LC-MS/MSを用いたステロイドホルモン分析について 化合物安全性研究所 臨床検査・化学分析室 室長 前田 尚之 ステロイドホルモンは内的要因や外的な刺激に対応して主に精巣,卵巣,副腎,性腺や末梢内 分泌腺から分泌され,血液によって標的器官に運ばれ様々な生理作用を発現するといわれてい る.ステロイドホルモンは生理作用と構造からアンドロゲン,エストロゲン,コルチコイドに分類され コレステロールから合成される.ステロイドホルモンの合成は,様々な酵素やタンパク質が関与し ており,かつ,その存在量は微量であることから合成過程や生体内動態やその役割については, いまだ解明されていないことが多い. 生体内のステロイドホルモンは微量でもその効果は大きく,わずかな変化においても生体に影 響を及ぼす.そのため生体反応を観察する指標として有用であるため,微量分析方法の開発が 数多く報告されている.これら生体ステロイドホルモンの測定において,一般的には血液内濃度 をHPLC-UV,GC-MS,RIA,ELISAを用いて行なわれてきたが,感度や精度において正しく評価 するまでには至っていない.よって,組織内に微量に含まれているステロイドホルモン濃度を正確 に定量した報告は少ない.しかし,LC-MSが汎用されて以来,急速に微量分析法の開発が進め られ,近年ではLC-TOF MSによる精密質量や同位体パターンによる定性解析,LC-MS/MSによ るSelected Reaction Monitoring (SRM)法による定量によって,飛躍的に高感度でかつ選択的に 測定することが可能となった. 我々は生体内ステロイドホルモンをより微量測定するために臓器中に多く存在する夾雑成分, いわゆるマトリックスを除去するために,固相カラムを使用して精製する方法を開発した.これま では水質や尿,血清,プラズマ,胆汁での報告はあるが,この方法を用いることで,これまで報告 の少ない臓器中からの微量ステロイドホルモンの定量が可能となった.さらに,簡易で迅速に生 体内の様々な微量ステロイドホルモンの変化をモニタリングすることが可能となっている. 本ランチョンセミナーでは高感度で分析できる質量分析法と血漿や尿の簡易前処理,脳や肝 臓などの臓器中前処理から一斉分析までを紹介すると共に,その手法を用いた毒性評価の一例 や動物飼育施設をもつ弊社でのステロイドホルモン分析の有用性を紹介致します.
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