ましい。結着剤の量が少な
本発明の顆粒状除草剤は、その粒径が2mm以上である
すぎると、顆粒状除草剤の機械的安定性が低下し、衝撃
。ここで、「顆粒の粒径が2mm以上である」とは、目
により割れやすくなる。すなわち、長時間に渡って除草
開き2mmの網ふるい(日本工業規格Z8801の「標
性能を維持することが難しくなる。一方、結着剤の量が
準ふるい」に規定する網ふるいで、目開き2mmのもの
多すぎると、機械的安定性は高くなるが、除草効果が劣
をいう)に顆粒の集合を入れ、回転させながら毎分16
る。結着剤には除草効果はないため、結着剤の量が多く
0回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを3
なれば、それだけ除草性能が劣る。すなわち、同一面積
0分間で通過するものが10質量%以下であることを意
に対して多くの顆粒状除草剤を要するため効率的ではな
味する。この試験方法は、危険物の試験及び性状に関す
い。
30
る省令(平成元年二月十七日自治省令第一号)の第一号
【0021】
第一項に準ずる、粉粒に該当するか否かの試験方法であ
顆粒状除草剤における塩素酸ナトリウムの重量比は、4
る。
0質量%∼60質量%であることが好ましく、45質量
顆粒状除草剤の粒径が2mm以上であれば、除草効果を
%∼55質量%であることがより好ましい。塩素酸ナト
長期間持続することができる。
リウムは、高い除草効果を有するため、顆粒状除草剤に
また形状が略球状であるため、それぞれの顆粒状除草剤
おける塩素酸ナトリウムの重量比が顆粒状除草剤の主の
が割れ難く、畑等に顆粒状除草剤を分散させた際に、各
成分となることで、顆粒状除草剤全体として高い除草性
顆粒状除草剤の除草効果の持続性を一定とすることがで
能を維持することができる。
きる。
【0022】
従来、顆粒状除草剤のサイズは分散性を高めるために小
顆粒状除草剤における炭酸水素ナトリウムの重量比は、 40
さくすることが一般的であった。またサイズが大きくな
25質量%∼40質量%であることが好ましく、30質
ればそれだけ、顆粒状除草剤の内部まで乾燥させるため
量%∼40質量%であることがより好ましい。炭酸水素
に時間を要し、生産性が低下してしまう。そのため、サ
ナトリウムは、高い耐燃焼性を示す。そのため、顆粒状
イズを大きくするということは、当業者が通常の知識に
除草剤における炭酸水素ナトリウムの重量比が当該範囲
基づいて容易に発想されるものではない。すなわち、従
となることで、顆粒状除草剤の防爆性および耐火性を高
来の方向性に反し、かつ生産性の低下を犠牲にしても、
めることができる。
サイズを大きなものとしたという点が本発明において非
【0023】
常に重要な点である。
(顆粒の形状について)
【0025】
本発明の顆粒状除草剤は、全体の80質量%以上の顆粒
(顆粒状除草剤の製造方法)
が略球状である。略球状とは、顆粒における最も長い径 50
本発明の顆粒状除草剤の製造方法は、塩素酸ナトリウム
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と、炭酸水素ナトリウムと、結着材とを含む混合物に、
しく、320cm/sec∼400cm/secとする
水を加えて混練する混練工程と、混合された混合物を押
ことがより好ましく、342cm/sec∼378cm
し出し、ペレットを形成する押し出し工程と、前記ペレ
/secであることがさらに好ましい。押し出し速度を
ットの形状を最長径/最短径=1.0∼1.5を満たす
当該範囲とすることで、ペレット形状を適切な密度、大
ように造粒する造粒工程と、造粒した顆粒を2mm以上
きさにすることができる。押し出し速度が速すぎると、
のサイズに分ける分類工程と、分類後の顆粒を乾燥させ
混練された物質が多くの空気等を含んだ状態で押し出さ
る乾燥工程とを含む。
れることがあり、ペレットの密度が低くなり、割れやす
【0026】
くなる。また押し出し速度が遅すぎると、生産効率が低
図1は本発明の一態様にかかる顆粒状除草剤の製造方法
下する。
について、模式的に示した模式図である。まず、図1に 10
【0030】
示すように、塩素酸ナトリウムと、炭酸水素ナトリウム
得られたペレット3を、最長径/最短径=1.0∼1.
