Title Author(s) MOCVD法によるInP系化合物半導体結晶成長と光デバイ スへの運用に関する研究 木村, 達也 Citation Issue Date URL 1997 http://repo.lib.nitech.ac.jp/handle/123456789/424 Rights Type Textversion Thesis or Dissertation author ・名古屋工業大学学術機関リポジトリは、名古屋工業大学内で生産された学術情報を 電子的に収集・保存・発信するシステムです。 ・論文の著作権は、著者または出版社が保持しています。著作権法で定める権利制限 規定を超える利用については、著作権者に許諾を得てください。 ・Textversion に「Author」と記載された論文は、著者原稿となります。 実際の出版社版とは、レイアウト、字句校正レベルの異同がある場合もあります。 ・Nagoya Institute of Technology Repository Sytem is built to collect, archive and offer electronically the academic information produced by Nagoya Institute of Technology. ・The copyright and related rights of the article are held by authors or publishers. The copyright owners' consents must be required to use it over the curtailment of copyrights. ・Textversion "Author " means the article is author's version. Author version may have some difference in layouts and wordings form publisher version. 博士論文 MOCVD法による InP系化合物半導体結晶成長と 光デバイスヘの適用に関する研究 1997年 木 村 達 也 ・、ン■.∴●・∴・、二● 、、′∴∴.■・∴† 目 第1章 1-1 次 序論 l はじめに 1 4 1-2 MOCVD結晶成長技術 1-3 MOCVD法による通信用長波長半導体レーザ 研究開発における筆者の役割と貢献 5 1-3-1MOCVD法による埋め込み成長技術 低拡散係数ドーバントと高抵抗層成長技術 1-3-2 1-3-3 GaAs基板上へのInP結晶成長技術 本論文の内容と構成 1-4 参考文献 第2章 (第1章) の半導体レーザヘの応用 2-1 はじめに 2-2 n及びp型基板上の長波長半導体レーザ構造の比較 埋め込みメサ形状 2-3-1 メサ側面がくびれたメサへの埋込成長 2-3-2 メサ形状のエッチング液依存性 埋め込み成長機構 2-4 垂直な側面を持つメサの選択埋め込み成長機構 2-4-1 2-4-2 =富士山状‖のなだらかな側面を持つメサの 選択埋め込み成長機構 2-5 FS-BHレーザ構造 2-6 p-Ⅰ㌦埋め込み層厚のマージン 再成長界面汚染物の低減 2-7 まとめ 2-8 参考文献 第3章 (第2章) 仝MOCVD成長による半導体レーザの特性 3-1 はじめに 3-2l.3〃m帯10ビームレーザアレイ 3-31.48/ノm帯高出力レーザ 3-4 参考文献 まとめ (第3章) 7 9 1 0 1 3 MOCVD法による埋め込み成長機構 2-3 5 第4章 BeドープInP結晶成長 4-1 はじめに 4-2 BeドープInP結晶成長 4-3 BeドープInP結晶評価結果 表面モフォロジー 4-3-1 4-3-2 Beドーピングプロファイル 4-3-3 ドーピング特性 4-3-4 InP中のBeの不純物準位 4-3-5 光学的特性 4-3-6 Beの拡散 まとめ 4-4 参考文献 第5章 (第4章) 高抵抗AIInAs結晶成長 8 6 8 6 8 8 8 (X) 9 3 9 3 9 7 9 7 1 0 1 1 0 5 1 0 8 1 0 9 はじめに 5-1 5-2 5-2-1 アンドープAIInAs結晶成長 表面モフォロジー 5-2-2 Ⅹ線による結晶評価 抵抗率 5-2-3 5-2-4 5-3 ICTSによる深い準位の測定 高抵抗化メカニズム 5-4 まとめ 付録1(ホール測定によるキャリア濃度測定) 付録2(電気的中性条件式の導出) (第5章) 参考文献 第6章 高抵抗AlInAs層の 半導体レーザ埋め込み層への適用 1 1 0 6-1 はじめに 1 1 0 6-2 AlInAs層の選択成長 1 1 1 6-3 AlInAs層を含む電流狭窄層構造 埋め込みレーザへの適用 1 1 3 6-4 6-5 まとめ 付録 参考文献 (第6章) 1 1 7 1 2 0 1 2 2 1 2 4 第7章InPonGaAs結晶成長 1 はじめに 7-1 2 5 7-2 GaAs基板上のInP層成長 1 2 5 7-3 InP結晶評価結果 表面モフォロジー 1 3 0 7-3-1 1 3 0 7-3-2 エッチピット密度(EPD) 1 3 0 7-3-3 Ⅹ線回折 1 3 4 7-3-4 4.2KP L 1 3 7 1 4 0 1 4 2 1 4 4 4 まとめ 7-4 参考文献 第8章 (第7章) GaAs基板上の1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ 及びInGaAsPINフォトダイオード 8-1 はじめに 1 4 8-2 GaAs基板上へのInP層の成長 1 4 4 8-3 デバイス応用 1 4 6 8-3-11.3pm帯InGaAsP半導体レーザの作製とその特性 1 4 6 8-3-2InGaAsPINフォトダイオードの作製とその特性 1 5 4 まとめ 8-4 参考文献 第9章 謝 1 2 5 (第8章) 結論 辞 研究業績一覧 1 5 00 1 6 1 序論 第1章 1-1 はじめに 21世紀は、映像通信時代と言われている。この基盤として、多彩な情報伝達機能を分 担するネットワークが、広帯域サービス総合デジタル網(B-ISDN:Broadbandaspectsof IntegratedServicesDigitalNetwork)である。この21世紀の高度情報化社会を支える新しい 通信網は、情報の速度や接続方法等をフレキシブルにし、かつ映像等の広帯域情報も高 画質で送れるものである。現在の主として音声・静止画像などの個々の通信サービスか ら、 ①大画面・高品質の動画像を通信する映像通信サービス、 ②教育・文化・防災・行政などのインテリジェントサービス、 ③ホームショッピングやICカードによる料金決済などのパーソナルサービス へと変わる。 1991年にNTT未来予想研究会が予想したB-ISDN発展に伴う情報産業の市場規模の推移 を、図ト1に示す(1)。情報プロダクト・情報処理サービス・情報伝達サービス・情報 関連業等の4つの分野の市場規模は年とともに着実に大きくなり、2005年までに総額 120兆円にまで膨らむことが予想されている。 このB-ISDNを構成する技術の一つとして、光通信技術がある。多くの情報を高速に伝 送できる光通信は、高度情報化社会を支える通信のインフラとして、すでに幹線系をは じめ、LANやCATV等に広く普及しつつある。さらにB-ISDNの整備に向けて、各家庭に まで光ファイバーを延長(FTTH:FibertotheHome)し、高度な通信サービスを提供する 構想が打ち出されている。 この構想を実現するための光源として用いられるInP系長波長(1.3iLm∼1.55FLm)半 導体レーザの様々な用途を図1-2に示す。遠距離通信には、石英ファイバーの伝送損 失が最も少ない波長1.55〃m帯を利用した幹線用単一波長レーザを用いる。このレーザ は、DFB(DistributedFeedback)レーザ(2)といわれ、レーザ動作中の発振波長の変動を 極力抑えるために、波長選択性の優れた構造を持つ。途中の中継器では、光信号を増幅 するためにファイバーアンプ励起用1.48〃m帯高出力レーザ(3)を用いる。このレーザ は光信号を直接光で増幅するため、従来の光→電気→光と変換する再生中継方式と比べ て増幅効率が高く、、また複数のチャンネルの信号を増幅することが可能になる。オフィ スやビル内更に一般家庭へは、ファイバーの材料分散が少ない波長1.3〃m帯を利用した 光加入者系用レーザ(4)を用いる。幹線系のシステムと比べて非常に多数の送受信回路 を必要とし、2010年には700万戸が加入すると・考えられていることから多くの加入者系 用レーザが必要である。 また、コンピュータ等の電子システム内配線を行う光インターコネクト用低しきい値 1.3FLmlOビーム半導体アレイレーザ(5)・外部変調器を用いて光信号を2.5Gb/s以上の高 ー1- 1 00 90 80 70 (巳莞) `U 田映画・音楽等情報プロダクト 0 データベース・調査研究等 情報処理サービス 50 -N- 塔頭聾匿 40 Jヽ バ●・:・ JヽJヽ つJ 0 ■■ ■l ■l ′l lヽJヽ ■l ■ヽ Jヽl■l 匂 Jヽ 凸 Jヽ Jヽlヽ 20 ■l .∧ Jヽ ■ヽ ■ヽ ■l .′■ ■ヽ lヽ ■ヽ」L 10 lヽJヽ lヽ ■l■ヽ■ヽ ■lヽ lヽ■ヽJヽ Jヽ■■ lヽ Jヽlヽlヽ ■■■■ lヽ ■ヽ●ヽ ■●■ヽ l ′ - 凸 ? Jヽ■ヽ ■ヽ■ヽ ∧ ′llヽ 巳 ロ Jヽ=l」ハ lヽ Jヽl■l ヽヽ 凸凸 ′l 人 lヽ lヽ lヽ ■ヽ ヽヽ Jヽ ′l 凸 1995 Jヽ ■ヽ ▲ ヽヽ Jヽ ′ヽ ∧ u -ヽ ■l ■ヽ ノヽ ■」 ■ヽ ■ヽ ■ヽ Jll .′l Jヽ ■■■■ 西暦 lヽ .■ヽ ▲lヽ ■ヽ Jヽ ■l ■l ヽ.+l′■lヽ ■ヽ Jヽ ∧ Jヽlヽ∧ u 図1-1 JヽJヽ Jヽ .′■ .∧■l 1990 Jヽ lヽ lヽ ∧.■■ ■ヽ■ヽJヽ ■ヽ ■lヽ Jヽ ▲ヽlヽJヽ ■■■l ■ヽ■【l ■.人■し ′ ■ヽJヽlヽ ■■■ヽ Jヽ ■■ ノヽ ■■■ ヽヽ .1ヽ Jヽ .-ヽ ●■ヽ u 2000 放送・新聞等 情報伝達サービス 2005 (年) B-ISDN発展にともなう情報産業の市場規模 ソフトウェア製造業・ コンピュータ製造業等 情報関連業 CJ 図ト2 光通信を支える光半導体デバイス群 速で変調する幹線用外部変調器付DFBレーザ(6)・レーザにレンズ機能を付加してファ イバーへの結合効率を良くする光加入者系用導波路レンズ付レーザ(7)等の高性能・多 機能な複合光デバイスが、現在開発されている。さらに、電子デバイスと通信用長波長 半導体レーザをモノリシックに組み合わせたOEIC(伽toelectromicIntegratedCircuit)を作製 する動きもある。これら通信用長波長半導体レーザの世界市場規模は、2000年には1000 億円程度に達するといわれ、情報処理用短波長レーザのものを大きく凌ぐと言われてい る。 これらの長波長半導体レーザの高性能化・量産化・多機能化において最も重要な要素 技術の一つが、エビタキシヤル結晶成長技術である。膜厚やキャリア濃度等の半導体レ ーザ構造の主要部分は、エビタキシヤル結晶成長により形成され、多くのレーザ特性は エビタキシヤル層構造に依存するためである。 1-2 MOCVD結晶成長技術 長波長半導体レーザに作製に用いられるエビタキシヤル結晶成長技術としては、液相 成長法(LPE:LiquidPhaseEpitaxy)(8)・ハロゲン化合物を用いた気相成長法(H-VPE: HydrideVaporPhaseEpitaxy)(9)が、一般に利用されていた。その理由として、単純な 層構造で成長層が高純度であることが要求されるデバイスに最適なエピタキシャル成長 法であったためである。 最近、高性能化のために量子井戸(QuantumWell)構造といった非常に複雑な活性層 構造を持つレーザや光加入者用レーザに代表されるように低価格が要求されるレーザの 研究開発が活発化している。このような動向を反映して、エピタキシャル成長技術には 以下のような点が、従来以上に要求されるようになった。 ①数Åから数百Åにわたる非常に薄い成長層の精密制御 ②精密に組成制御された混晶を含む多層膜の形成 ③大口径基板上への多数枚・高均一成長 ④成長膜厚方向に急峻なドーピングプロファイル ⑤格子定数の異なる基板上への成長技術 ⑥材料に影響されにくい汎用的な成長技術 化合物半導体を構成する元素の水素化物・アルキル化物の熱分解を利用した有機金属 を用いた気相成長法(MOCVD:MetalorgamicChemicalVaporDeposition)(10L20)は、こうし た状況のもとで上記要求を満たすことができる方法として注目されるようになった。 MOCVD技術の歴史はLPE及びH-VPE同様に古く、すでに1959年MonsantO社の広範囲な 特許(10)のなかで言及されている。最初の報告は、それから約10年後R。。kwell社の ManaSeVit(11)によって行われた。しかし、MOCVD法は、当時材料である有機金属の純 度が不十分なため高品質な成長層を得ることができず、成長技術の主流を占めるに至ら なかった。 1977年Rqckwell社のDupuisとDapkus(12)により、M∝VD成長によるAIxGaトxAs/ -4- GaAsDHレーザの室温連続発振が報告されると、再びMOCVD技術に村する関心が飛躍的 に高まった。 InP系のMOCVD技術は、GaAs系より遅れて1973年にManasevitらによってAl203及び GaAs基板上にInP成長を行ったのが初めてである(13)。その後、1978年にTasaiら(14)及 びManasevitら(15)によってInP基板上にInP層をエピタキシャル成長している。電気的特 性としては、比較的良質な結晶が得られている。しかし、表面モフォロジーは悪くしか もフォトルミネセンスの評価報告もなく、良質な結晶とは言えない。この原因は、In原 料であ.るトリエチルインジュウム(ⅧⅠ)とPの原料であるフォスフィン(PH3)との中 間反応によるアダクト形成(16)と考えられている。このアダクトは、成長温度(600∼ 700℃)付近でもきわめて安定であり、不揮発性のポリマー類である。そこで、 Ducheminらはこのアダクト形成抑制のために、減圧で成長を行い上記問題点を解決して いる(17)。 このInP系MOCⅥ)技術を用いた長波長半導体レーザとしては、1981年にRazeghiらが波 長1・3〃m帯でパルス発振に成功している(18)。1983年には、1・55〃m帯レーザにおいて 室温連続発振し初期的な信頼性を得るに至っている(19)。しきい値電流密度の平均が 800A/cm2とLPEで作製したものと比較して遜色がなく、MOCVD技術が長波長半導体レー ザのエピタキシャル成長技術として高いポテンシャルをもっていること示した。 1ナ3 MOCVD法による通信用長波長半導体レーザ研究開発における 筆者の役割と貢献 筆者はInP系(InP,InGaAsP,AIInAs等)MOCVDエビタキシヤル結晶成長技術の研究開 発及びその技術を用いた長波長半導体レーザの実用化を通して、長波長半導体レーザの 高性能化・量産化・多機能化に従事してきた。以下3項目に分けて詳細に述べる。 1-3-1MOCVD法による埋め込み成長技術 筆者らは、通信用長波長半導体レーザの開発初期からp-InP基板上に図1-3に示すよ うなレーザ構造を作製している(21)。このレーザの特徴として ① n-Ⅰ㌦クラッド層とn-Ⅰ㌦電流ブロック層間の無効電流経路幅を0.1∼0.2〃mに狭 くすることにより、レーザ発振に寄与しない無効電流を減らし、効率よく活性層に電流 を注入できること ② p型基板を用いているため、駆動回路としてNPNバイポーラトランジスタを使う ことができレーザアレイの高速動作に有利であること が挙げられる。 この通信用長波長半導体レーザに村する市場からの要求項目と、それに対する技術的 -5- 活性層(InGaAsP) n-InPクラツド層 \ J ## ィト n-InPコンタクト層 一トp-InP電流ブロック層 …l d ● l l ニイウ# I←・l≠二: . ィ←n-Ⅰ㌦電流ブロック層 ■ ◆ ヽ ■ ィ←p-InP埋め込み層 発振に寄 与する電流l・・ ■ l■■■■■●●■■■●● l 無効電流 ィ←p-InPクラッド層 (図中の破線はメサ形状を示す。) 無効電流経路幅 図1-3 表1-1 用 p-InP基板上の長波長レーザ構造断面模式図 半導体レーザに村する市場の要求とその村策 途 単一波長(1.55/∠m) 幹線系 高速(直接変調:10Gb/s,変調器付き:16Gb/s) 低コスト 加入者系 歪M(〕W 信頼性向上 均一性改善 策 大面積化 DFB 歪MQW無効電流低減 低しきい値電流(5mA@85℃) 信頼性向上大面積化 低コスト CATV 対 要求項目 均一性改善 歪M(〕W無効電流低減 低歪(-60朋∋c以下) 信頼性向上均→性改 結合係数(〝L)=lDFB 低コスト 歪MQW ファイバアンプ 高出力(180mW) 無効電流低減 歪MQW無効電流低減 移動体通信 基地局網 低歪(-80dBc以下) 信頼性向上DFB 結合係数(〝L)=1 -6- 課題を表ト1にまとめる。加入者系レーザに代表されるような低コスト化のためには、 基板の大面積化と多数枚成長並びに基板面内の各層厚及び組成の均一化が必須である。 低しきい値化・高出力化・低歪化などレーザの高性能化には、活性層を歪み多重量子井 戸(MQW:Multi-QuantumWell)構造(22)にし、かつ図1-3に示した無効電流経路幅を 狭く制御し無効電流を低減することが必要である。 これに村して、従来のレーザの作製方法は、全てLPE法を用いていた。超薄膜制御や 組成・膜厚の均一性においてLPE法では限界があるため、筆者らはまずMOCVD法を用 いて活性層を成長して半導体レーザを作製した(23 25)。これにより、活性層構造を MqW構造にすることを可能にし、レーザの高性能化を実現した。例えば、ファイバー アンプ励起用l.48/∠m帯高出力レーザは、現在海底ケーブルの中継器として利用されて いる。 しかし、市場からのさらなるレーザの高性能化・低コスト化に対する要求は日々強く なり、これに答えて行くにはMOCVD・LPE法のハイブリッド成長法によるレーザ作製 では限界に達していた。それは、埋め込み層成長には従来通りLPE法を用いているため に、メルトバック(26)の問題や膜厚の均一性・制御性が不十分なため無効電流経路幅を 0.1∼0.2/ノmに狭く制御することが困難であると同時に、大面積基板への成長が難しい ためである。 これらの問題を解決するために、埋め込み成長にもLPE法に代えてMOCVD法を用いる 試みが数多く報告されてきた(27-29)。半導体レーザの初期特性は、LPE法で埋め込み成 長したものと同等のものが得られるものの、信頼性に問題があったため広く実用化には 至っていなかった。信頼性が悪い原因は、埋め込み成長時の再成長界面の汚染物に起因 するものと考えられている。また、これまでの報告例では、n型基板を用いていた。こ れは、第2章で述べるように埋め込み構造が複雑であるためLPE法と同様にMOCVD法 でも作製が困難であったためである。 そこで筆者らは、MOCVD法によるメサ側面での特異な成長機構を見い出し,p型基板 上のInP埋め込み層成長に応用した。これにより、活性層を含む全ての層をMOCVD法を 用いて2インチ基板上に均一にかつ再現性良く成長できる技術を確立した。また、再成 長界面汚染物を低減し、世界で初めて全てMOCVD法を用いてp基板上に長波長半導体 レーザを実用化した。これにより半導体レーザの高性能化・量産化を実現した。 1-3-2 低拡散係数ドーバントと高抵抗層成長技術 外部変調器付レーザ(図1-4)や光導波路とレーザ並びにホトダイオードをモノリシッ クに集積した高速に動作する複合光デバイスにおいては、 ① 変調器及び光導波路での光損失 ② デバイスの静電容量 を低減することが重要である。 -7- レーザ光 図1-4 外部変調器付LD構造の鳥取図 undoped InGaAsP Zn-dopedIIIP (人=1・3/ノm) 10 【?∈。] 0 20 18 堪鯉 P 検出限界 図1-5 0 0.5 1 1.5 2 深さ【/Jm】 アンドープInGaAsP/p(Zn)-InP構造における Znの深さ方向のプロファイル -8- 2.5 3 光導波路損失の低減には、光導波路層におけるフリーキャリア吸収の低減すなわちキャ リア濃度を低減する必要がある。MOCVD法では、一般にp型ドーバントとしてZnが用 いられている。Znは、隣接する層に拡散しやすいドーバントである。図1-5にp-InP層 (1xlO18cmT3)からアンドープInGaAsP光導波路層へのZn拡散の様子をSIMS分析した結 果を示す。P-InP層のZnが、アンドープInGaAsP層に約0.2FLm拡散している。通常導波 路層厚は0.1〃m程度であるから、導波路層は1xlO18cm 3以上の払渡度すなわちキャリア 濃度になることを意味している。したがって、拡散しにくいp型ドーバントを用いて光 損失を抑制することが大きな課題であった。筆者らは、Znに代わるp型ドーバントとし てBeを検討し、BeがZnよりもアンドープInGaAsP層に拡散しにくいことを世界で初めて 見い出した。 一方、変調器を10Gb/s以上の高速で動作させるためには、デバイス(パッケージを 除く)の静電容量を0.2pF以下にする必要がある。デバイス静電容量の低減には、光導 波路の埋め込み層として高抵抗層であるFeドープInP層(恥33)が用いられている。しか し、Feは隣接するp層に拡散する(封)ことが知られている。図1-4に示したデバイス構 造では、Znが拡散している光導波路層(図1-5参照)に、埋め込み層にドーピングさ れたFeが拡散することになる。これによりFeやZnに起因した非発光再結合中心が増加す るため光導波路層の光学的特性は悪くなり、レーザのしきい値電流の増加や効率が悪く なる等の問題点が生じる。 筆者らは、p層に拡散するFeを用いてInPを高抵抗化するのではなく、InPに格子整合 する刃InAs結晶中の酸素に起因する深い不純物準位を利用してフェルミレベルをバンド ギャップ中央付近まで下げることにより刃InAs結晶の高抵抗化を図った。この高抵抗 AlInAs層をレーザの埋め込み層に適用し、レーザを室温連続発振させることに成功した。 以上述べたように筆者らは、拡散しにくいp型ドーバントを見い出し、Feを用いずに 高抵抗層を実現し、高速動作する光デバイスの要素技術を確立した。 1-3-3 GaAs基板上へのInP結晶成長技術 InP系長波長(1.3〃m∼1.55〃m)半導体レーザの多機能化・複合化への応用として、 駆動回路とInP系光デバイスを同一基板上にモノリシックに集積したOEICの研究開発が 活発に行われている(35 40)。駆動回路には、衛星放送や携帯電話などに広く実用化され ているGaAs系電子デバイスが用いられている。これは、GaAs系電子デバイスがInP系電 子デバイスより構造及びプロセスが成熟し、かつSi系電子デバイスよりも高速で動作す るからである。この構想実現のためには、GaAs基板上にGaAs系電子デバイスとInP系光 デバイスを集積する方法(35-37)とInP基板上にG払s系電子デバイスとInP系光デバイスを 集積する方法(38 40)の2種類ある。従来は、後者を選択する報告が多かった。それは、 次のような理由による。 GaAsとInPとでは、物理定数の違い(格子定数差:3.8%・熱膨張差:26%)があるた め、GaAs基板上のInP結晶又はInP基板上のGaAs結晶には多くの転位が存在する。従っ -9- て、GaAs基板上のInP系光デバイス又はInP基板上のGaAs電子デバイスは、この結晶欠 陥によるデバイス特性の劣化が予想される。この際、光デバイスは少数キャリアデバイ スであることから、多数キャリアデバイスである電子デバイスより結晶欠陥により敏感 にデバイス特性に影響することが考えられる。この裏付けとして、InP基板上のGaAs電 子デバイスは、G血s基板上のものとほぼ同等の特性が得られている(39)ものの、G払s 基板上のInP系半導体レーザは、室温パルスでしか発振していない(37)。 しかし、筆者らはOEICの大規模な量産化を考慮した場合、基板として高品質の大口径 基板が低コストで得られるGaAs基板を用いた方が有効であると考えた。GaAs基板を用 いたOEIC実現には、発光デバイスとしてGaAs基板上のInP結晶の高品質化によるInP系 長波長半導体レーザの室温連続発振とレーザ特性の高性能化が必須である。また、受光 デバイスとして、同様にホトダイオードの高性能化が必要である。高品質化のために、 GaAs基板上に低温バッファ層を成長しそのバッファ層厚を最適化することによりInP結 晶のⅩ線回折ピーク強度半値幅を狭くした報告例(41)があるが、そのⅠ㌦の結晶性改善に ついてほとんど議論されていない。そこで、GaAs基板上のInP系光デバイスの特性を改 善するためには、GaAs基板上のInP層の転位低減が必要となる。筆者らは、まずGaAs基 板上のInP結晶を多角的に評価し、InP結晶の高品質化を図った。そして、高品質化した InP結晶上にレーザを作製し、世界で初めて室温連続発振に成功した。さらに、同様に フォトダイオードも作製し実用化を可能にした。 1-4 本論文の内容と構成 本研究はこのような背景のもとになされたものであり、膜厚の制御性にすぐれ高均一 でかつ異種基板への成長可能なMOCVD結晶成長技術を用いたInP系化合物半導体結晶成 長及び半導体レーザの高性能化・量産化・多機能化に関するものである。本論文の構成 とMOCVD結晶成長技術の特徴と半導体レーザの関連を図ト6に示す。 第2章の"MOCVD法による埋め込み成長機構の半導体レーザヘの応用"では、 MOCVD法を用いてp-InP基板上の長波長半導体レーザの埋め込み層作製するためのメサ 側面におけるInPの埋め込み成長機構について、埋め込み成長する際のメサ形状も含め て議論する(42)。また、埋め込み成長前の表面処理方法を改善し、再成長界面の汚染物 を低減した結果について述べる。 第3章の"仝MOCVD成長による半導体レーザの特性"では、MOCVD法によるInP埋 め込み成長機構を利用した筆者ら独自のFS-BH(Facet Selective-grOWthBuried HeterostruCture)(43)レーザの初期特性について、①リーク電流低減による低しきい値電 流化及び高出力化、②同一基板上のレーザ特性の高均一化の観点から述べる。また、 FS-BHレーザの信頼性ついても記述する(叫。 第4章の"BeドープInP結晶成長"では、Beのドーピング原料としてビスメチルシク ロペンタジェニルベリリウム(=(MeCp)2Be)を用いて、MOCVD法でBeドープInP層成 長しBeのドーピング特性を検討した後、その電気的・光学的特性をZnドープInP層のも -10- 図1-6 本論文の構成 のと比較する。さらに、アンドープInGaAsP/Be(Zn)-InP構造において、アンドープ InGaAsP層へのBe拡散プロファイルをZn拡散プロファイルと比較して述べる(45)。 第5章の''高抵抗創InAs結晶成長"では、MOCVD法で成長したアンドープAlInAs層の 抵抗率の成長温度依存性について述べる。その結果、低温成長(500℃)することによ りアンドープで抵抗率1.0×105ncm以上のAlInAs高抵抗層が得られたので、その高抵抗 化メカニズムについて議論する(46)。 第6章の"高抵抗〟InAs層の半導体レーザ埋め込み層への適用"では、前章で述べた アンドープAlInAs高抵抗層を半導体レーザ埋め込み層に適用する際の500℃という低温 での刃InAs層埋め込み選択成長の可能性と電気的特性について議論する。さらに、この アンドープ刃InAs高抵抗層を半導体レーザ埋め込み層に適用したときのデバイス特性に ついて述べる(47)。 第7章の"InPonGaAs結晶成長"では、熱処理(TCA:mermalCyclicAnnealing)を施 したGaAs基板上のⅠ㌦の結晶を結晶欠陥・光学的特性等多角的に評価した結果について 述べる。さらに、歪み超格子層(SLS:Strained-1ayerSuperlattice)をInP結晶中に挿入し InPの結晶性を高品質化した結果についても述べる(48)。 第8章の"GaAs基板上の1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ及びInGaAsPINフォトダイオー ド"では、転位低減InPバッファ層付GaAs基板上に、MOCVD法・LPE法を組み合わせて 作製した1.3pm帯InGaAsP半導体レーザの初期特性及びその信頼性について述べる。一 方、上記基板上にVPE法によって作製したInGaAsPINフォトダイオードの初期特性及び その信頼性について述べる(49)。 第9章の"結論"では、各章で得られた結果及び総括を行う。 -12- 参考文献 (第1章) (1)NTT未来予想研究会編:2005年の社会と情報通信、NTT出版、1991. (2)A・Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,T.Kimura,N.Yoshida,S.Kakimotoand S・Susaki,Electron.Lett.25(1989)220. (3)T・Nishimura,Y・Nakdima,T・Kimura,Y・Kokubo,K.Isshiki,E.Omura,M.Aiga andK・Ikeda,SPIE(TheSocietyofPhoto-OpticalInstrumentationEngineers) Proceedings,OptoelectonicInterconnects,1849(1994)272. (4)鈴木、東盛、加藤、福臥関根、内田、山田、堀口、杉江: 電子情報通信学会技術研究報告,OCS96-1(1996). (5)松本、西口、石村、西村、中島、多臥後藤、木村、柿本: 電子情報通信学会論文誌,0(〕E92-176(1992). (6)宮崎、石村、川崎、木村、瀧口、一色、平野、 1994年電子情報通信学会春季大会C-221(1994). (7)H.Soda,H.Kobayashi,T.Yamamoto,M.EkawaandS.Yamzaki, ExtendedAbstractsofthe1995IntemationalConftrenceonSolidStateDevices andMaterials(1995)D-4-1. (8)s.Arai,Y.SuematsuandY.Itaya,IEEEJ.QuantumElectron.QE-16(1980)197. (9)T・Mizutami,M.Yoshida,A.Usui,H.Watanabe,T.YuasaandI.Hayashi, Jpn.J.Appl.Phys.19(1980)Ll13. (10)ロバートアーサー,ルユアー・ウェイン:特許公報昭38 7709号 - (11)H.M.Manasevit:Appl.Phys.Lett.12(1968)156. (12)R.D.DupuisandP.D.Dapkus,Appl.Phys.Lett.31(1977)466. (13)H.M.ManasevitandW.I.Simpson,J.Electrochem.Soc.120(1973)135. 