251215009

河川整備基金助成事業
「沈水植物群落の再生のための土壌貧酸素耐性
の機構解明と種ごとの特性把握及び管理指針の
作成」
助成番号
25-1215-009
埼玉大学大学院理工学研究科
浅枝 隆
平成 25 年度
様式6・2
1.調査・研究
助成番号
25-1215-009
助成事業名
沈水植物群落の再生のための土壌貧
酸素耐性の機構解明と種ごとの特性
把握及び管理指針の作成
[概要版報告書]
所属・助成事業者氏名
埼玉大学大学院理工学研究科
浅枝 隆
助 成 事 業 の 要 旨
〔目 的〕湖沼や河川の水質管理や生態系の維持において、沈水植物果たす役割は大きい。と
ころが、各地の湖沼や河川において、沈水植物群落の再生は必ずしも成功しているとは言えず、
その原因の解明も十分行われているとは言えない。一方で、河床や湖底の土壌の微細化が進み、
土壌や水中の貧酸素化が進行している場所は多く、これが群落再生に支障をきたしていること
が考えられる。本研究では、沈水植物の貧酸素ストレスに対する耐性を評価し、実際の水域で
生ずる貧酸素化の程度を観測して、これらを総合化することで、沈水植物群落再生において土
壌や水中の貧酸素化の影響を評価し、他の再生抑制要因と比較検討することを目的としている
ものである。
〔内 容〕研究では、実験室内の水槽で酸化還元電位で~-200mV までの極度な貧酸素状態をつ
くりだし、低度の貧酸素状態(~-50mV)、好気的な状態等(~+300mV)と合わせて、ホザキノフ
サモ及びコカナダモの培養実験を行った。2 週間の培養の後、生長量、光合成色素の量、蛍光
活性度、IAA 等の他に、ストレスの影響を評価するために、過酸化水素、IAA 酸化酵素活性、
ペルオキシダーゼ活性やマロンディアルデヒド、プロリンの測定を行い、貧酸素耐性を評価し、
貧酸素の程度が植物の生長にあたえる影響を評価した。
次に、貧酸素化すると土壌からアンモニアの溶出がみられることから、上記の条件にアンモニ
ウム濃度も変えた実験を行って、アンモニウム濃度の影響評価も行った。
さらに宍道湖湖岸のヨシ群落の内外において、ヨシのバイオマスや群落形状との関係で、水中
の溶存酸素、乱流強度、土壌の酸化還元電位等の測定を行って、上記の植物の生長に影響を及
ぼす程度の貧酸素化の有無、また貧酸素化に至る仕組みの解明を行った。
〔結 果〕ホザキノフサモやコカナダモの生長速度は、貧酸素条件下では、貧酸素の程度に従
って、生長量は大きく減少することが確認された。また、光合成色素や IAA の量は減少、最大
量子収率も低下していることがこの原因となっていることが示された。一方で、IAA 酸化活性
やペルオキシダーゼ活性等は、増加することから、貧酸素ストレスの増加とともに活性酸素が
生成され、IAA を酸化、また、細胞の破壊を行っていることが示唆された。特に、-200mV の条
件では、ペルオキシダーゼ活性等も働かなくなり、枯死に至ることがわかった。
貧酸素条件下では土壌からアンモニアが溶出する。そのため、貧酸素の程度の他に、アンモニ
ウム濃度を 2.5ppm から 40ppm まで変化させて培養、上記と同様な項目の測定を行った。この
結果、アンモニウム濃度が高いほどストレスの強度が高くなる結果を示すものの、全体の傾向
は、通常のアンモニウム濃度でのものと同様なものであることがわかった。
ヨシ群落内での観測では、乱流強度は群落内で低下するものの、水中の溶存酸素濃度との間に
大きな相関はみられなかった。一方で、群落内の土壌の酸化還元電位は-100mV 程度にまで低下
しており、沈水植物の生長を抑制するには十分な貧酸素状態になり得るものであった。
また、貧酸素ストレスと流動ストレスの実験結果とを比較すると、通常の条件で生ずる環境下
では、貧酸素ストレスの方が大きいことがわかった。
以上の結果より、自然水域に生ずる貧酸素状態は沈水植物の生長に大きな影響を与える程度に
あり、沈水植物群落の再生にあたっては酸素が豊富な条件をつくりだすことが必要であること
がわかった。そのためには、波浪軽減対策やヨシ原の作成ではなく、流動を妨げない対策が必
要であることが示唆される。
調査対象水系・河川 斐伊川、相模川(支川) 等
部門
大分類
中分類
小分類
データベースに登
録するキーワード
調査部門
環境
生態系
植生
※データベースに登録するキーワードは、本冊子P.44 の表から代表的なものを一つ記入して下さい。
様式6・3
1.調査・研究
助成番号
25-1215-009
助成事業名
沈水植物群落の再生のための土壌貧
酸素耐性の機構解明と種ごとの特性
把握及び管理指針の作成
[自己評価シート]
所属・助成事業者氏名
埼玉大学大学院理工学研究科
浅枝 隆
助
成 事 業 実 施 成 果 の 自 己 評
〔計画の妥当性〕
湖沼や河川において、水質は向上してきているにもかかわらず、沈水植物群落の復活は依然
捗々しくない。その原因に、水底土壌の微細化や有機物の堆積による、土壌の貧酸素化が考え
られる。沈水植物群落では光合成による酸素供給はあるものの、近年河床の微細化が進み、ま
た、有機物負荷の多い自然水域では、酸素消費の方が上回り、貧酸素化はむしろ進行している。
本研究では、これが沈水植物にとってのストレスとなり、群落再生を妨げていると考えたもの
である。研究の結果、貧酸素化が生長にとってのストレスになっていることが確認され、通常
の水域の土壌内で生じている貧酸素化は、沈水植物の生長にとって障害になっていることが確
認された。こうしたことから仮説の妥当性が示され、仮説を証明するための十分な実験や観測
であったと考えられることから、研究計画は妥当なものと考えられる。
〔当初目標の達成度〕
今回の研究では、いくつかの植物種について、貧酸素化の影響の程度を把握する予定であった
が、極度の貧酸素化状態を作成する技術の開発に手間取り、個々に時間をとられた。最終的に
グルコースを用いた方法で成功したが、ここで得られた貧酸素化の程度は他ではみられないも
のである。ところが、このグルコース自体が植物活性に影響を及ぼす可能性を有していること
から、この有無の確認にさらに時間を要した。こうしたことから、実験はホザキノフサモとコ
カナダモの二種で行うにとどまった。しかし、それぞれ特徴のある種であることから、一般性
は十分確保できたものと考えられる。また、室内実験による沈水植物の貧酸素耐性ついてだけ
でなく、生長を阻害する貧酸素化は通常の自然水域で生じていることも示され、当初の目的は
十分達成された。
価
〔事業の効果〕
これまで実験室内で極度な貧酸素状態を作り出すことができないために、沈水植物に対する貧
酸素ストレスの影響評価は行われてこなかった。一方で、沈水植物は光合成によって酸素を生
成することから、貧酸素化が群落復活の障害になっていることは考えにくいものであった。本
研究では、まず、貧酸素化が沈水植物の生長にとって大きなストレスになっていることが示さ
れた。さらに、自然水域において、沈水植物の生長の障害になる程度の貧酸素化は頻繁に生じ
ていることも示された。また、こうした貧酸素ストレスは、機械的なストレスよりも大きいこ
とが示された。この結果は、これまでの管理の方向を大きく変えるものである。まず、貧酸素
