社協・生活支援まちづくり Report (第5号) 2015(平成27)年3月31日 宮崎県社会福祉協議会 県内 25 市町村社協、全国社会福祉協議会渋谷事務局長、県社協の総勢 69 名が参加しました。 平成26年度から開始した社協・生活支援まちづくり強化プロジェクトの1年目が大詰めを迎 えた平成27年3月6日(金) 、本プロジェクトで進めてきた成果と今後の方向性を県内の社会 福祉協議会全体で共有することを目的に「社協・生活支援まちづくり強化プロジェクト全体共有 会議(第 4 回推進会議) 」を開催しました。 この会議では、全国社会福祉協議会事務局長の渋谷篤男氏をお招きし、中央情勢の動向に関す る基調説明をいただくとともに、社協・生活まちづくり強化モデル事業の指定3社協(都城市社 協高崎支所、高鍋町社協、日之影町社協)とひとり親家庭支援員派遣事業受託2社協(日南市社 協、門川町社協)から取組の報告をいただきました。 本号では、これまで Report で御紹介してきた社協・生活まちづくり強化モデル事業の取組成 果を中心に御紹介します。 = 基調説明「中央情勢報告」 ============ 渋谷局長からは、平成27年度から本格施行される生活困窮者自立支援 制度や介護保険制度改正、社会福祉法人制度のあり方等について基調説明 をいただきました。 基調説明では、新しい制度が動き始める中で、改めて社協の本質を認識 し、制度からニーズを見るのではなく、地域のニーズに目を向けることや 地域における協働を実現していくことなど、社協が進むべき方向とともに、 全社協事務局長 渋谷篤男 社協が持っている相談・支援機能の特性を活かした取組への期待についてお話いただきました。 市町村社協と県社協で協働しながら、本プロジェクトを進めていく必要性を改めて認識する機 会となりました。 1 氏 == 社協・生活支援まちづくり強化モデル事業報告 ============ ○ 都城市社会福祉協議会高崎支所 都城市社会福祉協議会高崎支所では、 「伴走からゴールまで」の総合相 談支援活動を目的に、常設の相談支援体制を充実させ、個別支援に取り 組みました。 また、職員を対象に事例検討会や研修会を開催するなど、社協内での 目標を共有化し、職員間の連携と個別支援機能の強化に取り組みました。 さらに、関係機関との意見交換を実施したり、地域の拠点としてコミ ュニティ・カフェをつくり、個別支援を行う中で就労体験や地域とのつ ながりを作る場として活用するなど地域生活支援の仕組みづくりにも取 都城市社協高崎支所からの報告 組みました。 モデル事業を通して、社協内での情報共有を行い、積極的なアウトリーチと地域包括ケアの展 開が進められてきました。今後、目指す個別支援を業務標準化し、社協内、医療等との連携をさ らに進めていくこととしています ○ 高鍋町社会福祉協議会 高鍋町社協では、これまで地域包括支援センターや基幹相談支援セン ター、居宅介護支援事業所等事業ごとに相談を受けていましたが、各相 談事業で上がってきた課題を社協全体で支援できるようにコーディネー トする体制を平成27年度から整備していきます。 また、子どもへの学習支援(サポート&スタディ「社協塾」 )にも取り 組んでおり、これまでの取組経過や課題、今後の展開について御報告いた だきました。 さらに、現在関わっている個別事例について、個別支援と地域支援の展 高鍋町社協からの報告 開に向けた取組についても御報告いただきました。 モデル事業を通して、社協塾開設の新たな試みのほか、住民とともに支援会議を開催するな ど地域づくりが進められてきました。今後、地域での見守り体制の構築や生活困窮者等への緊 急時支援など、個別支援と地域支援を両輪で進めていくこととしています。 ○ 日之影町社会福祉協議会 日之影町社協では、地域住民のニーズを、地域住民が参加して支援する取組として、 「あ なたの望み叶えます」や「お助け2860」 、 「福祉人材バンク」等を行っています。 また、サロンボランティアや電話で安否確認をするボランティアなど、 ボランティア別の連絡会議を開催することで「住民のニーズ把握」に取り 組んでいます。 さらに、総合相談・生活支援に重点を置いた個別支援の強化を図ってお り、社協が持っている資源を最大限に活用した「就労支援」と、それをき っかけにした「生活支援」に取り組んでいます。 モデル事業を通して、中間的就労の場の提供や空き家を活かした住民福 祉活動の展開を進めてきました。今後、買い物支援や法人後見に取り組む 予定としており、地域住民とともに具体的な生活支援活動を進めていくこ 日之影町社協からの報告 ととしています。 2 これまでの 取組の成果 社協・生活支援まちづくり強化プロジェクト開始から1年。 市町村社協と県社協が協働で進めてきたプロジェクトの取組によ り、次のような成果を得ることができました。 1 「人」を中心にした支援 制度・事業に関係なく、 「生活のしづらさ」を抱える人・家族を対象とし、その人たちの尊 厳と主体性を重んじたオーダーメイドの必要な支援を包括的・継続的に行っている。 