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(24)N.Yoshida,T.Kimura,N.KanenO,K.Mizuguchi,A.TakemotoandT・Murotani, Inst.Phys.Conf.Ser.NolO6Chapter3(1989)135・ (25)A.Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,Y.Nak卸ma,T.Kimura,N.Yoshida, S.KakimotoandS.Susaki,J.LightwaveTechnol・7(1989)2072・ (26)H.Kawaguchi,K.Takahei,Y.Toyoshima;H.NagaiandH・Iwane, Electron.Lett.15(1979)669. (27)A.W.Nelson,W.J.Devlin,R.E.Hobbs,C.G.D.LentonandS.Wong, Electron.Lett.21(1985)888. (28)H.Ishiguro,T.KawabataandS・Koike,Appl・Phys・Lett・51(1987)874・ (29)K.Sato,Y.Kondo,M.NakaoandM.Fukuda, J.Lightwavetechnol・LT-7(1989)1515・ 第16巻 (30)山腰茂伸、中井建弥:レーザ研究 (1988)750. (31)D.G.Knight,B.Emmerstorferetal:J.ElectronicMaterials21(1992)165・ (32)K.L.HessandS.W.Zehr,J.CrystalGrowth93(1988)576. (33)c.E.Zah,C.Caneau,S.G.Menocal,F.Favire,T.P.Lee,A.G.Dental andC.H.Joyner,Electron.Lett.24(1988)695・ (34)c.Kazmierski,D.RobeinandY.Gao,J.crys.Growthl16(1992)75. (35)s.J.J.Teng,J.M.Bal1ingallandF.J.Rosenbaum,Appl・Phys・Lett・48(1986)1217・ (36)M.K.Lee,D.S.WuuandH.H.Tung,J.Appl.Phys.62(1987)3209. (37)M.Razeghi,R.BlondeauandJ.P.Duchemin,Inst.Phys.Conf・Ser・74(1984)697・ (38)D.Huang,S.AgarwalaandH.Morkc,Appl.Phys.Lett・54(1989)51・ (39)A.Suzuki,T.Ito,T.Terakado,K.Kasahara,K.Asano,Y.Inomuto,H.Ishinara, T.TorikaiamdS,Fujita,Electron.Lett.23(1987)954・ (40)Y.H.Lo,C.Caneau,R.Bhat,L.T.Florez,G.K.Chang,J.P.Harbison andT.P.Lee,Electron.Lett.25(1989)666. (41)H.Horikawa,Y.Ogawa,Y.KawaiandM.Sakuta,Appl.Phys.Lett.53(1988)397・ (42)木村、大倉、越智、西村、室谷:防衛技術1993年2月(1993)4. (43)Y.Ohkura,T.Kimura,T.Nishimura,K.MizuguchiandT.Murotani, Electron.Lett.28(1992)1844. (叫)木村、大倉、園田:三菱電機技報 67(1993)88. (45)T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,Y.Mihashi,S.TakamiyaandS.Mitsui, Jpn.J.Appl.Phys.34(1995)1106. (46)T.Kimura,S.Ochi,N.Fujii,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS・Mitsui, J.CrystalGrowth145(1994)963. (47)T.Kimura,S.Ochi,T.Ishida,E.Ishimura,T.Sonoda,Y.Mihashi,S.Takamiya andW.Susaki,J.CrystalGrowth158(1996)418. (48)T.Kimura,N.Hayafuji,N.KanenO,N.Yoshida,M.Tsugami,K.Mizuguchi -14- andT・Murotani,Inst・Phys・Conf・Ser・NolO6Chapter3(1989)105. (49)T・Kimura,T・Kimura,E・Ishimura,F・Uesugi,M.Tsugami,K.Mizuguchi andT.Murotani,J.CrystalGrowthlO7(1991)827. -15- 第2章 MOCVD法による 埋め込み成長機構の半導体レーザへの応用 2-1 はじめに 現在、通信用長波長半導体レーザの多くは、レーザ構造を作製する上で容易なn型 InP基板を用いている。しかし、筆者らは、研究開発当初からp型基板を採用してきた のは以下に述べる特徴があるからである。 ① 無効電流経路幅を狭くすることによるレーザの高性能化 図2-1に、全体の注入電流に村する無効電流の割合の無効電流経路幅依存性を計算し た結果を示す。無効電流とは、活性層脇を流れるレーザ発振に寄与しない電流であり、 理想的にはゼロにするのが望ましい。また、無効電流経路幅とは、図ト3に示したよ うに活性層(又はn-InPクラッド層)とn-InP電流ブロック層の間隔である。無効電流経 路幅を狭くすることにより無効電流の割合は少なくなり、無効電流経路幅0.1/ノmまで低 減すると1%まで低下する。従って、無効電流経路幅を0.1から0.2/ノmに制御すること により、低しきい値電流・高効率・低歪み・高出力等の高性能なレーザ特性が期待でき る。 (参 レーザアレイの高速動作 図2-2にレーザアレイを作製するときの基板導電型の違いによる駆動回路構成の違い を示す。レーザアレイは、基板を電気的共通とし表面にレーザの共振器に沿って分離溝 を形成してレーザの表面電極を分離して作製する。p型基板を用いた場合、各レーザの 駆動回路としてNPNバイポーラトランジスタを使い、図2-2(a)に示す回路構成になる。 一方、n型基板を用いた場合、駆動回路としてPNPバイポーラトランジスタを使うこと になり、図2-2(b)に示す回路構成になる。NPNバイポーラトランジスタの動作速度は、 PNPのものより速い。従って、レーザアレイの高速動作には、p型基板を用いたほうが 有利である。n型基板でNPNバイポーラトランジスタを用いるためには、裏面から活性 層まで約100/ノmの非常に深い分離溝を設けて各レーザを電気的に分離する必要があり、 レーザアレイ作製は非常に困難であり実用化できない。 p-InP基板上の長波長半導体レーザは、図2-3に示す様なプロセスで作製されている。 注入電流によって光を出す活性層を成長し(図2-3(a))、エッチングにより活性層側 面を除去して台形(メサ)を形成する(図2-3(b))。次に、活性層内に電流及び光を 閉じ込める埋め込み層をメサ側面に成長した後(図2-3(C))、連続してコンタクト層 を成長する(図2-3(d))。従来、活性層成長には膜厚の均一性・制御性に優れ、かつ 大面積基板(2・3インチ)への成長が可能なMOCVD法を用い(1)、埋め込み層・コ -16- (㌔) (VO 璧囲Y刷こ煤柑棄尉 rO 4 2 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 無効電流経路幅(〃m) 全体の注入電流に村するレーザ発振に寄与しない活性層脇を 図2-1 流れる無効電流の割合の無効電流経路幅依存性 駆動素子(npnトランシナスタ) 駆動素子(pnpトランシナスダ) n 一 一.■ ■r ■l 一 ■■ ■「■「 ′l1.■・■■■l l一l■ J l__′′′′′′′′___________■■・.一■■ 一 一 」■.■■.一 一 一 一 一.一 一 一 一 一 一.一 一.一.一 レーザアレイ(n型基板) レーザアレイ(p型基板) (a) 図2-2 一 (b) レーザアレイにおけるp型基板の有用性 -17- 一 一 一 一括性層 (InGaAsP) (a)活性層成長(MOCVD法) (b)メサ形成 (C)埋め込み層成長(LPE法) n-InPコンタクト層 (d)コンタクト層成長(LPE法) 図2-3 長波長半導体の作製プロセス -18- ンタクト層成長にはメサ両側を選択的に成長する特徴をもつ半導体レーザの伝統的成長 法であるLPE法を用いていた(2)。 上記方法を用いて作製したレーザの活性層付近の断面SEM像を、図2-4に示す。中央 の黒い帯状の部分が活性層、白く見える領域はn-InP層、逆に黒く見える領域はp-InP 層である。設計通りに無効電流経路幅を狭く制御できた場合を、図2-4(a)に示す。nInP電流ブロック層は、活性層に近づくにつれ細くなり、n-InPクラッド層との間隔は 0.2〃mである。しかし、ウェハ内の位置や成長毎によっては、図2-4(b)、(C)にそれぞ れ示すような無効電流経路幅が広いものやn-InPクラツド層とn-InP電流ブロック層が 接触したもの、或いは図2-4(d)に示すようなn-InPクラッド層上にp-InP層がかぶって いるのものがある。図2-4(b)に示すレーザ構造では、図2-1に示したように無効電流 が多くなる。また、図2-4(C)の場合には、n-InPクラツド層とn-InP電流ブロック層が 同電位になるために、p-Ⅰ㌦クラツド層からn-Ⅰ㌦電流ブロック層へ流れる無効電流が 多くなる。無効電流が多くなると①しきい値電流増加②スロープ効率劣化③最大光出力 低下等のレーザ特性悪化が生じる。図2-4(d)に示すレーザ構造では、n-InPクラツド 層が途中でp-InP層で分離されているため活性層に電流が注入されずレーザ発振はしな い。これらの不良原因は、LPE法ではメルトバックの問題や膜厚の均一性・制御性が不 十分なためである。このように、従来の作製方法では、設計通、りのレーザ構造を均一 にしかも再現性良く作製することが困難であった。 また、LPE法では大面積基板への成長が難しいため、角ウエハ(10mmx20mm)に努 閲したウェハを用いて成長していた。この場合、レジストが表面に均一に塗布できない ために、図2-5(a)に示すようにメサ幅の分布は4.5±0.5〃mと広くなる。これは、スピ ナーで基板を回転させながらレジストを塗布するときに、角ウェハの角の部分にレジス トが溜まりレジスト膜厚が中央部に比べて厚くなるためである。このメサ幅のウェハ面 内分布が大きいため、レーザ特性(発振波長・しきい電流等)は大きく分布していた。 このように、従来のLPE作製方法では、量産性の点においても問題があった。 これらの問題を解決するために、埋め込み成長にもLPE法に代えてMOCVD法を用い る試みが数多く報告されてきた(3 5)。この場合には、成長工程終了までウェハを努開 せずに大面積基板を用いることができる。基板を2インチウェハにした場合には、図2 -5(b)に示すようにメサ幅の分布は4.5±0.1/ノmと狭くなる。これにより、ウェハ面内で 均一なレーザ構造が作製可能となり、問題は解決したかに思われた。しかし、半導体レ ーザの初期特性は、LPE法で埋め込み成長したものと同等のものが得られるものの、信 頼性に問題があったため広く実用化には至っていなかった。信頼性が悪い原因は、埋め 込み成長時の再成長界面の汚染物に起因するものと考えられている。また、これまでの 報告例では、すべてn型基板を用いた。これは、p型基板を用いた場合埋め込み構造が 複雑であるため、LPE法と同様に作製が困難であったためである。 この章では、まず、p型基板上の長波長半導体レーザ構造の作製上でのポイントをn 型基板上のものと比較して示す。次に、MOCVD法で埋め込み成長する時に最適なメサ 形状及びメサ形成のためのエッチング液について述べる。MOCVD法によるInP埋め込み 成長機構について述べ、これを利用した筆者ら独自のFS-BH(FacetSelective-grOWth ー19- 活性層 (a)無効電流経路幅が約0.2/∠mで理想的な構造 (b)無効電流経路幅が約0.7〃mと 広いために無効電流が多く流れる構造 (c)n-InPクラツド層とn-hP電流ブロック層が 接触して無効電流経路幅がないために、 (d)n-InPクラツド層間にp-hP層が 挟まりレーザ発振しない構造 無効電流が多く流れる構造 図2-4 LPE法を用いて埋込成長した時のレーザ活性層付近の断面SEM像 二.′′11- (a) (b) 2インチウエハ 角ウエハ(10x20mm) ±0.5ルm ±0.1J⊥m 図2-5 レジストパターン幅の面内分布 BuriedHeterostruCture)レーザ構造(6)について記述する。最後に再成長界面の汚染物低 減について述べる。 2-2 n及びp型基板上の長波長半導体レーザ構造の比較 これまでの報告されたn型基板上の長波長半導体レーザの断面構造を、図2-6(a)に 示す(7 9)。図の中央部には、活性層にキャリアを注入してレーザ発振に寄与する電流 が流れる。活性層の両側には、挿入したp-InP電流ブロック層/n一Ⅰ㌦電流ブロック層のた めに電流は流れない。この両者の境界には,活性層を流れずにレーザ発振に寄与しない 無効電流(図中点線で示す)が流れる。しかし、無効電流は抵抗率が高く幅の狭い p-InP電流ブロック層を流れるので、レーザ発振に寄与する電流に比べて無視できるほ ど小さい。無効電流経路幅は、p-InP電流ブロック層成長時の側面に成長するp-InP膜厚 のみで決まる。メサ側面に一様にp-InP層が成長するために、n-InP電流ブロック層と n-InPクラツド層は接触せずレーザ作製が容易である。再成長界面に占めるp 割合が大きいため、再成長界面の清浄度が無効電流低減のキーポイントになる。 n接合の 次に、p型基板を用いて全ての層の導電型を単に入れ替えた場合を考える。図2-6 (b)に示すように、n-InP電流ブロック層とn-InPクラツド層が接触するため、無効電流は n-InP電流ブロック層を流れる。n-InP層は抵抗率がp-InP層より約2桁ほど低いため、無 効電流は無視できなくなるほど大きくなりレーザの高出力特性及び電流電圧特性の線形 性が損なわれる。 そこで、図2-6(C)に示すような抵抗率が高いp-InP埋め込み層を挿入する構造が採ら れている(2)。n基板では問題がないn-Ⅰ㌦電流ブロック層とn-Ⅰ㌦クラツド層が接触す ると、n-InP電流ブロック層とn-InPクラッド層は同電位になり、活性層の両側は電流を ブロックする機能を失う。また、無効電流経路幅(国中に示す)が広くなると無効電流 量が増大し、レーザ特性が悪くなる。(図2-1及び図2-4参照) この埋め込み構造をLPE法を用いて成長した場合、膜厚の均一性・制御性が不十分な ため、n-InP電流ブロック層とn-InPクラツド層(メサ側面)を分離しかつ無効電流経路 幅を狭くすることは、図2-4で説明したように非常に困難であった。 以上のことよりp型基板上のレーザにおいては、n-InP電流ブロック層とn-InPクラッ ド層の接触を無くし、かつ無効電流経路幅を狭く制御することがレーザ特性上極めて重 要である。 図2-7に、活性層を含む全ての層をMOCVD法で図2-6(C)に示すレーザ構造を作製し た場合のプロセスを示す。まず、P-InP基板上にp-InPクラツド層・活性層・n-InPクラッ ド層を順次成長する(図2-7(a))。表面全体にスパッタによりSiO2膜を成膜した後、 写真製版技術を用いて<110>方向にストライプを形成する(図2-7(b))。表面エッチン グにより活性層側面を除去して台形(メサ)を形成する(図2-7(C))。次に、p-Ⅰ㌦埋 め込み層・n-InP電流ブロック層・P-InP電流ブロック層をメサ側面に順次成長した後 (図2-7(d))、SiO2膜を除去する。最後にn-InPコンタクト層を成長する(図2-7(e))。 ー22- イトp-InPコンタクト層 イト・n-InP電流ブロ 埋め込み層 ート㌢InP電流プロ イ←n-InPクラツド層 (回申の破線はメサ形状を示す。) (a)n-InP基板ヒの長波長レーザ構造断面模式図 活性層(lnGaAsP)n-InPクラッド層 ィトn-InPコンタクト層 →トp-InP電流ブロック層 埋め込み層 疇トロ-InP電流ブロック層 イ←p-InPクラツド層 (図中の破線はメサ形状を示す。) (b)(a)の構造で単に導電型を入れ替えた場合の長波長レーザ構造断面模式図 活性層(InGaAsP) \ n-InPクラツド層 J ## イト n-InPコンタクト層 ィトp血P電流ブロック層 -1 、、l/∴// ′ //W . 一トn一InP電流ブロック層 ■ ヽ ′ ■ 発振に寄 一--■■■■■一一 →←p血P埋め込め層 与する電鴫蒜蒜 … イ←p-InPクラツド層 -- (図中の破線はメサ形状を示す。) 無効電流経路幅 (C)p-InP基板上の長波長レーザ構造断面模式図 図2-6 n及びp-InP基板上の長波長レーザ構造の比較 -23- 埋め込み層 活性層(InGaAsP) (a)活性層成長 (b)SiO2ストライプ形成 (C)メサ形成 p-InP n-InP p-InP (d)埋め込み層成長 n-InP (e)コンタクト層成長 図2-7 活性層を含むすべての層を MOCVD法で成長した場合のレーザの作製方法 -24- このように、全ての層をMOCVD法で作製した場合、先に図2_3示したLPE法を用い た場合と比べて、成長工程が1回多くなる。しかし、図2-4(d)で示したようなn-InP クラツド層上にp-InP層が覆い被さるトラブルは、プロセス上全くあり得ない。 2-3 2-3-1 埋め込みメサ形状 メサ側面がくびれたメサへの埋め込み成長 図2-6(C)に示すレーザ構造を実現するために、MOCVD法で埋め込み成長しやすいメ サ形状がどんな形状であるか(001)justInP基板を用いて検討した。成長には縦型MOCVD 装置を用いた。主な成長条件を表2-1に示す。成長温度650℃・成長圧力76Torr・ⅦⅠⅠ 比100と、InP成長で一般によく用いられている条件で行った。アンドープInPのキャリ ア濃度は5xlO15cm 3以下であり、加及びSをドーピングした時のキャリア濃度はそれぞ れ7xlO17cm-3及び7xlO18cm 3である。 従来のLPE法で埋め込み成長する場合のメサは、エッチングマスクとしてレジストを 用いて<110>方向にBrメタノール液で形成していた。メサの断面SEM像を、図2-8に示 す。メサ側面は、(110)から(001)結晶面の連続したなだらかな"富士山状"の傾斜面に なっている(図2-3(b)参照)。一方、MOCⅥ)法で埋め込み層を成長する場合、メサ形 成時にはエッチングマスクとして利用できかつ、埋め込み層成長時にはマスク上に結晶 が付着しないいわゆるInP選択成長が可能なマスクとして誘電体膜(SiO2、SiN等)を用 いることがレーザ構造作製上必要である(図2-7(b)参照)(10,11)。そこで、SiO2膜をエッ チングマスクとして同じBrメタノール液を用いてメサ形成した場合の断面メサ形状の SEM像を、図2-9に示す。マスク直下のメサ側面には(111)A面が形成され、メサ側面途 中でくびれた形状になる。図2-8と図2-9の形状の違いは、SiO2マスクとⅠ㌦層との密 着度が、レジストとInP層との密着度より強いことに起因する。すなわち、SiO2マスクと InP層との密着度が強いため、マスク直下のInPのサイドエッチング量が抑制される一方 で、Brメタノールの(111)A面のエッチング速度が遅いためにマスク直下に(111)A面が形 成される。また、(111)A面には、SiO2マスク端の凹凸の影響を受けた凹凸がストライプ 方向に現れている。 図2-9のメサを用いて、0.2〃m厚のInP層を選択埋め込み成長したときのメサ側面の 埋め込み形状のSEM像を図2-10に示す。(111)A面上の成長は下地を反映した凹凸が見 られ、メサ側面のくびれ付近は成長層厚がストライプ方向にまだらになっている。この ようにメサ側面の成長層厚が一様でないと、図2-6(C)に示す無効電流経路幅がレーザ のストライプ方向に揺らぐ原因となる。また、図2-3(a)構造で図2-9のメサを作製し た場合、表面から活性層までの位置とメサエッチング量によるメサくびれの相村的な位 置関係により、活性層の側面に(111)A面が現れることが考えられる。この場合、転位が 括性層内に発生し非発光中心が非常に多くなり、レーザの閥電流値が増加する(12)とい う報告例がある。 以上のことから、図2-9に示すようなメサ側面が途中でくびれているようなメサ形状 ー25- 表2-1 InP層の成長条件 成長温度 650℃ 成長圧力 76To汀 仝H2ガス流量 4slm PH3流量 50sccm TMI流量 300sccm DEZ流量 5sccm H2S流量 100sccm 100 V/ⅠⅠⅠ 成長速度 3・5/ノm/h -26- 2〃m 図2-8 LPE法で埋め込み成長する場合のメサ断面SEM像 2〃m 図2-9■SiO2エッチングマスクを用いてBrメタノールでhPをエッチング した時のメサ断面SEM像(メサ側面形状を分かりやすくするため のSiO2ひさしは除去してある。) →27- 図2-10 図2-9のメサを用いてhP層を0.2〃-n成長した時のメサ断面SEM像 -28- は、MOCVD法を用いたp型基板上の埋め込みレーザ構造には適さないことが判明した。 従って、MOCVD法で埋め込み成長する場合においても、図2-8に示すような"富士山" 状のなだらかな傾斜側面を持つメサ形状が必要不可欠と言える。 2-3-2 メサ形状のエッチング液依存性 そこで、InP基板を用いてエッチング液(13)の違いによるメサ形状を調べて、メサ側面 のくびれないメサ形成方法を検討した(エッチング条件:20℃、無撹拝)。その際、 選択成長マスクとInP基板との密着性を考慮して、選択成長マスクをスパッタによるSiO2 膜と熱CVDによるSiN膜の2種類について調べた。ストライプ方向は全て<110>方向で、 ストライプ幅は5〃mとした。エッチング量は、約3〃mとした。図2-11にメサ形状 の断面SEM像のエッチング液依存性を示す。熱CVDによるSiN膜とInPとの密着度は、ス パッタによるSiO2膜のものより強いために、SiN膜を用いたサンプルはすべてメサ側面 がくびれている。いずれもマスク直下には(111)A面が現れており、どのエッチング液 も(111)A面のエッチング速度が遅いことが判明した。一方、SiO2膜を用いたサンプル では、2HBr-H,02-10H20、HCl-2HNO,-2H20並びにHCl-H202-CH3COOH液を用いると、く びれのないメサ形状が得られる。 HCl-2HNO,-2H20液(14)の場合は、メサ側面に垂直な(110)面が現れている。サイド エッチング量は、メサ高さの1・5倍と非常に大きいためにメサ幅制御及びSiO2マスク下の 選択埋め込み成長が困難である。また、メサ側面に(111)B面が現れている HCトH202-CH,COOH液の場合には、エッチング中に発生する泡が選択成長マスクの下部 に付着しサイドエッチング量が不均一となるため、メサ幅がストライプに沿って変化す る。これらの理由により、これら2つの混合液はメサ形成エッチング液としては不向き である。 SiO2膜をエッチングマスクとして2HBr-H2q-10H20液でInPをエッチングすることによ り、メサ側面が"富士山"状のなだらかに(110)から(001)まで連続に変化するくび れのないメサが得られた。このメサ形状は、図2-8に示したLPE法で埋め込んでいるメ サ形状と同じである。このエッチング液は、InP層とInGaAsP層を同じ速度でエッチング できるので、InGaAsP活性層がメサ側面から飛び出たり凹んだりすることはない。 基板に幅8〃mのSiO2ストライプ膜を用いてメサ形成したときの、サイドエッチング 量とメサ高さの関係を図2-12に示す。メサ高さの2/3が、サイドエッチング量となる。 エッチング時間を長くしてサイドエッチング量を多くすると、SiO2膜のひさしが長くな りエッチング液が横方向に回り込みにくくなることからメサ幅の制御性が悪くなること が考えられる。また、逆に埋め込み成長する場合、SiO2膜のひさしが長いため成長種が SiO2膜下まで回り込みにくくなり、埋め込み段差が大きくなる。従って、メサ幅制御と 埋め込み成長の観点からデバイス適用時のメサ高さを2・5〃mとした○ 図2-13に2HBr-H202-10H20液を用いて平おきしたInP基板を無撹拝(○印)でエッチ ングした時のエッチング深さのエッチング時間依存性を示す。最初の10分間は、エッチ ー29- 図2-11各種エッチング液を用いてメサを形成した時の断面SEM像。 5〃m つJ (∈ヱ丁珊hヽトトりL†争 0 01 2 3 4 メサ高さ:h(〃m) 図2-12 サイドエッチング量とメサ高さの関係 (∈ヱ欄hヽ小トT 4 10 20 エッチング時間(分) 図2-13 エッチング量のエッチング時間依存性 -31- ング時間に比例してエッチング量が進む。さらにエッチング時間が経過すると、時間と もに単位時間当たりのエッチング量は徐々に増加する。これは、HBr+H2Q2→Br2+H20 の反応が時間とともに徐々に促進し、BrがInP(InGaAsP)のエッチングに寄与してくる ためであると考えられる。図2-13には、エッチング液を撹拝した場合(●印)のエッ チング量を合わせて示す。撹拝は、基板表面を上にして上下に動かした。撹拝により上 記の反応がさらに促進し、エッチング速度は撹拝しない場合に比べて4倍以上増加する。 撹拝の有無によるメサ形状の違いはない。しかし、撹拝によるエッチングは、その撹拝 条件(撹拝速度、撹拝量等)によりエッチング速度が変化することが懸念される。また、 エッチング速度が速いため、メサ高さを2.5/∠mするときのエッチング時間のマージンが 少ない。したがってエッチング量の再現性の観点から、無撹拝でメサ形成エッチングを 行った。 ウェハ面内に均一にレーザ構造を作製する場合、成長層の均一性もさることながらメ サエッチングの高さの均一性も同様に要求される。図2-14に平おきした2インチInP 基板を無撹拝で16分間エッチングした時のメサ高さ(エッチング量)の面内分布を示す。 メサ高さは、中心からほぼ同心円状にウェハ周辺に向かって増加している。メサ高さの 分布は、中心から半径158nⅡnの領域で±10%であり均一にエッチングされている。 以上のように、HBr系エッチング液を用いてSiO2膜をエッチングマスクにすることに より、"富士山"状のなだらかな側面をもつメサ形状をウェハ面内均一に得ることでき た。 2-4 埋め込み成長機構 p-Ⅰ㌦基板上の長波長半導体レーザを作製し無効電流経路幅を再現性良く制御するため には、メサ側面の成長機構を明らかにする必要がある。単純にInP層を成長したのでは、 どのように成長したか後で調査できない。また、InPの間にマーカとしてGaInAsを挿入 しながら成長した場合、GaInAs層を成長中にInP成長では現れない結晶面が現れる可能 性がある。そこで、Ⅰ㌦成長中にp及びn型ドーバントを交互に供給して検討した。メ サ側面をp-InP(0.2FLm、p=7xlO17cm.3)とn-InP(0.05FLm、p=7xlO18cm-3)の多層 膜で選択埋め込み成長を行ないその成長機構を調べた(15)。MOCVD法では結晶の成長 速度に面方位依存性があるため、まずはじめに、側面形状が単一の結晶面(ドライエッ チングで形成した垂直な側面)の場合(図2-15(a))について検討した。次に前節で 述べたウェットエッチング液で形成した連続的に面方位が変化するなだらかな"富士山" 状の側面(図2-15(b))について検討した。選択成長マスクにはSiO2膜を用いた。 2-4-1垂直な側面を持つメサの選択埋め込み成長機構 垂直な側面を持つメサを選択埋め込み成長した後の断面SEM写真を図2-16に示す( -32- 3 8 13 18 23 28 33 38 X-aXisPos出0∩(mm) 図2-14 メサ高さの2インチ面内分布 ー33- 43 46 SiO2膜 (a) SiO2膜 (b) 図2-15(a)垂直な側面を持つメサ断面形状 (b)"富士山''状のなだらかな側面を持つメサ断面形状 二= n-InP 十p-InP 図2-16 垂直な側面を持つメサを選択埋め込み成長した彼の断面SEM像 n-bPは白い部分、p-hPは黒い部分。 -34- n_Ⅰ㌦は白い部分,p-InPは黒い部分)。また,成長機構の模式図を図2-17に示す。 まず成長初期段階(第一段階)には、図2-17(a)に示すようにメサ側面(110)面と底面 (001)面から同じ成長速度で成長が進み、側面のSiO2膜直下にはリン(P)原子だけが並 んだ(111)B面が現われる。この(111)B面が現われる成長過程について図2-18を用いて 以下に説明する。 図2-18(a)に示すように、InP結晶内のインディウム(In)とP原子はそれぞれお互い に最外殻電子を共有し4本の結合手でお互い結合している。垂直な側面((110)面)では、 表面の原子は結合が1本切れた状態で存在している。基板表面上に供給された原料ガス ((CH,)3In,PH,)は熱分解してIn及びP原子になり、それぞれの原子は空の結合手を持 つ(110)面の各原子に対して図2-18(b)のように結合し側面成長が始まる。回申の矢印 で示す(001)面の最表面P原子は、SiO2膜によって終端されているのでIn原子とは結合し ない。さらにIn及びP原子が供給されると、図2-18(C)のように原子は結合する。この 際、3本の結合手によって結合している原子(記号C,D,E)に村して、記号Aで示すIn 原子は1本の結合手で記号Bで示すP原子と結合しているので、非常に熱的に不安定でP 原子と切れやすい。また、InPの成長時の(CH,)3InとPH,の供給比は1:100なので、基 板表面上につねにP原子(図2-18(C)では記号CとEに相当する)が存在する(16)と考え ると、Inが表面に来たときにはすでに結合手が3本ある位置Dの方が結合手が1本しか ない位置Aより安定である。 したがって、この位置AのIn原子は結合が切れて結晶表面を移動して、3本((110)側 面)又は2本((001)底面)の結合手でP原子と結合する位置(それぞれD,F)に安定す る。この成長機構を考えることにより、表面にP原子だけが並んだ(111)B面が側面の SiO2膜直下に現われる(図2-18(d))ことを説明できる。 (001)底面および(110)側面の成長が進む時の表面の形状を⊥図2-17(b)に実線で示す (第二段階)。メサ側面の(110)面はメサ底面からの成長により消えて、表面には(111)B面 と(001)面が残る。さらに成長が進むと、(111)B面が埋まり最終的にメサ側面が埋まる (第三段階)(図2-17(C))。この(111)B面が、第三段階になってから埋まり始める成長 過程について以下に説明する。 (111)B面を側面として持つメサを選択埋め込み成長した後の断面SEM像を、図2-19 (a)に全体像(b)にメサ側面拡大像を示す(n-InPは白い部分、p-InPは黒い部分)。一層目 のp-InP成長では、(111)B側面全体には成長せず、メサ底面から上に行くほど細くなるよ うにして(111)B側面下部にのみ成長している。その後の層は、一層目の成長面とほぼ平 行に成長が進んでいる。