化は静穏な水域で生じやすいことから、従来いくつかの湖等で行われてきた波浪の軽減対策等
ではなく、むしろ流れを抑制しない対策の方が好ましいことを示している。また、河岸や湖岸
でのヨシ原の再生は、沈水植物群落再生とは相容れないものであることを示唆した。
〔河川管理者等との連携状況〕
本研究の目的は、全国規模での沈水植物群落復活にとっての障害を明らかにすることを目的と
したものであり、特定の湖沼や河川での原因解明を目的としたものではない。そのため、特定
の河川事務所に限った連携は行っていない。しかし、研究を進めるにあたり、宍道湖のヨシ原
の影響を評価する問題が生じ、ヨシ原がつくりだす貧酸素化の程度とその仕組みの解明を行っ
た。宍道湖の場合、シジミ漁との関係で沈水植物群落は存在しない方が好ましいが、そうした
結果が得られた旨、事務所には連絡した。また、神奈川県で行われている水源環境税を用いた
河川の水環境改善の取り組みにおいても、本研究での結果を用いたガイドラインを作成した。
現在、沈水植物群落の再生をめざしている事務所、自治体はこの他にもいくつか存在するが、
これらについても今後参考になるものと考えている。
1.はじめに
水草は水域の健全な生態系の維持だけでなく、水質の維持、景観等様々な面で、水域を
正常に保つ重要な役割を果たしている 1) 。ところが、わが国の湖沼では、1960 年代からほ
とんど湖沼で沈水植物が姿を消し、その後、流入河川の水質が改善してきたにもかかわら
ず、琵琶湖など一部を除いて、復活がみられない 2) 。また、河川においても、沈水植物は
かつては各地の小川でみられた。しかし、近年各地の河川で水質が改善されてきているに
もかかわらず、群落が形成されている場所は限られている。
沈水植物の役割が明らかになる中、こうした状況は河川管理の上で様々な問題を生じさせ
ている。
まず、各地で行われている故郷の小川を再生するための河川事業においても、水質の改
善は可能になっても、昔の景観の復活には繋がらない。多くの水棲動物は、植物群落をハ
ビタートとしており、水草群落が再生しないと、豊かな生態系の復元には繋がらず、生物
多様性の維持にも問題をきたす 3,4) 。さらに多様な生物が生息していない河川では、有毒物
質等が流入した際のモニタリング機能も果たさないため、安心・安全を考えた河川管理に
も支障をきたすことになる。
沈水植物が消滅したことや、再生しないことにはいくつかの要因が指摘されている。ま
ず、富栄養化による透明度の低下である。流域からの栄養塩負荷が増加し、植物プランク
トン濃度が増加、十分な光が得られなくなって沈水植物群落が消失したというもので、多
くの湖沼で生じた現象である。琵琶湖南湖では、逆に、水位が低下したことで、湖底の光
量が回復、沈水植物が復活したと考えられている。次に考えられるのが、ソウギョ等の草
食魚の導入である。皇居外苑濠や野尻湖等多くの湖で、食用や草の処理のために草食魚が
放流され、沈水植物が食い尽くされたものである 5) 。また、流域で利用した除草剤によっ
て沈水植物が消滅した湖沼があることも、状況証拠しか得られてはいないものの、ほぼ間
違いのない事実である。
一方で、沈水植物の生育には有機物に富んだ土壌は適さないことも、多くの事実から明
らかになっている 6) 。有機質に富んだ土壌で最もありえる現象は、有機物の分解による酸
素の消費である。沈水植物は一方では、自ら光合成で酸素をつくりだすことから、貧酸素
状態は問題でないように考えられるものの、多くの現地観測から得られる結果は、貧酸素
化した土壌では、沈水植物がみられない。また、沈水植物群落の多くは、比較的砂質の土
壌に形成されている。近年の研究では、貧酸素な土壌においては光毒性を示す物質の生成
により、窒素の吸収などの植物の代謝に悪影響を及ぼすこと等も知られてきている 7,8) 。一
方で、沈水植物は微細な土壌や浮遊有機物を捕捉、堆積させる機能を有することから 9) 、
有機物負荷の大きい水域では、貧酸素化を促進させることも考えられる 10) 。
以上のようなことは、貧酸素化が沈水植物群落の形成を阻んでいた可能性を示唆してい
る 9,11) 。
本研究はこうした経験に基づき、貧酸素化は沈水植物にとって大きなストレスとなって
おり、生育を阻害であるという仮説をたて、貧酸素化が沈水植物の生育に対する影響を実
験によって調べたものである。
2.実験
2.1 実験方法及び実験条件
実験では、元荒川上流部で採取したホザキノフサモ( Myriophyllumspicatum )及びコカナ
ダモ( Elodea nuttallii )を用いた 8) 。実験に際し、まず、ホザキノフサモ及びコカナダ
モの株を、容器内で 24 ° C -25 ° Cの水温で、100 µmol m -2 s -1 の強度の白色光下で、12 時間
ずつの明暗条件で生育して実験に備えた。
それぞれの実験には 15.7cmx 15.7cm x 24.5cm のガラス容器を用いた。容器の底に、水
深の 1/6(~600g)程度の厚さで、土を敷き、6L の水を入れて、上記のホザキノフサモもし
くはコカナダモを植えて実験を行った。
実験に用いた土は、元荒川久下橋で採取し、数回にわたって洗浄して可能な限り有機物
等を取り除き、さらに、乾燥させて篩処理を行って粗い粒径
を取り除いた。なお、洗浄後も土壌は、5.12 ± 0.17 % (n=4)
の有機物を含み、TN、TC をそれぞれ 33.64%、2.67%含んでい
た。
実験に は蒸 留水 を用 い 、これ に、5% Hoagland 溶液 12) を
加えて培養液とした。また、高レベルの貧酸素状態を作成に
は、試行錯誤の結果、グルコースの還元作用を用いることと
した。なお、グルコースは植物の活性にも影響があることが
予想されることから 13) 、無機的な方法で作成した貧酸素状態
で行った実験と比較して、この影響が無視できる程度あるこ
とを確認した。
水中及び間隙水の酸素濃度は、Control (+280 mV ~
+350
mV),
Oxic
(+350
mV
~ +400
ModeratelyReduced (+5mV ~ -30mV) 及 び
mV) 、
Highly
図 2.1
実験に用いたホザキノフ
サモ
Reduced (-230 mV ~ -180 mV)の 4 段階の酸化還元電位の状態に保ち、酸素濃度が変化し
ないよう緊密性のある蓋を行って実験を行った。なお、酸化還元電位及び pH については、
pH/ORP meter (Thermo scientific Orion Star and Star Plus Meter、POT-101M, SIBATA,
Japan)を用いた。
表 2.1 に、それぞれの条件を作り出すために用いた方法を示す。
表 2.1
酸化条件
実験に用いた酸素濃度(酸化還元電位)の条件
酸化還元電位
作成方法
(mV)
Control
+350 to +300
実験膣条件で放置
Oxic
+400 to +350
曝気
Reduced
+5 to -50
Highly
-180 to -230
Reduced
1、3、5、14 日目にグルコース 5gm を加えて還元
