資料7 三菱原子燃料株式会社の加工施設(再転換

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資料 7
三菱原子燃料株式会社の加工施設(再転換工程)の現状確認について
平成 28 年 3 月 23 日
原 子 力 規 制 庁
1.現状確認の背景と内容
核燃料施設等の新規制基準が施行された際、ウラン加工施設については、施行後 5 年
間は燃料加工の実施を妨げないとされたが、加工施設のうち、六ふっ化ウラン(以下「UF6」
という。)を正圧で扱う工程(濃縮工程の均質・ブレンディング設備及び再転換工程の UF6
蒸発・加水分解設備)については、一般公衆に著しい放射線被ばくによるリスク又は著し
い化学的影響を与えるおそれがないことを確認することとされた。(添付1参照)
これら UF6 を正圧で扱う工程のうち、前者(具体的には、日本原燃株式会社六ヶ所ウラン
濃縮工場の施設)については、平成27 年6 月17 日の原子力規制委員会に原子力規制庁
の確認結果を報告した。
一方、後者(具体的には、三菱原子燃料株式会社(以下「MNF」という。)の施設)につい
ては、MNF から提出された現状確認に関する報告書について、原子力規制庁として確認
を行い、今般、その結果を取りまとめた。
確認に当たっては、原子力規制委員会で了承された確認方法(添付 2-1 及び 2-2 参照)
に従い、再転換工程の蒸発・加水分解設備(添付 3 参照)の最大想定事故 1(添付 4 参照)
における以下の事項を確認することとした。
一般公衆の線量が 5mSv を超えないこと 2
一般公衆に著しい化学的影響を与えないこと
UF6 の化学的特性を考慮した事故対策が用意されていること
また、原子力規制庁は、現地調査を行い、報告書に記載された内容について現場で確
認を行った。
2.MNF の報告書の確認結果
原子力規制庁としては、以下の確認結果に基づき、再転換工程の蒸発・加水分解設備
の一定期間の運転が安全上特段の問題を生じるものではないと判断する。 確認結果の
詳細については、別添資料を参照。
⑴ 一般公衆の線量評価
MNF の報告書では、蒸発・加水分解設備の配管が破損し、漏えいした UF6 が排気系
を経て排気される事故における一般公衆の線量評価を行っている。
原子力規制庁は、当該事故シナリオが既許可の申請書に記載された最大想定事故
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であることを確認するとともに、建屋外に漏えいし更に敷地境界に拡散する UF6 等の
量が保守的に設定されていることを確認した。その結果、一般公衆に与える線量につ
いて、約 8×10-4mSv としていることの妥当性を確認した。
⑵ 一般公衆への化学的影響の評価
MNF の報告書では、最大想定事故における UF6 の放出継続時間等から一般公衆の
暴露時間及び暴露濃度を算定し、一般公衆への影響を評価している。
原子力規制庁は、建屋外へ漏えいした UF6 及びそれから生成するふっ化水素(以下
「HF」という。)の拡散が保守的な設定であること、一般公衆に対し最も厳しくなる評価
点を設定していること等を確認した。その結果、予め原子力規制委員会が示した濃度
のしきい値(暴露時間 10 分、UF6 量:3.6mg/㎥、HF 濃度:1.0ppm)(添付 2-2 参照)を下
回り、一般公衆に著しい化学的影響を与えないとしていることの妥当性を確認した。
⑶ UF6 の漏えい事故に対する対策
MNF の報告書では、既に講じている対策に加え、UF6 が漏えいした場合の拡大防止
として蒸発・加水分解設備外周へのカバーの設置、同設備がある転換工場への放射
線業務従事者の立入り制限、要救護者が発生した場合の対応等の追加的な措置を講
じるとしている。
原子力規制庁は、これらの措置の内容を確認するとともに、事故対策に必要な資機
材の整備が行われていることを確認した。
3.今後の対応
MNF は、再転換工程の蒸発・加水分解設備における UF6 の漏えい事故対策に関し、保
安規定の変更認可申請(平成 28 年 3 月 1 日付け)を行っている。
原子力規制庁としては、本現状確認の結果を踏まえて、今後、当該申請について審査
することとする。
また、本現状確認において確認した蒸発・加水分解設備における UF6 の漏えい事故対
策に関する保安活動については、今後の保安検査により確認していくこととする。
なお、MNF のウラン加工施設の新規制基準への適合性については審査中であり、今後、
UF6 の漏えい事故対策を含め、その妥当性を確認していく。
1
2
「最大想定事故」とは、従来の核燃料物質の加工事業の許可の基準に関する審査基準とされていた原子力安全委員会のウラン加工施設安全審査
指針に定義されたものであり、安全上重要な施設との関連において、技術的にみて発生が想定される事故のうちで、一般公衆の線量が最大となる
ものをいう。
新規制基準では、事故評価において、工場等周辺の公衆に放射線障害を及ぼさないものでなければならない旨規定され、その解釈として、敷地
周辺の公衆の実効線量の評価値が5mSvを超えないことをいうと示されている。また、その考え方として、以下が示されている。
「ICRPの1990年勧告によれば、公衆の被ばくに対する年実効線量限度として、1mSvを勧告しているが、特殊な状況においては、5年間にわた
る平均が年当たり1mSvを超えなければ、単一年にこれよりも高い実効線量が許されることもありうるとなっている。 これは平常時の放射線
被ばくについての考え方であるが、これを発生頻度が小さい「事故」の場合にも適用することとし、周辺公衆の実効線量の評価値が発生事故当
たり5 mSvを超えなければ「リスク」は小さいと判断する。なお、発生頻度が極めて小さい事故に対しては、実効線量の評価値が上記の値をあ
る程度超えてもその「リスク」は小さいと判断できる。」
2
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添付 1
<平成 25 年 11 月 6 日、第 30 回原子力規制委員会配布資料>
資料 4
核燃料施設等における新規制基準の適用の考え方(抜粋)
平成25年11月6日
原 子 力 規 制 庁
核燃料施設等における新規制基準が施行された際には、新規制基準への適合確
認(以下「適合確認」という。)を行うことが必要となる。また、一部の施設は新規制基
準施行時点でも運転、使用等の活動が継続されている(あるいは継続できる状態にあ
る)ことから、適合確認が完了するまでの間の施設の取扱いを整理しておくことが必要
となる。
これらの基本的な考え方、具体的な対応について、次のとおり整理する。
1.