これと同じ成長機構が、図2-17(C)の第三投階で起こってい る。 この(111)B面への成長機構の模式図を、図2-20に示す。(111)B面の形成機構の時の 述べたように、図2-20(a)に示した(111)B面にはIn原子は結びつきにくい。したがって、 メサ底面である(001)面から成長が始まる(図2-20(b))。この際、記号aのP原子と記 号bのP原子とからそれぞれ1本ずつ結合手が出ているために、(111)B面上であっても記 号cの位置にIn原子が結合することは可能である。このように、(111)B面上を成長に寄与 せず移動してきた(又は、側面近傍に気相拡散してきた)In原子は、図2-20(C)に示 -35- (a)第一段階 111B血 / (0 / (b)第二段階 (c)第三段階 図2-17 垂直な側面を持つメサの埋め込み成長機構 -36- SiO2膜\ < > InP結晶 (b) (a) (d) 図2-18(111)B形成のメカニズム -37- (a)全体像 三三 n一InP 三 p-InP (b)側面近傍拡大像 図2-19(111)B側面を持つメサを選択埋め込み成長後の断面SEM像 n-hPは白い部分、・p-hPは黒い部分。 -38- (a) (b) (C) 図2-20(111)B面への成長メカニズム -39- すように(111)B面の成長に寄与し、図2-19のような成長過程で(111)B側面を成長して いくものと考えられる。 2-4-2 --富士山状t-のなだらかな側面を持つメサの選択埋め込み成長機構 ーー富士山状--のなだらかな側面を持つメサを、選択埋め込み成長した後の断面SEM写真 を図2-21示す(n-Ⅰ㌦は白い部分、p-InPは黒い部分)。また、成長機構の模式図を図 2-22に示す。 まず成長初期段階(第一段階)には、図2-22(a)に示すように側面のSiO2膜直下には垂 直な側面と同様に(111)B面が現われ、メサ側面には(221)B面、(001)底面と(221)B面の間 には、なだらかに面方位が変化している結晶面(遷移面)が現われる。(221)B面も最表 面のP原子被覆率が高く(111)B面と同様な理由で、(221)B面上の成長速度は(001)面と比 べて1/10程度遅い。従ってメサ側面のInP成長膜厚はメサ底面のInP成長膜厚よりも薄く なる。0.2FLm厚のp-InPを埋め込み成長した時の、メサ側面のSEM像を図2-23に示す。 なお、メサ側面が観察しやすいように、サンプルは傾けてある。マスク直下には(111)B 面が形成され、次に(221)B面が形成されている。両結晶面ともストライプ方向に沿って 均一に成長している。 (001)底面および(221)B面の成長が進む時の表面の形状を、図2-22(b)に実線で示す (第二段階)。メサ側面の成長速度の遅い(221)B面は、メサ底面からの成長により消える。 そして、表面には(111)B面と(001)面と遷移面が残る。さらに成長が進むと、(111)B面が 埋まり最終的にメサ側面が埋まる(第三段階)(図2-22(C))。埋め込み層が厚くなるに 従ってSiO2膜直下には原料ガスが十分供給されないため、図2-22(C)のようにメサ側面 は完全には埋まらずSiO2膜下は最終的には窪みになる。 2-5 FS-BHレーザ構造 上記埋め込み成長機構を利用して図2-6(C)に示す埋め込み構造を作製する過程を示 す。図2-24に示すように埋め込み成長過程の第一段階でp-InP層を成長し、P-InP埋め 込み層(図2-24(a))を形成する。第二段階でn-InP層を成長し、n-InP電流ブロック層 (図2-24(b))を形成する。このとき、成長速度が非常に遅い(111)B面に成長が始 まる前に、n-InP成長を止めることが重要なポイントである。これにより、n-InP電流ブ ロック層とn-InPクラツド層を完全に分離できる。さらに第三段階で、P-InP層を成長し て、p-Ⅰ㌦電流ブロック層(図2-24(C))を形成することにより図2-6(C)に示す埋め込 み構造が得られる。無効電流経路幅は、p-InP埋め込み層成長時におけるメサ側面 (221)B面の成長厚みで自動的に決まる。特定の成長面上の結晶成長速度がメサ底面の結 晶成長速度と異なることを利用した新埋め込み構造を筆者らは、FS-BH(Facet Selective-grOWthBuriedHeterostruCture)レーザと名付けた。 -40- 三= m-InP 一←p-InP 図2-21"富士山"状のなだらかな側面を持つメサを選択埋め込み成長した 後の断面SEM像 n-hPは白い部分、p-hPは黒い部分。 -41 (a)第一段階 (b)第二段階 (C)第三段階 図2-22 "富士山"状のなだらかな側面を持つ メサの埋め込み成長機構 -42- 図2-23 埋め込み成長途中で成長を止めた時のメサ側面の断面SEM像 メサ側面に(111)B面と(221)ち面が形成されている。 -43- (a)第一段階 (b)第二段階 ィ亡p-InP電流ブロック層 (C)第三段階 図2-24 埋め込み成長機構を利用した p基板上レーザの電流ブロック構造の作製過程 -44- 活性層を含む全ての層をMOCVD法を用いて作製したFS_BHレーザ構造の断面SEM 像を、図2-25に示す。n-Ⅰ㌦電流ブロック層とn-InPクラッド層を完全に分離して、無 効電流経路幅は0・18〃mに制御されている。活性層近傍のn-Ⅰ㌦電流ブロック層とp-Ⅰ㌦埋 め込み層の界面には、(221)B面及び遷移面が明確に現れている。(111)B面は、p-InP埋め 込み層とp-InP電流ブロック層の界面になるので断面SEM像には現れない。しかし、 n一Ⅰ㌦電流ブロック層の先端とn-Ⅰ㌦クラツド層の鋭角に窪んでいる点を結ぶ線と(001) 面のなす角度は、(111)B面を示す54度であり(111)B面が存在していたことが裏付けされ る。埋め込み成長時に形成されたマスク直下の0・7FLmの窪みは、3rdエビを2FLm成長 後にほぼ平坦に埋まる。 図2-26に、MOCVD又はLPE法で選択埋め込み成長したレーザの無効電流経路幅の 分布を示す。MOCVD法で埋め込んだ場合、無効電流経路幅は2インチ基板内で0.18± 0・015FLmと、LPE法で埋め込んだ場合の20mm基板内の無効電流経路幅(0.34±0.075iLm) と比較して狭く、しかも均一であることがわかる。この成果は、上述したように①従来 のLPE法にはない成長速度の面方位依存性を利用したこと、②膜厚の制御性が2桁程度 良いこと並びに③埋め込み成長前にメサ表面がIn溶媒中に溶け出すいわゆるメルトバッ ク現象(17)がなく成長前の形状を推持できるというMOCVD法の特徴を活かして達成さ れたものである。また、メサ側面を"富士山"状のなだらかに結晶面が連続的に変化す る側面にすることによって、メサ側面に図2-10で示したようにストライプ方向に凹 凸が現れず、図2-23に示したようにストライプ方向に均一に埋め込み成長できるこ とによる。 以上のようにMOCVD法による選択成長機構を利用した埋め込み成長を行なうことに より、n-InPクラツド層とn-InP電流ブロック層を完全に分離し、しかも無効電流経路幅 を狭くかつ再現性良く制御することを可能にした。 2-6 p-InP埋め込み層厚のマージン この節では、FSBHレーザを作製する上もっとも重要となるn-InP電流ブロック層と n-InPクラッド層を完全に分離し、かつ無効電流経路幅を0.1∼0.2FLmするための、P-InP 埋め込み成長層厚のマージンについて述べる。 メサ高さ2・5FLmにおいてp-InP埋め込み層厚を0.5FLm・0.7FLm・1.OiLm(平坦な基板 領域での成長膜厚)変えた場合のメサ側面の断面SEM像を、それぞれ図2-27(a)・(b)・ (c)に示す。n-InP電流ブロック層とp-InP電流ブロック層の層厚は、それぞれ0.8FLmと1.O FLm一定とした。P-InP埋め込み層の埋め込み形状が分かりやすくするために、P-InPク ラッド層に相当する部分はn-InP層とした。p-Ⅰげ埋め込み層厚を厚くするに従って、底 面からの成長層が厚くなりメサ側面に現れる(221)B面の長さは短くなっている。p-Ⅰげ埋 め込み層が0.5及び0.7〃mの場合は無効電流経路幅が0.1〃mであるのに村して、p-Ⅰげ埋 め込み層厚1.0〃mの場合は無効電流経路幅が0.5〃mと広くなっている。これは、底面か らの成長が進むにつれ(221)B面の領域が狭くなり(図2-24の第1から第2段階へ進ん -45- ・壱泌一兼寿:〟≡、:γゾ 、In-m憎 p-ⅠⅠげ 滋綴適登、 省; 泌 図2-25 l l 15〃ml FS-BHレーザ構造の断面SEM像 u き ▼ _ ■l 官立)璧墟麗痙藤森巌 ■■ LPE法 ● ' ● 0 ● 塁 蔓MOCVD法 駁●●宗 ‡. 00 .〇 ■2 0 ー10 10 20 hP基板上の位置(mm) 図2-26 無効電流経路幅の分布(MOCVD法とLPE法の比較) -46- (a)p一Ⅰ㌦埋め込み層厚:0.5/∠m (b)p-11げ埋め込み層厚:0.7/Jm (C)p-InP埋め込み層厚:Ⅰ.0〃m 図2-27 p-InP埋め込み層厚を変えた時の埋め込み形状の断面SEM像 n-InP電流ブロック厚:0.8FLm、P-InP電流ブロック:1・OFLm並びに メサ高さ:2.5〃mは一定。埋込形状を分かりやすくするため、 p-hPクラツド層をn血P層に変更した。 -47- で)、n-InP電流ブロック層が活性層から離れたためである。 図2-28に、無効電流経路幅のp-InP埋め込み層厚依存性を示す。まず、P-InP埋め込 み層が厚くなるに従って無効電流経路幅は広くなり、p-InP埋め込み層厚0.5∼0.7〃mの 間で無効電流経路幅はほぼ0.1FLm一定となる。さらにp-InP埋め込み層が1.OFLmまで厚 くなると、無効電流経路幅は急激に広くなる。また、図2-28には、n-InP電流ブロッ ク層とn-InPクラッド層の分離についても合わせて示す。○印は、n-InP電流ブロック層 とn-InPクラッド層の分離を示し、●印は、n-InP電流ブロック層とn-InPクラツド層の接 触を示す。p-Ⅰ㌦埋め込み層厚が薄い時は、(111)B面及び(221)B面の形成が十分でなく n-InP電流ブロック層とn-InPクラツド層は接触する。無効電流経路幅が一定の時は、 n-InP電流ブロック層とn-InPクラッド層の分離している。 以上のことからn-InP電流ブロック層とn一InPクラッド層を完全に分離し,かつ無効電流 経路幅を0.1∼0.2〃mするためには、p-Ⅰ㌦埋め込み層厚を0.5∼0.7〃mの範囲にする必要 があり、これはMOCVD法では十分膜厚制御できる範囲である。 2-7 再成長界面汚染物の低減 LPE法では、メサ表面の汚染物はメルトバック(17)により除去できると考えられて いる。このため、高い信頼性を持つレーザを容易に作製できる。しかし、MOCVD法で は埋め込み成長前の汚染物除去はサーマルエッチングのみで、汚染物をメサ表面から除 去することができずLPEと同等の信頼性を持つレーザを作製することは非常に困難であっ た。メサ表面の汚染物は、主にメサ形成工程でのエッチング・その後の水洗並びに乾 燥により発生し付着する。Siは、水の中にコロイダルSiとして存在しているばかりでは なく、クリーンルーム内にも多量に存在することが報告されている(18)ため、今回再成 長界面のSi濃度に着目して、メサ表面の汚染を検討した。 評価方法は、InP基板上にⅠ㌦層を成長した表面を種々の表面処理を行ったのち、再び Ⅰ㌦層を成長したサンプルを用いて、再成長界面のSi濃度をSIMS分析した。表2-2にそ の分析結果を示す。従来から用いている純水処理(10分間)を施したサンプルのSi濃度 は、LPE法を用いた場合0.4∼1xlO18cm-3であるのに対して、MOCVD法を用いた場合8x lO18cnr3と多い。これは、LPE法を用いた場合、メルトバックにより表面のSiを除去で きると考えられている。純水からさらに水の純度を上げた超純水を用いることにより表 面に付着しているSiは減少し、Si濃度はLPEのものと同レベルの3xlO17cm,3まで1桁程 度低減した。 実際図2-7に示すようにレーザを作製する場合は、メサエッチングを行う必要がある ことから、メサエッチング液で表面処理をしたサンプルについて次に検討した。表面処 理をHBr系エッチング→超純水(→アルカリ処理)とメサ形成と同じプロセス処理を施 したサンプルのSi濃度は、1xlO18cm-3と超純水のみによる表面処理の場合より悪くなっ た。エッチングすることによりSi濃度が増加する理由として、①HBrの純度が悪いこと ②エッチングによりInP表面が活性化しSiが付着しやすくなることが考えられる。 -48- (∈う二等嘩聖璧脚蚕廠 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 P-InP埋め込み層厚(FLm) 図2-28 無効電流経路幅のp-InP埋込層厚依存性 ●印はn-InP電流ブロック層とn-InPクラッド層の接触、 及び○印はn-InP電流ブロック層とn-InPクラツド層の分 離を示している。 表2-2 成長方法 表面処理による再成長界面のSiパイルアップ量の違い 反応炉の 材質 表面処理 si濃度(cm-3) 17 LPE法 4′、、一10xlO 純水 18 8xlO 石英 超純水 17 3xlO MOCVD法 18 1xlO HBr系エッチング→ 超純水 SUS (→アルカリ処理) -49- 17 4∼8xlO エッチング後の表面をAFMを用いて観察すると、超純水処理のみでは存在しなかった 球状のものがある一定の表面密度で存在する。この球状のものがすべてSiでできている と仮定すると、Si濃度は∼1018cm-3程度になる。この仮定が正しければ、この実験事実 は前者の理由を指示していると考えられる。しかし、表2-2に示すように同じ表面処 理でも反応炉を石英からサスに変えることにより、Si濃度は若干減少し4∼8xlO17cm.3 となり従来のLPEの界面Si濃度と同レベルになった。表面Si濃度に反応炉の材質依存性 があることは、反応炉でのInP成長までに反応炉からの汚染があることを意味している。 石英の炉の方がSi濃度が高いのは、炉壁の石英が熱分解して表面に付着しているものと 考えられる。同じ石英の反応炉において、超純粋処理のみの場合のSi濃度が、HBr系エッ チングしたときのものより少ないことは、表面状態がHBr処理したことにより活性化し ていることを意味している。これらのことから、エッチングによるSi濃度の増加は、後 者の理由によるもとと思われる。 以上述べたように超純水の使用によりメサ表面汚染物を低減し、従来のLPE法で得ら れていたものと同等の再成長界面がMOCVD法でも得られた。この村策により次章で述 べるようにLPEと同等の高い信頼性を持つ活性層を含む全ての層をMOCVD法で成長し たレーザを作製が可能となった。 2-8 まとめ ウェットエッチングで形成した--富士山状--のなだらかな側面を持つメサを用いて、 MOCVD法による選択埋め込み成長中にメサ側面に特定の成長面が現われること及びそ の成長面上の結晶成長速度がメサ底面の結晶成長速度と違うことを見出した。この選択 成長機構を利用し、従来のLPE法による埋め込みレーザでは極めて困難であった無効電 流経路幅を狭く再現性良く制御し、仝気相成長成長FS-BHレーザの開発に成功した。 FS-BHレーザは、活性層及び埋め込み層をすべて成長膜厚の均一性・制御性に優れた MOCVD法を用いているので、設計通りのレーザ構造を2・3インチ≠InP基板上に再現 性良く作製すること可能にした。また、埋め込み成長前の表面処理方法を改善して再成 長界面の不純物を低減した。 これらのことにより、光通信用レーザの素子特性の高性能・高歩留化が期待される。 本研究による埋め込み成長技術はInP系長波長レーザのみならずGaAs系短波長レーザに も応用可能な技術であり、半導体レーザの今後の発展に大きく寄与すると思われる。 -50一 参考文献(第2章) (1)A・Takemoto,Y・Ohkura,Y.Kawama,T.Kimura,N.Yoshida,S.Kakimotoand S・Susaki,Electron.Lett.25(1989)220. 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(18)H.Konishi,I.Sugaya,andY.Hisajima,IPFA ー51- Symp.Proc.(1989)2. 第3章 3-1 仝MOCVD成長による半導体レーザの特性 はじめに 前章では成長膜厚の均一性・制御性に優れたMOCVD法を用いて、特定の成長面で結 晶成長速度と異なる選択埋め込み成長機構を応用することにより、p型基板上に設計通 りの長波長半導体レーザ構造を2インチ基板上に均一にしかも再現性良く作製すること が可能なことを示した。これにより、①無効電流低減による低しきい値電流化及び高出 力化、②同一基板上でのレーザ特性の高均一化などが期待される。 このレーザ特性の高性能化・高均一化を生かせるデバイスとして、光インターコネク ト用1.3〃m帯10ビームレーザアレイとファイバアンプ励起用1.48〃m帯高出力レーザが ある。 (1)光インターコネクト用1.3〃m帯10ビームレーザアレイ 電子システムの高速化・高集積化に伴い、従来の同軸ケーブルを用いた配線では、 ①信号遅延が大きくなり、高速伝送の実現困難 ②ボード内/ボード間配線数が増大し、配線網がシステム全体に占める体積の肥大 ③信号の漏れ込みによる障害 等の問題がある。そんな中で、光インターコネクトは信号伝送に光を使うことで得ら れる高速性・並列性といった光の利点によって、上記問題を解決するものとして期待さ れている。この光の光源となるレーザアレイには、低しきい値電流及びレーザ特性の高 均一性が要求されている。 (2)ファイバアンプ励起用1.48〃m帯高出力レーザ 光を光の形で増幅できる光ファイバアンプは、光通信にとって大きなイノベーション になる。従来の光/電気変換型増幅器では得られない高速性・コヒーレント性を有する 光増幅器が、超長距離無中継システム・光波長多重化システムの実用化に大きく寄与し つつある。稀土類であるエルビウム(Er)イオンをコアの部分にドープしたエルビウム ファイバーは、光通信の最低損失波長である1.55〃m帯で高利得の光増幅が得られるた め注目されている(1)。励起用光源は、エルビウムファイバーの吸収波長となる1・48〃 m帯高出力レーザが用いられる。励起パワーが大きいほど出力パワーが大きくなるので、 高出力が要求される。 この章では、低しきい値電流化とレーザ特性の高均一化が特に要求される光インター コネクト用1.3〃m帯10ビームレーザアレイと、高出力化が要求されるファイバアンプ励 起用1.48〃m帯高出力レーザについて述べる。それぞれの半導体レーザの初期特性につ いて示した後、それらの信頼性について述べ、このMOCVD法によるp型基板上長波長 半導体レーザ構造作製技術が、レーザの本格的な量産への道を開くものであること示す。 ー52- 3-21.3/ノm帯10ビームレーザアレイ 囲3-1に、1.3FLm帯10ビームレーザアレイの組み立て後のSEM像を示す。SiCヒー トシンク上に同一p基板に作製した10個のレーザが、1チップとして搭載されている。 各レーザのn型表面電極からボンデングパットまで、金が配線されている。パッドの先 は、駆動回路に接続されている。また、レーザ光は左下方向に出射し、ファイバーリボ ンを通して光信号を送る。 図3-2に、レーザアレイの模式図と活性層構造を示す。p型基板は電気的に共通とし て、表面にはp型基板に達する深さまで共振器に沿って溝を形成して各レーザは独立に 駆動できる構造をしている。レーザビーム間隔は250〃m、共振器長は300〃mである。 活性層構造は、井戸層数5・井戸層厚4nmのInGaAsP・バリア層厚15nmのInGaAsP(人 g=1.18FLm)・光ガイド層厚60nmのSCH(SeparateCon血ementHeterostruCture)構造で ある。井戸層には、低しきい値化及び高効率化を目的として1%の圧縮歪みを導入した (2)。結晶が弾性的に伸びあるいは縮んで歪を緩和できる条件としては、井戸層のトー タル厚み20nmに対して1%が上限である。 まず、上記レーザアレイの単体レーザの特性評価を行った。端面はアンコートで25 ℃cwにおいて、しきい値電流は6mA・効率は0.36mW/mAであった。同様に作製した バルク活性層では、しきい値電流は15mA・効率は0.28mWhnAであったので、歪みMQW (MultiQuantamWell)構造の効果がでていると考えられる。このレーザを低しきい値化 を目的に端面をコーティング(前面60%、後面90%)したところ、25℃でのしきい値 電流は3.4mAまで低減され、80℃の高温においても10mA以下であった(3)。この FSBHレーザ単体の特性は、従来LPEで作製したレーザ特性と比べて同等以上のものが 得られた。 次に、レーザ特性のウェハー内分布について述べる。まず、埋め込み成長を従来の LPE法を用いて作製したレーザアレイのしきい値電流の分布について示す。同一ウェハ から無作為に取り出した10ビームレーザアレイ20チップ(総数200個)の25℃と80 ℃でのしきい値電流の分布を図3-3に示す。25℃では、2∼4mAの範囲で分布して いるが、80℃では7∼15mAの間でほぼ均一に分布している。80℃でしきい値電 流が高いレーザの断面をSEMを用いて観察したところ、図2-4(b),(C)に示したような 無効電流経路幅が広いレーザ構造やn-InP電流ブロック層とn-InP電流クラツド層が接触 しているレーザ構造であることを確認した。このことから80℃でのしきい値電流のば らつきの原因は、活性層脇を流れるレーザ発振に寄与しない無効電流の増加によるもの と考えられる。 活性層を含む全ての層をMOCVD法により2インチ基板上に作製したFS-BHレーザを、 同様に無作為に取り出した時の25℃と80℃でのしきい値電流の分布を図3-4に示 す。25℃でのしきい倍電流の分布は、2∼4mAの範囲で分布しており図3-3で示し たLPE法を用いて埋め込み層成長したレーザの特性分布と同等である。80℃でのしき い値電流の分布は、9∼11mAと25℃と同程度に狭く、しきい値電流分布はFS-BH レーザ構造にすることにより大きく改善されている。この特性の高均一性は、MOCVD -53- 図3-1LDアレイの構造のSEM像 -54- 「l 図3-21.3/ノm帯10ビームLDアレイ構造の模式図と活性層構造 0 10 しきい値電流(mA) 図3-3 LPE法を用いて埋め込み成長した場合のしきい値電流分布 250C 】 ■ 800C .._.L一⊥」」.』 5 .目」_..._.__ 10 15 しきい値電流(mA) 図3-4 MOCVD法を用いて埋め込み成長した場合のしきい値電流分布 法を用いた埋め込み成長による無効電流経路幅を均一に狭く制御した効果によるもので ある。 図3-5に10ビームレーザアレイの25℃及び80℃での光出力一往入電流特性を示す。 25℃及び80℃でのしきい値電流分布の広がりは、それぞれ2.1∼2.3mA及び8.9∼ 9.3mAと狭く非常に高均一な特性が得られている(4)。図3-4で示したウェハ全体での レーザ特性の高均一化のみならず、隣り合った連続したレーザにおいても高均一な特性 が得られていることがわかる。 図3-6に50℃、10mWでのレーザの通電結果を示す。通電時間3700時間経過 した時点でも動作電流の変化はなく安定に推移している(5)。この信頼性は、LPE法に よる埋め込みレーザのものと比較して同等以上のもめである。これは、前章で述べた再 成長界面の汚染物の低減による効果によるもので、活性層を含む全ての層をMOCVD法 で作製したレーザの信頼性を世界で初めて確認した。 3-31.48/ノm帯高出力レーザ 図3-7に、1.48〃m帯高出力レーザの構造模式図と活性層構造を示す。共振器長は、 高出力化のために900〃mと長くした。活性層構造は、井戸層数5・井戸層厚3.5nmの InGaAsP・バリア層厚13nmのInGaAsP(人g=1.18iLm)・光ガイド層厚50nmのSCH構造 である。井戸層には、低しきい値化及び高効率化を目的として1.4%の圧縮歪みを導入 した歪みMqW構造とした(6)。 図3-8にジャンクションアップで組み立てたレーザの25℃∼80℃までの温度範囲 の光電流一往入電流特性を示す。25℃でのしきい値電流は20mAで、最大光出力 200mWを超える特性が得られた。80℃においてもしきい値電流50mAで100mWを超え る光出力が得られている。80℃という高温においても高出力が得られているのは、無 効電流経路幅を狭くしたことにより無効電流を低く抑えたことによる(図2-1参照)。 光出力100mW時の水平及び垂直方向の放射半値角は、それぞれ250及び290 で、ビ ームほぼ円形であった。 図3-9にしきい値電流の温度特性を示す。しきい値電流Ithの温度依存性は、経験的 に次式で表せられる(7)。 Ith (3-1) =Ioexp(T/To) ここで、Tは活性層温度であり、Toは特性温度である。Toが大きいほどIthの温度依存 性は小さく温度特性が良いレーザと言える。図3-9においてToは、74Kとこの InGaAsP材料系としては比較的大きい値が得られている。これは、無効電流幅を狭く制 御しているため、温度を上げても活性層脇を流れる無効電流量が抑えられことに起因し ていると考えられる。 図3-10にレーザ初期特性のウェハー内分布を示す。5ウェハーのうち各ウェハーか -57- 8 [奉呈只由栗 ー∽∞- 注入電流【mA] 図3-5 LDアレイの光出力ー電流特性 9 10 70 ー∽∽- [く旦璧脚彗裔 ∠U 0 50 2000 4000 6000 Agingtime[hrs] 図3-610ビームレーザアレイ信頼性 8000 図3-71.48/ノm帯高出力レーザ構造の模式図と活性層構造 r 言ヒニコd一っ○-エ望一 80 60 ∽ ZO 0 100 罰0:抑0」拍)500 ORIVE〔URRENT(爪封 図3-8 光出力一往入電流特性 20 40 60 80 TEMPERATURE(℃) 図3-9 しきい値電流の温度特性 ー61- 100 ゝOU害b巴」 訂じ害b巴」 6 4 2 0 ⊂〉⊂〉く⊃⊂ト⊂=⊃⊂〉⊂〉 卜、qO(刀⊂)1「・Nくり寸 402000880048加0 8 101520253035 n=N r▼-▼■-へ=Nぐu Pmax(mW) (mA) 1th@25℃ -のN- FFP〔♂Jり FFP(♂⊥ノ OQ 訂じ害b巴L ゝOUO⊃bO】」 00 40 加 0 ▼■ N N N くつ 寸 u) N N N ♂l(dog) 図3-10 くO N 加00餌00州都0 的 ¢ N 卜、 N の の ⊂〉 ▼・ N N の の β⊥(deg) レーザの初期特性のウェハー内分布 ら無作為に20チップ以上抽出して測定を行った。25℃でのしきい値電流、水平及び 垂直方向の放射半値角の分布は、それぞれ15∼25mA、23∼250、27∼290 と狭く非常に均一である。25℃での最大光出力は、ほとんど200mWを越えてる。 このように、高出力レーザにおいても、しきい値電流・ファーフィールド・最大光出力 等のレーザの初期特性は、非常に均一である。 図3-11に50℃,100mWでのレーザの通電結果を示す。通電時間3000時間 経過した時点でも動作電流の変化はなく安定に推移していることがわかる(8)。MTTF は、240000時間と見積もれる。低出力レーザと同様に高出力レーザにおいても信頼性は 問題ないことを確認した。 最後にこのFSBHレーザ構造でどこまで光出力が得られるか検討した。熱抵抗を下げ るためにジャンクションダウンで組み立てを行った。また、電流密度を下げるために、 共振器長を1800〃mとした。25℃cwにおいてしかもキンクフリーで、最大光出力 310mWの世界トップレベルの特性が得られた。 3-4 まとめ MOCVD法を用いて無効電流経路幅を0.1∼0.2FLmと狭く制御し無効電流量を抑制する ことにより、低しきい値電流化(2.1mA)・高出力化(310mW)を可能にした。レーザ 構造を再現性良く均一に作製できることから、レーザ特性の高均一化を実現した。また、 再成長界面の不純物汚染を低減することにより、従来MOCVD法による埋め込み成長で は達成出来なかった高信頼性(3000時間@50℃,100血W)を実現した。 これらのことにより、活性層を含む全ての層をMOCVD法で成長したレーザを初めて 実用化した。レーザ特性の高均一なp型基板上FS-BHレーザの実用化は、レーザの低価 格化及びアレイ化を実現可能にし、今後の高度情報化社会の発展に大きく貢献すると思 われる。 -63- (く∈)lu巴」コU 30 0 mu竜一鼠○ 一芸- 20 0 2000 1000 Aging 図3-11 Time(hr) 高出力レーザの信頼性 3000 参考文献 (第3章) (1)s.B.Poole,D.N.PayneandM.E.Fermann:Electron.Lett.21(1985)737. (2)T.Nishimura,E.Ishimura,Y.Nakajima,H.Tada,T.Kimura,Y.Ohkura,K.Goto, E・OmuraandM・Aiga,SPIE(TheSocietyofPhoto-OpticalInstrumentationEngineers) Proceedings,OptoelectonicInterconnects,1849(1993)272. (3)西村、松本、石村、中島、瀧口、木村、相賀, 1992年電子情報通信学会秋季大会,C-139(1992). (4)松本、西口、石村、西村、中島、多田、後藤、木村、柿本: 1992年電気通信学会研究会OQE92-176(1992). (5)木村、大倉、園軋 三菱電機技報67(1993)88. (6)T.Nishimura,Y.Nakqjima,T.Kimura,Y.Kokubo,K.Isshiki,E.Omura,M.Aiga andK・Ikeda,SPIE(TheSocietyofPhoto-OpticalInstrumentationEngineers) Proceedings,OptoelectomicInterconnects,1849(1994)272. (7)I.Hayashi,M.B.PanlshandF.K.Reinhart:J.Appl.Phys.42(1971)1929. (8)西村、松本、石村、中島、竹見、木村、一色、相賀, 1993年秋季応用物理学関係連合講演会(第54回),29p-K-9(1993). -65- 第4章 4-1 BeドープInP結晶成長 はじめに InGaAsP/InPヘテロ構造は、多くの長波長光デバイスに広く使われている。デバイス適 用には、急峻なドーピングプロファイルが要求される。MOCVD法を用いたInP層成長に おいて、Znはp型ドーピング用元素としてもっとも多く利用されている(1,2)。しかし、 Znは拡散係数が大きいために急峻なドーピングプロファイルを得ることは困難である (図1-5参照)。レーザの活性層(InGaAsP)にpクラツド層からZnが拡散した場合、 InGaAsP層からのフォトルミネッセンスピーク強度はアンドープInGaAsP層と比べて弱 くなり、活性層の光学的特性を劣化させる。一方、MBE法を用いたGaAs層成長の場合、 p型ドーピング元素として拡散係数の小さいBeが広く利用されている(3)。最近、 MOCVD法によるGaAs成長においても、p型ドーバントとしてDEBeを用いたBeドーピン グの例が報告されている(4,5)。