14-21 日の間窒素ガスで常時脱気、1、3、5 日目に 8.16gm
のグルコース 14 日目に 8.16*2gm のグルコースを加え
て還元
試行的に行なった実験において、貧酸素状態で実験を行おうとすると、土壌中からアン
モニア(アンモニウムイオン)の溶出が確認された。こうしたことは、自然水域でもみら
れることであり、貧酸素条件だけでなく、アンモニア(アンモニウムイオン)の影響も調
べることにした。
アンモニアの影響を調べる実験においては、上記の培養液に更にアンモニアを加え、ア
ンモニウム濃度を 2.5、5、10、40mg/L(ppm)の濃度に設定した。
実験条件をまとめると、表 2.2
表 2.2
NH 4 -N
に示されるようになる。
アンモニウムを加えた実験の実験条件
2.5ppm
5ppm
10ppm
40ppm
Control
C1N1
C1N2
C1N3
C1N4
Oxic
O1N1
O1N2
O1N3
O 1 N4
Moderately
R1N1
R1N2
R1N3
R 1 N4
HR 1 N 1
HR 1 N2
HR 1 N3
HR 1 N4
concentration
Reduced
Highly
Reduced
2.2 分析法
植物の分析は以下の方法で行なった。
実験では、初期の茎の長さ、根の長さ及び湿潤重量を測定の後、それぞれのタンクに4
本ずつ、サンプルの植物を植え、22 日間順応させた後に実験を開始した。その後、14 日経
過した後に取り出し、蒸留水で十分洗浄の後、分析に用いた。
4 本の内、最初のものは、生長及びクロロフィル濃度の測定に、2 番目のものは、炭素
と窒素の測定に、3 番目のものは酵素及びホルモンの測定に、4 番目のものはマロンドジア
ルデヒドとプロリン濃度の測定に用いた。
形態的な生長速度は以下のようにして求めた 15,16) 。
まず、生長速度(RGR)は、実験前後の湿潤重量より
RGR =
( ln W2 − ln W1 )
T2 − T1
により求めた。
次に、茎の伸長速度(SGR)を
SGR =
( L2 − L1 )
T2 − T1
により求めた。さらに、根の伸長速度を
𝑀𝑡 𝐺𝐺 =
𝑀𝑀𝑀2 − 𝑀𝑀𝑀1
𝑇1 − 𝑇2
により求めた。ただし、ここで、 W 1 、 W 2 、 L 1 、 L 2 、 MRL 1 、 MRL 2 は、それぞれ、時間 T 1 及び
T 2 における、湿潤重量、茎の長さ、根の長さの平均 2 乘値である。
このサンプルは、同時に、蛍光強度特性、クロロフィル濃度、カロティノイド濃度の測
定にも用いた 17,18) 。なお、化学分析には、植物体の上部 10cmを切り取って用いた。
ク ロ ロ フ ィ ル 蛍 光 分 析 ( Fm/Fo 及 び Fv/Fm) は 、 植 物 の 葉 を 暗 黒 下 に 30 分 置 き 、
Fluorcam(Handy FC-100 H, PSI, Brno, Czech Republic) に よ っ て 測 定 し た 。 デ ー タ は
photochemical quenching(qP)と(qN) non photochemical quenchingの値をFluorcam 6 ソ
フトウェアを使用して分析し、PSIIの最大量子収率値(Fv/Fm)と最大値と基底値の比(Fm/Fo)
を求めた 19) 。
もう一つのサンプルに対しては、葉、根、茎に分離後、乾燥炉において 70 度で 24 時間
乾燥以上、それ以上の乾燥では重量の変化が生じない程度にまで乾燥させ、乾燥重量を測
定した。その後、ミルで粉砕の後、炭素、窒素濃度の測定に用いた。
また、残りの二つのサンプルに対しては、以下の要領で、化学分析を行った。
植物の生長ホルモンの一つであるオーキシンの成分、インドール酢酸(IAA)濃度の測
定については、植物試料 100mgFWを乳鉢で粉砕し、蒸留水 2.5mLと混合した後、遠心分離
し、上澄液を採取、上澄液にSalowski反応液をよく混合した後 、光光度計で波長 530nmで
測定した 20,21) 。
植物には、ストレス下ではミトコンドリアの電子伝達系でスーパーオキシドアニオン
(O 2 - )などの活性酸素が大量に発生する。この活性酸素は、スーパーオキシドディスムター
ゼ(SOD)によって過酸化水素に変換され、さらにペルオキシダーゼにより無害な水に変換
される。そのため、貧酸素化の及ぼすストレスの程度の評価には、こうした酵素の活性度
を指標とすることができる。また、活性酸素はインドール酢酸の酸化分解する。こうした
活性酸素に関係する物質についての分析を行った 14) 。
まず、ペルオキシダーゼ(POD)活性及びインドール酢酸酸化酵素(IAAO)の測定は以
下のように行った。
植物試料を乳鉢で粉砕した後、ポリビニルピロリドン 0.05g と混合液 5mL を混合して抽
出、遠心分離して上澄液を採取、この抽出液を用いて、POD 活性、IAAO を分析した。
POD活性の測定方法( グアヤコール 法)については、まず、H 2 O 2 、グアヤコール、リン
酸緩衝液(pH 6.0)の混合液に抽出液を加え反応させ、分光光度計で 470nm測定、吸収量を
15 秒間隔で 3 分間測定、酵素活性を求めた 22) 。次に、IAA酸化酵素活性については、Salowski
反応液と抽出液を混合し、分光光度計で波長 530nmで測定した。検量線と比較して、添加
したIAAの減少量からIAA酸化酵素活性を算出した。さらに、過酸化水素(H 2 O 2 )の測定に
ついては、サンプルより二酸化チタンを溶かした硫酸で溶出後、遠心分離機にかけて比色、
415nmの分光光度で定量した 20,21) 。
また、マロンディアルデヒド(MDA)については、チオバービトゥリック酸(TBA、チオ
バルビツレール酸)反応を用いた。TCA溶液で溶解させたサンプル上澄み液にTBAを溶かし
た溶液を加え加熱、632nm及び 600nmの分光光度で定量した。さらにプロリン(proline)
については、サンプルをサルフォサリサイクリック酸にとかしてトルエンで溶出、520nm
の分光光度で定量化した 23) 。
酸素濃度を低下させることから、実験中に土壌や水質に様々な変化を生じる可能性があ
る。一例として、図 2.2
に実験終了時の溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度の結果を示
す。概ね、実験開始時との間で変化は見られなかった。
Control
8
7
6
5
DO
4
3
2
1
0
Oxic
2.5ppm
Moderately Reduced
5ppm
10ppm
Highly Reduced
40ppm
NH4N concentration
Control
1000
Oxic
Moderately Reduced
Highly Reduced
100
CO2
10
1
2.5ppm
5ppm
10ppm
40ppm
NH4N concentration
図 2.2
実験終了時の溶存酸素及び溶存二酸化炭素濃度
実験結果については、SPSS(Release 13,SPSS INC., Chicago IL)を用いて片側分散分
析を行い、差の有意性についての分析を行った。結果は、1%水準での有意な差について、