基本的な考え方
(1) 核燃料施設等※に係る新規制基準を混乱なく導入し、バックフィット制度をはじ
めとする新しい規制制度の定着を促すため、適合確認は、通常の許認可手続き
の中で行うこととする。
※ 核燃料加工施設、試験研究用等原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、使用済燃料再処理施
設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設、核燃料物質使用施設
(2) 新規制基準の導入の際には、基準の内容が定まってから当該基準への適合を
求めるまでに一定の期間を置くことが基本である。今回はこの期間が限られてい
ることから、適合確認は施行後の施設定期検査(以下「定検」という。)等の適切
な時期に完了することとする。
(3) 適合確認の時期・方法及びそれまでの間の施設の運転等については、核燃料
施設等が多種多様であることを考慮し、それぞれの施設や活動のリスク等に応じ
て取り扱うこととする。なお、活動のリスク等にかんがみて施行後も運転・操業を
妨げないとした核燃料施設等についても、必要がある場合は、報告徴収、立入検
査、施設の使用停止命令等の措置を採る。
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2. 施設の種類毎の対応方針
(1) 試験炉(略)
(2) 供用中の核燃料施設(ウラン加工施設、使用済燃料再処理施設、廃棄物管理
施設)
a) 適合確認は、所要の審査等を経て、新規制基準施行後の初回定検の合格を
もって完了とする。
b) 施設のリスク※を大幅に増加させる活動については、適合確認に必要な場合
を除き、適合確認の完了を実施の条件とする。
施設のリスク※を低減させるための活動については、当該活動のリスクに応じ
て、新規制基準施行後の実施の可否を個別に判断する。
※ 行おうとする活動のリスクについては、当該活動自体のリスクのみならず、中長期
的に施設全体のリスクに与える影響も考慮する。
上記の「施設のリスクを大幅に増加させる活動又は施設のリスクを低減させ
る活動」以外の活動については、5年に限り実施を妨げない。
活動の種類
リスクを大幅に増加させる活動
リスクを低減させるための活動
上記以外の活動
事例
再処理施設における使用済燃料のせん断・溶解
再処理施設における高レベル放射性廃液のガラ
ス固化等
ウラン燃料加工施設におけるペレット成型、燃料
棒加工、燃料集合体組立て、濃縮※※、再転換※※
再処理施設における使用済燃料集合体の受入れ
廃棄物管理施設における放射性廃棄物(ガラス固
化体等)の受入れ
※※ 六ふっ化ウランを正圧で扱う工程(濃縮工程の均質・ブレンディング設備及び再転
換工程のUF6蒸発加水分解設備)については、一般公衆に著しい放射線被ばくによる
リスク又は著しい化学的影響を与えるおそれがないことを確認する。
3. (以下略)
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添付 2-1
<平成 25 年 12 月 25 日 第 37 回原子力規制委員会配布資料>
資料1-2
核燃料施設等に係る現状確認の進め方について(抜粋)
平成 25 年 12 月 25 日
原 子 力 規 制 庁
1. 現状確認の目的
新規制基準施行後、適合確認が完了するまでの間の試験研究炉及び核燃料施設
の運転(稼働)については、一般公衆に著しい放射線被ばくによるリスクを与えるお
それがないものに限り一定期間妨げないとする考え方が、11 月 6 日の原子力規制委
員会※1において示されている。
また、一般公衆に著しい放射線被ばくによるリスクを与えるおそれがないことの
確認をあらためて要する施設としては、試験研究炉のうち中高出力炉※2、ガス冷却
炉及びナトリウム冷却炉が、燃料加工施設のうち六ふっ化ウランを正圧で扱う施設
があげられており、後者については、一般公衆に著しい化学的影響を与えるおそれ
がないことの確認も要するとされている。
※1 資料4 「核燃料施設等における新規制基準の適用の考え方(案)」
※2 熱出力 500kW 以上 50MW 以下の水冷却型研究炉
これらの確認(現状確認)は、新規制基準への適合を求めるものではないが、施
設の有するリスクの程度を考慮し、一定期間の運転が安全上の特段の問題を生じ
るものではないことを確認するために行うものである。
2. 現状確認の対象施設と実施時期
現状確認の対象となる施設は、運転計画等を考慮すると、
(略)
◯ 三菱原子燃料(株)(MNF)の再転換工程
◯ 日本原燃(株)濃縮施設の均質槽
である。これらの施設は、いずれも新規制基準の施行時点において一時的に運転
を停止しているため、運転再開までの間に現状確認を完了する。
3. 現状確認の手順 (略)
4. 現状確認の内容
(1)(略)
(2) 三菱原子燃料(株)(MNF)の再転換工程、日本原燃(株)濃縮施設の均質槽の場合
① UF6 を正圧で扱う工程における最大想定事故の事故シナリオを想定する。
② 想定にあたっては、操業を行う期間の運転計画(取扱量、取扱いの形態等)
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を考慮する。
③ これらを踏まえて、一般公衆の線量と化学的影響を評価する。評価にあたっ
ては規格基準値の他、試験等により確認されている値等を用いてもよい。
④ UF6 の化学的特性を考慮した事故対策が用意されていることを確認するとと
もに、上記の評価により一般公衆の線量が 5mSv を超えないこと及び著しい
化学的影響を与えないことを確認する。著しい化学的影響を与えないことの
確認は、「六ふっ化ウランが一般公衆に及ぼす化学的影響に関する確認事
項(案)※3」に示された値を参考として行う。
※3 12 月 11 日 原子力規制委員会 資料 4 の別添。現在、意見公募(パブリックコメント)中。
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添付 2-2
<平成 26 年 1 月 15 日 第 38 回原子力規制委員会配布資料>
資料 1-2
六ふっ化ウランが一般公衆に及ぼす
化学的影響に関する確認事項(案)
平成 26 年 1 月 15 日
原子力規制委員会
ウラン燃料加工施設における六ふっ化ウランの取扱いが一般公衆に及ぼす化
学的影響に関する報告の提出について(指示)
(平成 25 年 12 月 11 日付
NRA-11d-13-023)に基づき提出される報告については、以下の点に留意して確認
することとする。なお、重大事故対策は最適評価によることが基本であることか
ら、実際の挙動を適切に考慮した評価であるとともに、過度の保守性を見込むこ
とによって実態から乖離した評価にならないようにすることに留意することも重
要である。
1.事故事象の選定
六ふっ化ウラン(UF6)の漏えいに至る事象については、新規制基準に基づき
選定される重大事故と同じ事象が選定されていること。
2. 建屋外に漏えいする量の予測
(1) UF6 は、空気中の水分により、ふっ化ウラニル(UO2F2)とふっ化水素(HF)に加水
分解する。また、HF は、ふっ化水素酸(HF の水溶液)や重合体を形成する。これ
らの化学物質は、物理化学性状が異なることから、建屋内における沈降、壁等
への付着といった効果の大きさが異なる。このため、建屋外に漏えいする量を予
測するに当たって、これらの効果を考慮しているとともに、適切な根拠が示され
ていること。
(2) UF6 の漏えいのおそれのある設備の排気系にはスクラバ又はケミカルトラップ
が設置されているが、漏えい経路としてこれらを介さない場合やこれらが十分機
能しない場合などが適切に考慮されていること。
(3) HF はガラスを腐食させる性質を有することから、換気系に施設されているガラ
ス素材のフィルターを劣化させる等の影響が適切に考慮されていること。
3. 建屋外に漏えいした後の移行予測
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(1) 建屋から放出された UF6 等の移行は、その性状、拡散途中における沈降・沈着、
建物による巻き込みにより影響をうける可能性があることから、適切な移行予測
の方法が選定され、その適切性が説明されていること。
(2) 移行予測には、放出される物質の性状の違いを考慮しないで一律の挙動を示す