と、結着材とを混合する。このときの比率は、形成され
5を満たすように造粒する。造粒方法は、例えば市販の
る顆粒状除草剤とほぼ同一の比率となるため、上述の顆
整粒機を用いる方法が挙げられる。整粒機としては、ダ
粒状除草剤についての説明における各構成要素の成分比
ルトン社のマルメライザー(登録商標)等を用いること
と同一の範囲とすることができる。
ができる。
【0027】
従来の顆粒状除草剤では形状を特に重要視していないた
混合された混合物はホッパー1と呼ばれるタンクに移さ
め、当該造粒工程を含まない。
れ、さらに水を加えられる。このとき加えられる水は、
これに対し、本発明では造粒工程を含むことで、燃焼性
混合物の総重量に対して、7/100∼20/100の
及び爆発性に対する安定性や物理的な力に対する安定性
重量であることが好ましい。水の量が少なすぎると混合 20
を高くすることができる。すなわち、安定性に優れ、長
物の粘度が高すぎて混練作業を効率的に行うことが難し
期間除草性能を持続できる顆粒状除草剤を提供すること
い。また後述する押し出し工程において得られるペレッ
ができる。このように、従来なかった工程を追加するこ
トのサイズも小さくなる。これは、押し出し時に押し出
とは、生産効率の低下を招く恐れがあるため、当業者が
される混合物の水分が少ないと、混合物が粗となり、後
通常の知識に基づいて容易に発想されるものではない。
述する押し出し工程において混合物が自重で落下するタ
なお、造粒工程は、必ずしも前述のペレットを形成する
イミングが早くなるためである。また、得られるペレッ
押し出し工程や後述する乾燥工程と別に行う必要はなく
トも水分が少ないため、崩れやすく、作業行程中にペレ
、例えば実質的に造粒工程に相当するような操作を押し
ットが崩れて、サイズが小さくなってしまう場合もある
出し工程または乾燥工程で行うことで、顆粒の形状を造
。一方、水の量が多すぎると粘度が低すぎるため、押し
粒してもよい。
出し工程で得られるペレットが所定の形状を維持するこ 30
【0031】
とが難しくなる。これは、水分が多いと、混合物が自重
次に造粒された顆粒を2mm以上のサイズに、メッシュ
で落下するタイミングが遅くなり、得られるペレットの
を有するふるい4を用いて分類する。分類工程は、例え
最長径と最短径の比が大きくなる。そのため、後述する
ば目開き2mmの網ふるい(日本工業規格Z8801の
造粒工程で所定の形状に造粒することが難しくなる。ま
「標準ふるい」に規定する網ふるいで、目開き2mmの
た形状を造粒することができても、その造粒工程に時間
ものをいう)に顆粒の集合を入れ、回転させながら毎分
を要する。さらに、混合物が自重で落下するタイミング
160回の打振を30分間与えてふるうことで行うこと
が遅くなることは、すなわち得られるペレットの総量(
ができる。図1に示すように、顆粒のサイズが2mm以
総体積、総重量)が多くなることが意味し、造粒後の粒
下のものは、メッシュの隙間からふるい落とされるため
子が非常に大きくなる。粒子が大きくなることは、安全
、分類が可能となる。
性の観点では好ましいが、造粒工程時の作業性や、使用 40
【0032】
時の使用性の観点では好ましくない。
最後に得られた顆粒を乾燥させることで、粒径が2mm
【0028】
以上で、最長径/最短径=1.0∼1.5を満たす顆粒
次に混練された混合物は、排出口2を介して、所定の直
状除草剤を得ることができる。
径で押し出される。押し出されたペレット3は、ある程
得られた顆粒状除草剤は当該サイズ、形状であるため、
度の長さまで排出されると自重により下に落下する。そ
除草効果を長期間持続することができる。
のため、得られるペレット3は俵状であり、最長径/最
乾燥工程では、顆粒状除草剤のサイズが大きいため内部
短径が1.5超であるものが多い。
まで乾燥させるのに時間を要し、生産性が低下してしま
【0029】
う。そのため、サイズを大きくするということは、当業
このとき、押し出し工程における押し出し速度を、30
者が通常の知識に基づいて容易に発想されるものではな
0cm/sec∼450cm/secとすることが好ま 50
い。
( 6 )
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【0033】
を重量比6加えて、混練工程を行い均一化した。混練さ
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが
れた物質を押し出し機に通して、排出口から排出するこ
、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく
とでペレットを作製した。その際、均一なペレットを作
、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内
製するために、排出口の直径を2.0mmとした。排出
において、種々の変形・変更が可能である。
口から排出されたペレットをさらに、マルメライザー(
【実施例】
ダルトン社製:登録商標)に投入し造粒した。そして、