グラフ上で a、b、c 等の異なる記号を用いて示した。
また結果は、ほぼ同様な傾向であったことから、紙面の関係上、ホザキノフサモの結果
のみ示すことにする。コカナダモの結果については参考文献 27)、28)に示す。
2.3 実験結果
2.3.1 貧酸素の影響についての結果
図 2.3~2.5
は、コントロール(Control)と好気化(Oxic)、貧酸素化(Moderately
Reduced)、極度な貧酸素化(Highly Reduced)の水中(土壌)で生育されたサンプルの生
長速度、茎及び根の伸張率を示したものである。ここで、縦棒は標準偏差を示す。いずれ
についても、コントロール及び好気化の条件のものでは有意な差はみられず、いずれも活
発な生長がみられる。それと比較すると、貧酸素化の条件では生長が抑制され、貧酸素化、
極度な貧酸素化と貧酸素化の程度に応じて有意に生長が抑制されているのがわかる
RGR
(gm/day)
(p<0.01)。
a
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
a
b
Control
図 2.3
SGR
(cm/day)
Reduced
Highly Reduced
異なる貧酸素ストレス下での生長速度
a
a
0.25
Oxic
c
0.2
b
0.15
c
0.1
0.05
0
Control
Root Growth Rate
(cm/day)
図 2.4
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
Reduced
Highly Reduced
異なる貧酸素ストレス下での茎の伸長速度
a
a
b
Control
図 2.5
Oxic
Oxic
Reduced
c
Highly Reduced
異なる貧酸素ストレス下での根の伸長速度
クロロフィル及びカロティノイドの濃度の比較を図 2.6 に示す。生長量と同様に、コン
トロール及び好気化の条件のものでは、値が高く、これらの間には有意な差がみられない
ものの、貧酸素化の条件で生長されたもの、極度な貧酸素化の条件で生育されたものでは、
クロロフィル、カロティノイド濃度共、有意に低くなっていることがわかる(p<0.01)。
Chl-a
(mg/gFW)
5
4
a
a
Chl-a
3
b
2
c
1
0
Control
Chl-b
(mg/gFW)
3
a
Oxic
Reduced
Highly
reduced
a
Chl-b
2
b
c
1
0
Control
Oxic
Reduced
Highly
reduced
Carotenoid
(mg/gFW)
1.5
1
a
a
Carotenoid
b
0.5
c
0
Control
図 2.6
Oxic
Reduced
Highly
reduced
異なる貧酸素ストレス下でのクロロフィル及びカロティノイド濃度
光 合 成 活 性 度 に 与 え る 影 響 と し て 、 ク ロ ロ フ ィ ル 蛍 光 特 性 に つ い て 、 Fv/Fm の 値 及 び
Fm/Fo の値を比較したものを図 2.7 と 2.8 に示す。特に、光合成に利用されるエネルギー
を示す割合を示す Fv/Fm の値について、コントロール及び好気化の条件のものでは、有意
な差がみられず、いずれも 0.8 程度になっており、通常の活性を維持している。しかしな
がら、貧酸素化の条件で生長されたもの、極度な貧酸素化の条件で生育されたものでは、
貧酸素化の程度に応じて有意に低くなっている(p<0.01)。
Fm/Fo
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
a
Fv/Fm
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
Oxic
Reduced
c
Highly reduced
異なる貧酸素ストレス下での最大量子率と基底量子率の比
a
a
Fv/Fm
b
c
Control
図 2.8
Fm/Fo
b
Control
図 2.7
a
Oxic
Reduced
Highly reduced
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での最大量子収率
図 2.9 と 2.10 は、生長ホルモンのひとつであるインドール酢酸(IAA)濃度及びその酸
化酵素(IAAO)活性を示したものである。IAA については、貧酸素化の程度に応じて減少、
IAAO 活性については増加している。図 2.11 にこれらの関係を示すが、明瞭な負の相関を
示しており、活性酸素により IAA が酸化されたことにより、IAA の量が減少したことが示
唆される。IAA は地上部のバイオマスの増加や頂部に向かっての伸長を誘発するホルモン
であることから、IAA の減少が葉茎のバイオマスを減少させ、伸長を阻害したものと考え
られる。
IAA
concentration
µmol IAA/gFW
1
b
c
0.5
0
Control
IAAO
(µmol IAA
destructed/min/gFW)
図 2.9
図 2.10
IAA
(mmolIAA/gFW)
a
a
Oxic
Reduced
Highly
Reduced
異なる貧酸素ストレス下でのインドール酢酸濃度
a
0.15
b
0.10
0.05
c
c
Control
Oxic
0.00
Reduced
Highly
Reduced
異なる貧酸素ストレス下でのインドール酢酸酸化酵素活性
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.05
0.1
0.15
IAAO (mmol IAA destructed/min/gFW)
図 2.11
異なる貧酸素ストレス下でのインドール酢酸濃度と
インドール酢酸酸化酵素活性の関係
異なる貧酸素ストレス下での植物体に含まれる過酸化水素濃度を図 2.12 に示す。コン
トロール及び好気化の条件ではいずれも低く、有意な差は存在しないものの、貧酸素化、
極度な貧酸素化と貧酸素化の程度の上昇とともに過酸化水素濃度が上昇していることがわ
かる。ところが、これを還元するペルオキダーゼ活性については、図 2.13 にみられるよう
に、貧酸素化までは上昇しているものの、極度な貧酸素化では逆に大きく低下している。
観察ではこの時植物が枯死寸前だったことから、貧酸素化が耐性の限度を超え、ペルオキ
シダ-ゼの効果等に影響したと考えられる。標準偏差の値が大きくなっているのはこのた
めである。図 2.14 にH 2 O 2 濃度とPOD活性の関係を示しているが、H 2 O 2 の濃度が 25mg/gFW
を超えるあたりから、POD活性の値が激減、活性酸素が蓄積し、細胞が破壊されていったと
考えられる。
マロンディアルデヒドについても同様な傾向が見られる。
一方で、プロリンについては、貧酸素化の進展に伴って増加が見られる。
H2O2
(µmol H2O2/gFW)
2
a
1.5
b
c
c
Control
Oxic
1
0.5
0
図 2.12
Highly Reduced
異なる貧酸素ストレス下での過酸化水素濃度
a
1.2