ものとして扱う気象指針や、物質の性状の違いを考慮する HGSYSTEM/UF6 等
の様々なモデルを利用できるが、適切なものが用いられていることが説明されて
いること。
4. 暴露時間、暴露濃度の評価
(1) 漏えいの発生後検知するまでに要する時間、漏えいの停止作業に要する時間等
から予想される放出継続時間等を踏まえ、一般公衆の暴露時間が適切に考慮さ
れていること。
(2) 暴露濃度については、敷地境界等の一般公衆への影響が最も厳しくなる地点に
おける値が示されていること。
5. 影響評価
(1) 一般公衆への影響について、「穏やかで一時的な健康影響」を生じないレベル、
具体的には米国の NUREG-1520 と同様に、米国の急性暴露ガイドラインレベル
(Acute Exposure Guideline Level)に定められる AEGL-1 のしきい値を超えないよ
うに抑えられることを確認していること。これ以外の値を用いる場合には、その妥
当性について示されていること。
(2) 影響評価は、UF6 のみならず、HF や UO2F2 についても考慮されていること。
なお、AEGL 等には、UF6 及び HF の値は定められているが、UO2F2 の値は定めら
れていない。このため、UO2F2 の影響をどのように考慮したかが示されているこ
と。
(参考)
AEGL のしきい値
UF6(六ふっ化ウラン)
暴露時間
10 分
AEGL-1
3.6
HF(ふっ化水素)
暴露時間
10 分
AEGL-1
1.0
(単位:mg/m3(UF6 量))
30 分
1 時間
4 時間
8 時間
3.6
3.6
NR
NR
NR: 値を設定するにはデータが十分でない
30 分
1.0
1 時間
1.0
8
(単位:ppm(体積比))
4 時間
8 時間
1.0
1.0
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添付 3
再転換工程の概要
再転換工程とは、容器(UF6 シリンダ)に収納された UF6 を、ふっ化ウラニル溶液
(UO2F2 溶液)及び重ウラン酸アンモニウム((NH4)2U2O7)を経由して二酸化ウラン
(UO2)粉末にする化学処理プロセスである。(下図参照)
このうち、UF6 を正圧で扱う工程は、原料の UF6 を蒸発・加水分解し、UO2F2 溶液を
製造するまでの蒸発・加水分解工程である。蒸発工程では、蒸発器に装填された
UF6 シリンダを外側から水蒸気で加熱することにより、UF6 シリンダ内部の固体の
UF6 を気化させる。気化させた UF6 ガスを UF6 配管経由で加水分解装置(エジェクタ)
に送る。加水分解工程では、UF6 を水と混合して加水分解反応させることにより、
UO2F2 溶液とする。
なお、蒸発・加水分解工程の関連設備として、UF6 の漏えいがあった場合に備え、
漏えいした UF6 を処理するために局所排気設備を設置している。
UF6
UF6を正圧で扱う範囲
(UF6 を正圧で扱う範囲)
蒸発
純水
蒸発・加水分解工程
加水分解反応式
UF6+2H2O→UO2F2+4HF
加水分解
UO2F2溶液
アンモニア水
沈殿反応式
2UO2F2+8HF+14NH4OH→(NH4)2U2O7+12NH4F+11H2O
沈殿
(NH4)2U2O7
固液分離・洗浄
乾燥
水素ガス
焙焼還元反応式
(NH4)2U2O7+2H2→2UO2+2NH3+3H2O
焙焼還元
粉砕充填・混合
UO2粉末
図 再転換工程の概要図
9
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添付 4
最大想定事故の事故シナリオについて
◯ 最大想定事故の事故シナリオ
経済産業大臣が、平成 20 年 8 月 29 日付け平成 19・06・20 原第 1 号をもって許可した「三菱原子
燃料㈱の核燃料加工事業変更許可申請書」の最大想定事故の事故シナリオ
◯ 最大想定事故の事故シナリオの概要
UF6 を正圧で扱う再転換工程1の蒸発・加水分解設備における蒸発器から加水分解装置まで
の配管が破損し UF6 が漏えいする状態を想定。
三菱原子燃料㈱による評価
評価条件
配管破損部からの UF6 の放出量
漏えい時間
20 ㎏ UF6/分*1
10 分*2
*1:漏えい部の圧力 0.6MPaG
*2:HF 検出装置により UF6 の漏えいを検知した場合に自動閉止する UF6 遮断弁が作動せず、シリンダ
の弁を手動で閉めるまでの時間を安全側に設定
評価結果
一般公衆の線量:転換工場の排気口から直近の周辺監視区域外における一般公衆の実
効線量は約 8×10-4m ㏜であり、基準値 5m ㏜と比較して極めて小さい。
化 学 的 影 響:評価点(転換工場の排気口から直近の周辺監視区域境界)における
空気中の UF6 濃度(漏えい時間 10 分間)は 3.5×10-4 ㎎ UF6/㎥であ
り、AEGL-1 のしきい値である 3.6 ㎎ UF6/㎥より十分に小さい。
図
1
蒸発・加水分解設備における配管破損時の UF 6 漏えいに関する状況説明
再転換工程: UF6 を化学処理して、二酸化ウラン(UO2)粉末にする工程
10
別添
「三菱原子燃料株式会社の加工施設(再転換工程)における現状確認」
の確認結果について
平成 28 年 3 月 23 日
原 子 力 規 制 庁
1.経緯と確認事項
1-1 経緯
核燃料施設等の新規制基準が施行された際、ウラン加工施設については、施
行後5 年間は燃料加工の実施を妨げないとされたが、加工施設のうち、六ふっ化
ウラン(以下「UF6」という。)を正圧で扱う工程(濃縮工程の均質・ブレンディング
設備及び再転換工程の UF6 蒸発・加水分解設備)については、一般公衆に著しい
放射線被ばくによるリスク又は著しい化学的影響を与えるおそれがないことを確
認することとされた。(添付1参照)
また、その確認の進め方については、「核燃料施設等に係る現状確認の進め
方について」(平成 25 年 12 月 25 日、原子力規制庁)(以下「現状確認の進め方」
という。)に従って、施設のリスクの程度を考慮し、一定期間の運転が安全上の特
段の問題を生じるものでないことを確認することとされた。(添付 2 参照)
これを受け、三菱原子燃料株式会社(以下「MNF」という。)から、平成 26 年 2 月
10 日付け(平成 26 年 7 月 8 日、平成 27 年 12 月 18 日、平成 28 年 3 月 1 日及
び同月 9 日付けをもって一部補正)をもって、原子力規制委員会あて、「三菱原子
燃料株式会社における UF6 が一般公衆に与える放射線被ばく及び化学的影響に
関する現状確認の報告について」(以下「報告書」という。)が提出された。
本確認結果は、MNF から提出された報告書の内容に関し、原子力規制庁が確
認した結果を取りまとめたものであり、
1.経緯と確認事項
2.最大想定事故の事故シナリオを想定した一般公衆の線量評価
3.最大想定事故時の UF6 が一般公衆に及ぼす化学的影響の評価
4.最大想定事故時の UF6 の化学的特性を考慮した事故対策
5.確認結果の取りまとめ
により構成している。
これらのうち、特に、MNF の最大想定事故時の UF6 の化学的特性を考慮した事
故対策については、面談及び現地調査を実施した上で、当該事故対策が実施し
得るものであるか確認した。
1
1-2 確認事項
現状確認の進め方に基づき、MNF から提出された報告書に関し、UF6 を正圧で
取り扱う再転換工程(添付 3 参照)の蒸発・加水分解設備における最大想定事故
シナリオ(添付 4 参照)を想定し、以下の事項を確認するものである。
一般公衆の線量が 5mSv を超えないこと 1
一般公衆に著しい化学的影響を与えないこと
UF6 の化学的特性を考慮した事故対策が用意されていること
ここで、「最大想定事故」とは、従来の核燃料物質の加工事業の許可の基準に
関する審査基準とされていた、原子力安全委員会のウラン加工施設安全審査指
針に定義されたものであり、安全上重要な施設との関連において、技術的にみて
発生が想定される事故のうちで、一般公衆の線量が最大となるものをいう。
具体的には、MNF の既許可の事業変更許可申請書の添付書類七 加工施設
の操作上の過失、機械又は装置の故障、浸水、地震、火災等があった場合に発
生すると想定されている加工施設の事故の種類、程度、影響等に関する説明書
に記載された事故のシナリオをいう。