2 「社会的排除・孤立」から「社会的参加」へ 「支えられる側」 「支える側」の垣根をなくし、支援対象者の自己有用感の醸成や社会参加 意欲の向上につなげ、中には就労につながった事例もあるなど、その人の意欲や想いに寄り 添った支援を行っており、そこには社協が頼りにされている姿がある。 3 つながりの再構築 「支援対象者が地域社会に」 「地域社会が支援対象者に」つながるコーディネートを社協が 仕掛け、つながりの再構築を図る取組をしている。 4 地域づくり、地域資源の活用 自組織の資源(土地建物・設備)や、地域の社会資源(人、もの、金、とき、情報)を活用 した、新たな生活支援の仕組みづくり(中間的就労、学習支援、拠点づくり等)を行っている。 地域住民や関係機関・団体の理解を広げ、多様な関係者と連携した取組を行っている。 5 市町村社協と県社協の新しいパートナーシップ (1) 協働の場や体制づくり ・ 「協働のプラットフォーム」を設置し、それぞれの地域の生活課題について、 「共に悩み、 共に汗をかく」体制を構築 ・事業推進に必要な専門家を巻き込んだバックアップ体制を構築 ・他の市町村が参加しやすいような運営面の配慮 (2) 目的・目標の共有 ・共通の「目的」 「目標」に向け、市町村社協と県社協が意識をあわせた取組 (3) 明確なプロセスデザイン ・クリティカルパス(プロジェクトを達成させるまでに必要な全ての活動)を見極め、全体 のスケジュールを組んだ、市町村社協と県社協が歩調を合わせた取組 (4) お互いの役割を補完し、相乗効果を生み出す ・ 「市町村社協は地元の実績にあった事業展開」 、 「県社協は市町村社協の個別支援や協働の 場づくり」という各主体の役割のもと、お互いの自主性・主体性を確保した取組を進めてい る。 ・お互いの能力、資源、ノウハウ、規模などはまちまちで取組の仕方も異なるが、お互いの 持つ経験や知恵を共有化(シェアリング)し、尊重し合うことで、より大きな、そして新た な成果を生み出している 3 大切にしたい 6つの視点 1 [発見と見守り・権利擁護] これまでの成果を振り返りながら、今後、取組を進めていく上で大 切にしたい視点として6つを整理しました。 2 [当事者を中心とした組織化] 3 [ボランティア・市民活動・企業活動等] 身近な地域で、高齢者・障がい者・子ど 同じ課題を抱える人たち同士が、仲間 多様な個人、企業や NPO などの組織 も・生活困窮者・引きこもりなど、生活 と出会い交流する場面をつくること が、それぞれのもつ特性を活かして、 のしづらさを抱える人たちに気づき、見 は、互いにサポートしあい、生きる力 地域とつながり、互いの強みを活かし 守り、総合的な相談窓口と連携すること を高め、意見を表明することにつなが た協働を生み出すことによって、相互 が、事態の深刻化や権利侵害を未然に防 る。支援者同士が連携するだけでな に補完しあいながら、住民ニーズをキ ぐ。一人の暮らしを守るとともに、同様 く、当事者の人たちを中心とした支え ャッチし、それに対するアクションを の生活課題を抱える人たちを支える”し 合いのネットワークをつくることが、 多彩に展開することができる。有償活 くみづくり”を意識することが大切。 一人ひとりの自立と社会参加のステ 動、ビジネス手法の活用など、その手 ップへとつながる。 法も広げていく。 [福祉教育・ボランティア学習] [社会福祉施設・事業所との連携] [防災・減災に向けてのつながりづくり] 子どもから大人まで、 一人ひとりが尊重 社会福祉施設や福祉サービス事業者も 日常の地域福祉活動の中で、生活上の され、 地域で誰もが排除されることなく 地域の一員として、地域との交流を図 配慮が必要な人を把握し、災害時にど 共に生きるための福祉の心を育む機会 り、施設・地域双方がもつ資源の相互 んなサポートが必要なのか、誰が中心 を重ねることは、 福祉課題への関心を高 活用などをすすめることは、互いの理 となってサポートできるかなどをみん め、担い手を発掘・育成し、活動を活性 解を深め、協働による課題解決の可能 なで考え、情報共有し、また、当事者 化することにつながる。 そうした学びの 性を広げることにつながる。また、種 参加型の訓練などを重ねることで、地 場面を継続することが住民が主体とな 別を越えて施設同士の連携の場をつく 域の防災力が高まる。地域外の支援者 って地域の福祉課題を協働で解決する り、複雑・多様化する福祉ニーズへの 土壌をつくる。 対応力を高めることが大切。 をどう受け止めるか、[受援力]もキー ワード。 4 5 6 平成27年度の方向性 平成27年度は、引き続き「社協・生活支援まちづくり強化プロジェクト」を基幹として、次 の事業を推進していきます。 ○ 社協・生活支援まちづくり強化モデル事業(6社協)の実施。 ○ 市町村社協巡回相談(ブロック別会議)の実施。 ○ 総合的な権利擁護支援のための「宮崎県権利擁護支援センター」の設置。 ○ 生活困窮者自立支援制度・介護保険制度改正等の各制度への対応。 ○ 社会福祉法人の社会貢献事業の実施に向けた「ヒムカの国 あんしんセーフティネット事 業」 (仮称)の検討。など 4
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