POD activity
(units/min/gFW)
Moderately
reduced
1
c
0.8
0.6
b
0.4
b
0.2
0
Control
図 2.13
Oxic
Moderately
reduced
Highly Reduced
異なる貧酸素ストレス下でのペルオキシダーゼ活性
1.2
POD acitivity
(units/min/gFW)
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
5
10
15
20
25
30
H2O2 (mg/gFW)
MDA equivalents
(nmol/g)
図 2.14
過酸化水素濃度とペルオキシダーゼ活性の関係
a
14
12
10
8
6
4
2
0
b
b
c
Control
Proline
(mmol/gFW)
図 2.15
0.40
0.35
0.30
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
Modeartely Highly reduced
Reduced
異なる貧酸素ストレス下でのマロンディアルデヒド濃度
a
a
b
c
Control
図 2.16
Oxic
Oxic
Moderately
reduced
Highly
Reduced
異なる貧酸素ストレス下でのプロリン濃度
2.3.2
土壌から溶出するアンモニウムの影響の把握
貧酸素な水域では、土壌中からアンモニウムイオンが溶出しやすく、植物に対するスト
レスとして働く。そのため、実際には、植物に働くストレスは貧酸素ストレスの他に、ア
ンモニウムイオンによるストレスが同時に加わることになる。そのため、このアンモニウ
ムイオンの濃度を変化させ、植物に働くストレスの評価を行った。
図 2.17~2.19 は、植物の生長を示す、RGR 及び SGR、更に、根の伸長速度を示したもの
である。アンモニウムイオンの濃度を上げていくと、5mg/L(5ppm)までは有意な差はみられ
ないが、10mg/L の濃度になると、優位に生長量が低下していることかがわかる。
RGR(g/day)
Control
0.08
0.06
Oxic
a
a
a
0.04
b
0.02
Moderately reduced
Highly Reduced
a
a
b
c
a
a
b
c
a
b
0
2.5ppm
5ppm
10ppm
40ppm
図 2.17 異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での生長速度
SGR(cm/day)
0.14
0.12
Control
Oxic
a
b
b
Moderately reduced
a
a
0.1
0.08
Highly Reduced
a
c
a
c
0.06
0.04
d
b
c
d
0.02
a
b
c
0
2.5ppm
図 2.18
5ppm
10ppm
40ppm
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での茎の伸長速度
Root Growth Rate
(cm/day)
Control
a
0.1
Oxic
Moderately reduced
a a
a
a
a
b
Highly Reduced
b
0.05
c
a
a
b
c
b
c
c
0
2.5ppm
図 2.19
5ppm
10ppm
40ppm
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での根の伸長速度
5.0
a
Chl-a
mg/g FW
4.0
a
a
3.0
a
a
a
b
2.0
a
b
c
b
c
1.0
a
b
c
c
0.0
2.5ppm
Chl-b
mg/g FW
3.0
2.0
5ppm
Control
Oxic
a
b
b
40ppm
Moderately redced
a
c
d
Highly reduced
a
b
c
1.0
10ppm
c
d
a a
b
d
c
0.0
2.5ppm
5ppm
Carotenoid mg/gFW
Control
1.2
b
Oxic
a
b
a
10ppm
40ppm
Moderately reduced
a
Highly reduced
a
a
0.8
0.4
c
c
d
d
b
c
a
b
c
0.0
図 2.20
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのクロロフィル及び
カロティノイド濃度
Fm/Fo
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
b
a
Control
Oxic
b
a
Moderately reduced
c
2.5ppm
a
b
b
d
d
図 2.21
a
a
c
Highly reduced
c
c
5ppm
10ppm
NH4-N concentration
d
40ppm
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での最大量子率と
Fv/Fm
基底量子率の比
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
a
Control
a
b
図 2.22
a
a
Moderately reduced
a
b
c
2.5ppm
Oxic
Highly reduced
a
b
b
c
5ppm
10ppm
NH4-N concentration
c
a
c
d
40ppm
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での最大量子収率
IAA concentration
µmol IAA/gFW
Control
1
a
0.8
a
0.6
a
b
0.4
Oxic
Moderately reduced
a
a
a
b
c
Highly Reduced
a
c
b
0.2
b
c
c
d
0
2.5ppm
5ppm
10ppm
40ppm
NH4-N concentration
図 2.23
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのインドール酢
IAAO
µmol IAA destructed
/min/gFW
酸濃度
1
Control
0.8
Oxic
Highly reduced a
a
0.6
0.4
a
b
c c
0.2
b
b
c
c c
0
2.5ppm
図 2.24
Moderately Reduced
b
a
c c
c
5.0ppm
10.0ppm
NH4N concentration
40.0ppm
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのインドール酢酸酸化酵
IAA (mg IAA/gFW)
素活性
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
2.5ppm
5.0ppm
10.0ppm
40.0ppm
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
