ひたちなか市三師会市民講座 食物アレルギー ~アレルギーを起こしにくくする食事の摂り方を中心に~ グリーン薬局 栄養士 石塚 舞 小森 あずさ 食物アレルギーとは… 特定の食物を食べた時に、体を守る免疫シス テムが過敏に働きアレルギー症状が起こる 食物アレルギーの原因となる成分は食物に含 まれるたんぱく質である 乳幼児期と学童~成人期では原因となる食品 に違いがみられる 食物アレルギーのタイプ ①即時型 食後2時間以内に、じんま疹、咳、呼吸困難を起こす 複数の症状が同時に起きる→アナフィラキシー ②食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎 ③新生児・乳児消化管アレルギー 特殊なタイプのアレルギー① 口腔アレルギー症候群 果物や野菜に反応し起こる即時型アレルギー 症状としては口の中がピリピリしたり痒みや腫れなどだが、 大量に食べて全身症状が出てしまうこともある 花粉症を伴うことが多い(交差反応) 花粉 果物・野菜など カバノキ科(シラカバ) リンゴ・モモ・イチゴ・ヘーゼルナッツ ジャガイモ・キウイ・ニンジン・セロリ ヒノキ科(スギ) トマト キク科(ヨモギ) セロリ・ニンジン・マンゴー キク科(ブタクサ) メロン・スイカ・ズッキーニ・きゅうり・バナナ イネ科 メロン・スイカ・トマト・ジャガイモ・キウイ オレンジ・ピーナッツ 特殊なタイプのアレルギー② 食物依存性運動誘発アナフィラキシー 食べるだけなら平気でも食後運動をするとアナフィラキ シー症状が起こることがある 運動によって腸の消化や吸収に変化が起き、アレルゲン 性を残したたんぱく質が吸収されてしまって起きると考 えられている 原因食品を食べた場合、食後2時間は運動を避けること アレルギー原因食品の比率 摂取後、60分以内に 症状が出現し、 医療機関を受診した 患者数 年齢別のおもな原因食品 食物アレルギーのおもな症状 原因となる食物を摂取して2時間以内に症状が現れる 食物アレルギーの診断 1.食物日誌・問診 何を食べたか? どれだけ食べたか? 食べてから発症までの時間は? 症状の持続時間は? 症状の特徴は? 症状の再現性があるか? 2.病院での検査(血液検査、皮膚試験) 3.食物除去試験(食べるのをやめてみる) 食物経口負荷試験(食べてみる) 食物経口負荷試験とは・・・ 原因食物の診断 食物アレルギー原因食物の確定、まだ食べたことのない食物 が食べられるかの確認、食物制限のレベルの再評価のために 行う 食べてみる試験 過去にアレルギー症状のあった食物が食べられるようになった か <方法> 食物を少しずつ数回に分け増量し摂取する 摂取間隔は15~30分で最終摂取から少なくとも2時間程度 は院内で経過観察する 症状が出た場合はすぐに治療を行う アレルギー表示とは 近年、乳幼児から成人まで特定の食物が原因でアレル ギー症状を起こす人が増えており、中には死に至るほど 重篤な症状の方もいる。 食品による健康被害を防止することを目的に食品衛生 法関連法令が改正され、平成14年4月以降にアレルギー 表示が義務づけられるようになった。 <表示の目的> 1、重篤なアレルギー症状が起きるのを避けること 2、表示を見ることで、食べても大丈夫な加工食品を選 べること 加工食品のアレルギー表示について (日本ハム食物アレルギーねっとより引用) アレルギー表示の対象 (日本ハム食物アレルギーねっとより引用) 注意喚起表示と可能性表示 <注意喚起表示> 原材料表示の欄外にある「本品製造工場では●●を含 む製品を生産しています」などの表記は注意喚起表示 という 最重症の患者でなければ通常食べることができる <可能性表示> 「●●が入っているかもしれません」「●●が入ってる 可能性があります」などの可能性表示は禁止されてい る 食物アレルギーと診断されたら… 原因食物が何に含まれているかを知る 自己判断せずに、専門医の的確な診断に基づいた最 小限の食物除去を行う。予防的な食物除去をする必 要はない 栄養面、調理や食品選択において、除去する食物の代 わりになるものを利用し、患者やその家族の生活の質 を維持する 原因となる食物の混入を防ぐため、調理器具・食器は 分別するか、充分に洗浄して使用する 定期的に専門医の診察を受け、治っているかチェック する 食事療法 食物除去によって栄養が偏らないようバランスよく食 事をする 除去する食物を使わない調理方法や加工食品を活用 し、食生活を豊かにする 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <鶏卵> ・鶏卵を除去しても他の肉や魚などのたんぱく質により栄養 面における代替が可能 ・加熱によりアレルゲン性は低下するため、加熱卵が食べら れても生卵や半熟卵などの摂取には注意する ・鶏卵は多くの加工食品に使われているので、食品表示に注 意すること ・市販のクッキーやビスケット、ケーキミックスなどでも鶏卵 を含まない製品もある ・鶏肉・魚卵は除去する必要はない <主なアレルゲン> オボムコイド・オボアルブミン・オボトランスフェリン <鶏卵> 卵を使わない調理アレンジ ★ひき肉料理のつなぎ でんぷん(片栗粉など)や山芋、れんこんなどをすりおろして使 う。豆腐や刻んだ野菜、水分を多めに入れることでやわらかく 仕上がる。 ★揚げ物の衣 小麦粉やでんぷんを水で溶いてからめると衣が付きやすい。ま た、下味をつけてからまぶし唐揚げにしても美味しく食べれる。 ★ホットケーキなど 重曹やベーキングパウダーを使ってふっくら仕上げる。 パサつく時は、バターや牛乳などを多めするとよい。 ★プリン、卵豆腐・・ゼラチンや寒天で固めることができる。 ★料理の彩り・・かぼちゃ、コーン、黄パプリカなどを代用する 卵が食べられないと栄養素が不足するの? 鶏卵1個(50g) たんぱく質が不足しないよう 大豆、魚、肉、乳製品で補いましょう。 たんぱく質 6.2g ゆで大豆 1/3カップ(40g) 絹ごし豆腐 約1/3丁(130g) 納豆 小1パック(40g) 魚の切り身 1/2切れ(30~40g) ツナ缶(油漬け) 小1/2缶(35g) イカの胴 1/3ぱい分(30~40g) 牛・豚薄切り肉 約2枚(30~40g) 鶏肉(唐揚げ用) 約1切れ(30~40g) 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <牛乳> ・牛乳はたんぱく質の代替は可能だがカルシウムが不 足しやすい ・鶏卵と違い加熱してもアレルゲン性が低下しにくいた め注意が必要 ・低年齢児ではアレルゲン除去ミルクによる代替もでき る ・牛肉は除去する必要はない <主なアレルゲン> カゼイン・ラクトグロブリン <牛乳> 牛乳を使わない調理アレンジ ★ホワイトソースの代わりに じゃがいもやかぼちゃを煮崩してポタージュ状にしたり、乳 成分が含まれていないマーガリンと小麦粉(米粉)ルウを 作ることができる。アレルギー用のルウも利用できる。 豆乳を使ったり少量のひき肉やコンソメを入れると味にコ クがでる。 ★洋菓子(クリーム類) 豆乳のホイップクリームやココナッツミルクで代用したり、 果物やさつまいもをピューレにし、でんぷん(コンスターチ など)を混ぜ火にかけクリームを作ることもできる 牛乳が飲めないと栄養素が不足するの? 牛乳コップ1/2杯(100ml) カルシウムが不足しないよう 大豆、小魚、海藻、青菜で補いましょう。 カルシウム 114mg 凍り豆腐 1枚(乾16g) 煮物約1食分 厚揚げ 約1/3枚(50g) 煮物約1食分 しらす干し 大さじ10(50g) 煮干し 軽くひと掴み(5g) ひじき 大さじ2(乾8g) めかぶわかめ 100g 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <小麦> ・米を中心に主食を十分に摂取すれば栄養面での問題 は生じにくく、さらに副食のバランスがよくなる ・小麦の代わりに米や雑穀を使った麺やパンも利用でき メニューの選択範囲を広げることができる ・醤油を除去する必要はない ・米粉パンは小麦グルテンを使用していることが多いた め注意する <主なアレルゲン> グリアジン・グルテニン <小麦> 小麦を使わない調理アレンジ ★パン、ケーキなど 米粉、雑穀粉、そば粉などを代用するとよい 米粉に片栗粉を少し混ぜると食感が軽く仕上がる ★うどんなど麺類 米粉、フォー、ビーフン、はるさめなどを代用するとよい フォーは煮て柔らかくなるので離乳食にも利用できる ★揚げ物の衣 パン粉の代わりに細かく砕いたコーンフレークやはるさめ を代用するとよい ★ギョウザ、春巻 生春巻き用のライスペーパーやスライスした大根を代用 するとよい 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <大豆> ・大豆を除去する場合は、肉や魚からタンパク質を補う ・大豆は多くの加工食品に含まれているため、除去すべき食 品をよく把握しておくこと ・大豆アレルゲンは多種類あるため個人により食べられる食 品が異なる ・大豆アレルギーでも、他の豆類は食べられることが多い ・醸造過程で大部分の大豆タンパク質が分解される。醤油や 味噌は、食べられることが多い ・大豆油はほとんどの場合使える。精製され大豆タンパク質 はほとんど残っていない <主なアレルゲン> Gly m Bd 30K <大豆> 大豆を使わない調理アレンジ ★醤油、味噌が使えないとき 米や雑穀などの大豆以外の原材料からできた醤油や味 噌を利用するとよい 原材料に大豆を使わない魚醤なども利用できる 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <甲殻類> ・大人になって初めて発症することの多いアレルギー ・症状が重篤になる場合も多い ・エビで症状が出る場合には半数以上でカニでも症状 がでることが報告されている ・エビで症状がでても、タコ・イカなどの軟体類や貝類は 食べられることが多い ・同じ甲殻類のシャコやアミには表示義務はないが、こ れらで症状がでることもある <主なアレルゲン> トロポミオシン 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <ピーナッツ> ・微量でも、全身に及ぶ重篤な症状を引き起こす場合が 多いので注意が必要 ・くるみ、カシューナッツ、ごまなどはアレルゲンが異な るのでまとめて除去する必要はない ・ローストするとアレルゲン性が増す ・カレールウ、スナック菓子、サラダやサンドイッチなどは 注意が必要 ・ピーナッツオイルを含むローションを皮膚に塗るのも禁 止 <主なアレルゲン> Ara h 1 ~Ara h 8 原因食品別のアレルゲンと除去のポイントについて <そば> ・微量でも、全身に及ぶ重篤な症状を引き起こす場合が 多いので注意が必要 ・クレープやそばぼうろなど菓子類の材料に使われてい ることもあるので食品表示をよく確認すること ・そばをゆでる蒸気、そばと同じ釜でゆでたうどんでも 症状がでる場合がある ・空気中を漂うそば粉や、そば殻枕からの粉じんを吸い 込んで症状が出ることもある <主なアレルゲン> BW24kD ご清聴ありがとうございました。
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