しかし、MOCVD法によるInP成長においては、Beをドー ピングした報告例はまだない。 この章では、Beのドーピング原料としてビスメチルシクロペンタジェニルベリリウム を用いて、MOCVD法でBeドープInP層を成長し、その電気的・光学的特性をZnドープ InP層と比較する。さらに、アンドープInGaAsP/Be-InP構造におけるBeの拡散プロファ イルについて述べる。 4-2 BeドープhP結晶成長 BeドープInP層の結晶成長は、2インチの縦型MOCVD装置を用いて行なった。 (001)Ⅰげ基板上に、直接BeドープInP層を成長した。今回実験に用いた成長条件を表4 -1に示す。一般にⅠ㌦成長を行なわれている成長条件(成長温度:640℃、V〃ⅠⅠ比:100) を基本にドーピング実験を行った(6)。 今回Beの有機金属材料として、ビスメチルシクロペンタジェニルベリリウム(= (MeCp)2Be)を用いた。この(MeCp)2Beは、従来GaAs系で用いられているジュチルベリリ ウム(=DEBe)(4,5)と比べて、次の2点がドーピング不純物原料として優れている。 ① 飽和蒸気圧が2桁ほど小さいためにドーピング制御が容易であること ② 原料合成時の酸素の混入がないため原料の純度が高いこと この(MeCp)2Beの融点及び沸点は、それぞれ-29℃及び68℃である。(MeCp)2Beの恒温槽 温度は20℃とし、飽和蒸気圧は約0.05To汀で実験を行った。電気的・光学的特性の比較 のためにZnドープInP層を、上記と同じ成長条件で成長した。Znの有機金属材料として は、ジュチルジンク(=DEZn)を用いた。なお、上記成長条件範囲内では、アンドープ InP層は全て鏡面が得られている。 ー66- r 表4-1 Be-InP層の成長条件 成長温度 615,640,665℃ 成長圧力 76Torr 仝H2ガス流量 4slm PH3流量 25,50,100sccm TMI流量 300sccm (MeCp)2Be流量 15∼300sccm Ⅴ/ⅠⅠⅠ 50,100,200 成長速度 3・5/ノm/h ー67- 表面モフォロジー観察は、微分干渉顕微鏡を用いた。電気的特性を調べるために、Ⅴ弧 derPauw法によるHall測定及びC-V測定を行った。フリーキャリアの測定温度依存性は、 77K∼300Kの範囲で行った。光学的特性は、室温でのフォトルミネッセンスを用いて 調べた。 アンドープInGaAsP/p-InP構造におけるBe又はZnの拡散を検討するために、アンドープ InGaAsP上にBe又はZnドープInPを成長した。各層のBe又はZnの濃度は、SIMSを用いて 調べた。 4-3 BeドープInP結晶評価結果 4-3-1 表面モフォロジー 成長温度640℃で(MeCp)2Be供給量8.8xlO-8mol/min一定のもとで、VnII比を変えた場合 のBeドープInP層の表面モフォロジーを表4-2に示す。Ⅴ〃ⅠⅠ比50及び100では、鏡面が得 られた。ⅤⅢⅠ比200では、ピットが見られる。InP成長では、ⅤⅢⅠ比を上げることにより 表面の原子のマイグレーションは抑制される。アンドープInPの場合は、ⅥⅠⅠⅠ比を50∼ 200に変化させても表面にピットは観測されないことから、このピットはBeに起因して いると考えられる。VⅢⅠ比200ではマイグレーションが抑制されたBe原子が小さな核を 形成し、これをもとに3次元成長が起こりピットが発生したと思われる。 成長温度615・640・665℃、ⅤⅢⅠ比100の条件で、(001)Ⅰ㌦基板上に成長したBeドープ InP層の表面モフォロジーの(MeCp)2Be供給量依存性を表4-3に示す。成長温度615℃では、 ピットが見られるものの下地は鏡面である。ビット数に(MeCp)2Be供給量依存性はない。 成長温度640℃では、1.8xlO 7mol血in以下では鏡面であるのに村して、8.8Ⅹ10 は下地が荒れている。成長温度665℃では、表面荒れの範囲が広がり1.8Ⅹ10 7mol/血nで 7mol血inで も荒れている。 アンドープInPの場合には615℃でもピットが現れないことから、表面モフォロジ∴の Ⅴ〃ⅠⅠ比依存性と同様に、このピットの発生にはBeをドーピングしたことが起因している。 成長温度を下げるとⅤ〃Ⅲ比を上げた効果と同様に表面マイグレーションは抑制される。 従って、成長温度615℃のときは、V〝Ⅲ比200時と同様に表面マイグレーションを抑制さ れたBe原子が小さな核を形成し、これをもとに3次元成長が起こってピットが発生した と思われる。 また、成長温度640℃及び665℃において、Be供給量を増加させて下地が荒れる前に必 ずピットが現れている。これらのことは、表面のBe濃度が増加しある濃度(後で述べる がこのピットが現れている時のBe濃度は2xlO18cm 3程度)に達すると、核が発生しやす くなり部分的にピットが発生する。さらに、Be濃度が増加すると表面全体に3次元成長 が支配的になり白濁した表面状態になる。 -68- 表4-2 表面モフォロジーのV/1Ⅱ比依存性 成長温度:640℃ MeCp2Be流量:8・8xlO-8molhnin 100/Jm 表4-3 各成長温度における表面モフォロジーのMeC鞄Be供給量依存性 Ⅴ/ⅠⅢ上ヒ:100 100〃m 4-3-2 Beドーピングプロファイル (MeCp)2Be供給量8.8xlO.8mol/min(キャリアH2流量=30cc血in)、成長温度640℃、VJIII 比100の条件で成長した層厚3.4FLmのBeドープInP層サンプルのC-V測定によるキャリア 濃度プロファイルとSIMS測定によるBe濃度プロファイルを、それぞれ図4-1(a)及び(b) に示す。キャリア濃度とBe濃度プロファイルは同じであり、Beはほぼ100%活性化して いる。どちらの濃度プロファイルも基板近傍まで1.2xlO18cm 3の濃度で均一にドーピング されている。(MeCp)2Be供給量を4.4xlO 8mol/min(キャリアH2流量=15cc/min)に下げて 成長した層厚1.8FLmのBeドープInP層サンプルのキャリア濃度プロファイルとBe濃度プ ロファイルを、それぞれ図4-2(a)及び(b)に示す。キャリア濃度は成長初期には1017cm.3 以下でアンドープ層が積層されている。成長が進むにつれて徐々にキャリア濃度は増加 し、最表面では3xlO17cm-3まで増加している。Be濃度についても同様な傾向が見られる。 なお、(MeCp)2Beの空流し時間は10分間であり、Beをバブリングしてから反応管までの 配管容積を考慮しても配管内を(MeCp),Beで十分パージできる時間に設定した。 (MeCp),Be供給量が少ない場合におこる不均一なドーピングは、反応管に供給される (MeCp)2Be濃度が経時的に変化したためと考えられる。この原因として、ガス配管内及 び反応管内の(MeCp),Beの吸着が考えられる。有機金属は、ガス配管内で吸着と離脱を 繰り返し、ある一定の平衡状態で安定して反応管に供給されている。従来か、らMOCVD 法で用いられているTMA,TMG,DEZ等の有機金属では、配管への吸着量はほとんど無 く非常に短い時間で平衡状態に達するために、図4-2(b)に示すような徐々に元素が変 化することはない。 しかし、(MeCp)2Beの場合供給量が少ないとドーピング遅れが生じることから、平衡 状態に安定するまでに時間かかることが考えられる。有機金属の化学結合が(MeCp)2Be に似てた五貞環を持ったCp2Mgにおいても、同じようなドーピング遅れが報告されてい る(7)。そこで、BeドープInP層の成長開始前までの排気側に流す(MeCp)2Be量をあらか じめ多くしておき、成長直前に(MeCp)2Be量を減らして反応管に供給することを検討し た。 図4-3に成長1分前に排気側に流している(MeCp)2Be量を8.8xlO-8mol/minから 4.4xlO 8mol/minに減らして、(MeCp)2Be量を4.4xlO,8mol/minで成長したサンプルのC-V測 定によるキャリア濃度プロファイルを示す。なお、空流し時間は10分と同じである。排 気側に流している(MeCp)2Be量を変えなかった場合に比べてキャリア濃度は、ほぼ2倍 の5.6xlO17cm.3まで増加し、基板付近からほぼ均一にドーピングされている。Be供給量を 1/2にしたことによりキャリア濃度の絶対値も1/2になり、供給量に比例したドー ピングができたことを示している。キャリア濃度が低レベルのドーピングにはこのよう な方法を用いて、成長したサンプルのHall測定及びC-Ⅴ測定によるキャリア濃度の関係 を図4-4に示す。傾き1の一村一の関係が得られている。Hall測定によるキャリア濃度 とC-Ⅴ測定によるキャリア濃度が同じであることから、Beの不純物準位は浅いと考えら れる。Beの不純物準位については、後で述べる。 -71- 1 0ノ 10 (?∈。)堪整ト「-㌢柑 10 1 10 10 00 17 1 ′0 01 2 3 4 3 4 膜厚(〃m) 10 (c・∈。)嘩撃遥 10 1 0ノ 1 00 10 17 1 `U・ 10 01 2 膜厚(〃m) 図4-1(MeCp)2Be供給量8・8xlO-8mol/minで成長したBeドープ InP層サンプルの(a)c-Ⅴ測定によるキャリア濃度プロファイルと (b)sIMS測定によるBe濃度プロファイル ー72- 10 (?∈。)堪整トヘー㌢叶 10 1 qノ 1 00 1 10 7 10 1 `U 00.5 1 1.5 2 膜厚(〃m) 10 (?∈。)嘩撃品 10 10 10 1 0ノ 1 00 17 1 `U 00.5 1 1.5 2 膜厚(〃m) 図4-2(MeCp)2Be供給量4・4xlO-8mol′minで成長したBeドープ InP層サンプルの(a)c-V測定によるキャリア濃度プロファイルと (b)sIMS測定によるBe濃度プロファイル -73- 10 1 0ノ (?∈。)堪整ト「【㌢叶 00 10 1 10 17 `U 10 1 00.5 1 1.5 2 膜厚(〃m) 図4-3 成長直前に排気側に流している(MeCp)2Be量を8・8xlO-8mol/ minから4・4xlO-8mol/minに減らして、(MeCp)2Be量を4・4xlO-8mol/minで 成長したサンプルのC-Ⅴ測定によるキャリア濃度プロファイル ー74- (?∈。) 0ノ 10 1 堅警〓ニふ長月呈望警丁壱 00 10 1 10 17 1017 1018 1019 C-Ⅴ測定によるキャリア濃度(cm-3) 図4-4 ホール測定及びC-Ⅴ測定キャリア濃度の関係 10 1 ∩フ [?∈且 哩整 0 1 00 10-8 10-7 10-6 10-5 (MeCp)2Be流量[mol/min] 図4」5 キャリア濃度とBe濃度の(MeCp)2Be流量依存性 -75- 4-3-3 ドーピング特性 図4-5にHall測定によるキャリア濃度の(MeCp)2Be供給量依存性を示す。成長温度640 ℃、ⅥIII比100の条件で成長したサンプルを用いた。キャリア濃度は、(MeCp)2Be供給量 の増加とともに単調に増加し、3.OxlO18cm 3で飽和している。この飽和キャリア濃度は、 MOCVD法で成長したZnドープInP層のものとほぼ同じである。Beのドーピング効率は、 Znよりも1桁程度高い。キャリア濃度が飽和するまでのサンプルの表面は鏡面であった が、キャリア濃度が飽和しているサンプルの表面は前に議論したように3次元成長が起 こり荒れていた(表4-3参照)。図4-5には、SIMS分析によるBe濃度の(MeCp),Be供 給量依存性も合わせて示す。Be濃度が2.OxlO18cm 3以下では、Be濃度とキャリア濃度が 等しいことからBeはほぼ100%の活性化している。しかし、キャリア濃度が飽和してい る3.OxlO18cm 3では、Beの活性化率は約10%と悪くなる。これは、Be濃度が増加するに 従って格子間Beが増加し、Beが活性化しなくなったためと考えられる。これら格子間 Beが3次元成長の起源となり、表面荒れを起こす原因になる。 ⅥⅠⅠⅠ比100一定の条件で、成長温度を615・640・665℃と変えて成長したサンプルの (MeCp)2Be供給量に村するHal1測定によるキャリア濃度の関係を図4-6に示す。成長温 度によらずキャリア濃度は、(MeCp)2Be供給量の増加とともに単調に増加し、キャリア 濃度3.0Ⅹ1018c正3で飽和している。キャリア濃度が単調に増加している領域では、表面 は鏡面であるが、キャリア濃度が飽和している領域では、表面は白濁した。このキャリ ア濃度と表面の関係は、成長温度に依存しない。 (MeCp)2Be供給量が一定の場合、図4-6に示すように成長温度を上げるに従ってキャ リア濃度は増加している。この傾向は、DEZを用いてZnをドーピングした場合とは逆で ある。DEZは、今回実験を行った成長温度範囲ではほぼ完全に熱分解しているので、成 長温度を上げるに従って成長表面からのZnの離脱が増加してキャリア濃度は下がる。一 方、Beの結晶中への取り込みは、Beの表面から離脱ではなく(MeCp)2Beの分解で律速さ れていると考えられる。図4-7にBe供給量一定のときのキャリア濃度の成長温度依存 性を示す。このデータの傾きから活性化エネルギー、すなわちは(MeCp)2Beの分解エネ ルギーは1・57eVである。この活性化エネルギーは、GaAsにSiH.を用いてドーピングした 時の値とほぼ同じであり、比較的大きな成長温度依存性をもつと言える。 4-3-4InP中のBeの不純物準位 Hdl測定によるキャリア濃度の測定温度依存性から、Beの不純物準位を調べた。Beド ープInP層をFeドープInP基板上に1.OFLm成長したサンプルを用いた。このサンプルの室 温でのキャリア濃度及び移動度は、それぞれ1.8xlO18cm 3及び55cm2Ⅳsであった。この移 動度は、同じキャリア濃度におけるZnドープInP層の移動度とほぼ同じである。 図4-8にBeドープInP層のキャリア濃度の測定温度依存性を示す。比較のために、Zn ドープInP層のキャリア濃度の測定温度依存性も示す。両サンプルとの測定温度が上昇 -76- 【c・∈且 堪整ト「【㌢叶 0 1 00 10 1 7 10 (MeCp)2Be流量[cc/min] 図4-6 ドーピング特性の成長温度依存性 1.10 1.15 1000/成長温度 図4-7 キャリア濃度の成長温度依存性 -77- 77K 300K 19 10 【m・∈且 雌蝶ト「1㌢叶 0 4 8 12 16 1000/測定温度【1/K] 図4-8 キャリア濃度の測定温度依存性 アンドープInPのPLピーク発光強度 【s召n.q且 0 堪潔ヘーゝJd 1018 1019 キャリア濃度【。m-3] 図4-9 PLピーク発光強度のキャリア濃度依存性 -78- する従って、キャリア濃度は単調に増加している。キャリア濃度の増加率はZnドープ InPよりBeドープInPの方が小さいので、不純物準位としてはBeの方が浅い。 キャリア濃度の測定温度依存性から電荷中性条件を用いて、アクセプタ(Be又は加) の準位を見積もることができる。電荷中性条件からキャリア濃度pは、以下の式で与え られる。(詳細は付録) P=(1/g)(Nv/N。)(NA-N。)exp(-(Ev-EA)/kT) (4-1) P,NA,N。,EA,Ev,g,Nvは、それぞれフリーキャリア濃度,浅いアクセプタ濃度,浅いド ナー濃度,アクセプタの不純物準位,価電子帯準位,アクセプタの縮退度,価電子帯の状 態密度である。縮退度は、4とした。浅いドナーは完全にイオン化し、深い準位は存在 しないと仮定した。測定結果と(4-1)式から、NA及びEAを求めた。これらの結果を もとにキャリア濃度を計算した図4-8の実線は、測定で得られた結果と良く一致して いる。BeドープInP層のNA及びEAは、それぞれ1.8xlO18cmT3及び21.3meVであった。今回 キャリア濃度が1.OxlO18cm 3以上の高濃度の場合について示したが、キャリア濃度 1・OxlO18cm.3以下の低濃度のサンプルを用いて同じ手法によりEAを計算した結果、同じEA の値が得られた。図4-8には、加ドープⅠ㌦層の測定結果とEAの計算値も示す。Znドー 71npjgのNA及びEAは、それぞれ8.9xlO17cm-3及び34.OmeVであった。Beの不純物準位は、 MOCVDで成長したZnドープInP層中のアクセプタの不純物準位よりも浅いことが判明し た。 4-3-5 光学的特性 成長温度640℃、V〃ⅠⅠ比100の条件で成長したサンプルの室温でのフォトルミネッセン ス(PL)ピーク発光強度のキャリア濃度依存性を図4-9に示す。BeドープInP層のバン ド端のPLピーク発光強度は、アンドープInP層(n≒5xlO15cm 3)のものより約1桁弱 い。キャリア濃度が2.OxlO18c正3以上になると、PLピーク発光強度はさらに弱くなる。 この傾向は、ZnドープInP層と同じである。弱励起におけるPL発光強度Ⅰは、 Ⅰ∝p・n=(p。+△p)(n。+△n)≒p。・△n (4-2) で表せる。ここで、pとnは励起状態におけるホールと電子の濃度、p。とn。は熱平 衡状態におけるホールと電子の濃度、△pと△nは励起されたホールと電子の濃度であ る。従って、Be(Zn)をドーピングすることによりキャリア濃度(p。)が増加すれば、 PL発光強度は強くなる。しかし、図4-9に示したようにBe(Zn)ドープInP層のPL 発光強度は、アンドープInP層のものより弱くなる。この原因として、非発光再結合中 心がBe(Zn)をドーピングすることにより増え、Beの不純物濃度が2.OxlO18cm-3以上に なると格子間Be(加)が増加しさらに非発光再結合中心が増加することが考えられる。 -79- 図4-10に室温でのPLピーク波長のキャリア濃度依存性を示す。ZnドープInP層のピ ーク波長は、キャリア濃度が増えるに従って長波長化する。不純物濃度の増加により、 不純物原子の間隔が狭くなり、波動関数の重なり合いが生じ不純物バンドが形成される。 これに加えて、不純物が結晶中でランダムに分布することから、伝導帯及び価電子帯が すそ(テイル)を引くことになる。これらの効果によりPLピーク波長は長波長化する (9)。一方、BeドープInP層のピーク波長は、キャリア濃度に依存せず一定である。Be ドープInP層のピーク波長が長波長化しないのは、まだよくわかっていない。 同様な現象が、GaAsにおいても起こる。MBE法で成長したBeドープGaAs層のPLピー ク波長のキャリア濃度依存性を図4-11に示す。GaAs層の場合は、Beを1xlO20cm.3程 度までドーピングできる。このことは、DEBeを用いたMOCVD法でも報告されている(10)。 図4-11から明らかなように、高濃度にドーピングしてもPLピーク波長は長波長化し ない。一方、CドープGaAsの場合、高濃度にドーピングするとPLピーク波長は長波長化 することが報告されている(11)。 以上のことから、材料系に限らずZnをドーピングした場合に、PLピーク波長が長波長 化することが言える。従って、Be固有の現象により、状態密度の裾引きがないためだと 思われる。 図4-12にキャリア濃度に対する室温でのフォトルミネッセンスのピーク波長半値幅 の関係を示す。Be及びZnドープInP層両者に差がなく、キャリア濃度が増加するに従っ て半値幅は広くなる。 4-3-6 Beの拡散 図4-13にアンドープInGaAsP/p-InP構造におけるBe及びZnの深さ方向のプロファイ ルを示す。InGaAsPとInPの界面を知るために、同時にAsのプロファイルも示す。Be及 びZnの濃度は、2.OxlO18c血 3である。Znは、アンドープInGaAsP層奥深く表面付近まで拡 散している。しかし、BeはアンドープInGaAsP層に、ほとんど拡散してない。すなわち、 Be濃度はInGaAsP/InPヘテロ界面で急峻に立ち下がり、アンドープInGaAsP層内では、 SIMSの分析限界(5.OxlO14cm-3)以下である。アンドープInGaAsP/Be-InP構造における BeのInGaAsPへの拡散は、Znより非常に小さいこと確認した。GaAs系と同様にInP系に おいても、BeはZnに比べて拡散しにくいことが判明した。 図1-4で示した外部変調器付レーザのp型クラツド層にBeドープInP層を用いた場合、 デバイス作製までに複数回の成長工程を行うことになる。この成長工程途中の高温で基 板を保持している間にBeが、アンドープInGaAsPに拡散することが懸念される。そこで、 図4-13に示したサンプルをMOCVD反応炉内のPH,/H2雰囲気のもとで、640℃で150 分アニールを施した。このアニール時間は、BeドープInP層成長後の成長工程で施され る時間を想定している。その結果、Be濃度の深さ方向のプロファイルはアニール前後で 変化はなかった。また、アンドープInGaAsP層に替えてアンドープInGaAs層にしても、 同じ結果が得られた。このことは、p型クラツド層にBeドープInP層を用いることによ -80- [∈且雌嚢へ1知Jd 17 10 1018 1019 キャリア濃度【cm-3] 図4-10 PLピーク波長のキャリア濃度依存性 盲阜些翠㌣∴ニd 70 1019 1020 キャリア濃度(cm-3) 図4-11 MBE法で成長したBeドープGaAs層の PLピーク波長のキャリア濃度依存性 ー81- 1021 (人心∈) ● Be-InP層 O 璧塑叶Jd 0 1017 1018 1019 キャリア濃度(cm-3) 図4-12 PL半値幅とキャリア濃度の関係 undoped Zn-dopedInP InGaAsP (人=1・3/∠m) 10 [M・∈且堪璽 10 20 1 QO 0.5 検出限界 図4-13 Be-dopedInP 1 1.5 2 2.5 探さ[〃m】 アンドープInGaAsP/p-InP構造における Be及びZnの探さ方向のプロファイル -82- zn_Ⅰ㌦層 り、p型不純物拡散による光導波路層のキャリア濃度の増加を防ぎ光損失を抑制できる ことを意味している。 4-4 まとめ MOCVD法を用いて成長したInP層のp型ドーバントとして、現在用いられているZnに 替わるBeについて検討した。Be供給量に比例してキャリア濃度2.OxlO18cm 3まで増加し、 それ以上でキャリア濃度は飽和し表面は白濁することが分かった。InP層中のBeの不純 物準位は21.3meVとZnの不純物準位34.OmeVより浅いことが判明した。BeドープInP層の フォトルミネッセンスのピーク発光強度は、ZnドープⅠ㌦層のものと同等で、アンドー プⅠ㌦層より1桁弱く2.OxlO18cm-3以上になるとさらに弱くなることを確認した。アンド ープInGaAsP/Be-InP構造におけるアンドープInGaAsP層へのBeの拡散は、Znの拡散と比 べて非常に小さいことを確認した。これらの実験結果は、Beは加に替わるp型ドーバン として特にアンドープInGaAsP/InP構造のレーザとして有用であることを示している。 -83- 付 録 電荷中性条件は、P+N。十=n+NA- で与えられる。 ここで、nとpはそれぞれ伝導帯と価電子帯における電子とホールの濃度であり、NA は電子を捕らえたイオン化アクセプタ濃度、N。+は電子を伝導帯へ放出したイオン化ド ナー濃度である。 BeドープInP層はp型であるから、ドナー不純物は全て帯電している(N。十=N。)とし かつ電子濃度を無視する(n=0)。電荷中性条件は、 P+ND≒NA =NA (4-3) fA(EA) となる。または少し書き換えて P+ND,NA=NA fA(EA)-NA=NA(1-㌔(EA)) (4-4) となる。ここで (4-5) ㌔(EA)=1/(1+geXP(EA-EF)/kT)) は、熱平衡状態のアクセプタ準位を占める分布関数である。(4-3)、(4-4)並 びに(4-5)から (p+N。)/(p+N。-NA)= ㌔(EA)/(1-㌔(EA)) = 一(1/g)exp(EA-EF)/kT) (4-6) (4-6)の両辺に、 P=Nv exp(-(Ev-EF)/kT) の両辺を掛けて、NA>N。>pとすると P≒(1/g)(Nv/ND)(NA-ND)exp(-(Ev-EA)/kT) (4-1) を得る。ここで、N。>pの関係は本来測定温度が極低温において成立するので、今回 の測定温度範囲では成立しない。しかし、(4-1)を用いて求めたZnの不純物準位 34meVは、従来から報告されている30meV(12)に近い値を示し、かつ(4-1)を用いて キャリア濃度を計算した結果は図4-8に示したように実験値と善く一致している。こ のことから、77Kを超える比較的高い測定温度においても、近似式(4-1)が成立する と考えられる。 ー84- 参考文献 (第4章) (1)A・W・NelsonandL・D.Westbrook,J.Appl.Phys.55(1984)3103. (2)E・A・MontieandG.J.VanGurp,J.Appl.Phys.66(1989)5549. (3)Y・IimuraandM.Kawabe,Jpn.J.Appl.Phys.25(1986)L81. (4)N・Bottka,R・S・SillonandW.F.Tseng,J.Cryst.Growth68(1984)54. (5)J・D・ParSOnS,L・S・LichtmannandF・G・Krqjenbrink,J・Cryst・Growth77(1986)32. (6)T・Kimura,T・Ishida,T.Sonoda,Y.Mihashi,S.TakamiyaandS.Mits。i, Jpn・J・Appl.Phys.,Vol.34(1995)1106. (7)M・Kondo,C・Anayama,H.SekiguchiandT.Tanahashi,J.Cryst.Growth141(1994)1. (8)石田、木村、藤井、津上、園田、高宮、三井, 1994年秋季応用物理学関係連合講演会(第55回),20a-MG-5(1994). (9)D・01egoandM.Cardona,Phys.Rev.B22(1980)886. (10)J・D・ParsonsandF.G.Krajenbrink,J.Electrochem.Soc.130(1983)1782. (1・1)K・Saito,T・Yamada,T・Akatsuka,T.FukamaChi,E.Tokumitu,M.Konagaiand K・Tahashi,Ext・Abstr・21stConf.SolidStateDevicesandMaterals,(1989)289. (12)D・N・Nasledov,Yu.G.PopovandN.V.Siakaev,Sov.Phys.Semicond.3(1969)387. -85- 第5章 高抵抗AlInAs結晶成長 5-1はじめに 半絶縁性高抵抗InP層は、高速性が要求される外部変調器付半導体レーザ(図1-4参 照)の電流狭窄層として用いられている(1・2)。外部変調器付半導体レーザは、DFBレー ザとそのレーザ光をオン・オフする変調器をモノリシックに集積したデバイスである。 変調器の吸収層はMqW構造になっており、逆バイアス時のシュタルク効果を利用して レーザ光を吸収する。10Gb/s以上の高速で変調器を動作させるためには、変調器の静 電容量を0.2pF以下にする必要がある。第2章で説明したnp埋め込みでは、n/p接合容量 が数pFと大きくデバイス容量を下げることができない。そこで、デバイス容量の低減 には、光導波路の埋め込み層として高抵抗InP層(3 7)ぉよびポリイミド(8)などの絶縁 層が用いられる。活性層への光の閉じ込めを考慮すると、埋め込み層として高抵抗InP 層が用いたほうが有利である。通常、Fe(3 5),Co(6),Ti(7)等の遷移金属をドーピング し、これらが形成する深い準位を利用してInP層を高抵抗化(抵抗率1.0×105ncm以上) する。これら不純物の中で、不純物準位がInPのミッドギャップ付近にあり一番深い準 位(0.63eV)を形成するFeをドーピングした場合、より一層の高抵抗化が可能である。 次に、FeドープInPの問題点について述べる。Feを4×1016cm.3ドーピングしたInPの 300Kにおけるバンド端PL発光強度と、アンドープInPのものとの比を表5-1に示す。 Feに起因した非発光再結合中心が増加するため、発光強度は1桁以上弱くなる。また、 外部変調器付半導体レーザのp-InP層のp型ドーバントとしてZnを用いた場合、前章で 述べたようにZnがInGaAs(P)層(吸収層及び活性層)に拡散する。Feは隣接するp層に は拡散する(9)ことから、InGaAs(P)層にはFeとZnが共存することになる。この場合、Fe とZnが取り込まれているInGaAs(P)層のバンド端PL発光強度は、アンドープ層のものと 比べて1桁以上弱くなる。これは、FeやZnが結晶中に入ることによりFeやZnに起因した 非発光再結合中心が増加するためである。このInGaAsP層の光学的特性劣化により、レ ーザのしきい値電流増加や効率劣化等の問題点が生じる。 そこで、Feドープ層に代わる材料として、隣接する結晶に悪影響を及ぼさない半絶縁 性高抵抗層が、デバイス応用上必要である。MBE法で成長したアンドープAlInAs層は半 絶縁性高抵抗層である(10)が、MOCVD法で成長したアンドープAIInAs層はn型でキャリ ア濃度1.0×1016cmL3程度であると報告されている(11)。MBE法の成長温度(500℃程度) は、MOCVD法の成長温度(600℃から700℃)よりかなり低い。そこで、MOCVD法で成 長したアンドープ刃InAs層の抵抗率の成長温度依存性について検討した。 この章では、MOCVD法で成長したアンドープAIInAs層の表面モフォロジー、結晶性 及び抵抗率の成長温度依存性について述べる。そして、従来の成長温度より低温(500 ℃)で成長することにより、アンドープで抵抗率1.0×105ncm以上のAlInAs高抵抗層が 得られたので、その高抵抗化メカニズムについて述べる。 -86- 表5-1 300KPLの相対強度比 それぞれの材料のアンドープの300KPL強度を100とした時の値を示す。 (dope:故意に不純物をドーピングした場合 diffusion:拡散して不純物が結晶中に取り込まれた場合を示す) InP InGaAs Fe(dope) 4.5 Zn(dope) 25 14 14 25 Zn(dope)+Fe(diffusion) zn濃度:1xlO18cm-3 ■■■-11■ Fe濃度:4xlO16cm-3 InGaAsP lllllll■l■ ■■■■■■lllllllllll 8.3 5-2 アンドープAlInAs結晶成長 アンドープAIInAs層結晶成長は、2インチの縦型MOCVD装置を用いて行なった。今回 実験に用いた成長条件を表5-2に示す。従来MOCVD法では、成長温度600∼700℃の範 囲で成長が行われている(11)。今回この成長温度に特に注目し刃InAs層が成長できる範 囲まで成長温度を下げることを検討した。昇温は、PH,雰囲気で行い、FeドープInP基板 上に直接膜厚1〃mのAlI血s層を結晶成長した(12)。 表面モフォロジー観察は、微分干渉顕微鏡を用いた。InPと刃InAs層の格子整合度及び 結晶性は、2結晶Ⅹ線回折を用いて調べた。AlInAs層の抵抗率は、長方形に努閲し表面 に2つの電極を形成したサンプルの抵抗値から求めた。電気的特性を調べるために、 VanderPauw法によるHal1測定を行った。フリーキャリアの測定温度依存性は、77K∼ 300Kの範囲で行った。AlInAs層の深い準位を調べるために、等温容量過渡分光( IsothermalCapacita血CeTranSientSpeCtrOSCOPy:ICTS)を用いた。