IAAO (mmol IAA destructed/min/gFW)
図 2.25 異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのインドール酢酸濃度と
インドール酢酸酸化酵素活性の関係
図 2.26 は植物体内の過酸化水素濃度に対するアンモニウムイオン濃度の影響を示してい
る。これについても、5ppm の濃度まではほとんど差がないが、これを超えるといずれの酸
素条件のものについても過酸化水素の濃度が上昇しているのがわかる。
2.5
H2O2
µmolH2O2/gFW
2
Oxic
moderately reduced
Highly reduced a
a
1.5
1
Control
b
c
c
b
c
c
a
a
b
c c
c
c
b
0.5
0
2.5ppm
5.0ppm
NH4-N
図 2.26
10.0ppm
40.0ppm
concentration
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下での過酸化水素
濃度
図 2.27
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのペルオキシダーゼ活性
(POD activity)
図 2.28
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのマロンディアルデヒド
(MDA)
図 2.29
異なる貧酸素及びアンモニウム濃度ストレス下でのプロリン(proline)濃度
2.4 考察
ペルオキシダーゼは、ペルオキシド構造を酸化的に切断して 2 つのヒドロキシル基に分
解する酵素であり、
ROOR' + 電子供与体 (2 e - ) + 2H + → ROH + R'OH
の反応を触媒する。
ミトコンドリアの電子伝達系ではスーパーオキシドアニオン(O2-)などの活性酸素が発
生する。この活性酸素は、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)によって過酸化水素に
変換され、さらに過酸化水素はペルオキシダーゼにより無害な水に変換される。発生する
活性酸素の量はストレスの強度に応じて増加するため、過酸化水素の量はストレスの強さ
に大きく関わってくる。貧酸素、高アンモニウムイオン濃度中では、いずれも過酸化水素
の量は増大しており、貧酸素やアンモニウムイオンによるストレスが植物にとって大きな
ストレスになっていたことがわかる 14,24,25,26) 。
ま た 、 一 方 で 、 過 酸 化 水 素 の 濃 度 が 増 加 す る と と も に 、 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 活 性 (POD
activity)の量も増加しており、過酸化水素が盛んに還元されていることがわかる。しかし、
酸化還元電位が-200mV 程度の極度な貧酸素状態におかれると、アンモニウムイオン濃度に
関わらず、ペルオキシダーゼ活性の値が再び低い値になっている。この理由については、
今回の実験では十分検討する時間がなかった。しかし、過酸化水素の量が増加しているこ
とを考えると、この程度にまで貧酸素化が進むと、ペルオキシダーゼ自体の生成や活性が
影響を受けることが考えられる。
いずれにしても、この程度の貧酸素の状態は、水草にとって対応の難しいレベルである
と考えられる。
これと同様な傾向は、マロンディアルデヒド(MDA)についてもみられた。
植物細胞に対する酸化ストレスの指標として、脂質過酸化が用いられ、この脂質酸化物
は、マンディアルデヒド(MDA)が多くの割合を占める反応性のアルデヒド類を含む化合物
の複合体である。マロンディアルデヒドの値も、コントロールや好気化の条件では差がみ
られず、アンモニウム濃度が 10ppm を超えると上昇がみられる。しかし、貧酸素化の条件
では大きく増加し、極度な貧酸素化の条件では、逆に大きく低下している。観察では、こ
の状態では植物自体が枯死寸前の状態にあることが確認された。
ペルオキシダーゼの場合と同様、貧酸素化が進むと脂質過酸化物への分解自体が影響を
受けることも考えられる。
一方、プロリンには別の傾向がみられる。
プロリン(proline、ピロリジン-2-カルボン酸)は、右 のよう
な分子構造を持つイミノ酸であり、様々なストレスがかかると細
胞質に蓄積されるものである。
コントロール、好気条件下のものについてはほとんど差がみら
れず、貧酸素化の進展とともに減少、さらに、アンモニウム濃度
の増加と共に、やや減少する傾向がみられた。これまで、他の形
態のストレスに対しては、増加傾向がみられていることから、ここでもそうした傾向が現
れることが予想されたが、貧酸素ストレスに対して減少傾向を示す事に対しては現段階で
は十分な説明は難しい。
以上をまとめると、水草(ホザキノフサモ)は、酸素が十分ある状態においては、大き
なストレスは掛らないと考えられる。しかしながら、酸化還元電位が 0mV 程度に低下する
と貧酸素のストレスが大きくなり、-100mV ~-200mV 程度になると、大きな障害になる。
また、貧酸素状態になると、土壌中のアンモニアが溶出する。貧酸素によるストレスと相
まって、アンモニウム濃度が 10mg/L(ppm)を超えるようになると、水草に対するストレス
が高くなることがわかった。
こうしたことは、水草群落を再生、かつ、健全に保持していくためには、酸素が十分供
給される環境を創造することが重要なことが示唆しているといえる。
3.自然水域における貧酸素状態の形成についての観測
貧酸素な水域、土壌は、植物の生長を大きく抑制することが明らかになった。こうした
水域が形成することが、沈水植物の繁茂を抑制していることが考えられる。ところが、こ
うした貧酸素な水域は、人工的な影響の少ない水域でもしばしばみられるものである。こ
うした点を明らかにするために、宍道湖に形成しているヨシ原を対象に、貧酸素水域の形
成過程を追った。
水中における酸素の供給は、水中での光合成と水面から供給される酸素の拡散(乱流拡
散)である。抽水植物群落が形成されると、植物体による日射の遮蔽により光合成が阻害
され、また、植物体による機械的な抵抗により乱流強度が低下、酸素の拡散量が減少する。
ここでは、そうした効果の検証、評価を行った。
3.1
観測場所及び観測方法
観測は図 3.1 に示される、宍道湖西岸湖岸帯のヨシ群落で行った。斐伊川河口部右岸か
ら宍道湖にかけて 5 箇所を設定し、それぞれの地点において、群落の陸側、中央部、湖側
の 3 箇所において 50 ㎝ x50 ㎝のコドラートを設けた。コドラート中では、水質計(Horiba
Kyoto 及び Orion 3 star, Thermo Scientific, sn A 18758)を用いて、水温、pH、電気伝
導度、濁度、溶存酸素の測定を行った。その後で、表面水を採水後、鉛直、水平 2 成分超
音波流速計によって、水面下 5cm の水深において流速の 10 秒間連続測定を行った。なお、