【0034】
造粒された顆粒を190℃の乾燥機にかけ、水分量を1
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものと
.0%以下まで乾燥し顆粒状除草剤を得た。
する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるもので
【0039】
はなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施 10
(比較例2)
することができる。
比較例2は、造粒工程を行っておらず、さらに混練時の
【0035】
水分量を変更した点が比較例1と異なる。具体的には、
(実施例1)
混練時の水分量を9とした。その他の点は、比較例1と
塩素酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリ
同様とした。
ウム)とベントナイトを重量比50:37:13の割合
【0040】
で混合した。混合された混合物100に対し、さらに水
(比較例3)
を重量比9加えて、混練工程を行い均一化した。混練さ
比較例3は、造粒工程を行っていない点が比較例1と異
れた物質を押し出し機に通して、排出口から排出するこ
なる。その他の点は、比較例1と同様とした。
とでペレットを作製した。その際、均一なペレットを作
【0041】
製するために、排出口の直径を2.5mmとした。排出 20
(顆粒の評価)
口から排出されたペレットをさらに、マルメライザー(
・粒径の測定方法
ダルトン社製:登録商標)に投入し造粒した。そして、
目開き2mmの網ふるい(日本工業規格Z8801の「
造粒された顆粒を190℃の乾燥機にかけ、水分量を1
標準ふるい」に規定する網ふるいで、目開き2mmのも
.0%以下まで乾燥し顆粒状除草剤を得た。
のをいう)に顆粒の集合を入れ、回転させながら毎分1
【0036】
60回の打振を与えて30分間ふるい、ふるいの下に落
(実施例2)
ちた粒子が10質量%以下であった場合、顆粒の粒子径
実施例2は、実施例1と炭酸水素ナトリウムとベントナ
が2mm以上であるとした。
イトの比率を変更した点が異なる。具体的には、塩素酸
・粒子の形状
ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)
得られた顆粒状除草剤のうち10gをとり、定規を用い
とベントナイトを重量比50:30:20の割合で混合 30
た目視にて、各粒子の最長径と最短径を測定した。最長
した。混合された混合物100に対し、さらに水を重量
径/最短径=1∼1.5の範囲に収まる粒子を略球状と
比9加えて、混練工程を行い均一化した。混練された物
みなし、全量のうち略球状に該当する粒子の質量%を測
質を押し出し機に通して、排出口から排出することでペ
定した。
レットを作製した。その際、均一なペレットを作製する
・水中崩壊性
ために、排出口の直径を2.5mmとした。排出口から
水中崩壊性とは、水中における粒の崩壊性を測定したも
排出されたペレットをさらに、マルメライザー(ダルト
のであり、測定手段は平成14年1月10日付け13生
ン社製:登録商標)に投入し造粒した。そして、造粒さ
産第3987号農林水産省生産局長通知に準拠した方法
れた顆粒を190℃の乾燥機にかけ、水分量を1.0%
で測定した。具体的には、直径9cmのガラス製シャー
以下まで乾燥し顆粒状除草剤を得た。
【0037】
レに水(3硬度水)50mlを入れて静置し、供試粒剤
40
5粒をほぼ均一になるように投入する。投入直後から供
(実施例3)
試粒剤が原型をとどめなくなるまでの時間を測定した。
実施例3は、実施例2と混練時の水分量を変更した点が
ここで、3硬度水は、炭酸カルシウム0.3077g、
異なる。具体的には、混合された混合物100に対し、
酸化マグネシウム0.092gを少量希塩酸に溶かした
さらに水を重量比12加えて、混練工程を行い均一化し
のち、砂浴上で蒸発乾固して塩酸を除去し、水1Lに希
た。その他の点は、実施例2と同一とした。
釈する。
【0038】
この水は硬度30度となるため、使用に際して10倍希
(比較例1)
釈することで、3硬度水を得ることができる。
塩素酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリ
【0042】
ウム)とベントナイトを重量比50:30:20の割合
上記評価指標のもと、実施例1∼3、比較例1∼3の顆
で混合した。混合された混合物100に対し、さらに水 50
粒状除草剤の測定結果を表1にまとめた。なお、表1の
( 7 )
JP
11
2015-166337
A
2015.9.24
12
「略球状か否かの判定」において「○」は略球状であり
比較例1∼3のそれぞれの除草剤の消防法に基づいた評
、「×」は略球状でないことを示す。
価を行った。まず比較例1について、以下の検討を行っ
【0043】
た。
【表1】
(1)臭素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験を実施