AlInAs層中の不純物を調 べるために、SIMSを用いた。 5-2-1 表面モフォロジー 成長速度2.7FLm瓜成長温度625∼675℃、VnII比50,100,200の条件におけるAlInAs層 の表面モフォロジーを表5-3に示す。写真倍率Ⅹ100では、表面モフォロジーの違いが分 かりにくいが、写真倍率を上げるに従いその差が顕著に現われている。成長温度を下げ ると表面の凹凸が減少し、表面モフォロジーは若干良くなる。一方、ⅤⅢⅠ比を下げると 表面の凹凸が増加し、表面モフォロジーは悪くなる。成長温度を上げた場合とⅤⅢⅠ比を 下げた場合における凹凸の増加は、AlInAsの3次元成長に起因していると思われる。表 5-3に示す条件の範囲内では、鏡面は得られなかった。 そこで、3次元成長を抑制するために、成長速度を下げることを検討した。成長温度 650℃、ⅦⅠⅠ比200で成長速度を2.7,1.4,0.7〃m爪ourと下げたの時の表面モフォロジーを 表5-4に示す。成長速度を下げることにより、表面の凹凸は減少しモフォロジーはやや 改善されている。しかし、写真倍率Ⅹ800又はx2000において、表面の凹凸はまだ観測さ れており、成長速度を下げても鏡面は得られなかった。また、写真倍率x2000で観測さ れるような菱形の小さいピットが、成長速度を下げると多くなる。 成長速度0.7〃m爪our、ⅦⅠⅠ比200で、成長温度を650,600,550,500,450℃と下げた時 の表面モフォロジーを表5-5に示す(13)。成長温度を下げることにより、表面モフォロ ジーはさらに改善され成長温度500℃で鏡面が得られた。成長速度を下げると多く現れた 菱形の小さいピットは、成長温度550℃で無くなっている。 成長温度を低くすると、表面状態が良くなる原因として、アルシンとInP基板の最表面 における反応が考えられる。InP層を630℃で15分間批素雰囲気に曝すと、表面に100nm から200nm程度の高さの凹凸ができるという報告例(14)があるように、昇温中のリン雰 囲気から刃InAs層成長始まるまでの批素雰囲気に曝されているわずかな時間に表面に凹 -88- 表5-2 アンドープAIInAs層の成長条件 成長温度 450∼650℃ 成長圧力 76To汀 仝H2ガス流量 4slm PH3流量 50sccm AsH3流量 170へ′680sccm TMI流量 21へ′120sccm TMA流量 2へ′8sccm 50,100,200 Ⅴ/ⅠⅠⅠ 成長速度 0・7∼2.7/ノm/h -89- 表5-3 表面モフォロジーのV/Ⅲ比及び成長温度依存性 成長速度:2.7/∠m/b 成長温度 写真倍率 xlOO x800 675℃ 650℃ 625℃ x2000 xlOO:x800 室 x2000 xlOO x80 X2000 Ⅴ/ⅠⅢ 50 V/ⅠⅠⅠ ll 100 l L≦㍗ ごミくん去 + V〃= 200 100/ノm lO/ノm lO〃m 表5-4 表面モフォロジーの成長速度依存性 成長温度:650℃、Ⅴ〝ⅠⅠ:200 10/ノm 表5-5 表面モフォロジーの成長温度依存性 成長速度:0.7/`m/h、ⅤⅢⅠ:200 10/ノm 凸が生じると考えられる。この界面付近の凹凸が成長温度が低いほど小さくなり、それ に加えて成長温度が低いほど2次元成長しやすくなることから、成長した刃InAs層表面 状態は良くなると思われる。 なお、450℃では成長表面でのマイグレーションが不十分であるため鏡面が得られな かった。 5-2-2 Ⅹ線による結晶評価 AlInAs層は、InP基板にInの固相比0.52で格子整合する。成長温度650℃、In (TMI=1.6xlO.6mol/min)とAl(TMA=1.8xlO-6molhmin)の気相比一定のもとでの格子整 合度のV/ⅠⅠⅠ比依存性を図5-1に示す。ⅤⅢⅠ比を変えても格子整合度は変わらない。こ のことから、反応管内におけるⅠⅠⅠ族とⅤ族の気相反応は無視できる。ⅥⅠⅠⅠ比200、Inと血 の気相比一定のもとでの、格子整合度の成長温度依存性を図5-2に示す。成長温度を 下げるに従って、Inの固相比は増加している。成長温度を下げるとⅤⅢⅠ比も同時に変化 するが、図5-1よりV〃Ⅲ比のみを変えても格子整合度は変わらないこと及び有機金属 (TMA,TMI)とAsH,はこの温度範囲ではほぼ熱分解していることから、成長温度のみ がInの固相比増加に影響している。このIn固相比の増加は、表面から脱離するInが成長 温度を下げることにより抑えられるためであると考えられる。 そこで、成長温度を下げた時はAlの供給量を増加させて各成長温度でAIInAs層がInP基 板に格子整合するような成長条件でAIInAs層を成長し、AIInAs層の結晶性及び電気的特 性を調べた。 図5-3に膜厚1FLmのAIInAs層のⅩ線ロッキングカーブ半値幅の成長温度依存性を示 す。各サンプルの格子不整合度は0.1%以下である。成長温度を変えてもⅩ線ロッキン グカーブ半値幅は、ほとんど変化しない。このレベルは、従来報告されている成長温度 が高い領域での半値幅とほぼ同じ値である。図5-4に成長温度500℃でのⅩ線ロッキン グカーブを示す。従来より100℃程度低温においても、Ⅹ線ロッキングカーブ半値幅22 秒が得られている。この結果は、低温で成長したAIInAs層は、高温で成長したものと同 様な高品質な結晶が得られていることを示している。 5-2-3 抵抗率 図5-5に示すようなFe-InP基板に直接成長したアンドープAIInAs層表面に直接In電極 を付けたサンプルを用いて、刃InAs層の抵抗率を簡易的に見積もった。抵抗率♂は、電 極間のAlInAs層の抵抗Rを測定し次式を用いて求めた。 (5-1) ♂=Rdm/1 ー93- (辞) 当聖廟言Ⅰ InPと格子整合する 固相比 0 50 100 150 200 250 V/ⅠⅠⅠ比 図5-1In固相比のⅤ/ⅠⅠⅠ比依存性 (㌔)当安直∈Ⅰ InPと格子整合する 固相比 500 600 成長温度(℃) 図5-2 TMIとTMAの供給量を一定にした時の In固相比の成長温度依存性 -94- 700 10 0 (UUSU艮璧笹井ト1菅軋ヽ叶トロ要× 00 0 40 20 400 500 600 700 成長温度(℃) 図5-3 AIInAs層のX線ロッキングカーブ半値幅 の成長温度依存性 ー400 ー200 0 100 β 図5-4 200 400 6(X) (∬CSeC) 成長温度500℃で成長したAIInAs層のX線ロッキングカーブ -95- アンドープAIInAs IFLm FeドープInP基板 図5-5 アンドープAIInAs層の 抵抗率測定用サンプル構造 (∈UG) 触媒璽 400 500 600 成長温度(℃) 図5-6 抵抗率の成長温度依存性 ー96- 700 ここで、d,m,1はそれぞれ刃InAs層の膜厚,サンプルの幅,電極間の距離である。室温 におけるアンドープ刃Ⅰ血s層の抵抗率の成長温度依存性を図5-6に示す(15)○なお、ホッ トプローブを用いて測定した導電型も合わせて示す。成長温度650℃では、n型の伝導 を示し抵抗率は1×10Tlncmである。キャリア濃度に換算すると1×1016cmT3程度であり、 従来報告されている(11)キャリア濃度とほぼ同じである。抵抗率は成長温度を下げるに 従って増加し、成長温度500℃で1.0×105n00l以上の高抵抗層が得られた。さらに成長温 度を450℃まで下げると、抵抗率は下がり導電型は反転しp型になった。なお、今回の サンプル構造ではAlInAs層が高抵抗化するに従って、In電極とAIInAs層のコンタクトの 問題やInPとAlInAs層のヘテロ界面に存在する高濃度のキャリア(付録1参照)の伝導に よる抵抗率の測定誤差が大きくなる。そこで、刃InAs層の抵抗率の詳細については、次 章で改めて議論する。 5-2-4ICTSによる深い準位の測定 〟を含む化合物半導体では、刃の原料及び成長雰囲気から成長中に容易に酸素が結晶 中に取り込まれる。AIGaAs,AIGaInP系においては、結晶中の酸素は電気的にはドナーと なりアクセプタを補償しキャリア濃度低下の原因になるほか、非発光再結合中心となり 光学的特性の劣化を招くなど悪影響がある。MOCVD法で成長したAlInAs層にも同様に、 酸素に起因した深いドナー準位が複数存在していると言われている(2)。そこで、アン ドープAIInAs層の深い準位をICTS法(16)を用いて評価した。ICTS法は、1980年に大串・ 徳丸両氏により考案された手法で、同じように深い準位の情報が得られるDLTS(Deep LevelTranSientSpectroscopy)法(17)と違って温度掃引を必要とせずかつ、短時間で深い 準位の情報を測定可能な方法である。 今回測定に用いたサンプル構造を図5-7に示す。Fe-InP基板上に、成長温度650℃で アンドープAlInAs層を1FLm成長し、さらにショットキー接合を形成するために成長温 度500℃でアンドープAlInAs高抵抗層を0.1FLm成長した。メタルマスクを用いて200FLm ≠のショットキー電極(Al(500nm)/Ti(130nm))を蒸着した後、この電極をエッチング マスクとして図のようなメサを形成した。最後に、Inでオーミック電極を形成した。 ICTSスペクトルから観測された3つのピークのそれぞれの活性化エネルギーと濃度を表 5-6に示す。アンドープAlInAs層には深い不純物準位(400,93,60meV)が複数個存在 し、それらの濃度はどれも1016cm-3台である。これらの準位は、DLTS法で測定した深い 不純物準位の値とほぼ同じ値が得られている。 5-3 高抵抗化メカニズム この節では、成長温度を下げるとなぜ刃InAs層の抵抗率が上がるかについて述べる。 →般に結晶中に存在する不純物の準位及びその濃度がわかれば、そのキャリア濃度は計 -97一 ←200〃m≠→ 図5-7ICTS測定のサンプル構造 表5-6ICTS法によるアンドープAIInAs層中の 深い不純物準位とその濃度 深い不純物準位(mev) 深い不純物濃度(cm-3) 60 2.4xlO16 93 2.8xlO16 400 3.2xlO16 ー98- 算できる。逆に、キャリア濃度を測定することにより、結晶中に存在する不純物の準位 及びその濃度を見積ることができる。アンドープAlInAs層には5_2_4で示したように深い 不純物準位が存在することから、浅い準位と深い準位が存在するとしてキャリア濃度の 温度依存性の解析を行い高抵抗化のメカニズムを考察した。 アンドープAIInAs層のキャリア濃度が高い場合、アンドープAlInAs層とFe-InP基板の ヘテロ界面には高濃度のキャリアが存在する(付録1参照)。ホール測定時にこの界面 のキャリア伝導によるキャリア濃度測定誤差を避けるために、AlInAs層とFe_InP基板の 間に500℃成長の高抵抗アンドープAlInAsバッファ層を挟んだ構造のサンプルを用いて、 77Kから300Kの温度範囲でホール測定を行い、キャリア濃度の測定温度依存性を調べた。 なお、550℃で成長したサンプルのキャリア濃度は低すぎるため、ホール測定によるキャ リア濃度の測定はできなかった。そこで、シート抵抗からキャリア濃度を見積もった。 測定結果を図5-8に示す。650℃で成長したサンプル(●印)では、測定温度を変えて もキャリア濃度はほとんど変化せず1×1017cm 3であった。600℃で成長したサンプル (○印)では、測定温度を上げるに従いキャリア濃度は単調に増加する。また、550℃ で成長したサンプル(□印)では、キャリア濃度の測定温度依存性はさらに強くなり、 キャリア濃度は室温付近で急激に増加する。 深いドナー準位とその濃度、及び浅いドナー準位の濃度をパラメータとして、以下の 電荷中性条件式(付録2参照)を各成長温度のキャリア濃度の温度特性をす◆べて満足す るようにフィッティングさせた。 n+NA=Ns。+∑N。。(1-(1+eXP((E。。-EF)/kT))/g).l (5-2) ここで (5-3) n=Ncexp(-(Ec-EF)/kT) n、NA,Ns。,N。。,E。,E。。,gは、それぞれキャリア濃度,浅いアクセプタ濃度,浅いドナ ー濃度,深いドナー濃度,フェルミ準位,深いドナー準位,縮退度である。深いドナー準 位の初期値として、ICTS測定で得られた準位(400,93,60meV)を用いた。測定値と式 (5-2)から、すべての測定値が満足するようにNs。-NA、E。。並びにN。。の3つのパラ メータの値を算出した。なお、縮退度は2とした。 計算で得られた各成長温度における3つのパラメータの値を表5-7に示す。これらの パラメータを用いてキャリア濃度を計算した結果を図5-8の実線に示す。計算結果と 測定値は、よく一致している。成長温度を下げることにより浅いドナー濃度から浅いア クセプタ濃度を引いた差が、マイナス方向に単調に増加している。100℃下げることに り、約4×1017血3減少している。深いドナー準位及びその濃度は、成長温度が下がって も変化せず一定である。このことは、浅いアクセプタ濃度の増加か、浅いドナー濃度の 減少、もしくはその両者が同時に起こることによりAlInAs層が高抵抗化していること示 唆している。 -99- 10 1 00 10 17 †長一嘩撃ニーナ舟 10 1 `U 10 1 5 10 1 4 10 1 10 つJ 12 2 6 8 10 12 14 1000/T【1瓜] 図5-8 キャリア濃度の測定温度依存性 ●,○,口印はそれぞれ成長温度650℃,600℃,550℃で成長したサンプルの測定値 実線は表5-2の不純物準位及びその濃度をもとに計算したキャリア濃度 表5-7 図5-8の測定値を用いて (5-2)式の電荷中性条件を解いたときの不純物準位とその濃度 成長温度Tg 深いドナー準位 650℃ 深いドナー濃度 【cm-3】 600℃ 350meV 2.8×1017 120meV 1.6×1017 50meV 浅いドナー濃度 ー浅いアクセプタ濃度【cm-3】 550℃ 1.3×1017 1.1×1017 1.1×1017 9.8×1016 -7.9×1016 -2.7×1017 -100- Ns。-NAの減少理由を調べるために、SIMSを用いてAlInAs結晶中のシリコン(Si:△ 印)、炭素(C:●印)並びに酸素(0:□印)濃度を調べた。AlI血s層中ではSi及び炭 素はそれぞれ浅いドナー及び浅いアクセブタ(18)になり、酸素は深いドナー準位を作る といわれている(6)。これらの不純物の成長温度依存性を、図5-9に示す。酸素濃度は、 成長温度に依存せず1018cm-3bの後半で一定である。酸素は、主に原料であるTMAから とりこまれたと考えられる。Si濃度は、全てSIMSの測定限界(5×1016cm-3)以下である。 炭素濃度は、成長温度500℃で2×1017血3と他の成長温度の濃度(5×1016血3以下)に比 べて増加している。炭素は、未分解のメチル基が結晶中に取り込まれたと考えられる。 炭素濃度の増加量は1017cm-3bとホール測定より見積もったNsD-NAの減少量とほぼ一致 する。 以上のことから、成長温度の低温化によるアンドープ刃Ⅰ血s層の高抵抗化は、図5_1 0に示すように、AlI血s層中に①深いドナー準位(60,93,400m。Ⅴ)が存在し、深い準位 およびその濃度は成長温度に依存せず一定であり、②浅いアクセプター(炭素)濃度が 成長温度を下げるに従い増加していることにより、成長温度を下げるに従い増加する浅 いアクセプターが上記深いドナーを補償し、フェルミレベルがバンド中央付近まで下が るためであると考えられる。 上記の高抵抗化メカニズムを検証するために、n型の刃Ⅰ血s層に浅いアク.セプターを ドーピングして抵抗率が増加するかどうか検討した。Fe-Ⅰば基板上に成長温度650℃で Zn-AlI血s層を成長したサンプルを図5-5の構造で抵抗率を測定した。なお、成長温度 650℃のアンドープレベルは、n型でキャリア濃度5×1016c血3である。抵抗率のZ。濃度 依存性を図5-11に示す。Zn濃度は、SIMSを用いて測定した。Zn濃度の増加により抵 抗率は増加して、Zn濃度5×1017cm 3で1×104rユcmまで高抵抗化する。Zn濃度がさらに 増加すると、導電型がp型に反転して、抵抗率は減少する。このZnドーピングにより高 抵抗化したサンプルのZn濃度と、成長温度500℃においてアンドープで高抵抗化したサ ンプルのC濃度(2×1017cm 3)は、ほぼ同じレベルである。このことからも、低温成長 したアンドープAlInAs層は、アクセプターの増加により高抵抗化したといえる。 物理的には結晶中のドナーとアクセプターの濃度が同じであれば、結晶は高抵抗にな る。ドナーとアクセプターがどちらも浅い準位であれば、その両者の濃度の絶村値に要 求される精度は非常に厳しく、それらを再現性良く制御することは実現不可能である。 しかし、今回のアンドープ刃InAsの場合のように、深いドナー準位が存在しかつその濃 度が1017001-3を越えている時は、高抵抗層のデバイスへの適用が可能となる。すなわち、 高抵抗化するためのアクセプター濃度は、図5-11から5±1×1017cmづ程度でよく現 在の結晶成長技術では、この濃度範囲は十分制御範囲であるからである。 4.まとめ MOCVD法を用いて、InPに格子整合するアンドープAlInAs層を成長し、抵抗率の成長 温度依存性を検討した。その結果、成長温度を下げるとアンドープ刃InAs層の抵抗率は ー101- (M嶺。) 雌蝶塵塚肯 ≠= 検出限界 500 600 成長温度(℃) 図5-9 AlInAs層中の不純物濃度の成長温度依存性 冒君諾崇品蒜蒜賢,警ふ慧浣票。 成長温度:650℃ 成長温度:5(カ℃ sha11。W Ec 芦= ㊤⑳-⑳㊤ 毒妄簑妄二十:ン ㊨⑳㊦⑳⑬ EF■竺甘ご鬱竺‖ Edd ⑬⑬⑳㊦⑬ deep 三∃ donor Edd EF ⑬㊦-⑳⑬ ■● ■ ● ■ ■ = = ■l Eg=1.45eV の (∋ 炭素: 一卜 刷Ev Shallow aCCePtOr 図5-10 欠字余写真写真 高抵抗化メカニズム -102- 1017 10 18 10 19 Zn濃度(cm-3) 図5-11 650℃で成長したZnドープAIInAs層の成長温度依存性 NlO【彊(N・∈。)堪璽卜「1㌢叶エーホ 0 00.2 0.4 膜厚 図5-12 0.6 0.8 1.0 (〃m) シートキヤリア濃度のAIInAs膜厚依存性 一103- 増加し、成長温度500℃で抵抗率1×105ncm以上のアンドープAlInAs高抵抗層が得られた。 高抵抗化メカニズムとしては、AlInAs層中に①深いドナー準位[60,93,400meV](ICTS 測定)が存在し、深い準位およびその濃度は成長温度に依存せず一定であり、②浅いア クセプター(炭素)濃度が成長温厚を下げるに従い増加していること(SIMS測定)に より、成長温度を下げるに従い増加する浅いアクセプターが上記深いドナーを補償し、 フェルミレベルがバンド中央付近まで下がるためであると考えられる。 -104- 付録1(ホール測定によるキャリア濃度測定) Fe-InP基板上に直接成長したAlInAs層のキillリア濃度をホール測定を用いて測定する 場合、Fe-InP基板とAlInAs層のヘテロ界面に高濃度のキャリアが存在するとAlInAs層の キャリア濃度を正確に評価できない。そこで、AunAs層厚を変えてホール測定すること により、ヘテロ界面に高濃度のキャリアが存在するかどうかを検討した。 アンドープAIInAs層をステップエッチ(エッチング液HPO,:H202:H20=3:1:70、エッチン グ速度0.1FLm血in)し、AlInAs層厚を変えたときのシートキヤリア濃度の膜厚依存性を 図5-12に示す。測定は、300Kと77Kで行った。シートキヤリア濃度が膜厚に比例し て減少せずほとんど変化していなことから、基板とアンドープAlInAs層の界面に高濃度 のキャリアが存在している。 ヘテロ界面にキャリアが100Åの厚みで存在すると仮定して、バルクと界面の二層伝 導を考えてホール係数、シートキヤリア濃度からバルク及びヘテロ界面のキャリア濃度 を見積った。その結果を、表5-8に示す。300K及び77Kどちらの測定温度においても ヘテロ界面には1019cm 3台の高濃度のキャリアが存在する。AlInAsバルク層のキャリア濃 度は、ヘテロ界面のキャリアを無視した場合の約半分になる。同様に、Si,Znドープ AIInAs層を成長したサンプルにおけるバルク及び界面のキャリア濃度を見積った結果も 表5-8に併せて示す。SiドープAIInAs層を成長したサンプルの場合は、ヘテロ界面のキャ リアを考慮してもバルクのキャリア濃度にはあまり影響ない。一方、ZnドープAlInAs層 を成長したサンプルでは、界面のキャリアを考慮することによりバルクのキャリア濃度 は半分以下になる。 以上のことから、Fe-InP基板とAlhAs層のヘテロ界面のバンド構造は、図5-13のよ うになっているものと考えられる。InPとAlInAsのヘテロ接合は、図5-13(a)に示す2 種型接合(19)である。伝導帯及び価電子帯のエネルギー差(△駄及び△Ev)は、それぞ れ0.35eV及び0.25eVである。n-AIInAs層を成長した場合は、図5-13(b)に示すように InP側にバンドが曲がった所に高濃度の電子が存在すると考えられる。P-AIInAs層を成 長した場合、不純物拡散のない理想的な接合だと界面に高濃度のホールが形成されない。 これは、上記実験結果と矛盾する。そこで、この場合はFe-InP層にZnが拡散しやすいこ と(20)から、P-AIInAs層のZnがFe-InP層に拡散してFe-InP層がp-InPになると仮定する。 これにより、図5-13(C)に示すようにp-AlInAsとp-InPの界面のp-AIInAs層側に高濃 度のホールが形成される。 以上の考察から、ホール測定時におけるヘテロ界面のキャリアの影響をなくすために、 Fe-InP基板とAIInAs層との間に高抵抗AIInAsバッファ層を挟んだサンプル構造にする 必要がある。 -105- 表5-8 2層伝導を考慮しなかった時のバルクのキャリア濃度と 2層伝導を考慮した時のものとの違い キャリア濃度(cm-3) 測定温度 2層伝導を考慮 2層伝導を考慮した時 しなかった時の ノマルク バルク 界面 300K 5.7xlO16 3.4xlO16 2.OxlO19 77K 2.8xlO16 1.3xlO16 1.1xlO19 300K 7.8xlO17 6.OxlO17 3.8xlO20 77K 5.5xlO17 4.3xlO17 5.3xlO20 300K 1.2xlO17 6.7xlO16 9.9xlO18 77K 5.OxlO15 6.7xlO14 5.6xlO17 アンドープAIInAs n-AIInAs p-AlInAs hP AIInAs 士‥ △Ec=0.35eV △Ec=0.35e' 1.35ev 1・4Jヂ (a)AIInAs/InPのヘテロ接合 n-AlhAs ; Fe-InP 1 高濃度電子 (b)n-AIInAs/Fe-InPのヘテロ接合 P-AIInAs :P-InP;Fe-InP (C)p-AlInAs/Fe-InPのヘテロ接合 図5-13 AIInAs/InPのヘテロ接合のバンド構造図 -107- 付録2(電気的中性条件式の導出) ドナー濃度;N。、アクセプタ濃度;NAをもつ不純物半導体を考える。 ドナー及びアクセプタ準位を、それぞれ㌔及びEAとする。電気的中性条件から次式が 成り立つ。 n+NA.=P+ND十 ここで、nとpはそれぞれ伝導帯と価電子帯における電子とホールの濃度であり、NA- は電子を捕らえたイオン化アクセプタ濃度、N。+は電子を伝導帯へ放出したイオン化ド ナー濃度である。 今、アンドープAIInAs層を考える。導電型はn型半導体(p≒0)で、深いドナー準 位が存在する。EAは㌔よりも低いエネルギー準位にあるから、電子の一部はアクセプタ に落ち込み、アクセプタ準位は全て負に帯電しているとする。すなわちNA-=NAとする。 さらに浅いドナー準位は通常数汀妃Ⅴなので、今回のホール測定した雰囲気温度(77K以 上)では、全て正に帯電しているとする。 電気的中性条件は、 n+NA=NsD+∑NDD十 となる。ここで、Ns。、N。。十はそれぞれ浅いドナー濃度、深いドナー準位から電子を 伝導帯へ放出したイオン化ドナー濃度である。アンドープAlInAs層のドナー準位には、 本文中で述べたように深いドナー準位が複数存在するので合計している。 深いドナー準位㌔。を占めている電子濃度は、熱平衡状態で次式で与えられる(21)。 N。。fD(E。。)=N。。(1+eXP((E。。-E,)/kT))/g)-1 ここで、ち、gはそれぞれフェルミ準位、縮退度である。 したがって、電気的中性条件は、 n+NA=N,。+∑N。。(1-㌔(E。。)) =NsD+∑N。。(1-(1+eXP((E。。-EF)/kT))/g)rl で与えられる。 -108- (5-2) 参考文献 (第5章) (1)D・G・Knight,B・Emmerstorfer,G・Pakulski,C・LarocgueandA.J.Springthorpe, J・ElectromicMaterials21(1992)165. (2)T・Sasaki,H・Yamazaki,N.Henmi,H.Yamada,M.Yamaguchi,M.Kitamura aJldI・Mito,IEEEJ.LightwaveTechnol.8(1990)1343. (3)H.Ishikawa,M.Kamada,H.KawaiandK.Kameko, Jpn・J・Appl.Phys.31(1992)376. (4)山腰茂伸、中井建弥:レーザ研究 第16巻 (1988)750. (5)D.G.Knight,B.Emmerstorftretal:J.ElectronicMaterials21(1992)165. (6)K.L.HessandS.W.Zehr,J.CrystalGrowth93(1988)576. (7)c.E.Z.ah,C.Caneau,S.G.Menocal,F.Favire,T.P.Lee,A.G.Dental andC.H.Joyner,Electron.Lett.24(1988)695. (8)粕川秋彦、大久保典雄、池上嘉一、築地直樹、関政義: レーザ研究 第23巻 (1995)55. (9)c.Kazmiereski,D.RobeinandY.Gao,J.CrystalGrowth,116(1992)75. (10)R・A・Metzger,A・S・Brown,W・E・Stanchina,M・Lui,R・G・Wilson,T・V・Kargoqorian, L・G・MaCrayandJ.A.Henige,J.CrystalGrowthlll(1991)445. (11)s.Narituka,T.Noda,A.Wagai,S.FujitaandY.Ashizawa, J.CrystalGrowth131(1993)186. (12)T.Kimura,S.Ochi,N.Fujii,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui, J.CrystalGrowth,145(1994)963. (13)s.ochi,T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui, ProceedingsoftheSixthInternationalConftrenceonIndiumPhoshideand RelatedMaterials,(1994)98. (14)Y.MoriandM.Kamada,J.CrystalGrowth,93(1988)892-899. (15)木村、石田、越智、藤井、園田、高宮、三井, 1994年春季応用物理学関係連合講演会(第41回),31p-Ⅹ-6(1994). (16)H.OkushiandY.Tokumaru,Jpn.J.Appl.Phys.24(1980)L335. (17)D.V.Lang,J.Appl.Phys.45(1974)3032. (18)s.J.PeartOn,W.S.Hobuson,A.P.Kinsella,J.Kovalchick,U.K.Charkabarti andC.R.Abernathy,Appl.Phys.Lett.26(1990)1263. (19)L.Aina,M.MattinglyandL.Stecker,Appl.Phys.Lett.53(1988)1620. (20)c.Kazmierski,D.RobeinandY.Gao,J.crys.Growthl16(1992)75. (21)s.M.Sze,PhysicsofSemiconductorDevice,Wiley,NewYork,1981. -109- 第6章 高抵抗AlInAs層の 半導体レーザ埋め込み層への適用 6-1 はじめに 前章でアンドープ刃InAs層の成長温度を下げることにより、AlInAs層の抵抗率が上昇 し高抵抗層が得られることを述べた。この高抵抗層を半導体のレーザ埋め込み層に適用 する場合、次の3つのことが重要である。 (1)AlInAs層の選択埋め込み成長 第2章で述べたように半導体レーザの電流狭窄のための埋め込み層をMOCVD法で成 長する場合、誘電体マスクを用いて選択埋め込み成長する必要がある。この際、マスク 上に多結晶が付着するとマスクを除去することが困難になり、最後にコンタクト層を成 長することが不可能になる。従って、AlInAs層成長中にマスク上に多結晶を付着させな いことが重要である。 今回の刃InAs層の成長温度は前章で述べたように高抵抗化のために500℃と、InPを選 択埋め込み成長する場合の成長温度(650℃)より150℃も低温で行なわなけらばならな い。一般に成長温度を下げるとマスク上に多結晶が付着しやすくなることから、選択埋 め込み成長の困難が予想される。しかも、デバイスの静電容量を低減するためには、 刃InAs層厚を3〃m程度成長することが要求されている。このためには、成長を4時間 程度する必要があり、この長い成長時間中にマスク上に多結晶を付着させないことが必 須である。 (2)高抵抗層の耐熱性 500℃で低温成長した刃InAs層は、コンタクト層を成長するときに高温(650℃)に曝 されることになる。熱処理による抵抗率の低下は、刃InAs層の高抵抗化メカニズムより 考えにくいが、高抵抗層が低抵抗化しないか確認しておく必要がある。 (3)電流狭窄層構造 前章に述べたundoped-AIInAs/Fe-InP構造におけるアンドープAlInAs層の抵抗率は、 AlInAs層に電子のみを注入した時の値である。半導体レーザの埋め込み層にアンドープ AlInAs層を適用する場合、p層及びn層からそれぞれホール及び電子がAIInAs層に注入 されることになる。このため、刃InAs層内でホールと電子による再結合電流が流れる(1)。 そこで、ホールと電子が同時に注入されにくくして再結合電流が流れないような電流狭 窄層構造にする必要がある。 そこでこの章では、刃ImAs層の選択成長について述べる。次に、アンドープ刃InAs層 含む電流狭窄層構造を検討する。この際高抵抗層の耐熱性について触れる。最後に、ア ンドープAlInAs層を半導体レーザの電流狭窄層として適用した結果について述べる。 -110- 6-2 AlhAs層の選択成長 AlInAs層の成長速度及びV/III比は、それぞれ0.7iLnVhour及び200で一定とした。成長 温度による選択埋め込み形状の違いを比べるために、成長温度を450,500,600℃と変え てその断面形状を調べた。その他の成長条件は、前章で述べた表5-1と同じである。 図6-1(a)に示すInP基板上に形成しだ'富士山"状のなだらかな側面を持つメサを用 いて、AlI血s層のメサ近傍の成長の様子を調べた(2)。