2.最大想定事故の事故シナリオを想定した一般公衆の線量評価
2-1 確認の方針
最大想定事故の事故シナリオを想定した一般公衆の線量評価について、以下の
事項を確認することとした。
2-1-1 最大想定事故の事故シナリオ
既許可の事業変更許可申請書に記載された最大想定事故の事故シナリオで
あること。
2-1-2 建屋外へ移行する UF6 の漏えい量
2-1-1 による評価において、UF6 の量、高性能エアフィルタ-等除去系の捕集
効率等について保守的な条件を設定して、UF6 の建屋外への総放出量が計算さ
れていること。
1
新規制基準では、事故評価において、工場等周辺の公衆に放射線障害を及ぼさないものでなければならない旨規定され、その解
釈として、敷地周辺の公衆の実効線量の評価値が5mSvを超えないことをいうと示されている。また、その考え方として、以下が示さ
れている。
「ICRPの1990年勧告によれば、公衆の被ばくに対する年実効線量限度として、1mSvを勧告しているが、特殊な状況においては、5
年間にわたる平均が年当たり1mSvを超えなければ、単一年にこれよりも高い実効線量が許されることもありうるとなっている。
これは平常時の放射線被ばくについての考え方であるが、これを発生頻度が小さい「事故」の場合にも適用することとし、周辺公
衆の実効線量の評価値が発生事故当たり5 mSvを超えなければ「リスク」は小さいと判断する。なお、発生頻度が極めて小さい事
故に対しては、実効線量の評価値が上記の値をある程度超えてもその「リスク」は小さいと判断できる。」
2
2-1-3 敷地境界における UF6 の量
2-1-2 により算出された UF6 の漏えい量をもとに、保守的な拡散条件等を設定
し、敷地境界における UF6 の量が計算されていること。
2-1-4 一般公衆に及ぼす線量の評価
最大想定事故の評価において、一般公衆の線量が 5mSv を超えないこと。
2-2 確認結果
原子力規制庁は、MNF から提出された報告書の内容の妥当性について、上記
2-1 の確認の方針に基づき確認した。確認の際、報告書に記載された内容の詳
細を聴取するため、必要に応じ MNF に対する面談を実施した。
また、原子力規制庁は、MNF による評価結果の妥当性を確認するため、再現
計算を実施した。
2-2-1 最大想定事故の事故シナリオ
MNFからの報告書によれば、本確認に係る事故シナリオは、転換工場(添付5
参照)に設置している UF6 を大気圧以上で取り扱う再転換工程の蒸発・加水分
解設備を対象としている。
原子力規制庁は、MNF が想定した事故シナリオは、平成 20 年 8 月 29 日付け
平成 19・06・20 原第 1 号をもって許可された同社の核燃料物質加工事業変更許
可申請書に記載された最大想定事故の事故シナリオを想定していることを確認
した。
2-2-2 建屋外へ移行する UF6 の漏えい量
原子力規制庁は、MNF の評価では屋外へ移行する UF6 の漏えい量に関し、蒸
発・加水分解設備における蒸発器から加水分解装置までの配管の破損箇所から
漏えいした UF6 の量、高性能エアフィルタの捕集効率等を保守的に設定し、算出
していることを確認した。
2-2-3 敷地境界における UF6 の量
原子力規制庁は、敷地境界の UF6 量の評価は、以下のとおり保守的に評価し
ていることを確認した。
⑴ 施設等での沈着や重力沈降は考慮しないこと
⑵ 拡散条件を保守的(地上放出、大気安定度F型、風速1m/s)に設定している
こと
3
2-2-4 一般公衆に及ぼす線量の評価結果
原子力規制庁は、以上のとおり、MNF の評価は UF6 の漏えい量や拡散条件等
を保守的に設定しており、一般公衆に及ぼす線量評価の結果は約 8×10-4mSv
であり、5mSv を超えないこととしていることは妥当なものと判断する。
3.最大想定事故時の UF6 が一般公衆に及ぼす化学的影響の評価
3-1 確認の方針
最大想定事故時の UF6 が一般公衆に及ぼす化学的影響の評価については、「六
ふっ化ウランが一般公衆に及ぼす化学的影響に関する確認事項」(平成 26 年 1 月
15 日、原子力規制委員会)(以下「化学的影響に関する確認事項」という。)(添付 6
参照)を参考とし、以下について確認することとした。
3-1-1 最大想定事故の事故シナリオ
2-1 確認の方針 2-1-1 に同じ。
3-1-2 UF6 等が建屋外へ漏えいする量の予測
⑴ UF6 は、空気中の水分により、ふっ化ウラニル(以下「UO2F2」という。)及び
ふっ化水素(以下「HF」という。)に加水分解する。また、HF は、HF 酸(HFの
水溶液)や重合体を形成する。これらの化学物質は、物理的性状及び化学的
形態が異なることから、建屋内における沈降、壁等への付着といった効果の
大きさが異なる。このため、建屋外に漏えいする量を予測するに当たっては、
これらの効果を考慮しているとともに、適切な根拠が示されていること。
⑵ UF6 等の漏えいのおそれのある設備の排気系にはスクラバが設置されてい
るが、これらが十分に機能しない場合等が適切に考慮されていること。
⑶ HF は、ガラスを腐食させる性質を有することから、排気系に施設されている
ガラス素材のフィルターを劣化させる等の影響が適切に考慮されていること。
3-1-3 建屋外に漏えいした後の移行の予測等及び暴露時間、暴露濃度の評価
建屋外に漏えいする量の予測、建屋外へ漏えいした後の移行予測、暴露時間
及び暴露濃度については、以下のとおり、保守的な条件等を設定し、評価してい
ること。
⑴ 建屋から放出される UF6 等の移行は、その性状、拡散途中における沈降・
沈着、建物による巻き込みにより影響を受ける可能性があることから、適切
な移行予測の方法が選定されていること。
⑵ 移行予測には、放出される物質の性状の違いを考慮しないで一律の挙動を
4
示すものとして扱う気象指針2や、物質の性状の違いを考慮する
HGSYSTEM/UF6 等3の適切なものが用いられていること。
⑶ 漏えいの発生後、検知するまでに要する時間、漏えいの停止作業に要する
時間等から予想される放出継続時間等を踏まえ、一般公衆の暴露時間が最
も厳しくなる地点における値が示されていること。
3-1-4 一般公衆に及ぼす化学的影響
想定した最大想定事故の評価において、一般公衆に及ぼす化学的影響の評
価結果が化学的影響に関する確認事項に示された米国の急性暴露ガイドライ
ンレベル(以下「ガイドラインレベル」という。)に定められた暴露時間 10 分にお
ける AEGL-1 のしきい値(UF6 量:3.6mg/㎥(UF6 量)、HF 濃度:1.0ppm)を超えな
いこと。
3-2 確認結果
原子力規制庁は、MNF からの報告書の内容の妥当性について、上記 3-1 の確認
の方針に基づき確認した。確認の際、報告書の内容を詳細に聴取するため、必要
に応じ MNF に対する面談を実施した。
また、原子力規制庁は、MNF による評価結果の妥当性を確認するため、再現計
算を実施した。
3-2-1 最大想定事故の事故シナリオ
2-2 確認結果 2-2-1 に同じ。
3-2-2 UF6 等が建屋外へ漏えいする量
原子力規制庁は、蒸発・加水分解設備における UF6 等の漏えいに対する設計
について以下を確認した。
⑴ 蒸発・加水分解設備の蒸発器の出口管から UF6 遮断弁を介して配管により
接続される加水分解装置は、スクラバを備えた局所排気系に接続するフー
ドボックス内に設置する設計としていること。
⑵ 排気系には HF 検出装置を設け、漏えい検知時には UF6 遮断弁は自動的に
閉となる設計としていること。
これらを踏まえ、建屋外に漏えいするウラン量及び HF 量については、フード
ボックス内の配管から漏えいし、局所排気系から放出される場合を想定し、漏え
2
3
発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針(昭和57年1月28日、原子力安全委員会決定)
UF6 の大気放出後の拡散を評価するコード。Shell Resarch Ltd.が開発した HGSYSTEM Ver.3 をベースに米国 DOE の要請によって UF6
漏えい事故の安全評価用に開発され NRC による安全審査にも用いられている。
5
い検知からの UF6 遮断弁を閉じるまでの時間、スクラバの捕集効率、高性能エ
アフィルタのウランの捕集効率や同フィルターへの HF の影響を保守的に設定し、
