学力向上に向けた課題 [18KB pdfファイル]

学力向上に向けた課題
千歳市学力向上検討委員会は、全国学力・学習状況調査や市内の小中学校で取り組まれた提言の実
施状況調査の結果を分析し、千歳市の児童生徒の学力向上に向けた課題を次のように整理した。
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学校における課題
(1)望ましい学習集団の育成
集団での学びの充実を図るためには、生活や学習に関する基本的なルールが守られ、互いを認め合
う支持的風土があり、安心して学べる環境が保たれている集団づくりに取り組むことが重要である。
千歳市では、平成 27 年度から市内全小中学校において、学級の満足度を客観的に捉えることができ
るハイパーQU 検査を実施し、不満や不安を感じている児童生徒や学級全体の満足度を把握し、学力向
上に結びつく望ましい学習集団の育成に取り組んできている。今後は、様々な事例への対応策を組織
的に検討し、実行できる校内の体制づくりを進めるとともに、ハイパーQU 検査の分析方法や指導事例
などの情報を市内の各学校が共有できるような手立てを工夫し、活用の幅を広げていく必要がある。
また、学びの基盤となる関心・意欲・態度を高めていくためには、児童生徒が自分に自信をもち、
価値ある存在であることを自覚し、学校生活を送れるようにすることが大切である。全国学力・学習
状況の児童生徒質問紙の結果からは、自己有用感の高まりが見られるものの、依然として全国平均を
下回っていることから、今後も、他者を好意的に受け止めたり、他者との絆や社会とのつながりを感
じ取ったりできるボランティア活動や職場体験活動等を通して、自尊感情や自己有用感を高めていく
ことが必要である。
なお、本市の課題として取り上げていた「思いやりの心をもち、いじめを許さない心の育成」につ
いては、小中学校共に積極的な取組により、「いじめはどんな理由があっても許されない」と考える
児童生徒の増加が見られるが、この課題は、100%を目指すものであり、今後も、道徳教育はもとより、
あらゆる教育活動を通して、他者のよさに気付き他者を思いやる心を育ていじめを許さない学校風土
を醸成していく必要がある。
(2) 学校改善プランの確実な実行
各学校においては、全国学力・学習状況調査結果から明らかになった自校の課題を踏まえ、児童生
徒の学力の向上を目指す「学校改善プラン」を作成し、その着実な実行に努めている。特に、日々の
授業の充実を図ることについては、市内のすべての学校が重視している内容であり、1単位時間の学
習で「課題」と「まとめ」をしっかり板書する取組が進められている。今後も、「何について学習す
るのか」「何がわかったのか」を児童生徒にしっかり理解させ、分かったことを使って学習内容の定
着を図る授業が、どの学級、どの教科においても展開されるよう、全校的な取組を進めていく必要が
ある。
また、千歳市の全ての小中学校では、実物投影機や電子黒板などの ICT 機器を活用した授業が行わ
れており、デジタル教科書が整備されてからは、活用頻度が大幅に伸びている。ICT 機器の活用は、
集中力を高めたり視聴覚教材を使ったわかりやすい説明で理解を深めたりすることができるなど、大
きな効果が期待できるが、その活用方法については、一層研修を深める必要がある。特に、電子黒板
は書き込みができることから、黒板の板書がなおざりになることが危惧される。日々の授業の充実を
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図るためには、児童生徒が学習課題を理解し、その課題を解決するために思考したり、表現したりし
て、課題を解決するという学習過程を大切にすることが必要であり、そのような、学習の流れが黒板
と児童生徒のノートに記録され、いつでも授業を振り返ることができるようにしていくことが求めら
れる。ICT 機器は、教師の指導力に組み込まれて大きな効果が期待できることを踏まえ、指導力の向
上を目的とした校内研修に ICT 機器の活用を位置付け研修を深めていく必要がある。
なお、授業に対する児童生徒と教師の意識に隔たりが見られることから、児童生徒による授業評価
の取組を一層進めるなど、児童生徒の側に立ち授業改善に取り組むことが必要である。
1 単位時間の授業の質を高めていくためには、児童生徒の学び方も重要な要素となる。このため、
各小中学校においては、独自に学習規律を定め、その徹底に努めており、先進的な事例として、中学
校区で指導事項の統一(スタンダード)を図ろうという動きも見られる。今後は、学級・学年による
ばらつきや徹底されない事項がないよう、全ての児童に学習規律を確実に身に付けさせることや義務
教育 9 年間を見通した系統性のある学習規律の作成に取り組んでいく必要がある。
全国学力・学習状況調査では、下位層の割合を把握する指標が示されているが、当学力向上検討委
員会では、その指標を用いた分析は行っていない。しかし、各小中学校が作成した学校改善プランに
は、この指標を用いて基礎・基本の習得状況を分析している学校も見られる。下位約 25%の範囲にあ
る児童生徒の割合を把握することは、授業改善や習熟度別少人数指導などの指導体制の重要なデータ
として活用できることから、今後は、下位 25%に含まれる児童生徒の割合についても調査結果の分析
内容に加える必要がある。
千歳市においては、国語は全国と同水準で推移しているが、算数・数学科の平均正答率が全国を下
回っており、算数、数学への興味・関心・意欲も低い状況が続いることから、算数・数学への関心を
高め、知識・理解・技能の向上を図ることが緊要な課題となっている。このため、小規模校を除く小
学校 13 校では、千歳市が独自に配置している学習支援員を活用し、算数科において習熟度別少人数指
導を実施しており、中学校においても TT 指導により、個に応じた指導の充実に努めている状況も見ら
れる。