選択マスクとして、スパッタで 成膜した厚さ100nmのSiO2膜を用いた。ストライプ方向は<110>方向、ストライプ幅は 8FLmとした。メサエッチングには、HBr系のエッチング液を用い、メサ深さは4FLm とした。埋め込み成長後、サンプルを努閲しFeCN:KOH:H20液を用いてステンエッチ ングした後、SEMを用いて断面観察をした。 図6-1(b),(C),(d)に、それぞれ成長温度450,500,600℃で膜厚3FLmのAIInAs層を成長 した時の断面SEM像を示す。なお、最表面には成長温度650℃でn-InP層を成長した。 650℃では、SiO2膜上にInPの多結晶は付着しない。このn-Ⅰ㌦層の役割については、次節 で述べる。 図6-1(b)に示すように、成長温度450℃ではSiO2膜上に多くの島状の多結晶が付着し ている。これは次に述べる成長機構による。SiO2膜上及びInP表面上にTMA,,TMIから熱 分解したIII族成長種(Al,In)が、気相中を拡散してくる。InP表面上に付着したIII族成 長種は、単結晶となり成長に寄与する。一方、SiO2膜上の成長に寄与できないⅠⅠⅠ族成長 種は、温度が低いためにSiO2膜上を表面マイグレーションすることができずにInP表面 に到達する前にSiO2膜上で付着する。これが核となって、成長中にこの核にⅠⅠⅠ族成長種 が集まり大きな島状の多結晶が形成されたと考えられる。 図6-1(C)に示すように、成長温度500℃ではSiO2膜上には多結晶が全く付着していな い。良好なAlInAs層の選択成長が得られた。AlInAs層は、メサ側面からメサ近傍の(001) 底面に渡って均一に成長している。また、選択マスク端から基板が2.5〃mサイドエッチ ングされSiO2膜のひさしが出ているために、メサ側面から成長した埋め込み層がSiO2膜 上に覆いかぶさってくる、いわゆる"rabittear"(3)は観測されず表面が平坦に埋め込み 成長している。 一般に、メサ上部にSiO2選択成長マスクが形成されているInPメサを用いてメサ近傍の 成長の様子を検討した場合、成長温度を上げることにより、SiO2膜上の成長種の表面マ イグレーション及び気相中への再蒸発が大きくなり選択成長はより良好になる(4・5)。 しかし、このAlInAs層選択成長の場合、単純にSiO2膜上の成長種のマイグレーションの 温度依存性では説明がつきにくい。なぜなら、①刃を含む化合物結晶としては選択成長 可能温度が500℃と非常に低いこと、②成長温度600℃でAlInAs層を成長した場合、図6 -1(d)に示すようにSiO2膜上にポリが付着していることが挙げられる。 成長温度が500℃というMOCVD法では低温にもかかわず、良好なAlInAs層の選択成長 が得られた理由として、SiO2膜上の表面状態をもう少し詳細に考える必要がある。InP 基板を昇湿してAlInAs層を500℃で成長するまでの雰囲気は、InP基板からのリン原子の 脱離を抑えるためにPH,nl,で行う。この際、SiO2表面の非結合手は、PH3が分解して -111- ーn-InP -undopedAIInAs ーn-InP -undopedAIInAs 一皿-InP -undopedAIInAs 7・5/`m 図6-1 (a)hPメサ形状、及び成長温度(b)450℃、(C)500℃、(d)600℃ でアンドープAIInAs層を成長した時の断面SEM像 AlInAs層を成長した後、成長温度650℃でhP層を成長した。 -112- できたリン原子と結合している。これにより気相からSiO2月鼠上に到達したⅠⅠⅠ族成長種は、 SiO2膜上のマイグレーションや気相中へ再蒸発しやすくなり、SiO2膜上に成長種の核が できにくくなる。したがって、SiO2膜上に多結晶は付着しなくなる。図6-1(b)と比 べて基板温度高いことによって、①pH3の分解度が大きくなって、よりSiO2膜表面がリ ン原子によって覆われること、②表面マイグレーションが大きくなることが選択成長を 可能にしたと考えられる。 図6-1(d)に示すSiO2膜上の多結晶は、図6-1(b)に示す成長温度450℃におけるSiO2膜 上の島状の多結晶と違って、SiO2膜上に全体にしかも一様に付着している。多結晶の膜 厚は1・5/Jmと、成長したAlInAs層の膜厚(3.OFLm)よりも薄い。もし、AIInAs層成長の 初期段階からSiO2膜上に多結晶が付着すれば、多結晶膜厚と刃InAs膜厚は同じになるは ずである。この多結晶と結晶層厚の相違は、ある程度成長が進んでからSiO2膜上に多結 晶が付着し始めることを意味している。この多結晶の付着は、成長温度500℃における 選択成長で考察したようなSiO2膜表面の非結合手と成長種との相互作用が主な原因と考 えられる。 AlInAs層を600℃で成長している間、SiO2膜表面は高温でしかもAsH,雰囲気で長く曝さ れているため、昇温時にSiO2膜表面を覆っていたリン原子が成長途中に離脱する。すな わち、リン原子が、SiO2膜表面の非結合手と結合しているのはある有限の時間と考えら れる。したがって、600℃という高温でも成長初期段階では多結晶は付着せずに、成長 途中から付着し始める。600℃で刃Ⅰ血s層を1〃m成長した場合にはマスク上に多結晶が 付着しないという別の実験結果は、上記の考察を支持いている。成長温度500℃と600℃ で刃InAs層のSiO2膜上の多結晶付着の違いは、マスク上の非結合手とリンの結合してい る時間が成長温度を下げるにしたがって長くなることに起因している。 以上のことから、メサ上部にSiO2選択成長マスクが形成されているInPメサを用いて、 メサ側面をAlInAs層で埋め込むのに最適な温度は、500℃であることが判明した。この 成長温度は、前章で述べたアンドープ心血As層が高抵抗になる成長温度と同じである。 そこで、レーザの電流狭窄層として、高抵抗層が得られかつ選択成長が可能な成長温度 500℃で刃hAs層を成長した。 6-3 AlInAs層を含む電流狭窄層構造 半導体レーザの電流狭窄層構造としての電気的特性を調べるために、次の3種類のサ ンプル構造をn-InP基板に成長した。(a)n-InP/undopedAIInAs、(b)p-InP/undopedAIInAs 並びに(C)p-InP/n-InP/undopedAIInAsである(以下略してn-i-n、P-i-n、p廿i-n構造とする)。 各構造の刃InAs層は、高抵抗化が可能でかつ選択成長が可能な成長温度500℃で成長し、 その層厚は3FLmとした。n一及びp-InP層の膜厚は1FLm、成長温度は650℃である。従っ てAlInAs層上にInPを成長する場合には、AlInAs層を成長後一度III族供給を停止して、 AH,佃2雰囲気で650℃まで昇湿してInP層を成長した。また、InP層のキャリア濃度は 1xlO18cm,3である。n型及びp型ドーバントして、それぞれ硫黄(S)及び亜鉛(Zn) -113- を用いた。表面電極はn-i-n構造のサンプルのみn型とし、他のサンプルはp型とした。 電極の大きさは、400〃m角とした。表面電極をマスクとしてBrメタノールを用いて、 図6_2に示すメサ構造を作製し表面電極をプラスにして、電流一印加電圧特性を測定 した。なお、すべてのサンプルの裏面には、全面にn型電極を形成した。 高抵抗層にオーミック電極を形成し電界を印加すると、電子(又はホール)が注入さ れ電流が流れる。注入されたキャリアが反対符号のキャリアによって再結合しない場合 は、注入されたキャリアは空間電荷を形成し、電極間の電界を歪ませる。そのため、オ ームの法則からはずれた電流一電圧特性を示す。このような非線形性の電流は空間電荷 制限電流と呼ばれている。AlInAs層のように高抵抗層中にトラップがある場合には、伝 導電子がトラップに捕らえられたりトラップから再び伝導帯へ熱励起されたりする過程 を繰り返してドリフトする。この時の空間電荷制限電流は、 Ⅰ∝ V n (6-1) (nは定数) で表せられる(1)。実際には、まず電界を加えることにより高抵抗層内にあらかじめ 存在する電子によるオーム電流が支配的になる。さらに、電界を加えるとオーム電流を 上回る空間電荷制限電流が流れる。 図6-3に、3種類((a)n-i-n、(b)p-i-n、(C)p-n-i-n構造)のメサ構造の室温での電流一 印加電圧特性を示す。n-i-n構造サンプルの場合、低バイアス電圧領域(0.8V以下)では 伝導帯の電子によるオームの法則(Ⅰ∝Ⅴ)に従った電流が流れる。高バイアス電圧 n) 領域(0.8V以上)では、〟InAs層の深いレベルを介した空間電荷制限電流(Ⅰ∝V が流れる。このオーム電流から空間電荷制限電流への転移電圧Ⅴは、 Ⅴ≒(8/9)(Nt/nl)(e ここで、 n。/E)L2 (6-2) nl=Ncexp((Et-Ec)/kT) で与えられる(付録参照)。ここで、Nt,n。,'E,L,Etは、それぞれトラップ濃度, 熱平衡状態での電子濃度,誘電率,高抵抗層の膜厚,深い不純物準位である。(6-2) 式より転移電圧を計算すると、0.57Vとなり測定値(0.8V)と比較的よく一致している。 電流一印加電圧特性がオームの法則に従っている領域の抵抗率は、2xlO8ncmである。 刃InAs層を同じ成長温度で成長したにもかかわらずこのn-i-n構造で得られた値は、前 章(5-2-3)で述べたundopedAIInAs/Fe-InP構造における抵抗率よりも高い(7)。これは、 後者の構造の場合、AlInAs/Fe-InPのヘテロ界面を流れる電流により実際のAlInAs層の抵 抗率よりも低く見積もったためである。 p-i-n構造の場合、低バイアス電圧から非常に多くの電流が流れ始める。n-i-n構造の電 流一電圧特性と違ってオームの法則に従っている領域がないので、抵抗率を定義するこ とはできない。あえて順方向印加電圧1V時にオームの法則が成りたっていると仮定して 抵抗率を見積もると、1xlO3ncmとn-i-n構造のものと比べて非常に低い。P-i-n構造の場 -114- 400〃血□ n型電極 (a)n-InP/undoped-AIInAs/n-InP構造 (b)p-InP/undoped-AlInAs/n-InP構造 (C)p-InP/n-InP/undoped-AlInAs/n-InP構造 図6-2 サンプル構造 ー115- 10-6 重 10-7 媒 脚 10-8 10-10 0.1 10 印加電圧(Ⅴ) 図6-3 電流一印加電圧特性 -116- 100 合、AlInAs層がp-InP層とn-InP層の間に入ることにより、実効的に伝導帯及び価電子帯 のバンド不連続が緩和されたことになる。従って、P-InP層とn-InP層からそれぞれ注入 されるホールと電子にとって、単なるInPのpn接合の場合よりも流れやすくなり多くの 電流が低バイアス電圧から流れる。また、ホールがAlInAs層内に注入されることにより、 AlInAs層中のトラップを介した再結合電流も流れる(1)。 一方、P-n-i-n構造の電流一印加電圧特性は、n-i-n構造と同様にオーム電流を経て空間 電荷制限電流が流れる。オーム電流時の抵抗率は、2x1010ncmとn-i-n構造のものより高 い。また、転移電圧も3Vとn-トn構造のものより高い。これは、次のようなことが考え られる。P-n-i-n構造では、電界はi層とpn接合の両方に印加される。n-InP層から注入さ れる電子は、i層を通りpn接合を横切って拡散して始めて電流成分として寄与する。従っ て、外部から印加される電界が全てi層に印加されるn-i-n構造と比べて、P-n-i-n構造の 場合i層に印加される電界は低く、かつ電子がpn接合を横切る必要があるため、電子に よる電流成分はn-i-n構造よりp-n-i-n構造は少ない。一方、P-InP層から流れるくるホー ルは、AIInAs層とp-InP層で挟まれたn-InP層でブロックされAlInAs層に流れ込みにくい。 このため、p-i-n構造のようなホールによる電流成分も低く抑えられる。以上のことより、 オーム電流領域は高バイアス側まで広くなり抵抗率も増大する。 また、P-n-i-n構造で高抵抗が得られた結果は、低温で成長したAlInAs層は650℃(InP 成長時)という高温に曝しても低抵抗化しないことを示唆いている。 以上の結果から、レーザの電流狭窄層構造として、このp一山-n構造を適用することは 可能である。 p-n一トn構造におけるアンドープAlInAs層の抵抗率の測定温度依存性を図6-4に示す。 順方向印加電圧は、1Vと一定である。測定温度を上げるにしたがって抵抗率は減少し、 125℃で1xlO6ncm程度まで減少する。埋め込み層のリーク電流を抑えるためには、 1xlO5r之cm以上の抵抗率が必要であることから、P-n-i-n構造におけるアンドープAlInAs 層は、100℃を越える高温においても十分高抵抗層として働く。活性化エネルギーは、 360meVで前章で示したようにICTS法やキャリアの測定温度依存性から見積もったアン ドープAlInAs層の一番深い不純物準位とほぼ同じである。熱励起による伝導キャリア濃 度にオーム電流は比例することから、両者の一致は妥当といえる。 6-4 埋め込みレーザへの適用 アンドープAlInAs層を含むp-n-i-n電流狭窄構造を、多重量子井戸(MQW)活性層を持 つ埋め込みレーザに適用した。図6-5にレーザの作製プロセスを示す。まず、n-InP基 板上にn-InPクラツド層・MQW活性層・P-InPクラッド層と成長温度650℃で順次成長す る(図6-5(a))。MQW活性層は、ウエル数13・ウエル層厚3nmのInGaAs・バリア層厚 10nmのInGaAsP(人=1.32FLm)である。SiO,ストライプマスクをエッチングマスクとし てHBr系エッチング液を用いて、メサ幅1.8!1mのメサ構造を形成する(図6-5(b))。 次に、成長温度500℃でアンドープAlInAs層、成長温度650℃でn-InP層をそれぞれ選択成 -117- 125100 75 (∈UG) 触媒璽 2.5 3.0 3.5 1000/T(l/K) 図6-4 p-n-i-n構造のAIInAs層の抵抗率の測定温度依存性 -118- (a)活性層成長(1stMOCVD) p-InPクラッド層 M(〕W活性層 n-InPクラッド層 (b)メサエッチング (C)選択成長(2ndMOCVD) n-InP層 undopedAIInAs高抵抗層 (d)コンタクト層成長(3rdMOCVD) p-GaInAsコンタクト層 p-InP層 ヽヽヽヽ ′′′′ ヽヽヽヽ ′′′′′′::: .ヽヽヽヽヽヽヽ ′ ′ ′ ′ ′ ′ ′ ヽ ヽ ヽ ヽ. ヽ ヽ ′ ′ ′ ′ ′ ′ ′ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ′ ′ ′ ′ ′ ::‥==よ‡±‡±‡±k ′ ヽ . ′ ヽ ′ ■■●■ ■■-一一■■-●■■ ′ J■ ヽ ノ ヽ . 図6-5 ′ ヽ ヽ ′ J● ヽ ′ ′ ヽ ′ ヽ J● ′ ヽ ′ ヽ. ′ ヽ ′ ヽ ′ アンドープAIInAs層を含むp-n-i-n電流狭窄構造を持つ 半導体レーザの作製プロセス ー119- 長しメサ側面を埋め込む(図6-5(c))。SiO2ストライプマスクをバッファードHFで除 去した後、成長温度650℃でp-InP層及びp-InGaAsコンタクト層を成長する(図6-5(d))。 両面に電極を形成した後、共振器長300〃mに努閲した。 図6-6に、室温CWにおけるレーザからの光出力一往入電流の関係を示す。しきい値電 流8mA・スロープ効率0.11mWノmAが得られた。電流狭窄構造はp-n-i-n構造に設計して 作製したが、活性層脇はp-i-n構造となるため図6-3で示したように低印加電圧でリー ク電流が流れる。そのため、第3章で述べたpn埋め込みレーザと比べてスロープ効率は 良くない。Fe-InP層を電流狭窄層として用いたレーザ(8)の場合においても同様なこと が言えて、両者のスロープ効率は同等である。この結果は、アンドープAlInAs層が電流 狭窄層として適用できることを示している。 6-5 まとめ 低温でMOCVD成長したアンドープAlInAs層は、高抵抗層としてFe-InP層に代わる材料 であることを示すともにレーザの電流狭窄層として適用できることも示した。成長温度 500℃という低温でAIInAs層をした場合、SiO2マスク上に多結晶が付着しないことを確 認した。P-InP/n-InP/undopedAlInAs/n-InP構造で抵抗率が、2xlOlOncmと非常に高い 値が得られた。この構造をレーザの電流狭窄構造に通用した結果、室温CWにおいてし きい値電流8mA・スロープ効率0.11mW/mAの良好な特性が得られた。 -120-- 4 つJ (き∈) R召米 2 l 0 10 20 30 40 50 注入電流(mA) 図6-6 光出力一往入電流特性 -121- 60 付録 いま、禁制帯中の不純物準位BにNt個のトラップが存在するとする。熱平衡状態での 電子濃度を恥、トラップに捕らえられている電子濃度をnt。とする。n。とnt。は、次のよ うにそれぞれ表される。 (6-3) n。=Ncexp((EF-Ec)/kT), nt。=Nt/(1+eXP((Et-EF)/kT)) =Nt/(1+nl/n。) ≒(恥/nl)Nt (6-4) ここで、nl=Ncexp((Et-Ec)/kT) この高抵抗層に外部から電圧Ⅴを加えた時の伝導電子n及びトラップに捕らえられた 電子濃度ntは、(6-4)式同様に nt≒(n/nl)Nt で表される。 高抵抗層中の空間電荷制限電流密度Jを記述する基本式はポアソンの式と電流の式で 表される。 dE/dx=(e/E)((n-n。)+(nt-nt。)) (6-5) ≒(e/e)(Nt/nl)(n-n。) (6-6) J=en/∠E で与えられる。ここで、〃,∈は、それぞれ電子の移動度,誘電率である。(6-5) 及び(6-6)式から、空間電荷制限電流密度J (6-7) J=(9/8)(nl/Nt)EFL(V2/L3) を得る。ここで、Lは絶縁体の膜厚である。オーム電流J-は J'=enFL(V/L) (6-8) で表させる。従って、オーム電流から空間電荷制限電流への転移電圧Ⅴは、(6-7) と(6-8)式から -122- (6-2) V≒(8/9)(Nt/nl)(en。/E)L2 となる。 次に、転移電圧Ⅴを求める。n。は、抵抗率(2xlO8n℃m)から求めると1.6xlO7血3と なる。フェルミレベルは、(6-3)式から0.63eVとなる。前章で議論したように、ア ンドープ刃InAs層には、深いドナー準位が複数存在するが、フェルミレベルはもっとも 深い準位(0.35eV)の近傍にあることから、その他の深いドナー準位(0.05eV,0.12eV) には電子が存在しないとする。従って、Ntは0.35eVの準位の濃度2.8xlO17血 3とする。 ∈及びLはそれぞれ12.4∈。及び3〃mである。これらすべての値を(6-2)に代入す るとⅤ=0.57vが得られる。 ー123- 参考文献 (第6章) (1)M.A.LampertandP.Mark, CurrentIrtiuctioninSolids(Academic,NewYork,1970)・ (2)T.Kimura,S.Ochi,T.Ishida,E.Ishimura,T.Sonoda,S・TakamiyaandW・Susaki, J.CrystalGrowth,Vol.158,PP418-424(1996)・ (3)K.Nakai,T.SanadaandS.Yamakoshi,J.CrystalGrowth93(1988)248・ (4)s.H.Groves,Z.L.Liau,S.C.PalmateerandJ.N.Walpole, Appl.Phys.Lett.56(1990)312・ (5)0.Kayser,R.Westphalen,B.OpitzandP・Balk,J・CrystalGrowthl12(1991)111・ (6)木村、石田、越智、石村、園田、三橋、高宮, 1995年春季応用物理学関係連合講演会(第42回),30a-ZY-4(1995). (7)T.Kimura,S.Ochi,N.Fujii,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS・Mitsui, J.CrystalGrowth145(1994)963. (8)T.Sasaki,H.YamaZaki,N.Henmi,H.Yamada,M.Yamaguchi,M.Kitamura andI.Mito,IEEEJ.LightwaveTechnol.8(1990)1343・ 一124一 第7章InPonGaAs結晶成長 7-1 まえがき Ⅰ㌦系光デバイスと駆動回路を同一基板上にモノリシックに集積したOEICを考えた場 合、駆動回路には衛星放送や携帯電話などに広く実用化されてるGaAs系電子デバイス を用いたほうが有利である。これは、GaAs系電子デバイスがInP系電子デバイスより構 造及びプロセスが成熟し、かつSi系電子デバイスよりも高速で動作するからである。筆 者らはOEICの大規模な量産化を考慮してこの構想実現のためには、基板として高品質 の大口径基板が低コストで得られるGaAs基板を用いた方が有効であると考えた。 GaAsとInPとでは、物理定数の違い(格子定数差:3.8%・熱膨張差:26%)があるた め、GaAs基板上のInP結晶には多くの転位が存在する。従って、GaAs基板上のInP系光 デバイスは、この結晶欠陥によるデバイス特性の劣化が予想される。GaAs基板を用い たOEIC実現には、発光デバイスとしてGaAs基板上のInP結晶の高品質化によるInP系長 波長半導体レーザの室温連続発振とレーザ特性の高性能化が必須である。また、受光デ バイスとして、同様にホトダイオードの高性能化が必要である。 GaAs基板上のInPエビ成長(1 4)といった基板と物理定数の異なる結晶を成長する試み は、GaAsエビ/Si基板(5、6)・GaAsエビnnp&板(7,8)・InPエビ/Si基板(9,10)系等広く研 究が行われている。このようなヘテロ成長においても、基板と成長層の格子定数・熱膨 張係数並びに結晶構造の違いから、成長層に多くの転位が導入される。GaAsエビ/Si基 板系では、GaAs結晶の高品質化のために転位を低減する研究が特に活発に行われてい る。①GaAsとSiの熱膨張係数差を利用してSi基板を加熱してGaAs結晶に熱ストレスを加 えることにより転位を合体させる方法、(∋歪み超格子構造を挿入して転位を横に曲げる 方法、③それら両者を組み合わせることにより高品質化を計っている。 しかし、InPエビの高品質化のために、GaAs基板上に低温バッファ層を成長しそのバッ ファ層厚を最適化することによりInP結晶のⅩ線回折ピーク強度半値幅を狭くした報告例 (4)があるが、そのInPの結晶性改善についてほとんど議論されていない。 この章では、GaAs基板上のInPの結晶性改善のため、熱処理(TCA:TYlermalCyclic Amealing)を施し歪み超格子層(SLS:Strained-layerSuperlattice)を挿入した結果、転 位を低減しInP基板上のInP層とほぼ同等の光学的特性が得られたことについて述べる。 7-2 GaAs基板上のInP層成長 基板には(001)GaAsを用いた。原料としてトリメチルインジュウム(TMl)・トリ エチルガリュム(TEG)・フォスフィン(PH,)・アルシン(AsH,)を用いた。2イン チの横型MOCVD装置を用いた。InP結晶成長条件を表7-1に示す。 -125- 表7-1 InP層の成長条件 成長温度 500℃ 成長圧力 150To汀 600℃ 一← 仝H2ガス流量 17slm PH3流量 600sccm 100sccm TMI流量 800sccm 一← Ⅴ/ⅠⅠⅠ 成長速度 450 1・5/ノm/h -126- ト 一■ 80 一← ここで、この装置の特徴であるガス供給系について述べる。後に述べるように、今回 の成長には組成の違う膜厚10nmの超薄膜を交互に成長する必要がある。このためには、 反応管内に導入するガスを瞬時に切り変えることが要求される。成長中断によりガスの 切れを良くする方法が考えられるが、中断時間の最適化・中断による成長表面の汚染等 の問題がある。 そこで本装置では、反応管直前でガスを3方向バルブで切り換え、しかもそれぞれの 材料ガス配管を円周状に配置することにより、どのバルブからも基板までの到達距離が 同じになるようにした。この接続方法は、いわゆる、ラジアルマニホールドと言われ、 従来のバルブを直列に接続するリニアーマニホールドと区別されている。さらに、3方 向バルブのガスの澱み部分(デッドスペース)を極力少なくするため、後押しの水素ガ ス配管が設けてある。これにより、材料ガスを反応管から排気系へ(又はその逆)切り 換えた時、バルブ内の残ったガスを瞬時に吐き出すことができる。ただし、反応管直前 で材料ガスを混合するため、混合の度合いが不十分になり成長層の膜厚・組成の面内分 布がつきやすくなる。この点を克服するために、後押しの水素流量のバランスを考慮し ガスを混合しやすくして、成長圧力をInP系としては高めの150Torrに設定した。 この装置を用いて、InP/InGaAsP系及びAIGaInP/GaInP系の量子井戸構造を成長し、 それぞれ2nm及び0.5nmの超薄膜が成長できることを断面TEM(TranSmissionElectron Microscope)や4.2KPLのピークシフト量から確認している(11・12)。このことは、狙い 通りの急峻な組成及び超薄膜が得られたことを意味している。 図7-1にInPの成長シーケンスを示す(13)。まず、GaAs基板の表面を650℃で10分間 AsH3雰囲気でサーマルクリーニングした後、500℃でInP低温パフア層(膜厚30nm)を 成長した。この時のⅤ/ⅠⅠⅠ比は450と、低温によるPH3の末分解を補う意味で通常のⅠ㌦を 成長する時のV/III比より高くした。次に、600℃までPH,雰囲気で昇湿し、InP層をV/ III比80で成長した。その後、PH,雰囲気でTCAを施した。TCAは、700℃に昇温して10分 間保持し200℃まで降湿するという行程を数回繰り返した。TCAによる転位密度低減効 果は、基板とエビの熱膨張差を利用するので昇温時の基板温度が高いほど大きいと考え れる。700℃より高く基板温度を上げると、反応炉内のリン庄を上げても表面からのリ ンの脱離を抑えることができず表面モフォロジーが荒れるために昇温の上限温度を700 ℃とした(14)。 次に、600℃でIn。,,Ga。.1P/InP(各膜厚10nm、5周期)sLSを成長した(15)。このSLS を選んだ理由として①GaAs/Si系では転位低減にはIn。.,Ga。.1As/GaAsがもっとも効果が あり(6)この時の歪み量はⅠ‰G恥1P/InPと同じ7Ⅹ10-3であること、②Ⅴ族ガスを切り換 えないために、SLSの急峻な界面が得られるためである。最後にInP層を2いノm成長した。 図7-2に、サンプル構造と成長層厚を示す。成長層は、全てアンドープ層である。 GaAs基板上のInP層のアンドープのキャリア濃度は、InP上のものと変わらず1xlO16 00 3程度であった。 結晶の評価には、微分干渉顕微鏡・転位密度・4.2Kフォトルミネッセンス(PL)・ Ⅹ線回折並びに断面TEMを用いた。転位密度は、H3PO4/HBr液(2:1)(16)を用いて 表面のInP層をエッチングし、そのエッチピット密度(EtchPitDensity:EPD)で評価し -127- (Uこ 7 0 0 6 5 0 6 0 0 山∝⊃トく∝山d≡山ト ーーN∞- TIME 図7-1 成長シーケンス 10nmln。.。Ga。..P lOnm rJnP 5periods InP Buffer 30nm 図7-2 サンプル構造 -129- Layer た。 7-3 7-3-1 hP結晶評価結果 表面モフォロジー 図7-3(a)にGaAs基板上にInP低温バッファ層を成長した後に、InP層を7pm成長した 時の表面状態を示す。下地は鏡面であるが、全体的に表面に凹凸がみられる。また、格 子定数はInP層とGaAs基板とで約3.8%違いがあるが、クロスハッチは観測されていない。 低温バッファ層有無による、表面モフォロジーの違いはなかった。このサンプルをTCA 4回施したときの表面状態を、図7-3(b)に示す。TCAにより表面の凹凸が改善されて いる。これは、700℃という高温でIn原子やP原子が表面を動いたためと考えられる。 SLSを挿入した図7-2のサンプル構造の表面状態を、図7-3(C)に示す。TCA4回施し たサンプルと同様な鏡面が得られており、SLSの歪みよる新たな表面荒れは無い。 7-3-2 エッチピット密度(EPD) InP層を5仲m成長したサンプルの最表面層のEPDのTCA処理回数依存性を、図7-4に 示す。EPDは、TCAを1回施しても6xlO7cm-2とas-grOWnのサンプルと同じである。TCA を4回施すことにより、EPDは3xlO7cm 2まで減少している。しかし、TCAを8回行っ てもEPDは変化せず、TCA4回でEPD低減効果は飽和している。 このTCA効果のInP膜厚方向の情報を得るために、H,PO./HCl溶液(2:1)で約0.5pm 刻みの段差を形成したサンプルを用いてEPDの成長方向分布を測定した。図7-5に、 GaAs基板からInP最表面方向のEPDを示す。aS-grOWnのサンプル(図中■印)のEPDは、 基板近傍では1xlO8cm-2であり、TCAを4回施したサンプル(図中▲印)と同程度であ る。InP層厚が厚くなるに従ってEPDは減少して、5pm付近で飽和傾向になり7pmで6 xlO7cm-2になる。TCAを4回施すことにより全ての膜厚でEPDは減少し、7pmで3xlO7 cm 2とas-grOWnのサンプルのEPDの半分になる。このことから、TCAはInPとGaAsの熱膨 張係数差の違いよる熱ストレスを利用して、InP中の転位を運動させ結合・消滅させる 効果があると考えられる。 このTCAによる転位低減効果は、Si基板上のGaAs層成長への適応した結果(17)より小 さい。その違いを、GaAs基板上にInP層を成長した場合とSi基板上のGaAs層を成長した 場合と比較して表7-2に示す。GaAs/Si系においては、TCAを5回施したGaAs層のEPD を溶融KOHで評価した。aS-grOWnのサンプルでは、両サンプル共にEPDは1xlO8cm-2程 度と同じである。TCAを施すことにより、GaAs/Si系ではEPDは1/10に減少するのに対 して、InP/GaAs系ではEPDは1/2しか減少しない。これは、GaAsとSiの熱膨張係数の差 (42%)は3.3xlOJK-1であるのに村して、InPとGaAsのそれは1.2xlO ー130- 6K-1と小さいため (a) 図7-3 (b) (c) 微分干渉顕微鏡で観察した表面モフォロジー (a)as-grOWn,(b)TCAを4回施したサンプル, (c)TCAとSLSを組み合わせたサンプル 50〝m (?∈。)似鹿〓⊥∴ヤ小トH 4 熱処理回数 図7-4 (回) GaAs基板上にInP層を5FLm成長した最表面層の エッチピット密度の熱処理回数依存性 (N-∈。)似扇㌻丁∴ツ小六T 5 InP膜厚 10 (〃m) 図7-5InP層のEPDの膜厚分布 r印はas-grOWnサンプル、▲印はTCAを4回施したサンプル、 ●印はTCAを施しSLSを挿入したサンプル ー132- 表7-2InP/GaAs系及びGaAs/Siにおける熱処理効果の比較 (エビ(InP,GaAs)膜厚3FLmのサンプルのas-grOWnと熱処理を施し た後のエッチピット密度違い) InPonGaAs aS-grOWn 熱処理 GaAsonSi 8.OxlO7 1.OxlO8 3.6xlO7 1.1xlO7 単位:。