評価していることを確認した。
3-2-3 建屋外に漏えいした後の移行の予測等及び暴露時間、暴露濃度の評価
原子力規制庁は、一般公衆の暴露時間、暴露濃度について以下を確認した。
⑴ 建屋の排気口における UF6 の濃度は、排気風量を考慮して算出された排
気口における UO2F2 の濃度を UF6 の濃度に換算し、HF の濃度は、排気風量
を考慮して算出された排気口における濃度として評価していること。
⑵ UF6 等の漏えい量は、フードボックスからの排気系に設置している HF 検出
装置により UF6 の漏えいを検知した場合に自動閉止する UF6 遮断弁が作動
せず、シリンダの弁を手動で閉めるまでの時間を10 分として設定しているこ
と。また、一般公衆の暴露時間は、ガイドラインに定められた AEGL-1 の暴
露時間の 10 分であること。
⑶ 評価点は、敷地境界に対し距離が最も短い転換工場の排気口から北東方
向の境界としていること。
3-2-4 一般公衆に及ぼす化学的影響の評価
3-2-1 から 3-2-3 において、原子力規制庁は、MNF が建屋外に漏えいする
UF6 等の濃度の算出方法及び建屋外への拡散条件について保守的に設定した
上で、一般公衆に及ぼす化学的影響を評価していることを確認した。
また、原子力規制庁は、MNF による一般公衆に及ぼす化学的影響評価結果
を確認した結果、敷地境界における UF6 等の濃度は、UF6 量換算で 3.5×
10-4mg/㎥、HF は、0.17ppm となり、いずれもガイドラインレベルに定められた暴
露時間 10 分における AEGL-1 のしきい値(UF6:3.6 mg/㎥、HF:1.0ppm)を下回っ
ていることから、MNF が一般公衆に著しい化学的影響を与えないこととしている
ことは妥当なものと判断する。
以上の確認に加え、原子力規制庁は、MNF から提出された報告書に記載され
た計算条件等に基づき、最大想定事故の事故シナリオにおける一般公衆に及
ぼす化学的影響の再現計算を行い、以下を確認した。
⑴ UF6 が一般公衆に及ぼす化学的影響の評価結果は、UF6 量換算で 3.48×
10-4mg/㎥であり、ガイドラインレベルに定められた暴露時間 10 分における
AEGL-1 のしきい値基準値(UF6 量 3.6mg/㎥)を超えていないこと。
⑵ HF が一般公衆に及ぼす化学的影響の評価結果は、HF の濃度が
0.161ppm であり、ガイドラインレベルに定められた暴露時間 10 分における
AEAGL-1 のしきい値(HF1.0pm)を超えていないこと。
6
4.最大想定事故時の UF6 の化学的特性を考慮した事故対策
4-1 確認の方針
原子力規制庁は、MNF に対し、本現状確認は最大想定事故時の UF6 の化学的
特性を考慮した事故対策が用意されていることが確認事項となっているが、新規
制基準への適合確認を見据えてあらかじめ対処し得る事項については考慮する
よう指摘した。
これを踏まえ、MNF は、既に講じている最大想定事故を想定した UF6 の漏えい
事故対策の更なる向上を図ったとしている。
原子力規制庁は、本現状確認において、MNF が講じるとしている更なる事故対
策に関する措置(放射線業務従事者に対する事故対策の教育・訓練及び設備・
機器の健全性確認に関する計画を含む)について、以下を確認することとした。
なお、本現状確認の対象である MNF の加工施設については、新規制基準への
適合確認を内容とする核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法
律(昭和 32 年法律第 166 号)に基づく加工事業の変更許可申請を受けており、別
途審査中である。
4-1-1 一般公衆を対象とした事故対策
UF6 の漏えい事故時の一般公衆に対する放射線被ばく防止対策及び化学的
影響を考慮した事故対策が講じられていること。
4-1-2 放射線業務従事者を対象とした事故対策
UF6 を正圧で取り扱う再転換工程の蒸発・加水分解設備を設置している転換
工場の作業環境、当該設備の操作手順を踏まえ、放射線業務従事者に対する
放射線被ばく防止対策及び化学的影響を考慮した事故対策が用意されている
こと。
4-1-3 事故対策に関する事項の保安規定への規定
4-1-1 及び 4-1-2 の事項が保安規定に定められ、それに基づき体制、手順書
及び資機材が用意されること。また、教育・訓練により、手順、資機材の取り扱
い方法の習得及びその維持向上等が図られるものであること。
4-2 確認結果
原子力規制庁は、MNF の報告書の内容について、4-1 の確認方針に基づき確認
した。確認の際、MNF の報告書の内容を詳細に聴取するため、必要に応じ MNF に
対する面談を実施した。また、同報告書で説明された UF6 の化学的特性を考慮した
7
事故対策が用意されていることを確認するため現地調査を実施した。
これらにより、原子力規制庁は、以下を確認したことから、MNF の一般公衆及び
放射線業務従事者に対する事故対策は妥当なものと判断する。
4-2-1 一般公衆を対象とした事故対策
⑴ 従来の事故対策
MNF は、従来の事故対策については、既許可の事業変更許可申請書に記載
した最大想定事故の事故シナリオに基づき、「再転換工程の蒸発・加水分解設
備は、蒸発器の出口管から UF6 遮断弁を介して配管により接続される加水分解
装置により構成され、これらは、スクラバ 2 段4を備えた局所排気系に接続する
フードボックス内に設置する設計としていることから、UF6 は限定された区域に
閉じ込められる。」との前提のもとに、以下のとおりとしていた。
同工程の運転に当たっては UF6 ガス供給前に配管からの漏えいがないこ
とをリークテストにより確認する。運転中の UF6 配管圧力、UF6 シリンダ表面
温度が所定の範囲を逸脱した場合、通常運転範囲になるよう処置する。
フードボックスからの局所排気系に設置している HF 検出装置により UF6
の漏えいを検知した場合に自動閉止する UF6 遮断弁が作動しない場合は、
直ちに手動釦による操作を行う。この操作でも遮断弁が作動しない場合は、
手動でシリンダ弁を閉止する。この場合、放射線業務従事者は、HF 用防護
マスクを着用する。万一、フードボックスから UF6 が漏えいした場合は、空気
ボンベ装着タイプの化学防護服を着用し対応する。
また、UF6 遮断弁が作動しない場合は、直ちに手動釦でスクラバ系統への
切替とスクラバ水循環ポンプ及び同付属の排風機の起動を行う。
⑵ 更なる事故対策の改善
本現状確認においては、⑴の従来の事故対策に加え、UF6 が漏えいした場合
の化学的影響による一般公衆への更なる影響防止と同漏えいの早期収束を目
的として、以下の対策を用意するとしている。
① 建屋内への閉じ込め
転換工場の作業環境に漏えいした UF6 が排気設備を経て屋外へ放出さ
れる可能性がある場合には同設備を停止する。
転換工場の蒸発・加水分解設備に近い屋外につながるシャッター等 3 箇
所については、通常時より目張りシートを取り付ける。
4
フードボックス内で、UF6 の漏えいが発生した場合、局所排気系に設置した HF 検出器が自動的に、UF6 遮断弁及び加熱蒸気供給弁を
閉止するとともに、ダンパが切り替わり、フードボックスの排気はスクラバに導かれる。同時に、通常運転の 1 段目のスクラバに加え、2
段目のスクラバが起動し、フードボックスの排気をスクラバ(直列 2 段)に送気し、漏えいした UF6/UO2F2/HF を吸収する。
8
② 事故収束(漏えい停止)のための UF6 のシリンダ内への閉じ込め
従来より、UF6 の漏えい停止対策として、転換作業の放射線業務従事者
は化学防護服を着用し、シリンダバルブを手動で閉止(閉止できない場
合はシリンダに接続する配管の圧潰)するとしていた。この作業の際に着
用する化学防護服内に発報機能を有する携行 HF 検出器を装備すること
とする。
③ UF6 の建屋外への漏えい監視
⑴並びに⑵①及び②による初期対応をとった後、放射線管理を担当する
放射線業務従事者は、化学防護服を着用の上、転換工場外周及び成型工
場との境界の HF 濃度を定期的に測定する。
4-2-2 放射線業務従事者を対象とした事故対策
⑴ 従来の事故対策
MNF は、従来の事故対策については、4-2-1⑴のとおりとしていた。
⑵ 更なる事故対策の改善
