社会思想史研究・同演習

科目№
EMMIJ1633/1634
EDMIJ1733/1734
科目名
講義2単位
社会思想史研究・同演習
Course Title
History of Social Thought
担当教員氏名
演習2単位
中村 健吾
分野科目
後期開講
【講義の主題と目標】
国境を超える人の移動が活発化し、ナショナルなものの境界線が揺らぎつつあるなかで、ポス
トナショナルなシティズンシップ(市民権)に関するさまざまな構想が提唱され、一部では実施
に移されている。この授業では、シティズンシップのポストナショナルな諸形態を実現しつつあ
る EU の試みを見ていく。具体的には、マーストリヒト条約(1993 年)で導入された EU シティ
ズンシップ、リスボン条約(2009 年)によって法的拘束力を得た EU 基本権憲章、2003 年の長
期居住者指令、2010 年の難民指令などである。2015 年における難民の受け入れとパリでのテロ
事件を受け、一定のバックラッシュを示しながらも、EU 加盟国はいまや、他の EU 加盟国の市
民だけでなく EU 域外の国民にも、居住期間の長さに応じた市民としての地位を保障する方向へ
と向かっている。
【講義の概要】
まずは、シティズンシップの概念、および移民・難民の地位身分を理解するうえで基本となる、
T.H.マーシャルと H.アーレントの古典ともいうべき著作を日本語で読む。その後、ポストナショ
ナルなシティズンシップをめぐる議論と、EU によるシティズンシップの改革の試み(欧州委員
会が 2000 年に提示したのは、civic citizenship という構想であった)とを、英語の文献を用いて
概観する。
【講義計画】
第 1 回 イントロダクション:問題の所在
第 9 回 post-national citizenship に関する文献2
第 2 回 下記のテキスト①の輪読その1
第 10 回 cosmopolitan citizenship に関する文献1
第 3 回 下記のテキスト①の輪読その2
第 11 回 cosmopolitan citizenship に関する文献2
第 4 回 下記のテキスト②の輪読その1
第 12 回 EU citizenship に関する文献
第 5 回 下記のテキスト②の輪読その2
第 13 回 EU 基本権憲章の検討
第 6 回 inclusive citizenship に関する文献1
第 14 回 EU の長期居住者指令・難民指令の検討
第 7 回 inclusive citizenship に関する文献2
第 15 回 回顧と展望
第 8 回 post-national citizenship に関する文
献1
【評価方法】
出席、報告、および学期末の研究報告書により成績を評価する。
【テキスト】
①T.H.マーシャル/T.ボットモア『シティズンシップと社会的階級』法律文化社。
②H.アーレント『全体主義の起源2:帝国主義』みすず書房、第5章「国民国家の没落と人権の
終焉」
(コピーを配布)
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