m-2 に、InP/GaAs系の場合GaAs/Si系と比べてエビに加ある熱応力が小さくそのために転 位が結合・消滅しにくいためと考えられる。 TCA後のサンプルのInPエビ/GaAs基板界面の断面TEM像を、図7-6に示す。GaAs基 板とⅠ㌦エビ界面には、多くの転位が集中している。基板から1卜m離れた転位密度は、 8xlO7皿 2であり、H3PO./HBr液によるEPDとほぼ一致する。 図7-5には、SLSをInP膜厚5pmで挿入したサンプル(図中●印)のGaAs基板から InP最表面方向のEPDも合わせてを示す。EPDはSLSの挿入位置で急峻に減少し、InP最 表面7pmで1xlO7c血 2まで減少している。SLSにより転位は横方向に曲げられ、転位の 上への伝搬を抑制している効果が現れている。しかし、EPDがSLSの上部に多数存在す るのは、SLSと上部のⅠ㌦界面から新たに転位が発生していることを意味している。また、 SLS挿入以後のEPDは飽和することなしに減少しているので、Ⅰ㌦膜厚を厚くすればさら にEPDは減少すると考えられる。 SLSをInP膜厚2pmで挿入したサンプルでは、SLS挿入位置での急峻なEPD減少は観測 されなかった(18)。この理由ついては、2つの考え方がある。1つは、図7-5に示した ように、SLSによる転位低減は1∼2xlO7cmT2程度であり、InP膜厚2pm付近では、膜 厚を厚くすることにより同程度にEPDが減少しているため正確にSLSの効果を見積もる ことができない。他方は、SLSによって付加される応力が高密度に存在する転位により 緩和されるために、SLSの効果が現れていない。GaAs/Si系でも、SLSの挿入位置に関 する同様な実験が報告されており(12)後者の考えは、基板からSLSの挿入位置が1匹m以 内のEPDが5∼10xlO7cm-2範囲で急激に減少している場合に当てはまる。今回の場合は、 2叶m付近では、転位はなだらかに減少しており転位による緩和は考えにくい。むしろ、 次章で詳しく述べるように、EPD低減としては効果がないように見えるが、SLS挿入に ょりⅠ㌦層め光学的特性が大きく改善していることから前者の理由が当てはまると考え られる。 7-3-3 Ⅹ線回折 Ⅰ㌦膜厚2トm(図中▲印)と5けm(図中●印)の場合における、(400)2結晶Ⅹ線 ロッキングカーブ半値幅の熱処理回数依存性を図7-7に示す。Ⅹ線ロッキングカーブ 半値幅は、InPエビ/GaAs基板界面及びInP層の結晶性を示すものである。InP膜厚によ らずTCAを施した回数を増やすことにより、半値幅は減少し4回で飽和する。Ⅰ㌦膜厚 5pmの半値幅は、InP膜厚2pmのサンプルと比べて狭い。半値幅のTCA処理回数依存性 の傾向は、EPDのTCAを施した回数依存性とほぼ同じ傾向である(図7-4参照)。しか し、TCAを1回施してもEPDは変化しないが、半値幅は減少している。このことは、1 回のTCAはInP/GaAs界面の点欠陥低減に効果あると考えている。これについては次節で 議論する。InP膜厚5pmでTCAを4回施して得られた半値幅(134arcsec)は、世の中で 報告された中でもっとも小さい値である。このことは、TCAが転位低減及びInP/GaAs 界面の結晶性改善に効果あること示唆している。 -134- Wエビ 十 GaAs基板 図7-6 血Pエビ/GaAs基板界面の断面TEM像 0 l I (.U。SU岳) 0 hP膜厚2〃m 0 璧型叶ヘー製缶亙渡米 0 Ⅰこ議痘5〃m」 0 0 _,【「▼▼__【_Ⅵ_____ニ t l 4 8 熱処理回数 図7-7 (回) Ⅹ線回折ピーク半値幅の熱処理回数依存性 ■印はhP膜厚2〃mのサンプル、 ●印はhP膜厚5〃mのサンプル -136- SLSを挿入した場合、EPDは減少するがSLSの歪みにより半値幅は減少しない。 7-3-4 4.2KP L 図7-8にInP膜厚5pmのas-grOWnサンプル(点線)とTCAを1回施したサンプル(実 線)の4.2KでのPLスペクトルを示す。TCAを施す回数を増加させても、実線に示す スペクトル形状は変化しない。1.419eV及び1.421eVはバンド端発光で、1.379eV及び 1.383eVは不純物に関与した発光である。これらの値は、TCAの有無で変化しない。バ ンド端発光ピーク半値幅は、1.9meVとⅠ㌦基板上のInP結晶のものと同等である。また、 バンド端発光ピーク強度は、TCAにより強くなる。 バンド端発光ピーク波長は、InP基板上のInP結晶のものより3meV高エネルギー側に シフトしている。このシフトは、InPに働いている圧縮応力によるものであり変形ポテ ンシャルモデルを用いて見積もることができる(19)。エネルギーシフト量△Eは、 △E =(-2a(Cll-C12)/Cll-b(Cll+C12)/Cll)E = 3.68 (7-1) ∈ で与えられる(9)。ここでCijは弾性率、aは静水庄下における変形ポテンシャル、bは 2次元的に均一な歪みがかかっている場合の勢断変形ポテンシャル、∈は歪み量である。 歪み量EはInPとGaAsの熱膨張係数差(△α=1.2xlO,6K-1)から E=△α・△T=6.9Ⅹ10 (7-2) 4 となり、このとき△Eは、(7-1)式から2.6meVとなる。この値は、図7-9で示し たバンド端発光ピークシフト量とほぼ一致する。すなわち、このバンド端発光ピークシ フトは、InPとGaAsの熱膨張係数差に起因するものである。 as-grOWnサンプルには、1.403eV付近に半値幅の広い発光が観測される。この発光は、 TCAを施すと消滅している。この発光の起因を調べるために、種々のInP膜厚のサンプ ルを4.2KでPL測定を行なった(卸)。図7-9に、aS-grOWnサンプル(図中○印)及び TCAを1回施したサンプル(図中△印)における、バンド端発光ピーク強度に村する l.403eV帯ピークの相村強度のInP膜厚依存性を示す。aS-grOWnサンプルの1.403eV帯ピ ークの相村強度は、InP膜厚が厚くなるに従って弱くなり膜厚4pmで飽和する。TCAを 施したサンプルの1.403eV帯ピークの相村強度は、aS-grOWnサンプルのものと比べて1 桁以上弱く、InP膜厚が厚くなるに従って急激に減少し、約2ドmでほぼ完全に消失して いる。aS-grOWn及びTCAを施したサンプルとも膜厚が厚くなるほど、すなわち、表面か ら入射するレーザ光によりInP/GaAs界面の情報が得られにくくなるほど相対強度は弱 くなる。 図7-4に示したEPDの熱処理回数依存性では、1回のTCAではEPDは減少していない -137- (.コ.巾)トヒSN山トN-」d 860 880 900 WAVELENGTH(nm) 図7-8InP膜厚5FLmのサンプルの4.2KPLスペクトル 点線はas-grOWn、実線はTCAを1回施したサンプル -138- 920 4.2K (¢l\トこ l >ヒSN山トNlJd-00-トく∝ 10 5 1nP THICKNESS (pm) 図7-91.403FLm帯4.2KPLピーク相村強度のInP膜厚依存性 ○印はas-grOWn、△印はTCAを1回施したサンプル 一139- ことからⅠ山)バルク結晶の転位は減少していない。また、図7-7に示したⅩ線ロッキン グカーブ半値幅の熱処理回数依存性では、1回のTCAでⅩ線ロッキングカーブ半値幅は 減少していることから、InP/GaAs界面・InPバルクの結晶性が向上したと考えられる。 これらEPD・Ⅹ線ロッキングカーブ半値幅・PL特性の熱処理回数依存性から、この 1.403eV帯発光は転位以外の点欠陥であり、TCAにより消失するかInPとGaAs界面近傍 に閉じこめられるものと考えられる。そして、InP結晶における最も低いエネルギーで 発光するアクセプタ準位より低エネルギー側で発光が観測されことから、点欠陥による 深いドナー準位に関するものと考えられる。これまでにも、VPE法により結晶成長した Ⅰげ層や多結晶Ⅰ㌦層たおいて1.4eV付近に半値幅の広い発光が観測されており(21 23)、さ らにこの発光は炭素やマグネシュウムのイオン注入もしくは熱処理によって消失すると いう報告がある(24)。このことは、上記の考察を支持するものである。 図7-10にバンド端発光強度のEPD依存性を示す。TCAのみの場合、InP膜厚を2∼ 7pmに厚くしてEPDを1xlO8cm.2から3xlO7血2に低減しても、発光強度はあまり強く ならない(図中▲印)。一方、TCAとSLSを組み合わした場合の発光強度は、EPDの減 少とともに強くなりEPDが5xlO7cm.2より低下するとさらに急激に強くなる(図中●印)。 ここで、E和が1Ⅹ107皿 2のものは、叫mの位置にSLSを挿入し、それ以外は2トmの 位置にSLSを挿入したサンプルを用いて測定した。EPD3xlO7cm,2で発光強度を比較す ると、SLSを挿入したサンプルの発光強度は、TCAのみのサンプルのものより7倍強い。 また、EPDを1xlO7cm 2まで低減したサンプルの発光強度は、InP基板上のInP結晶のも のと比較してほとんど遜色のないものが得られている。このことは、SLSは転位低減の みならずEPDでは評価できない非発光再結合中心低減にも効果があることを示している。 7-4 まとめ 熱処理を施しIn。.,Ga。..P/InP(各膜厚10nm、5周期)歪み超格子挿入することが、 GaAs基板上のInP結晶性改善のために効果があることを確認した。エッチピット密度は 7xlO7cm-2から1xlO7cm-2まで低減し、2結晶Ⅹ線ロッキンカーブ半値幅は220arcsecから 134arcsecまで低減することを確認した。また、バンド端発光強度はInP基板上のInP結晶 のものと比較してほとんど遜色のないものを実現した。これらの結果は、GaAs基板上 のInP結晶は、OEIC適用可能なことを示している。 -140- 「コ.ヱトヒSN山ト≡」d父N.寸 5 E 図7-10 P D 10 xlO7(cm-2) バンド端発光強度とEPDの関係 ▲印はTCAを4回施したサンプル、 ●印はTCAとSLSを組み合わせたサンプル -141- 参考文献 (第7章) (1)s.J.J.Teng,J.M.BallingallandF.J.Rosenbaum,Appl.Phys.Lett.48(1986)1217. (2)M・K・Lee,D・S・WuuandH.H.Tung,J.Appl.Phys.62(1987)3209. (3)M・Razeghi,R.BlondeauandJ.P.Duchemin,Inst.Phys.Conf.Ser.74(1984)697. (4)H・Horikawa,Y.Ogawa,Y.KawaiandM.Sakuta,Appl.Phys.Lett.53(1988)397. (5)M・YamaguChi,A.YamamOtO,M.Tachikawa,Y.ItohandM.Sugo, Appl.Phys.Lett.53(1988)2293. (6)T.Nishimura,K.Mizuguti,N.HayafujiandT.Murotani, Jpn.J.Appl.Phys.26(1987)Ll14l. (7)D.Huang,S.AgarwalaandH.Morkc,Appl.Phys.Lett.54(1989)51. (8)A.Suzuki,T.Ito,T.Terakado,K.Kasahara,K.Asano,Y.Inomuto,H.Ishinara, T・TorikaiamdS,Fujita,Electron.Lett.23(1987)954. (9)A・YamamOtO,N.UchidaandM.Yamgushi,Optoelectro.-DevicesandTech.1(1986)41. (10)M.K.Lee,D.S.WuuandH.H.Tung,Appl.Phys.Lett.50(1987)1725. (11)N・Yoshida,T・Kimura,K・Mizuguchi,Y.Ohkura,T.MurotaniandA,Kawagishi, J.CrystalGrowth 93(1988)832. (12)N・Yoshida,T.Kimura,N.KanenO,K.Mizuguchi,A.TakemotoandT.Murotani, Inst・Phys・Conf・Ser・NolO6Chapter3(1989)135. (13)T・Kimura,N・Hayafuji,N.Kaneno,N.Yoshida,M.Tsugami,K.Mizuguchiand T・Murotani,Inst・Phys・Conf・Ser.NolO6Chapter3(1989)105. (14)木村、吉田、水口、室谷, 1989年春季応用物理学関係連合講演会(第36回),2p-ZM-3(1989). (15)木村、早藤、吉田、津上、水口、室谷, 1990年春季応用物理学関係連合講演会(第37回),31a-S-7(1990). (16)A.HuberandN.T.Linh,J.CrystalGrowth29(1975)80. (17)N・Hayafuji,M.Miyashita,T.Nishimura,K.Kadoiwa,H.KumabeandT.Murotani, Jpn.J.Appl.Phys.29(1990)237l. (18)T・Kimura,T・Kimura,E・Ishimura,F.Uesugi,M.Tsugami,K.Mizuguchi andT・Murotani,J.CrystalGrowth107(1991)827. (19)F.H.PollakandM.Cardona,Phys.Rev.172(1968)145. (20)N・Hayafuji,T・Kimura,N・Yoshida,N.Kaneno,M.Tsugami,K.Mizuguchi, T・MurotaniandS・Ibuki,Jpn.J.Appl.Phys.28(1989)L1721. (21)J.U.Fischbach,G.Bens,N.StathandM.H.Philkuhn, SolidStateCommun.11(1972)725. (22)B・J・Skromme,T.S.Low,T.J.Roth,G.E.Stillman,J.K.KennedyandJ.K.Abrokwah, J.Electron.Mater.12(1983)433. (23)0.Aina,M.Mattingly,S.SteinhauserandR.MariellaJr., J.CrystalGrowth92(1988)215. -142- (24)B.J.Skromme,G.E.Sti11man,J.D.OberstarandS.S.Can, J.Electron.Mater.13(1984)463. ー143- 第8章 GaAs基板上の1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ 及びInGaAsPINフォトダイオード 8-1 はじめに 前章で示したように、熱処理(TCA)を施しIn。.,Ga。.1P/InP歪み超格子を挿入すること によりGaAs基板上のInP結晶性は大きく改善された。このInPバッファ層(膜厚約7pm) 上に光デバイスを作製してOEICを実現する場合、光デバイス全体の層厚がデバイス特 性上最低5匹m必要なことから、GaAs基板表面から光デバイス最表面までの高さは12pm 近くなる。プロセス及びデバイスの信頼性の観点から、電子デバイスを形成するGaAs 基板表面と光デバイス最表面の段差はできるだけ小さくした方がよい(1)。そのため、 InPバッファ層をできるだけ薄くして段差を小さくする必要ある。 そこでこの章では、まずInPバッファ層厚を薄くした時の転位の歪み超格子構造依存 性について述べる。次に、転位低減InPバッファ層付GaAs基板上に、MOCⅥyLPEハイブ リッド成長法によって1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ及びVPE法によってInGaAsPINフォ トダイオードを作製し、それぞれのデバイス特性について述べる。 8-2 GaAs基板上へのInP層の成長 GaAs基額上へのInP層の成長条件及び成長シーケンスは、前章で述べたものと同じで ある。ただし、1層目のInP膜厚及び2層目のInP膜厚は共に2pmとし、InPバッファ層 厚全体を5叶mとした。薄い層厚で転位を低減する目的で、歪み超格子(SLS)の歪方向 (圧縮:+方向、引っばり:一方向)及び歪量を変えることを検討した。SLSとして In。.63Gq,.3,As/InP,In。.,,Gq,,2,As/InP,ln。,,Ga。,1P/InP,GaAs/InPの4種類について調べた。 表8-1に、4種類の材料及び組成の違ったSLSの歪み量とSLSを挿入したサンプルの 表面のEPDを示す。aS-grOWnとTCAのみを4回施したサンプルの表面のEPDも比較ため に示す。なお、サンプル層厚は、全て5pmである。In。,6,Ga。..3,As/InP(歪み量:7.2xlO 3) とIn。.,Ga。.1P/InPSLS(歪み量:-7.2xlO,3)を挿入したサンプルのEPDは、3xlO7cmJ2程 度である。これは、TCAのみを施したサンプルのものと同程度である。圧縮(+方向) でも引っばり(一方向)歪でもEPDには差がないことから、SLSにより転位を曲げる効果 には歪の方向に差がないと言える。SLSの歪み量7.2xlOT3は、GaAs/Si系のEPD低減に用 いられているIn。.,Ga。..As/GaAsSLSと同じ歪み量である(2,3)。In。,,,Ga。,2,As/InPSLS(歪 み量:1.4xlO-3)を挿入したサンプルのEPDは、6xlO7cm 2であり歪み量7.2xlO.3のサンプ ルより増加している。この値は、aS-grOWnのものと同等である。GaAs/InPSLS(歪み量: -3.8x灯3)を挿入したサンプルのEPDは、表8-1で比較したサンプルの中でもっと多い -144- 表8-1 4種類の歪み超格子構造の歪み量とそれらの歪み超格子を挿入したサンプルのEPD 比較のためにas-grOWnサンプルとそのサンプルをTCA4回施したサンプルのEPDも示す。 なお、サンプルの層厚は全て5/ノm。 歪み超格子構造 歪み量 EPD(Cm-2) Ino.63Gao.37As/InP 7.2xHr3 3.OxlO7 Ino.73Gao.27As/InP 1.4xlO-2 6.1xlO7 Ino.9Gao.1P/InP GaAs/InP aS-grOWn TCA -7.2xlO-3 -3.8xlO-2 3.8Ⅹ107 8.9xlO7 6.OxlO7 3.0Ⅹ107 8.9xlO7cm-2であった。この値は、GaAs基板に非常に近いInP層のEPDと変わらないくら い多い。SLSの歪み量を大きくしすぎるとEPDが増加する理由として、基板とエビ界面 から伝搬してきた転位をSLSにより横に曲げることができても、SLS自身の歪み量が大 きいためにSLSの上部のInPとの界面から新たに多くの格子不整合による転位が発生して いると考えられる。 図8-1にas-grOWnのサンプルとIn。.63Ga。..37As/InPSLSを挿入したサンプルのEPDの深さ 方向プロファイルを示す。In。.6,Ga。..,,AsnnPSLSを挿入したサンプルのEPDは、aS-grOWn のサンプルのものと比べて3.2xlO7cmT2ほど減少している。TCAのみを施した膜厚5pmサ ンプルのEPDプロファイルは、SLSを挿入したサンプルのものと同じである。InP表面 のEPDが同じであれば、そのサンプルのEPDプロファイルも同じである。前章の図7-3 で示したようなSLSの部分でEPDがステップ状に減少する効果は現れていない。これは、 膜厚が増えるに従ってEPDが急激に減少しているために、SLSの効果が顕著に現れなかっ たと考えられる。 図8-2(a),(b),(C)にas-grOWnのサンプル、TCAのみを4回施したサンプル並びに In。.63Ga。..37As/InPSLSを挿入したサンプルの4・2KPLスペクトルをそれぞれ示す。すべて のサンプル層厚は5pmである。前章でも述べたように、1・419eVと1・421eVはバンド端発 光、1.379eVと1.383eVは不純物による発光、1.403eVは基板界面の点欠陥による発光で ある。TCAを施すことにより、1.403eVの発光は消え1.419eV、1.421eV、1.379eV並びに 1.383eVの発光強度は、2∼3倍強くなる。SLSを挿入することにより発光強度はさらに 7倍以上強くなり、Ⅰ㌦基板上のⅠ㌦層のものと比べて約1桁弱い程度まで強くなるo sLSを挿入したサンプルのEPDとTCAのみを4回施したサンプルのものとは同程度であっ たことから、In。.63Ga。..37As/InPSLSは、EPDでは観測できない非発光中心低減に効果があ る。バンド端発光の半値幅は、1.9meVとⅠ㌦基板上のInP層のものと同等である。 これらの結果は、In。.63Ga。..3,AsnnPSLSを挿入することにより、InP層の光学的特性が改 善されたことを示している。したがって、TCAを施しIn。.6,Ga。"3,As/InPSLSを挿入した Ⅰ㌦バッファ層上に、レーザ及びフォトダイオードを試作した。 8-3 デバイス応用 8-3-11.3pm帯InGaAsP半導体レーザの作製とその特性 図8_3にレーザ構造(4)とその断面SEM写真を示す。基板として(001)p-GaAsを用 いた。TCAとSLSを用いて高品質化したInP上に、1.3pm帯長波長レーザを作製した。 GaAs基板上に約15LlmInPを成長したが、熱膨張係数差や格子定数差によるクラック発生 は見られない。無効電流制御幅は、0.2匹mと良好なレーザ構造が得られている。図8-4 に半導体レーザの作製方法を示す。MOCVD法を用いてp-InPクラツド層を5匹m成長した 後、アンドープInGaAsP活性層(膜厚0.12pm、組成1.3pm)・n-InPクラッド層(膜厚 0.5pm)を連続して成長する。p-InPクラツド層には、前節で示したように、TCAを施し ー146- (N.∈U)>トISZ山口トーd〓Uト山 1 2 3 4 InPTHICKNESS(pm) 図8-1EPDのhP膜厚分布 △印はas-grOWnサンプル、 ○印はTCAとSLSを組み合わせたサンプル ー147- 5 (.⊃.ロ)>トーSZ山トZ-」d ゞN.ヾ 860 890 WAVELENGTH(nm) 図8-2 4.2KPLスペクトル (a)as-grOWnサンプル、 (b)TCAを4回施したサンプル、 (c)TCAとSLSを組み合わせたサンプル ー148- 920 図8-3 レーザ構造図と断面SEM像 -149- (a)活性層成長(MOCVD成長) n-InPクラツド層 活性層(InGaAsP) p-InPクラツド層 p-InP転位低減層 p-GaAs基板 (b)メサ形成 (c)埋込層とコンタクト層成長(LPE成長) n-GaInAsPコンタクト層 …■……-h/一 n-InP層 ■■■■●●■●■ 埋め込み層 ll ll ●l ■ 図8-4 ー・-●……. ..…_●●ノ ◆ 半導体レーザの作製方法 -150- SLSを挿入してGaAs基板上のInP結晶性の向上を行った(図8-4(a))。微分干渉顕微鏡 での表面モフォロジー観察では、鏡面であった。Ⅹ線ロッキングカーブ半値幅は 260arcsecであり、Si基板上に成長したInP/InGaAsP(5)とほぼ同等である。 次に、Brメタノール液を用いて活性層の両側をエッチングしてメサ構造を形成する (図8-4(b))。活性層幅は2pmとした。最後にLPE法を用いてp-InP・n-InP・P-InP埋 め込み層を成長して電流狭窄構造を形成した後、続いてn-InPクラツド層・n_InGaAsPコ ンタクト層を成長する(図8-4(c))。この構造をPPIBH(p-SubstratePartial1yInverted BuriedHeterostruCture)構造(6)と呼んでいる0レーザの共振器長は、300pmとした。第 2章で述べた活性層を含む全ての層をMOCVD法で作製するFS-BH構造は、当時実用化 されていないため従来方法であるMOCⅥyLPEハイブリッド成長法を用いてレーザを作 製した。 試作したGaAs基板上(図中実線)のレーザの電流一電圧特性を図8-5に示す。図8 -5には、同じ構造及びプロセスで作製したⅠ㌦基板上(図中点線)のレーザの電流一電 圧特性も示す。低電流領域・高電流領域とも、その特性に大きな違いは無い。順方向電 流1mA時の立ち上がり電圧は、GaAs基板上及びInP基板上のレーザでそれぞれ0.79V、 0.82Vであり、pn接合状態に両者の差は見受けられず良好なダイオードが形成されて いる。 注入電流Ⅰの印加電圧Ⅴ依存性は、 I∝exp(qV/nkT) (8-1) で表わされる。ここで、nは定数である。注入キャリア濃度が注入励起領域の多数キャ リアとほぼ等しい時は、nは2となる。図8-5からレーザ発振直前のバイアス領域に おけるnを求めると1.95となりほぼ理論値と一致する。 図8-6に光出力一往入電流特性を示す。GaAs基板上のレーザとして、世界で初めて 室温連続発振に成功した。しきい倍電流は31mAで、スロープ効率は0.2mW/mAである。 測定中にSi基板上のGaAsレーザで見られるような急激な劣化は無く(7)、安定に動作し た。′なお、図中には比較のため、InP基板上に作製した同じ構造のレーザ特性について も合わせて示す。しきい値電流は17mAで、スロープ効率は0.25mW/mAである。GaAs基 板上のレーザのしきい値電流は、InP基板上のものとほぼ2倍程度高い。 これは、転位による活性層内での非発光再結合過程の増加と共振器内損失の増加によ るものと考えられる。そこで、基板の違いによるしきい値電流の違いについて考察する。 しきい倍電流は、次式で表せられる(8)。 Ⅰ∝丁 1(α+(1/L)1n(1/R)) (8-2) ここで、丁,α,L,Rは、それぞれ注入キャリアのライフタイム,共振器内損失,共振 器長(=300〃m),端面反射率(≒30%)である。 注入キャリアのライフタイムは、パルス電流を変化させた時の発振遅れ時間から求め -151- (く) (トN山∝∝⊃U)ロ〇一 1 0.5 VOJTAGE(V) 図8-5 電流一電圧特性 -152- 1.6 (き∈〓迅≧Odト⊃dト⊃○ 5 4 3 2 一】l 50 CURRENT(mA) 図8-6 光出力一往入電流 -153- 100 ることができる。InP基板上のレーザでl.8nsであるのに対して、GaAs基板上のレーザで は1.1nsと短い。これは、活性層内に存在する転位がキャリアの非発光再結合の割合を 増加させ、その結果ライフタイムが短くなったと考えられる。ライフタイムは、 T.1=T,,1+T。,-1 丁 1=rr 1+r。r 1+丁。 1 (InP基板) (8-3) (G払s基板) (8-4) で表せられる。ここで、Tr,Tnr,丁。は、それぞれ発光再結合,非発光再結合,転位に よる再結合ライフタイムである。(8-3)式と(8-4)式のTr,r。rが、基板によらず 同じであるとするとr。は2.8nsとなる。 一方、外部微分量子効率の共振器長依存性から共振器内損失を見積もると、InP基板 上のレーザで18cmTlであるのに村して、GaAs基板上のレーザでは25cmTlと1.4倍大きい。 共振器内損失の要因として、活性層内における自由キャリア吸収損失が考えられる。し かし、しきいキャリア濃度は、InP基板上のレーザでは2.7xlO18cm-3でGaAs基板上のレー ザでは3.OxlO18cm 3とほとんど変わらない。従って、しきいキャリア濃度による自由キャ リア吸収損失では説明できない。活性層内の転位が共振器内損失を増加させていると考 えられるが、その機構については現在不明である。 以上の結果を基に、(8-2)式からしきい値電流の比(GaAs基板上のレーザ:InP基 板上のレーザ)を求めると1.8倍となり図8-7で示したしきい値電流の比とびったり 一致する。従って、しきい値電流の増加は、転位による活性層内での非発光再結合過程 の増加と共振器内損失の増加によるものであると言える。 図8-7に通電試験結果を示す。室温で光出力3mW時の駆動電流Iopの変化を表してい る。通電直後の急激な劣化は見られず、Iopは緩やかに上昇し90時間経過後約20%,60% 増加した。これは、通電によって転位が増殖していると考えられる(9)。転位密度が 1xlO7cmJ2以上あるにもかかわらずに急激な劣化が見られないのは、InGaAsP系半導体レ ーザは室温付近での転位の成長速度が遅い(10)ことと関係があるといえる。 8-3-2InGaAsPINフォトダイオードの作製とその特性 図8-8にInG払sPINフォトダイオード構造(11)とその作製方法を示す。基板として( 001)2O offn-GaAsを用いた。まず、MOCVD法を用いてTCAを施しSLSを挿入したn-InP 層を5けm成長する。次に、VPE法を用いてアンドープⅠ㌦バッファ層(膜厚2トm)・ア ンドープInGaAs光吸収層(膜厚3.5pm)・n-InP窓層(膜厚1.8pm)を連続して成長する (図8-8(a))。SiN膜を成膜した後、直径80pmの穴をあける(図8-8(b))。最後にそ の穴を通してZn拡散を行い、プレーナ型フォトダイオードを作製した(図8-8(C))(12)。 図8-9に暗電流と逆方向印加電圧の関係を示す。-10V時の暗電流は30m互であり、 GaAs基板上のInGaAsPINフォトダイオードとしては世の中で最も少ないものである。し かし、同時に作製したInP基板上のフォトダイオードの暗電流よりは、約3桁ほど多い。 -154- (く∈) 5 d〇一 --∽∽- 50 AGING 図8-7 TIME 通電試験結果 100 (hrs) (a)吸収層成長(VPE成長) n-InP窓層 n-InGaAs吸収層 n-InPバッファ層 n-InP転位低減層 n-GaAs基板 (b)zn拡散マスク形成 (c)zn拡散 図8-8 PINフォトダイオード構造とその作製方法 -156- 10-4 10-6 (く)トN山∝∝⊃U】弄⊇占 10 0 ■l 8 ■ + ■l 0 10-12 0 -20 -40 -60 -80 REVERSEDBJASVOLTAGE(V) 図8-9 暗電流と逆方向印可電圧の関係 -157- -100 これは、空乏層内に存在するトラップ(点欠陥・転位・積層欠陥等)を介して発生する 発生電流によるものと考えられる(13)。図8-10に印加電圧-1Vと-20Vでの外部微分量 子効率を示す。波長が長くなると-1Vでは効率は落ちるが、入射光波長1・0∼1・叫mの波 長範囲で量子効率は70%を越えている。入射光波長1.3pmにおけるGaAs基板上のフォト ダイオードの外部微分量子効率は85%以上で、Ⅰ㌦基板上のものと同等のものが得られ た。 ここで、GaAs基板上のフォトダイオードにおいて、転位密度が1xlO7cm-2以上あるにも かかわらずに高い量子効率が得られる理由を考える。動作電圧を印加すると、InGaAs層 全体に空乏層が広がる。量子効率は、入射光により空乏層内で励起されたキャリアのう ち、電界で移動する際に再結合することなく電流に寄与したキャリアの割合に依存する。 電子の移動度は、ホールに比べて1桁程度大きいため、量子効率はホールの寿命で決ま る。GaAs基板上のInGaAs層中の拡散長は約3pmである(ll)ことから、空乏層内でのホ ールの寿命は、アインシュタインの関係式から8.2xlO-9sec見積もれる。