MNF は、従来の事故対策に加え、本現状確認においては、万一、UF6 が作業
環境に漏えいした場合の放射線業務従事者への影響の低減するため、再転
換工程の蒸発・加水分解設備が他の工程と区画されていない部屋に設置され
ているという施設の特徴や、同設備の運転とそれ以外の作業を併行して行うと
いうような現状を踏まえて、以下を措置するとしている。
蒸発・加水分解設備において、万一 UF6 が漏えいしても転換工場内に拡散
しないよう同設備の外周に防護カバーを設置する。
2 系統ある蒸発・加水分解設備を同時に運転しない。更に、蒸発・加水分解
設備の運転に関連しない作業は、同設備が停止している時に実施するよ
うにし、転換工場に入室する放射線業務従事者を制限する。
UF6 が作業環境に漏えいした場合を想定し、放射線業務従事者への防護
措置を講じるとともに安全に避難できるようにする。また、UF6 漏えいの事
故時に要救助者がいた場合の救出措置等を講じる。
一般公衆への影響防止作業及び事故収束作業において、放射線業務従
事者への化学的影響に対する防護措置を講じる。
蒸発・加水分解設備は 24 時間操業が必要となるため、夜間においても的
確に事故を収束できる体制を整備する。更に、台風や大雪により要員の招
9
集に支障をきたすおそれがあると判断する場合は、操業を停止する。
蒸発・加水分解設備は、2 年以上停止していることから、設備の健全性確
認と放射線業務従事者の力量確保のための計画を策定し、管理総括者の
管理のもと実施する。
これらに加え、従来は、震度 5 以上の地震が発生した場合に放射線業務従
事者が、速やかに蒸発・加水分解設備の運転を停止し、点検を行うこととして
いた地震時の取り組みについて、以下を措置するとしている。
緊急地震速報、携帯電話会社が提供する緊急地震速報並びに体感により、
茨城県で震度 5 以上の地震の発生が予測された場合は、転換工場内の放
射線業務従事者は、速やかに携行している HF 用防護具を着用する。
また、転換工場の中央制御室にいる再転換作業担当者は、蒸発・加水分
解設備の UF6 遮断弁の閉止のほか、同工場内の設備の運転停止を行う。
UF6 遮断弁の操作は、手動停止釦により行う。その補助的手段として、地震
計と連動して震度 5 相当以上(150 ガル以上)の揺れを感知した場合、UF6
遮断弁を自動閉止する。
地震の揺れが収まり、UF6 の漏えい警報の発報がない場合は、UF6 の漏え
い、その他の異常が転換工場内にないことを点検により確認した後に、地
震・停電対応要領に従い、核燃料取扱主任者の確認及び管理総括者の承
認を受けて運転を再開する。
4-2-3 放射線業務従事者への教育・訓練及び、設備・機器の健全性確認
MNF は、現状確認を進めている現時点においては、「加工施設は、運転停止中
であること、多くの放射線業務従事者が他部門の業務に就いていることから、トッ
プマネジメントのコミットメントのもと、今後、『運転再開計画』を策定し、設備の総
点検、放射線業務従事者の力量確保のための措置を講じる。」としている。具体
的には、加工施設の運転再開に向け、以下を措置するとしている。
⑴ 保安規定に基づき、加工施設における核燃料物質の加工に関する保安を統
括する職務を担う管理統括者は、UF6 漏えい防止措置と事故対策に係る事項
を含めた保安品質目標を各部長に立てるよう指示し、その内容を確認する。
また、UF6 を正圧で取り扱う設備の長期停止後の運転再開をしようとする場
合は、同設備の運転に必要な運転員の力量及び設備の機能を確実に確保す
るため、保安規定に基づく手続きに従い、以下の観点により、準備・立ち上げ
に係る長期停止後運転計画を策定する。
設備の運転員に関しては、その力量レベルに応じた教育内容及び教育期
間を明確にし、運転に係る技量教育を含め、運転全般についての再教
育・訓練を行う。同再教育・訓練については、設備の長期停止期間中に変
10
更又は追加した UF6 の化学的影響を考慮した対策に関すること及び UF6
漏えい時の異常時対応を含める。
設備に関しては、長期間の停止に劣化等の影響を考慮し、閉じ込め、臨
界防止の機能が健全であることについて、設備の管理状態等を考慮し、
安全機能の健全性を確認する上で必要な点検項目を抽出する。それに基
づき設備及び機器の動作、系統からの漏えい防止及びインターロック作
動等のシステム全体について健全性確認を行う。
⑵ さらに、管理統括者は、⑴により策定した運転計画に従った措置の実施結果
により、設備の健全性及び設備の運転に必要な力量を持った運転員が確保
されていることを確認し、製造部長に運転再開を指示する。
4-2-4 最新の知見を踏まえた安全性向上の取り組み
MNF では、これまでも施設・操業の安全性向上に活用する取り組みとして、「保
安情報共有会議」(毎月開催)において,自他の不適合事象や海外加工施設のト
ラブル情報等の共有、処置の要否等の検討を行ってきた。
今後は、こうした情報等について社員への共有、浸透を図ることとする。
5. 確認のまとめ
本現状確認は、既許可の事業変更許可申請書における最大想定事故を事故シナ
リオとし、新規制基準施行後の適合確認が完了するまでの間に、当該施設の一定
期間の運転が安全上の特段の問題を生じるものではないことを確認するものであ
る。
MNF は、この現状確認への対応として、新規制基準の適合確認を見据え、UF6 の
化学的特性を考慮した事故対策のさらなる向上のための措置を講じる旨を報告し
ている。
原子力規制庁は、この MNF から提出された報告のうち、最大想定事故を事故シナ
リオとした一般公衆の線量及び化学的影響について以下を確認した。
⑴ 最大想定事故を事故シナリオとした一般公衆の線量評価に関して、敷地境界
における線量が約 8×10-4m ㏜であり、5m ㏜を超えないこと。
⑵ 最大想定事故を事故シナリオとした一般公衆の化学的影響に関して、敷地境
界において著しい化学的影響を与えるおそれがないこと。
また、原子力規制庁は、UF6 の化学的特性を考慮した事故対策に関して、以
下を確認した。
⑶ MNF は、従来、再転換工程における UF6 の漏えいを想定した事故対策として
は、最大想定事故の事故シナリオを想定し、放射線業務従事者が確実に退避
できることを前提としていた。また、再転換工程の蒸発・加水分解設備にある
11
UF6 遮断弁の作動しない場合は、手動によりシリンダ弁の閉止等の措置を講じ
るとしていた。
MNF は、この措置に関し、本現状確認において、さらなる事故対策の向上を図る
こととし、保安規定(現在申請中)に基づく措置として、蒸発・加水分解設備外周へ
のカバーの設置、転換工場内への放射線業務従事者の入室制限及び管理、UF6 漏
えいの事故時に要救助者がいた場合の救出措置等を講じるとしている。
また、再転換工程の運転再開に当たっては、設備の運転に必要な運転員の力量
及び設備の機能を確実に確保するため、保安規定に基づく手続きに従い、準備・立
ち上げに係る長期停止後運転計画を策定するとしている。
以上のことから、本現状確認に係る MNF の加工施設の再転換工程については、
新規制基準施行後の適合確認が完了するまでの間、当該設備の一定期間の運転
が安全上の特段の問題を生じるものではないものと判断する。
また、現在、変更認可申請中の再転換工程の運転中の措置に関する事項を明定
した保安規定については、本現状確認の結果を踏まえて審査することとする。
なお、本現状確認において確認した再転換工程における UF6 の漏えい事故対策
に関する保安活動については、保安検査により確認していくこととする。
また、本現状確認の対象である加工施設は、現在、新規制基準の適合性について
審査中であり、今後、UF6 の漏えい事故の対策を含めてその妥当性を確認していく
こととしている。
12
添付 1
<平成 25 年 11 月 6 日、第 30 回原子力規制委員会配布資料>
資料 4
核燃料施設等における新規制基準の適用の考え方(抜粋)
平成25年11月6日
原 子 力 規 制 庁
核燃料施設等における新規制基準が施行された際には、新規制基準への適合確
認(以下「適合確認」という。)を行うことが必要となる。また、一部の施設は新規制基
準施行時点でも運転、使用等の活動が継続されている(あるいは継続できる状態にあ
る)ことから、適合確認が完了するまでの間の施設の取扱いを整理しておくことが必要
となる。
これらの基本的な考え方、具体的な対応について、次のとおり整理する。
1.