したところ、結果は燃焼時間126秒であり、標準物質
の燃焼時間(38秒)以上であった。
(2)過塩素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験を実
施したところ、結果は燃焼時間69秒であり、標準物質
の燃焼時間(208秒)以下であった。
10
(3)落球式打撃感度試験を塩素酸カリウム50%爆天
で10回測定したところ、すべて不爆であった。
(4)落球式打撃感度試験を硝酸カリウム50%爆天で
10回測定したところ、すべて爆であった。
【0044】
比較例1の除草剤は、同省令に定めるところの「粉粒状
実施例1∼3で得られる顆粒状除草剤は、80質量%以
」に該当する固体である。上記(1)∼(4)の結果を
上の形状が、最長径/最短径=1.0∼1.5を満たし
考慮すると、比較例1の除草剤は消防法に定めるところ
、粒径が2mm以上である。比較例1は、略球状ではあ
の第二種酸化性固体に該当した。よって実施例1の除草
るが、そのサイズが2mm以下である。比較例2は、粒
剤と比較すると、難燃性や爆発性の点から不安定であり
径が2mm以上であるが、粒形が略球状でない。比較例
、法規性状の取り扱い制限も種々生じるものである。
3は、粒径が2mm以下であり、粒径も略球状ではない 20
【0048】
。
次に比較例2の除草剤について、以下の試験を行った。
また実施例2及び実施例3、または比較例2と比較例3
(1)過塩素酸カリウムを標準物質とした大量燃焼試験
を比較すると、混練時の水分量が多くなることで得られ
を実施したところ、結果は不燃であった。
る粒の形状が大きくなることがわかる。また形状が略球
(2)鉄管試験を実施したところ、結果は爆であった。
状であれば、水中崩壊性が緩やかであり、除草性能を長
比較例2の除草剤は、同省令に定めるところの「粉粒状
時間維持できることがわかる。
」に該当しない固体である。上記(1)(2)の結果を
【0045】
考慮すると、比較例2の除草剤は消防法に定めるところ
(消防法に基づいた評価)
の第三種酸化性固体に該当した。よって実施例1の除草
実施例1∼3、比較例1∼3で得られた顆粒状除草剤に
剤と比較すると、難燃性や爆発性の点から不安定であり
ついて、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年 30
、法規性状の取り扱い制限も種々生じるものである。
二月十七日自治省令第一号)の記載に基づいた各試験を
【0049】
実施した。危険物の判定フローチャートについては、図
最後に比較例3について、以下の試験を行った。
2に記載する。図2における「粉粒状」とは2mm以上
(1)臭素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験を実施
の粒子と同義である。
したところ、結果は燃焼時間126秒であり、標準物質
【0046】
の燃焼時間(38秒)以上であった。
・実施例1の除草剤の評価
(2)過塩素酸カリウムを標準物質とする燃焼試験を実
(1)過塩素酸カリウムを標準物質とした大量燃焼試験
施したところ、結果は燃焼時間69秒であり、標準物質
を実施したところ、結果は不燃であった。
の燃焼時間(208秒)以下であった。
(2)鉄管試験を実施したところ、結果は不爆であった
。
(3)落球式打撃感度試験を塩素酸カリウム50%爆天
40
で10回測定したところ、すべて不爆であった。
実施例1∼3の除草剤は、同省令に定めるところの「粉
(4)落球式打撃感度試験を硝酸カリウム50%爆天で
粒状」には該当しない固体である。その上で上記(1)
10回測定したところ、すべて爆であった。
(2)の試験結果を考慮すると、実施例1の除草剤は、
比較例3の除草剤は、同省令に定めるところの「粉粒状
消防法に定めるところの被危険物に該当した。よって、
」に該当する固体である。上記(1)∼(4)の結果を
燃焼性や爆発性の点から安定な化合物であり、また放棄
考慮すると、比較例3の除草剤は消防法に定めるところ
性状の取り扱いも容易である。
の第二種酸化性固体に該当した。よって実施例1の除草
実施例2及び3の顆粒状除草剤も実施例1と同様の試験
剤と比較すると、難燃性や爆発性の点から不安定であり
を行い、同様の結果が得られた。
、法規性状の取り扱い制限も種々生じるものである。
【0047】
【符号の説明】
・比較例1∼3の除草剤の評価
50
【0050】
( 8 )
JP
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2015-166337
A
2015.9.24
14
1…ホッパー、2…排出口、3…ペレット、4…ふるい
【図1】
【図2】
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(72)発明者
入江
晃士
東京都港区芝大門一丁目13番9号
Fターム(参考) 4H011 AB01
AB02
DD01
DF03
BA01
BA06
昭和電工株式会社内
BB18
BC20
DA02
DC05
DC06
DC08