時間的な変化があることから、それぞれの箇所での測定は 6 分程度の間に行った。また、
流速測定結果より 0.05 秒間隔でディジタル化し、乱流流速(平均 2 乗速度)を求めた。次
に、土壌中の酸化還元電位の測定をおこない、また、約 20 ㎝にわたり土壌柱を採取した。
水および土壌サンプルは冷蔵保存して研究室にもちかえり、その後の分析に用いた。その
後で、コドラート中のヨシをすべて刈り取り、また、根、地下茎をすべて掘り起し採取し
た。また、L3 および L5 地点においては、群落から 5m 程度離れた湖内の観測も行って、基
準値とした。採取したヨシの茎については、すべての長さ(地上部の高さ)を測定し。す
べてのバイオマスは冷蔵、研究室にもちかえり他の測定を行った。ヨシのサンプルは、洗
浄後、組織別に分離し、また、土壌サンプルと一緒に乾燥炉において摂氏 70 度で重量が変
化しなくなるまで乾燥させ、乾燥重量を測定した。
その後で、植物サンプルは粉砕し、化学分析を行い、土壌サンプルについては、一部は
化学分析に、残りは篩試験によって粒径加積曲線を求めるために用いた。
a
L1
b
L2
L3
L4
L5
図 3.1
観測場所及びヨシ群落
3.2 観測結果
3.2.1 群落内外の乱流強度
図 3.2 は、ヨシ群落周辺の乱流強度を示す。乱流強度は、群落外では、0.6-0.7cm/s と
比較的高い値を示すのに対し、湖内に群落が孤立して形成していた L4 では、全体に比較的
高い値になっていたのに対し、他の地点では低く、湖側から陸側に近づくにつれて低い値
になっていた。
一方で、葉茎の密度と乱流強度との間には、群落の外側では高い乱流強度が示されたも
のの、群落ごとでは図 3.3 にみられるように、多少の相関はあるものの、有意な相関関係
は認められなかった。
0.8
群落の陸側
乱流強度 (cm/S)
0.7
群落の中央
0.6
群落の湖側
0.5
群落外
0.4
0.3
0.2
0.1
0
L1
L2
L3
L4
地点
図 3.2
各地点における群落内外の乱流強度
L5
0.7
乱流強度 (cm/s)
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
100
200
300
400
葉茎密度(/m2)
図 3.3
葉茎密度と群落内の乱流強度との関係
3.2.2 地上部と地下部のバイオマス
図 3.4 に各地点での地上部及び地下部のバイオマスを示す。また、図5に地上部と地下
部との比を示す。地上部のバイオマスは、L1 及び L4 で高く、L5 で低くなっていた。また、
バイオマス(乾燥重量)
(gDW/m2)
L3 では、特に、地下部のバイオマスが大きくなっていた。
3000
2500
地上部バイオマス
地下部バイオマス
2000
1500
1000
500
0
L1
地上部バイオマスと
地下部バイオマスの比
図 3.4
図 3.5
L2
L3
L4
L5
各地点における地上部及び地下部のバイオマス
8
6
4
2
0
L1
L2
L3
L4
L5
各地点における地上部及び地下部のバイオマスの比
3.2.3 水中の溶存酸素濃度と乱流強度との関係
図 3.6 にヨシの葉茎密度と水中の溶存酸素濃度との関係を示す。葉茎密度の増加と共に、
水中溶存酸素濃度は低下、葉茎密度が 150/m2 程度より高くなると、溶存酸素濃度はゼロに
群落内水中溶存酸素濃度 (mg/l)
近くなることがわかる。
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0
100
200
300
400
葉茎密度 (/m2)
図 3.6
葉茎密度と群落内水中溶存酸素濃度
3.2.4 土壌中の酸化還元電位
図 3.7 に、土壌中の炭素濃度と酸化還元電位との関係を示す。
土壌中の酸化還元電位 (mV)
土壌中の酸化還元電位は、土壌中の炭素濃度(有機物濃度)と最も高い相関がみられた。
土壌中の有機物濃度 (%)
0
-20 0
0.5
1
1.5
2
-40
-60
-80
-100
-120
-140
-160
R² = 0.394
-180
図 3.7
土壌中の有機物濃度と土壌中の酸化還元電位との関係
3.3 考察
3.3.1 群落の形態による特性
今回観測を行った宍道湖西岸に形成したヨシ群落のうち、L1 は斐伊川河道内の群落であ
り、自然に発生した群落である。観測では、L2、L4 も自然に形成したか、過去に植えられ
たものが拡大した群落と考えられ、L3及び L5 は、植栽されて間もない群落と考えられる。
これらの群落におけるヨシ個体の形態は、群落の形成過程に大きく依存していることがわ
かる。L4 は、浅い入り江に形成されたヨシ群落であるが、ここでは、地上部のバイオマス
が大きく地下部のバイオマスは極めて小さい値となっていた。今回の測定から求められる
乱流強度は必ずしも小さい値ではなかったが、地形から波浪の影響は受けにくく倒伏の可
能性が低いことから、アンカーとなる地下部を大きくする必要がないために、地上部が大
きく地下部の小さい形態になったと考えられる。L1 は、河道内に形成した群落であり、群
落形成からの経過時間は長いと考えられる。そのため全体のバイオマスは最も大きなもの
となっていた。ただし、攪乱としての河川流の影響は受けることから、地下部のバイオマ
スも他と比較して大きなものとなっていた。
L3 は、湖内に孤立して形成している群落である。そのため、波浪の影響は最も受けやす
い。今回の観測においても、乱流強度の大きく、かつ、群落内の陸側においても乱流強度
の低下はみられなかった。そのため、アンカーとしての地下部が重要になるために、地下
部は今回の観測地点の中では最も大きく、また、地上部と地下部との比は小さい値になっ
ていた。L5 は、最近植栽された群落である。そのため、植栽後数年を経ているにも拘らず、
地上部、地下部共に小さい値となっていた。
3.3.2 乱流強度について
乱流強度については、群落外では高い値になっていたものの、葉茎密度との間には十分
な相関はみられなかった。最も大きな理由は、群落の位置自体が、入り江であったり、水
域に孤立して形成していたりしたために、周辺の影響を大きく受けていたこと、葉茎密度
が比較的揃っていたためである。さらに、湖沼における乱流の形成要因は波浪であり、波
長が数mあったことから、幅の狭い群落では、波の減衰効果による影響は限られる。その
ため、葉茎の密度が高いことが流れに対する抵抗の増加として働くよりも、葉茎周辺に形
成される渦をより多く発生させることにつながり、乱流強度を低下させることに繋がらな
かったものと思われる。
しかしながら、一つの群落内でみれば、孤立した群落を除き、湖側よりも陸側の方が乱
流強度は小さくなっていた。形成した渦のエネルギーは群落内でもある程度散逸している
ことが伺える。
3.3.3
群落内水中の溶存酸素濃度について
群落内水中の溶存酸素濃度は、乱流強度との間には相関はみられなかったものの、葉茎
密度との間に負の相関がみられた。ここで、乱流強度が大きいと乱流との間に相関がみら
れなかったということは、溶存酸素濃度を決定する主たる因子が乱流拡散というわけでは
ないことを示している。一方で、葉茎密度が高いことは、群落内の日射が遮られ、光合成