基本的な考え方
(1) 核燃料施設等※に係る新規制基準を混乱なく導入し、バックフィット制度をはじ
めとする新しい規制制度の定着を促すため、適合確認は、通常の許認可手続き
の中で行うこととする。
※ 核燃料加工施設、試験研究用等原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、使用済燃料再処理施
設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設、核燃料物質使用施設
(2) 新規制基準の導入の際には、基準の内容が定まってから当該基準への適合を
求めるまでに一定の期間を置くことが基本である。今回はこの期間が限られてい
ることから、適合確認は施行後の施設定期検査(以下「定検」という。)等の適切
な時期に完了することとする。
(3) 適合確認の時期・方法及びそれまでの間の施設の運転等については、核燃料
施設等が多種多様であることを考慮し、それぞれの施設や活動のリスク等に応じ
て取り扱うこととする。なお、活動のリスク等にかんがみて施行後も運転・操業を
妨げないとした核燃料施設等についても、必要がある場合は、報告徴収、立入検
査、施設の使用停止命令等の措置を採る。
13
2. 施設の種類毎の対応方針
(1) 試験炉(略)
(2) 供用中の核燃料施設(ウラン加工施設、使用済燃料再処理施設、廃棄物管理
施設)
a) 適合確認は、所要の審査等を経て、新規制基準施行後の初回定検の合格を
もって完了とする。
b) 施設のリスク※を大幅に増加させる活動については、適合確認に必要な場合
を除き、適合確認の完了を実施の条件とする。
施設のリスク※を低減させるための活動については、当該活動のリスクに応じ
て、新規制基準施行後の実施の可否を個別に判断する。
※ 行おうとする活動のリスクについては、当該活動自体のリスクのみならず、中長期
的に施設全体のリスクに与える影響も考慮する。
上記の「施設のリスクを大幅に増加させる活動又は施設のリスクを低減させ
る活動」以外の活動については、5年に限り実施を妨げない。
活動の種類
リスクを大幅に増加させる活動
リスクを低減させるための活動
上記以外の活動
事例
再処理施設における使用済燃料のせん断・溶解
再処理施設における高レベル放射性廃液のガラ
ス固化等
ウラン燃料加工施設におけるペレット成型、燃料
棒加工、燃料集合体組立て、濃縮※※、再転換※※
再処理施設における使用済燃料集合体の受入れ
廃棄物管理施設における放射性廃棄物(ガラス固
化体等)の受入れ
※※ 六ふっ化ウランを正圧で扱う工程(濃縮工程の均質・ブレンディング設備及び再転
換工程のUF6蒸発加水分解設備)については、一般公衆に著しい放射線被ばくによる
リスク又は著しい化学的影響を与えるおそれがないことを確認する。
(以下略)
14
添付 2
<平成 25 年 12 月 25 日 第 37 回原子力規制委員会配布資料>
資料1-2
核燃料施設等に係る現状確認の進め方について(抜粋)
平成 25 年 12 月 25 日
原 子 力 規 制 庁
1. 現状確認の目的
新規制基準施行後、適合確認が完了するまでの間の試験研究炉及び核燃料施設
の運転(稼働)については、一般公衆に著しい放射線被ばくによるリスクを与えるお
それがないものに限り一定期間妨げないとする考え方が、11 月 6 日の原子力規制委
員会※1において示されている。
また、一般公衆に著しい放射線被ばくによるリスクを与えるおそれがないことの
確認をあらためて要する施設としては、試験研究炉のうち中高出力炉※2、ガス冷却
炉及びナトリウム冷却炉が、燃料加工施設のうち六ふっ化ウランを正圧で扱う施設
があげられており、後者については、一般公衆に著しい化学的影響を与えるおそれ
がないことの確認も要するとされている。
※1 資料4 「核燃料施設等における新規制基準の適用の考え方(案)」
※2 熱出力 500kW 以上 50MW 以下の水冷却型研究炉
これらの確認(現状確認)は、新規制基準への適合を求めるものではないが、施
設の有するリスクの程度を考慮し、一定期間の運転が安全上の特段の問題を生じ
るものではないことを確認するために行うものである。
2. 現状確認の対象施設と実施時期
現状確認の対象となる施設は、運転計画等を考慮すると、
(略)
◯ 三菱原子燃料(株)(MNF)の再転換工程
◯ 日本原燃(株)濃縮施設の均質槽
である。これらの施設は、いずれも新規制基準の施行時点において一時的に運転
を停止しているため、運転再開までの間に現状確認を完了する。
3. 現状確認の手順 (略)
4. 現状確認の内容
(1)(略)
(2) 三菱原子燃料(株)(MNF)の再転換工程、日本原燃(株)濃縮施設の均質槽の場
合
① UF6 を正圧で扱う工程における最大想定事故の事故シナリオを想定する。
15
② 想定にあたっては、操業を行う期間の運転計画(取扱量、取扱いの形態等)
を考慮する。
③ これらを踏まえて、一般公衆の線量と化学的影響を評価する。評価にあたっ
ては規格基準値の他、試験等により確認されている値等を用いてもよい。
④ UF6 の化学的特性を考慮した事故対策が用意されていることを確認するとと
もに、上記の評価により一般公衆の線量が 5mSv を超えないこと及び著しい
化学的影響を与えないことを確認する。著しい化学的影響を与えないことの
確認は、「六ふっ化ウランが一般公衆に及ぼす化学的影響に関する確認事
項(案)※3」に示された値を参考として行う。
※3 12 月 11 日 原子力規制委員会 資料 4 の別添。現在、意見公募(パブリックコメント)中。
16
添付 3
再転換工程の概要
再転換工程とは、容器(UF6 シリンダ)に収納された UF6 を、ふっ化ウラニル溶液
(UO2F2 溶液)及び重ウラン酸アンモニウム((NH4)2U2O7)を経由して二酸化ウラン
(UO2)粉末にする化学処理プロセスである。(下図参照)
このうち、UF6 を正圧で扱う工程は、原料の UF6 を蒸発・加水分解し、UO2F2 溶液を
製造するまでの蒸発・加水分解工程である。蒸発工程では、蒸発器に装填された
UF6 シリンダを外側から水蒸気で加熱することにより、UF6 シリンダ内部の固体の
UF6 を気化させる。気化させた UF6 ガスを UF6 配管経由で加水分解装置(エジェクタ)
に送る。加水分解工程では、UF6 を水と混合して加水分解反応させることにより、
UO2F2 溶液とする。
なお、蒸発・加水分解工程の関連設備として、UF6 の漏えいがあった場合に備え、
漏えいした UF6 を処理するために局所排気設備を設置している。
UF6
UF6を正圧で扱う範囲
(UF6 を正圧で扱う範囲)
蒸発
純水
蒸発・加水分解工程
加水分解反応式
UF6+2H2O→UO2F2+4HF
加水分解
UO2F2溶液
アンモニア水
沈殿反応式
2UO2F2+8HF+14NH4OH→(NH4)2U2O7+12NH4F+11H2O
沈殿
(NH4)2U2O7
固液分離・洗浄
乾燥
水素ガス
焙焼還元反応式
(NH4)2U2O7+2H2→2UO2+2NH3+3H2O
焙焼還元
粉砕充填・混合
UO2粉末
図 再転換工程の概要図
17
添付 4
<平成 26 年 1 月 15 日 第 38 回原子力規制委員会配布資料>
資料 1-2
六ふっ化ウランが一般公衆に及ぼす
化学的影響に関する確認事項(案)
平成 26 年 1 月 15 日
原子力規制委員会
ウラン燃料加工施設における六ふっ化ウランの取扱いが一般公衆に及ぼす化
学的影響に関する報告の提出について(指示)
(平成 25 年 12 月 11 日付
NRA-11d-13-023)に基づき提出される報告については、以下の点に留意して確認
することとする。なお、重大事故対策は最適評価によることが基本であることか
ら、実際の挙動を適切に考慮した評価であるとともに、過度の保守性を見込むこ
とによって実態から乖離した評価にならないようにすることに留意することも重
要である。
1.事故事象の選定
六ふっ化ウラン(UF6)の漏えいに至る事象については、新規制基準に基づき
選定される重大事故と同じ事象が選定されていること。
2. 建屋外に漏えいする量の予測
(1) UF6 は、空気中の水分により、ふっ化ウラニル(UO2F2)とふっ化水素(HF)に加水
分解する。また、HF は、ふっ化水素酸(HF の水溶液)や重合体を形成する。これ
らの化学物質は、物理化学性状が異なることから、建屋内における沈降、壁等
への付着といった効果の大きさが異なる。このため、建屋外に漏えいする量を予
測するに当たって、これらの効果を考慮しているとともに、適切な根拠が示され
ていること。
(2) UF6 の漏えいのおそれのある設備の排気系にはスクラバ又はケミカルトラップ
が設置されているが、漏えい経路としてこれらを介さない場合やこれらが十分機
能しない場合などが適切に考慮されていること。
(3) HF はガラスを腐食させる性質を有することから、換気系に施設されているガラ
ス素材のフィルターを劣化させる等の影響が適切に考慮されていること。
3. 建屋外に漏えいした後の移行予測
(1) 建屋から放出された UF6 等の移行は、その性状、拡散途中における沈降・沈着、
建物による巻き込みにより影響をうける可能性があることから、適切な移行予測