一方、ホールが 空乏層内を通過する時間は、飽和ドリフト速度(4.5x106cm/s)(14)から6.7xlO.11secと見 積もれる。従って、空乏層内を通過する時間はホールの寿命より2桁ほど小さく、ホー ルの再結合による減少は無視できる。以上のことから、GaAs基板上のフォトダイオー ドにおいて、高い転位密度があるにもかかわらずに高い量子効率が得られる 175℃で-10Vの条件で、通電試験を行った結果を図8-11に示す。室温での暗電流の 増加は、100時間を越えても1nA以下であった。これらの結果は、GaAs基板上のフォト ダイオードが実用可能なことを示している。 以上の結果を踏まえて、受信用OEICを作製した。受光層には上記フォトダイオード、 能動層にはGaAsのFET(15)並びに負荷抵抗をそれぞれ1素子づつ同一GaAs基板に集積し た。OEICのチップサイズは、500x800pm2である。PDの受光径の直径は50pm、FETのゲ ート長は■1岬、ゲート幅は40叫mであり、ゲート抵抗は1krユである。 OEICとしての-3dB帯域幅は、約1.4GHzであり、加入者系通信システムに想定される 620MHz帯の用途には、十分な周波数特性が得られた。符号誤り率は-28.1dBmで、GaAs 基板上の長波長受信用OEICとして初めて実用レベルの受信特性が得られた(1)。 8-4 まとめ GaAs基板上に熱処理を施しIn。.6,Ga。.,,As/InP(各膜厚10nm、5周期)歪み超格子挿入し たInPパフア層の上に1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ及びInGaAsPINフォトダイオードを 作製した。半導体レーザは、室温連続発振に成功し、しきい値電流及びスロープ効率は それぞれ31rnA及び0.2mW/mAであった。フォトダイオードの-10V時の暗電流は30nAで あった。これらの結果は、GaAs基板上のInP系光デバイスには、熱処理及び歪み超格子 の挿入したInPパフア層による転位低減が有効であること示している。 -158- (誉 100 トリN】-U-辻】‡⊃トNく⊃ロ --∽∽- 1.0 1.2 1.■ WAV【L【NG丁目(■m) 図8-10 外部微分効率の波長依存性 1.も 10 00 (くU)トZ山∝∝⊃0 100 --の○- 〕善吉d 1 AG(NG 図8-11 TIME 通電試験結果 (h) 参考文献 (第8章) (1)Y.Mihashi,K.Goto,E.Ishimura,M・Miyashita,T.Shimura,H.Nishigushi, T.Kimura,T・Shiba,andE.Omura,Jpn・J・Appl.Phys.33(1994)2599. (2)N.Hayafuji,M.Miyashita,T.Nishimura,K.Kadoiwa,H.KumabeandT.Murotani, Jpn.J.Appl.Phys.29(1990)2371. (3)T.Nishimura,K.Mizuguti,N.HayafujiandT.Murotani, Jpn.J.Appl.Phys.26(1987)Ll141. (4)上杉、木村、川間、大村、浪崎, 1989年秋季応用物理学関係連合講演会(第50回),29p-ZG-3(1989). (5)M.Razeghi,M.Defbur,R.Blondeau,F.Omnes,P.Maurel,0.Acher,F.Bri1louet, J.C・C-FanandJ.Saiern0,Appl.Phys・Lett.53(1988)2389. (6)A.Takemoto,Y.Sakakibara,Y.Nakqiina,M.Fujiwara,S.Kakimoto,H.Namizakiand W.Susaki,Electron.Lett.23(1987)546. (7)J.P.vanderziel,R.D.Dupuis,R.A.LeeganandC.J.Pinzone, Appl.Phys.Lett.51(1987)89. (1984). (8)米津宏雄,"光通信素子工学" (9)E.Omura,H.Uesugi,T.Kimura,Y.KawamaandH.Namisaki, Electron.Lett.25(1989)1718. (10)M.Fukuda,K.WakitaandG.Iwane,J.Appl.Phys.54(1983)1246. (11)木村、木村、吉田、石村、水口、浪崎, 1989年秋季応用物理学関係連合講演会(第50回),29a-ZM-6(1989). (12)T.Mikawa,S.KagawaandT.Kaneda,F叫jitsuSci.Tech.J.20(1984)201・ (13)E.Ishimura,T.Kimura,T.Shiba,Y.MihashiandH.Namisaki, Appl.Phys.Lett.56(1990)644. (14)M.DetaiandB.D.Cremoux,J.LightwaveTech.8(1990)1137. (15)s.M.Sze,一一PhysicsofSemiconductorDevices一'(1981)348,JhonWiley&SonsInc. -161- 結論 第9章 膜厚の制御性にすぐれ高均一でかつ異種基板への成長可能なMOCVD結晶成長技術を 用いたInP系化合物半導体結晶成長及び半導体レーザの高性能化・量産化・多機能化を 中心に研究を行った。本章では、各章の要点及び本研究により得られた結果を以下にま とめる。 第1章 序論 (1)多くの情報を高速に伝送できる光通信は、高度情報化社会を支える通信のイン フラとして重要な技術であり、これを実現するためには種々のInP系長波長(1.3 〃m∼1.55〃m)半導体レーザが必要であることを述べた。 (2)この要求に答えるためには、従来のLPE法に代わって制御性・均一性に優れた MOCVD法を用いて活性層を含む全ての層を成長する技術が重要であることを述 べた。 (3)高速複合光デバイス作製おける技術的課題として、拡散しにくいp型ドーバン トを用いかつ遷移金属を用いずに高抵抗層を得ることが重要であることを述べた。 (4)InP系光デバイスとGaAs系電子デバイスを同一基板上にモノリシックに集積し たOEIC作製における技術的課題として、GaAs基板上に高品質化したInP結晶を成 長することが重要であることを述べた。 第2章 MOCVD法による埋め込み成長機構の半導体レーザへの応用 (1)■ウェットエッチングで形成しだ-富士山状‖のなだらかな側面を持つメサを用い て、MOCVD法による選択埋め込み成長中にメサ側面に特定の成長面が現われる こと及びその成長面上の結晶成長速度がメサ底面の結晶成長速度と違うことを見 出した。 (2)この選択埋め込み成長機構を利用し、従来のLPE法による埋め込みレーザ構造 では極めて困難であった無効電流経路幅を狭くしかつ再現性良く制御できFS-BH レーザ構造の開発に成功した。 (3)FS-BHレーザは、活性層及び埋め込み層をすべて成長膜厚の均一性・制御性に 優れたMOCVD法を用いているので、設計通りのレーザ構造を2・3インチ≠Ⅰ㌦ 基板上に再現性良く作製すること可能にした。 (4)埋め込み成長前の表面処理方法を改善して再成長界面の不純物を低減した。 第3章 仝MOCVD成長による半導体レーザの特性 (1)p基板上にMOCVD法を用いて再現性良く作製したFS-BHレーザは、無効電流経 路幅を0.1∼0.2〃mと狭く制御することができるため、低しきい値電流でかつ高 均一な特性が得られた。 ー162- (2)無効電流を低減し、200mWを越える高出力レーザを実現した。さらに、50℃、 100mWで3000時間以上の安定動作を確認した。 (3)活性層を含む全ての層をMOCVD法で成長した長波長半導体レーザを世界で初 めて実用化した。 第4章 BeドープInP結晶成長 (1)Be供給量に比例してBe濃度は1xlO19血 リア濃度は2.OxlO18cm 3付近まで増加するのに対して、キャ 3まで増加し(Beの活性化率ほぼ100%)、それ以上ではキャ リア濃度は飽和することを明らかにした。 (2)InP層中のBeの不純物準位は、21.3meVとZnの不純物レベル34.OmeVより浅いこ とを示した。 (3)BeドープInP層のフォトルミネッセンスのピーク発光強度は、アンドープInP層 より1桁弱くキャリア濃度2xlO1800l 3以上になるとさらに弱くなり、この傾向は ZnドープInP層のものと同等であることを確認した。 (4)アンドープInGaAsP/Be-InP構造におけるアンドープInGaAsP層へのBeの拡散は、 ほとんど観測されずZnの拡散と比べて非常に小さいことを確認した。 第5章 高抵抗AlInAs結晶成長 (1)成長温度を下げるとアンドープ刃InAs層の抵抗率は増加し、成長温度500℃で抵 抗率1×105ncm以上のアンドープ刃IhAs高抵抗層が得られた。 (2)'高抵抗化メカニズムとして、AlInAs層中に①深いドナー準位が存在し、深い準 位およびその濃度は成長温度に依存せず一定であり、②浅いアクセプター濃度が 成長温度を下げるに従い増加していることにより、成長温度を下げるに従い増加 する浅いアクセプターが上記深いドナーを補償し、フェルミレベルがバンド中央 付近まで下がるためであることを提案した。 第6章 高抵抗AlInAs層の半導体レーザ埋め込み層への適用 (1)成長温度500℃という低温で刃InAs層をした場合、SiO2マスク上をリンがターミ メイトすることにより成長種の表面マイグレーションを促進し多結晶が付着しな いことを確認した。 (2)p-InP/n-InP/undopedAIInAs/n-InP構造における抵抗率は、2xlOlOncmと非常 に高いことを示した。 (3)この多層構造をレーザの電流狭窄構造に適用した結果、室温連続発振において しきい値電流8mA・スロープ効率0.11mW/mAの良好な特性が得られた。 第7章InPonGaAs結晶成長 (1)熱処理を施しIn。.,Gq,.1P/InP(各膜厚10nm、5周期)歪み超格子挿入すること により、GaAs基板上のInP結晶性が改善することを確認した。 (2)この結晶性改善によりInP層のエッチピット密度は7xlO7cmL2から1xlO7cm.2まで低 ー163- 滅し、かつ2結晶Ⅹ線ロッキングカーブ半値幅は220arcsecから134arcsecまで低 減することを確認した。また、4.2KPLにおけるバンド端発光強度は、Ⅰげ基板上 のInP結晶のものと比較してほとんど遜色のないものが得られた。 第8章 GaAs基板上の1.3pm帯InGaAsP半導体レーザ及びInGaAsPINフォトダイオード (1)GaAs基板上に熱処理を施しIn。.6,Ga。.,,As/InP(各膜厚10nm、5周期)歪み超格子 挿入したInPパフア層の上に作製した1.3Llm帯InGaAsP半導体レーザは、世界で初 めて室温連続発振に成功し、しきい倍電流及びスロープ効率はそれぞれ31mA及 び0.2mW/血Aが得られた。 (2)Ⅰ㌦基板上のレーザと比べてしきい値電流が大きい原因は、転位による活性層 内での非発光再結合過程と共振器内損失の増加によるものと考えられる。 (3)GaAs基板上に作製したInGaAsPINフォトダイオードでは、世の中でもっとも少 ない暗電流(@-10V)30nAが得られた。通電試験を行った結果、室温での暗電流 の増加は100時間(@175℃、-10V)を越えても1nA以下であり、GaAs基板上のフォ トダイオードが実用可能なことを示した。 -164- 謝 辞 本論文を結ぶにあたり、終始懇切なる御指導と御鞭撞を賜わりました名古屋工 業大学副学長(教授)梅野正義博士に深く感謝し、心から御礼申し上げます。 本論文に閲し、懇篤なる御検討を戴きました名古屋工業大学極微構造デバイス 研究センター教授(センター長)神保孝志博士、名古屋工業大学工学部電気 情報工学科教授中嶋堅志郎博士に厚く御礼申し上げます。 本研究論文執筆の機会を与えて戴くとともに、御指導と御鞭捷を賜わりました 三菱電機株式会社光・マイクロ波デバイス開発研究所所長坪内夏朗博士、同前 所長三井茂博士(現ADI社長)、所長室主管技師長高宮三郎博士、光デバイス 開発部部長樋口英世博士、光素子プロジェクトグループリーダ相賀正夫博士 に厚く御礼申し上げます。 本研究の遂行にあたり重要な示唆と御指導を戴きましたRSS技術第一部部長 室谷利夫博士、高周波素子事業統括部高周波素子製造部次長園田琢二博士、 光・マイクロ波デバイス開発研究所光デバイス開発部材料技術グループマネー ジャ三橋豊博士に御礼申し上げます。 また、有益な討論と技術的な御協力を戴いた光・マイクロ波デバイス開発研究 所〃波システムデバイス開発部新素子グループ主幹吉田直人博士、エビプロ セス技術グループ主幹早藤紀生博士、〃波デバイス開発部レーダシステムデバ イスグループ石田多華生民、光デバイス開発部設計技術グループ主事武本彰 氏、主事石村栄太郎氏、松本啓資氏、プロセス技術グループ○主事越智誠司氏、 多田仁史氏、材料技術グループ0川津喜平氏、、故上杉文人氏、太陽光発電事 業開発センター主幹水口一男氏、高周波素子事業統括部高周波素子製造部歩 留り向上プロジェクトグループ主幹津上眞理氏、藤井就亮氏、事業企画グルー プ主事木村忠氏、ウェハ製造第二課主幹金野信明氏、光素子プロジェクトグ ループ光素子開発推進グループマネージャ西村隆司博士、光素子設計グループ マネージャ大村悦司博士、光素子プロセスグループ主事大倉裕二氏はじめ光・ マイクロ波デバイス開発研究所の関係各位に心から感謝致します。 -165- 研究業績一覧 [論文] (1)N.Yoshida,T.Kimura,K.Mizuguchi,Y.Ohkura,T・MurotamiandA,Kawagishi:1' ExtremelyLowThresholdInGaAsP/InPDFBLaserbyMOCVD/LPEHybridProcess'', J.CrystalGrowth,Vol・93,PP832-837(1988)・ (2)A.Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,T.Kimura,N・Yoshida,S・KakiTnOtOand S.Susaki:"1・3pmDistributedFeedbackLaserDiodewithGratlngAccuratelyContro11ed byNewFabricationTechmique.一,Electron・Lett・,Vol・25,PP220-221(1989)・ (3)T.Kimura,N.Hayafuji,N.Kaneno,N.Yoshida,M・Tsugami,K・Mizuguchiand T.Murotani:一一ImprovementofInPCrystalQualityonGaAsSubstratebyThermalCyclic ArmealingandStrained-layerSupperlatticeH,Inst・Phys・Conf・Ser・NolO6Chapter3, pplO5-110(1989)・ (4)N.Yoshida,T.Kimura,N.Kaneno,K.Mizuguchi,A・TakemotoandT・Murotani: ‖MOCVDGrowthofInGaAsP/InPQWStruCtureSanditsApplicationtoDFBLaser'', Inst.Phys.Conf.Ser.NolO6Chapter3,PP135-140(1989)・ (5)A.Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,Y・Nakqiima,T・Kimura,N・Yoshida, S.KakimotoandS.Susaki‥"1・3pmDistributedFeedbackLaserDiodewithaGratlng AccuratelyControlledbyaNewFabricationTechnique",J・LightwaveTechnol・,Vol・7, pp2072-2077(1989)・ (6)N.Hayafdji,T.Kimura,N.Yoshida,N・Kaneno,M・Tsugami,K・Mizuguchi, T.MurotaniandS.Ibuki:一一ImprovementofInPCrystalQualityonGaAsSubstratesby ThermalCyclicAnnealing-1,Jpn・J・Appl・Phys・,Vol・28,PPL1721-L1724(1989)・ (7)E.Omura,H.Uesugi,T.Kimura,Y・KawamaandH・Namisaki: 一・LowThresholdCurrentl・3pmInGaAsPLasersonGaAsSubstrares'', Electron.Lett.,Vol.25,PP1718-1719(1989)・ (8)E.Ishimura,T.Kimura,T.Shiba,Y.MihashiandH・Namisaki: =DarkCurrentandDiffusionLengthinInGaAsPPhotodiodesgrwnonGaAsSubstrares'', Appl.Phys.Lett・,Vol・56,PP644-656(1990)・ (9)T.Kimura,T.Kimura,E.Ishimura,F.Uesugi,M・Tsugami,K・Mizuguchiand T.Murotmi:"ImprovementofInPCrystalQualityonGaAsSubstratesandDevice Applications一一,J.CrystalGrowth,Vol・107,PP827-831(1991)・ (10)Y.Ohkura,T.Kimura,T.Nishimura,K.MizuguchiandT・Murotani: ・・LowThresholdFS-BHLaseronp-InPSubstrateGrownbyAll-MOCVD=, Electron.Lett.,Vol.28,pp1844-1845(1992)・ (11)T.Nishimura,E.Ishimura,Y.Nakajima,H.Tada,T・Kimura,Y・Ohkura,K・Goto, -166- E.OmuraandM.Aiga:"All-MOCVDGrownBHLaserwithLowThresholdCurrrenton P-InPSubstrates",SPIE(TheSocietyofPhoto-OpticalInstrumentationEngineers) Proceedings,Vol.1849,Opt∝1ectomicInterconnects,PP272-279(1993). (12)T.Nishimura,Y.Nakqiima,T・Kimura,Y・Kokubo,K.Isshiki,E.Omura,M.juga andK.Ikeda:'tHigh-POWerandHighly-reliableOperationofAll-MOCVD-Grownl.48pn DiodeLasers",SPIE(TheSocietyOfPhoto-OpticalInstrumentationEngineers) Proceedings,Vol.1849,OptoelectonicInterconnects,PP272-279(1994)・ (13)s.ochi,T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui: t-HighResistiveundopedAl0.48Ino.52AsLayersGrownbyMOCVD=,Proceedingsofthe SixthIntemationalConftrenceonIndiumPhoshideandRelatedMaterials, pp98-101(1994). (14)′T.Kimura,S.Ochi,N.Fujii,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui: 一一HighResistivityundopedAl0.48Ino.52AsLayersGrownbyLow-temPeratureMetalorganic ChemicalVaporDeposition'',J.CrystalGrowth,Vol・145,PP963-967(1994)・ (15)T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui:'lMOVPEGrowthof BerylliumDopedInPUsingBismethylcyclopentadienyl-Beryllium,一,ExtendedAbstractsof the1994InternationalConfbrenceonSolidStateDevicesandMaterials, pp969-970(1994)・ (16)Y.Mihashi,K.Goto,E.Ishimura,M.Miyashita,T.Shimura,H.Nishigushi, T.Kimura,T.Shiba,andE・Omura:‖Long-WavelengthReceiverOptoelectromic IntegratedCircuiton3-Inch-DiameterGaAsSubstrateGrownbyInP-On-GaAs Heteroepitaxy",Jpn.J.Appl.Phys.,Vol・33,PP2599-2604(1994)・ (17)T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,Y.Mihashi,S.TakamiyaandS.Mitsui: tlMetalorganicVaporPhaseEpitaxyGrowthofBe-DopedInPUsing Bismethylcyclopentadienyl-Berylliuml一,Jpn・J・Appl・Phys・,Vol・34, ppllO6-1108(1995)・ (18)T.Kimura,S.Ochi,T.Ishida,E.Ishimura,T.Sonoda,S.TakamiyaandW・Susaki: ''Undoped叫,..8In。.52AsGrownbyMetalorgamicChemicalVaporDepositionasthe Current-brockinglayerofLaserDiodes一',J・CrystalGrowth,Vol・158,PP418-424(1996)・ [国際会議] (1)A.Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,T.Kimira,N.Yoshidaand S・Kakimoto: "1・3pmDFB-PPIBHLaserDiodeFabricatedbyANewGratingFabricationTechmique'一, OECt88,2B3-2. (2)N.Yoshida,T.Kimura,K.Mizuguchi,Y.Ohkura,T.MurotaniandA,Kawagishi: 一一InGaAsP/InPDFBLaserwithaNewGratingStruCturebyMOCVD'',IEDMT88・ ー167- (3)T.Kimura,N.hayafuji,N.Kaneno,N.Yoshida,M.Tsugami,K.Mizuguchiand T.Murotami:"ImprovementofInPCrystalQualityonGaAsSubstratebyTYlermalCyclic AnnealingandStrained-layerSupperlattice",16thInternationalSymposiumon GalliumArsemideandRelatedCompounds,Karuizawa(1989). (4)A.Takemoto,Y.Ohkura,Y.Kawama,T.Kimura,N.Yoshida,S.Kakimoto and S.Susaki:ttl.3mDistributedFeedbackLaserDiodewithAGratlngAccuratelyControlled byNewFabricationTechmique'',OFC-89. (5)K.Mizuguchi,N.Yoshida,T.Kimura,A.Takemoto,Y.Ohkura,M・Tsugamiand T.Murotani:ttl.5m MQW-DFB LaserDiode withLow ChirpandLowThreshold Current'',IEDM-89. (6)T.Kimura,T.Kimura,E.Ishimura,F.Uesugi,M.Tsugami,K.Mizuguchiand T.Murotani:一'ImprovementofInPCrystalQualityonGaAsSubstratesandDevice ApplicationsT一,5thInternationalConferenceonMetalorganic VaporPhase Aachen(1990). (7)T.Kimura,S.Ochi,N.Fujii,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui: ttHighResistivityundopedAlo.48Ino.52AsLayersGrownbyLow-temperatureMetalorganic ChemicalVaporDeposition",7thIntemationalConferenceonMetalorganicVaporPhase Epitaxy,Yokohama(1994). (8)T.Kimura,T.Ishida,T.Sonoda,S.TakamiyaandS.Mitsui:"MOVPEGrowthof Bery11iumDopedInPUsingBismethylcyclopentadienyl-Beryllium'一,the1994International ConfbrenceonSolidStateDevicesandMaterials,Yokohama(1994). [報文] (1)木村、大倉、越智、西村、室谷:"仝気相成長法による1.3〃m帯光通信用半導 体レーザの開発"1993年2月 防衛技術 pp4-6(1993). (2)木村、大倉、園田:"MOCVD法によるInP埋込み成長技術" 三菱電機技報,Vol.67,pp88-91(1993). (3)松本、西口、石村、西村、中島、多田、後藤、木村、柿本: "1.3〃m帯10ビームレーザダイオードアレイ"1992年電気通信学会研究会 OQE92-176(1992). [国内学会] (1)吉田、木村、水口、室谷、藤川:"減圧MOCVDによるInP/InGaAs量子井戸の成 長",1987年春季応用物理学関係連合講演会(第34回),28p-ZA-14(1987). ー168- Epitaxy, (2)吉田、木村、大倉、水口、室谷、川岸:"MOCVDによる超低しきい値 InGaAsP/InPDFBレーザ",1988年電気関係学会関西支部連合大会,S6-3(1988). (3)川間、武本、大倉、木村、吉田、柿本:"新しい回折格子形成技術により作製 した1.3FLm帯DFB-PPIBH-LD",1988年秋季応用物理学関係連合講演会(第49回), 6a-ZC-3(1988). (4)吉田、木村、大倉、水口、室谷、川岸:"MOCVDによる超低しきい値 InGaAsP/InPDFBレーザの作製",1988年春季応用物理学関係連合講演会(第35回), 30p-Z-17(1988). (5)木村、吉田、水口、室谷:"InPonGaAsのアニール効果", 1989年春季応用物理学関係連合講演会(第36回),2p-ZM-3(1989). (6)木村、木村、吉田、石村、水口、浪崎:''GaAs基板上に作製したInGaAsPIN PD",1989年秋季応用物理学関係連合講演会(第50回),29a-ZM-6(1989). (7)上杉、木村、川間、大村、浪崎:"GaAs基板上の低開催1.3iLmInGaAsPレーザ'', 1989年秋季応用物理学関係連合講演会(第50回),29p-ZG-3(1989). (8)木村、早藤、吉田、津上、水口、室谷:''InPonGaAsの歪超格子による転位低 減効果",1990年春季応用物理学関係連合講演会(第37回),31a-S-7(1990). (9)早藤、木村、宮下、西村、門岩、隈部、水口、室谷:''ヘテロエビタキシーに おけるストレスの影響",1990年春季応用物理学関係連合講演会(第37回), 28p-R-14(1990). (10)木村、大倉、越智、西村、水口、室谷:"MOCVD法によるId}埋め込み成長機 構",1992年秋季応用物理学関係連合講演会(第53回),18p-ZE-16(1992). (11)後藤、西村、木村、瀧口、三橋:"歪み量子井戸構造による1.3〃m帯レーザの 低しきい値化",1992年秋季応用物理学関係連合講演会(第53回), 18p-Ⅴ-3(1992). (12)西村、松本、石村、中島、瀧口、木村、相賀:''p-InP基板上仝MOCVD成長に よる長波長(1.3〃m帯)レーザの開発'',1992年電子情報通信学会秋季大会, C-139(1992). (13)松本、西口、石村、西村、中島、多田、後藤、木村、柿本:"p-Ⅰげ基板上全 MOCVD成長による1・3FLm帯10ビームLDアレイ",1993年春季応用物理学関係連合 講演会(第40回),29p-C-14(1993). (14)西村、松本、石村、中島、瀧口、木村、相賀:"p-InP基板上全MOCVD成長に ょる長波長レーザの信頼性",1993年電子情報通信学会秋季大会 C-115(1993)・ (15)西村、松本、石村、中島、瀧口、木村、一色、相賀:"p一Ⅰげ基板上全MOCVD 成長による長波長レーザの信頼性",1993年秋季応用物理学関係連合講演会 (第54回),29p-K-5(1993). (16)西村、松本、石村、中島、竹見、木村、一色、相賀:・・仝M∝Ⅷ成長による 1・48〃m帯高出力レーザの開発",199昨秋季応用物理学関係連合講演会 (第54回),29p-K-9(1993). (17)木村、石臥越智、藤井、園田、高宮、三井:・,M∝VD法による低温アンド -169- ープ〟。.48In。.52As高抵抗層",1994年春季応用物理学関係連合講演会(第41回), 31p-Ⅹ-6(1994). (18)石村、木村、宮崎、多田、瀧口、西村、相賀:"電界吸収型変調器の劣化モー ドの解析",1994年電子情報通信学会春季大会 C-222(1994). (19)宮崎、石村、川崎、木村、多田、瀧口、一色、平野:"電界吸収型変調器の C-221(1994). 2.5Gb/s変調特性",1994年電子情報通信学会春季大会 (20)石臥木村、藤井、津上、園田、高宮、三井:"Be(CH3C5H.)2を用いたInP中へ のBeドーピング",1994年秋季応用物理学関係連合講演会(第55回), 20a-MG-5(1994). (21)木村、石田、越智、石村、園田、三橋、高宮:"MOCVD成長アンドープ Al。..8In。.52As層をi層とするp-n-i-n構造の電気的特性",1995年春季応用物理学関係 連合講演会(第42回),30a-ZY-4(1995). (22)宮崎、石村、木村、青柳、久、板垣、竹見、大村、大坪:"電気的アイソレー ション向上による変調器付きDFB-LDの帯域改善",1995年電子情報通信学会春季 大会 C-346(1995). ー170-
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