による酸素の発生が阻害される。溶存酸素濃度と葉茎密度に負の相関がみられたことは、
外部から拡散によって酸素を供給する過程よりも、光合成による酸素発生の影響の方がよ
り大きいことを示しているといえる。
3.3.4
群落内土壌内の酸化還元電位
群落内土壌中の酸化還元電位は、群落内水中の溶存酸素や乱流強度等とは相関がみられ
なかったものの、土壌中の有機物濃度との間には負の相関がみられた。表層水中の溶存酸
素濃度も 1mg/l 程度と低い値にもなっているにも拘らず、これよりも、土壌中の有機物量
との相関の方が高かったことは、表層水と土壌中の水とが隔てられていることを示してい
る。すなわち、土壌中の酸素が欠乏する主たる要因が、水中の酸素欠乏によるのではなく、
群落内で生産されたり捕捉されたりして土壌中に堆積している有機物が分解されることで
あることが示される。
一方で、土壌中の酸化還元電位は、-100mV より低い値になることが示され、沈水植物に
よる貧酸素ストレスの影響が大きくなるレベルにあることが示された。
3.3.5 波浪、流れ等の機械的擾乱によるストレスとの関係
これまで沈水植物群落の形成を阻止する要因として、波浪や流れ、乱流等が挙げられる
場合が多かった。しかし、今回の結果を乱流ストレスに対する実験結果と比較すると
15,16,17,27)
、荒天時を除けば、通常生ずる環境下では明ら貧酸素ストレスの方が明らかに影
響が大きい。このことは、離岸堤等様々な方法で流れ/波浪を阻止することで沈水植物群落
の再生を図るよりも、むしろ流れはそのままにして、流れによって貧酸素土壌の堆積を防
止する方が効果的であることを示している。また、平常時の流動で沈水植物群落の形成が
抑制される場所は元々そうした群落は形成されない場所であり、群落のない方がより自然
な状態である。
従来考えられてきた管理方法を見直すべき状況にあるといえる。
4.結論
以上の研究をまとめると以下のような結論が得られる。
沈水植物は光合成によって酸素を産出することから、土壌中の酸素濃度を増加させる効
果が存在する。また、一方で、沈水植物群落は微細な粒子や浮遊する有機物を捕捉、堆積
させることから、群落内は貧酸素化しやすく、エコシステムエンジニアリングの観点から
は、こうしたことが沈水植物にとって有利な条件を創出することも考えられた。
しかし、今回の実験結果では、沈水植物(ホザキノフサモやコカナダモを 例に 上げ る)
は、酸素が豊富な条件で活発に生育し、酸化還元電位が 0mV より低くなる場所では、活性
酸素が生成され、明らかに貧酸素条件が植物体に対するストレスとして働くことが示され
た。また、酸化還元電位が-100mV より低くなるような条件では、抗活性酸素作用の限界を
超え、枯死することが示された。
また、水中が貧酸素になると、土壌中からアンモニアなどが溶出する。単に貧酸素によ
るストレスだけでなく、こうした溶出物質によるストレスも大きく影響することがわかっ
た。
一方、自然水域では、抽水植物群落内においても水中の溶存酸素濃度は外部と比較して
低く、この原因は植物体の機械的な抵抗による乱流拡散の低下というよりも日射の射影に
よる影響の方が大きいことが示された。さらに、群落内では有機物が捕捉され、土壌中に
堆積した有機物の分解による酸素消費のために容易に酸化還元電位-100mV 程度になるこ
とが明らかになった。
Asaeda 10) らによる元荒川による観測の結果では、大量の有機物を捕捉したミクリ群落内
の土壌中の酸化還元電位が-50mV程度になることが示されており、貧酸素ストレスによる沈
水植物群落形成を妨げる効果は河川においても生ずることがわかる。
以上のことから、本研究によって、沈水植物群落再生においては、汚濁物等を含む有機
物量を減らし、水中、土壌中の酸素濃度が低下させないことが重要であることが示された。
付章
本研究から得られる結果に基づいた沈水植物群落再生への管理指針
沈水植物群落再生にあたっては以下のような点を考慮する必要がある。
沈水植物群落は一方では光合成によって酸素を産出するものの、酸素を消費する物質が
存在する場合には容易に貧酸素な土壌層が形成される。また、沈水植物の生長を盛んにす
るためには、土壌の酸化還元電位を可能な限り正になる条件を維持することが重要である。
強い流れや乱流、波浪が沈水植物群落の形成を阻害していると考えられがちであるが、
こうした機械的なストレスよりも、貧酸素ストレスの方が影響が大きい。こうした状況を
回避することが重要である。そのためには、以下のような方法が推奨される。
1.
土壌は有機物を大量に含む微細土壌ではなく、有機物を含まず、酸素が供給され
やすい砂混じりの土壌の方が適している。覆砂を行うことも効果的と考えられる。
2.
湖岸の抽水植物群落は、有機物を捕捉、堆積させることから土壌が貧酸素化し、
沈水植物群落の発達には適さない。湖沼に沈水植物を再生させるようとする場所には、
抽水植物群落が形成していないことが重要である。抽水植物群落を湛水域まで発達さ
せないなどの配慮が必要である。
3.
貧酸素な水域をつくらないために、日射を遮断したり、乱流拡散を低下させるよ
うな余分な構造物は可能か限り排除することが重要である。離岸堤などの構造物も背
後に静穏水域をつくることから、有機物や微細土壌の堆積を促進し貧酸素土壌層を形
成する。そのため、こうした構造物は、沈水植物群落の発達にはむしろマイナスであ
る。また、元々流れが強すぎる場所には、沈水植物群落は本来形成されない場所であ
る。流れを阻害しない自然湖岸を保つことが重要である。
4.
人工的な池の場合には、曝気などにより酸素を供給することは効果的であると考
えられる。しかし、通常、水自体には既に十分な溶存酸素濃度に達している場合が多
く、水中に酸素を送り込むだけの散気式の曝気は効果がない。土壌に酸素を送り込む
施設が必要である。
5.
河川においては、河床は砂層で構成されているものの、その上に微細土壌が堆積
している場合が多い。こうした場所に沈水植物群落を再生させるには、機械的な方法
で土壌表面に堆積している微細土壌層を流失させ、砂層を露出させることも効果的で
ある。
6.
土壌中に酸素を供給する最も簡単な方法は、定期的に水を抜き干し上げることで
ある。溜池や河川等、底を露出させることが可能な場所では、1 年に一度程度、水底
を干し上げることが沈水植物群落の発達に有効である。
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本研究での発表
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redox level on growth and allied biochemical parameters of Elodea nuttallii Planch.,
Flora, Vol.208, pp.211-219.
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・助成事業者紹介
浅枝 隆
現職:埼玉大学理工学研究科教授(工学博士)
主な著書:図説 生態系の環境(朝倉書店、平成 23 年)等