の方法が選定され、その適切性が説明されていること。
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(2) 移行予測には、放出される物質の性状の違いを考慮しないで一律の挙動を示す
ものとして扱う気象指針や、物質の性状の違いを考慮する HGSYSTEM/UF6 等
の様々なモデルを利用できるが、適切なものが用いられていることが説明されて
いること。
4. 暴露時間、暴露濃度の評価
(1) 漏えいの発生後検知するまでに要する時間、漏えいの停止作業に要する時間等
から予想される放出継続時間等を踏まえ、一般公衆の暴露時間が適切に考慮さ
れていること。
(2) 暴露濃度については、敷地境界等の一般公衆への影響が最も厳しくなる地点に
おける値が示されていること。
5. 影響評価
(1) 一般公衆への影響について、「穏やかで一時的な健康影響」を生じないレベル、
具体的には米国の NUREG-1520 と同様に、米国の急性暴露ガイドラインレベル
(Acute Exposure Guideline Level)に定められる AEGL-1 のしきい値を超えないよ
うに抑えられることを確認していること。これ以外の値を用いる場合には、その妥
当性について示されていること。
(2) 影響評価は、UF6 のみならず、HF や UO2F2 についても考慮されていること。
なお、AEGL 等には、UF6 及び HF の値は定められているが、UO2F2 の値は定めら
れていない。このため、UO2F2 の影響をどのように考慮したかが示されているこ
と。
(参考)
AEGL のしきい値
UF6(六ふっ化ウラン)
暴露時間
10 分
AEGL-1
3.6
HF(ふっ化水素)
暴露時間
10 分
AEGL-1
1.0
(単位:mg/m3(UF6 量))
30 分
1 時間
4 時間
8 時間
3.6
3.6
NR
NR
NR: 値を設定するにはデータが十分でない
30 分
1 時間
1.0
1.0
19
(単位:ppm(体積比))
4 時間
8 時間
1.0
1.0
添付 5
最大想定事故の事故シナリオについて
◯ 最大想定事故の事故シナリオ
経済産業大臣が、平成 20 年 8 月 29 日付け平成 19・06・20 原第 1 号をもって許可した「三菱原子
燃料㈱の核燃料加工事業変更許可申請書」の最大想定事故の事故シナリオ
◯ 最大想定事故の事故シナリオの概要
UF6 を正圧で扱う再転換工程5の蒸発・加水分解設備における蒸発器から加水分解装置まで
の配管が破損し UF6 が漏えいする状態を想定。
三菱原子燃料㈱による評価
評価条件
配管破損部からの UF6 の放出量
漏えい時間
20 ㎏ UF6/分*1
10 分*2
*1:漏えい部の圧力 0.6MPaG
*2:HF 検出装置により UF6 の漏えいを検知した場合に自動閉止する UF6 遮断弁が作動せず、シリンダ
の弁を手動で閉めるまでの時間を安全側に設定
評価結果
一般公衆の線量:転換工場の排気口から直近の周辺監視区域外における一般公衆の実
効線量は約 8×10-4m ㏜であり、基準値 5m ㏜と比較して極めて小さい。
化 学 的 影 響:評価点(転換工場の排気口から直近の周辺監視区域境界)における
空気中の UF6 濃度(漏えい時間 10 分間)は 3.5×10-4 ㎎ UF6/㎥であ
り、AEGL-1 のしきい値である 3.6 ㎎ UF6/㎥より十分に小さい。
図1
5
蒸発・加水分解設備における配管破損時の UF 6 漏えいに関する状況説明
再転換工程: UF6 を化学処理して、二酸化ウラン(UO2)粉末にする工程
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添付 6
図 転換工場の概要図
注: 凡例 第「1 種管理区域」、「第 2 種管理区域」とは、従来の許可基準としていた、原子力安全委員会のウラン加工施設安全審査基本
指針の指針 4.閉じ込め機能の作業環境の汚染防止に対する考慮として示された、「ウラン加工施設の管理区域は、ウランを密封し
て取扱い又は、貯蔵し、汚染の発生するおそれのない区域(第2種管理区域)とそうでない区域(第1種管理区域)とに区分して管理
すること」に従ったもの。
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資料 1
UF6 漏えい事故に係る放射線被ばく評価に関する主な評価条件について注
事項
① 建屋外に漏えいす
る U 及び HF の量
の評価条件
② 排気口からの漏え
い量
③ 放出源有効高さ
④ 評価地点
⑤ 大気安定度、風速
確認内容
蒸発・加水分解工程における配管破損部から放出する UF6 の量を、配
管抵抗はないものとして、漏えい部の圧力を 0.6MPaG とし、20kgUF6/
分としている。
漏えい時間は、漏えいを検知してシリンダの弁を手動で止めるまでの
時間を安全側に 10 分としている。
漏えいした UF6 の 99%はスクラバにより捕集され、残りの1%が排気系に
移行するものとしている。
排気系の高性能フィルタ(セルフコンテンツ型 2 段連続)のウラン捕集
率は、HF による影響を考慮して 99.97%としている。HF は、高性能エア
フィルタでは捕集されないとしている。
0.41gU
0m (保守的に地表面から放出したとしている)
110m (排気口から直近の周辺監視区域までの距離)
大気安定度:F、風速 1.0m/秒
UF6 漏えい事故に係る UO2F2 及び HF 濃度評価に関する主な評価条件について注
①
②
③
④
⑤
⑥
事項
配管からの UF6 の
漏えい量
スクラバ捕集効率
高性能フ ィ ル タ ー
捕集効率
放出源有効高さ
評価地点
大気安定度、風速
確認内容
20kgUF6/分×10 分=200kgUF6
99%(UO2F2)、99.5%(HF)
99.97%(UO2F2)、0%(HF)
16.9m
110m (排気口から直近の周辺監視区域までの距離)
大気安定度:F、風速 1.0m/秒
注)MNF による建屋外へ移行する UF6 の漏えい量の予測の過程で用いられた条件が、保守的に設定されているか確認す
るため、MNF から提出された「再転換工程における六ふっ化ウランの取扱いが一般公衆に及ぼす放射線被ばく及び化
学的影響に関する現状確認の報告書」に記載された条件を原子力規制庁が確認し、要点をとりまとめたもの。
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資料 2
現状確認に関する主な事故対策(概要)注
MNF が講じるとしている UF6 漏えい事故における主な事故対策は、以下のとおり。
⑴ 一般行公衆を対象とした事故対策
① 再転換工程の運転時に講じる措置
2 系統ある蒸発・加水分解設備の同時運転を制限する。
蒸発・加水分解設備の運転と関連のない作業は、同設備が停止している時
に限定する。
震度 5 以上の地震が発生した場合(地震の発生予測を含む。)及び台風等
により防災組織要員の招集に支障をきたすおそれがある場合には、蒸発・
加水分解設備を含め、加工施設の運転を停止する。
② 漏えいの拡大防止
再転換工程の蒸発・加水分解設備にある UF6 遮断弁が作動しない場合、シ
リンダ弁を手動で閉止し、UF6 の供給を停止する。
③ 一般公衆への影響緩和措置
排風機を停止する。
建屋の扉等に目張りをする。
⑵ 放射線業務従事者を対象とした事故対策
① 蒸発・加水分解設備の運転中に転換工場へ入室する放射線業務従事者の管
理に関すること
入室の制限及び入室者の管理をする。
単独作業を禁止する。
② 蒸発・加水分解設備の運転中に UF6 の漏えい事故が発生した場合の UF6 の放
射線業務従事者への直接暴露の防止に関すること
蒸発・加水分解設備外周へ防護カバー設置する。
耐 HF 防護マスクを携行する。
③ 要救助者が発生した場合の救助に関すること
班長により避難指示する。
化学防護服等着用して救出活動をする。
④ 漏えいした UF6 の閉じ込めに関すること
建屋の扉等に目張りをする。
注) MNF から提出された「再転換工程における六ふっ化ウランの取扱いが一般公衆に及ぼす放射線被ばく及び化学的
影響に関する現状確認の報告書」から抜粋し、要約したもの。
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資料 3
現状確認に係る経緯の概要
平成 26 年 3 月 20 日付け三原燃第 13-128(平成 26 年 7 月 8 日、平成 27 年 12 月
18 日、平成 28 年 3 月 1 日及び同月 9 日付けをもって一部補正)をもって、三菱原子燃
料株式会社から、原子力規制委員会あて、「再転換工程における六ふっ化ウランの取
扱いが一般公衆に及ぼす放射線被ばく及び化学的影響に関する現状確認の報告に
ついて」が提出された。
同報告内容を確認するに当たっては、その詳細を聴取するため、MNF に対し 45 回
の面談を実施した。また、同報告書で説明された UF6 の化学的特性を考慮した事故対
策が用意されていることを確認するため 2 回の現地調査を実施した。
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