このような小中学校の取組が、より大きな成果を上げるためには、今後、小学校においては、実施
学年、実施単元の拡大や習熟度別クラスに応じた教材や学習過程の工夫が必要である。また、中学校
においては、校内の指導体制を工夫し、つまずきの多い単元や演習の時間を複数の教員で指導するな
ど、可能な方法を検討し積極的に対応していくことが求められる。
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家庭における課題
子どもの生活習慣を形成し、健全な子どもを育てる家庭の役割は大きい。しかし、食事・起床・就
寝などの生活リズム、テレビやゲームに興じる時間、家庭学習や読書習慣の形成などについての課題
は依然として残されている。しかし、その解決を目指す主体は個々の家庭に委ねられており、各家庭
へどのように働きかけるのかという課題に取り組むことが求められる。そこで、ここでは、PTA、学校、
教育委員会から家庭への発信としてとらえることにする。
(1)PTA から家庭へ
保護者が自らの課題として受け止め、課題の解決の仕方を考える機会を様々に設けることが考えら
れる。本年度、千歳市 PTA 連合会は、家庭における子どもの規律ある生活態度を身に付けさせるため
家庭でのルールづくりを呼びかける「千歳市家庭生活宣言」を市内の全保護者に配布し、啓発運動を
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展開してきている。この運動の輪を広げ、子どもの生活習慣の改善が図られるよう、各単 P が独自に
アンケート調査を実施し、各家庭に情報を提供したり、学校と PTA が連携を図り、
「千歳市家庭生活宣
言」運動の普及を図ったりする取り組みを展開していくことが望まれる。
(2)学校から家庭へ
このことについては、学校の課題として常に取り上げられてきているが、今後も、生活リズムチェ
ックシートなどを活用した生活リズムの形成、家庭学習の手引きなどを活用した家庭での学習習慣や
読書習慣の形成、学力や体力を特集した便りの発行などの啓発活動等を粘り強く継続していくことが
必要である。
(3)教育委員会から家庭へ
これまで発行されてきた教育委員会だより「からふる」やHPによる啓発、教育に関する相談など
に継続的に取り組むことが求められる。
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教育委員会における課題
(1)ICT 機器の活用に関して
電子黒板や実物投影機は市内全ての学校において積極的に活用されているが、デジタル教科書が配
備された今年度は一層活用が進んでいる。次年度は、中学校にデジタル教科書が配備され、特別教室
にも電子黒板が整備されることから、これまで以上に活用されることが期待される。
ICT 機器の活用については、現在、教師の活用が主であるが、今後、学習者の活用が進むと考えら
れる。千歳市においては、先進的な取り組みとして生徒がタブレットを活用し、協働学習やプレゼン
テーションづくりに取り組む事例も見られるが、今後、学習者の学びを大きく変えるツールとしてタ
ブレットの活用に注目が集まることが考えられる。このため、ICT 機器活用の次のステップとしてタ
ブレットの導入に関する研究を進める必要がある。
(2)習熟度別少人数指導の充実に関して
市内の各小中学校においては、基礎・基本の確実な習得を目指し、TT 指導や習熟度別少人数指導を
導入するなど、指導体制や指導方法の改善に努めている。千歳市教育委員会は、平成 26 年度から市内
の小学校に市独自の学習支援員を配置する事業を開始し、平成 27 年度には小規模校を除く 13 校すべ
てに学習支援員を配置し、学校の取組を支援してきている。
習熟度別少人数指導の効果を高めるためには、習熟度別クラスの編成の仕方やそれぞれのクラスの
指導過程及び指導方法の工夫、適用問題の作成等が重要な課題となるが、先進校の実践を、学校教育
指導等を通して各学校に提供するなど、質的な改善に向けた支援を強化していくことが必要である。
(3)学習活動の基盤となる学級集団づくりに関して
児童生徒が自分らしさを発揮し安心して学習活動に取り組めるためには、自分が所属する学級が支
持的風土のある学級集団であることが不可欠である。千歳市教育委員会では、各学級の満足度や集団
の状況を客観的に把握できるハイパーQU 検査の費用を負担し、各小中学校における学級・学年経営を
支援してきている。本検査を有効に活用するためには、検査結果の分析や検査結果を踏まえた対応策
の立て方について理解を深めることはもとより、NRT 検査とハイパーQU 検査をクロスさせ、特別な支
援を必要とする児童生徒を把握し、個別の指導を促進していく必要がある。なお、ハイパーQU 検査を
効果的に活用するためには、管内的にも実施している学校は少ないことから、千歳市に異動してきた
教員に対して研修の機会を提供する必要がある。
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(4)家庭への支援に関して
学校で学習した内容を確実に身に付けるためには、家庭での復習や反復練習が必要であり、市内の
小中学校においては、家庭学習の習慣化の取組に力を注いでいる。千歳市教育委員会は、イントラネ
ットである「サイボウズ」に各学校で作成した問題や学習プリントを保管し、いつでもだれでも活用
できるシステムを構築しており、日常の授業での活用や休日や休業中の課題(宿題)としての活用を働
きかけていく必要がある。また、千歳科学技術大学が開設しているe−ラーニングの積極的な活用を
促す取組を進めていくことも必要である。さらに、困り感をもつ家庭への支援の充実を図り、児童生
徒が健全に成長できる環境づくりを進めていくことが求められる。
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