第 2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍 第1 節 コラム 2-2-1 ⑧図 年齢別女性の労働力率及び潜在的労働力率 % 就業希望者(出産・育児のため) 右軸 潜在的労働力率 (育児解消ケース) 労働力率() 労働力率 労働力率 万人 㻞㻜㻜 㻝㻤㻜 㻝㻢㻜 㻝㻠㻜 㻣㻟㻚㻠㻌 㻢㻜㻚㻟㻌 㻢㻟㻚㻝㻌 㻝㻞㻜 㻡㻢㻚㻝㻌 㻝㻜㻜 㻠㻢㻚㻥㻌 㻤㻜 㻠㻠㻚㻠㻌 㻢㻜 㻠㻜 㻞㻜 ~歳 ~歳 ~歳 ~歳 歳以上 㻜 ~歳 ~歳 ~歳 ~歳 ~歳 ~歳 資料:総務省「労働力調査」 注労働力率は、「労働力人口÷生産年齢人口」から算出した。 潜在的労働力率は、「労働力人口+就業希望者出産・育児÷生産年齢人口」から算出した。 就業希望者出産・育児とは、就業希望者のうち、非求職理由として「出産・育児のため」を選択した者。 本コラムにおいては、女性活躍に関して、M 字カーブの存在を確認した上で、その解消に向けて、中小企業・小規 模事業者の役割に焦点を当てた分析を行ってきた。中小企業・小規模事業者は女性が働きやすい環境を整備するため に様々な取組を行っており、また、女性の復職先として多く選択されていることが分かった。今後、生産年齢人口が減少 することを考えると、就業希望を持つ潜在的な女性労働力の活躍の場を増やすことが必要であり、女性の雇用の担い手 として、中小企業・小規模事業者は引き続き重要な役割を担っていくことが期待される。 事 例 2-2-1 日本プレス工業株式会社 女性が活躍するプレス加工 神奈川県茅ケ崎市の日本プレス工業株式会社(従業員 男子学生を中心に採用していた。ある年の 3 月、全く男 74 名、資本金 2,245 万円)は、ベアリング等の小型部品 子学生が採用できずに困っているところに、近隣高校の のプレス加工業を営む企業である。 就職担当者から女子学生の採用を持ちかけられた。男性 プレス加工というと巨大な機械を駆使して重量のある金 だけが働く職場に女性を採用することに対し、社内に少 属を加工する「男の仕事」というイメージが強いが、同社 なからずの反発はあったが、最終的に採用担当者の和田 のプレス作業現場には22名もの女性従業員が働いている。 氏が責任を持つという条件で採用を決断した。 同社の和田氏(取締役副工場長)によると、女性従業員 実際に女性従業員が職場で働き出すと、社内の女性に が働くことで企業全体の作業効率が上がるだけでなく、職 対する考えが変化していき、採用に否定的だった者も、 場環境が綺麗に保たれ、雰囲気が明るくなるという。 その実直な働きぶりを認めざるを得なかった。加えて、 現在では女性を積極的に採用する同社も、2000 年頃ま ではプレス加工という仕事の特性を考え、新卒採用では 和田氏によると女性を採用することで二つのメリットが あったという。 中小企業白書 2015 201 第2章 中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成 一つ目は、男性と比較して女性従業員は生産性が高い 時に採用することや、先輩女性正社員だけでなく、女性 ことである。勤務態度が良く、作業への集中力が高いた パート従業員に対しても女性従業員の相談役になるようあ め、単位時間当たりの生産量は男性と比較して女性の方 らかじめお願いすることで、女性ならではの悩みに対して が多い。 も応えられるように工夫している。 二つ目は、職場環境が改善し人間関係が良好になると 和田氏は、 「女性だからできない、やらせない、という いうことだ。女性の特徴として、職場美化に関する意識が 思い込みは不要である。 」と語る。更に、 「人それぞれに 高く、細かいところに気がつく点があり、女性従業員が勤 向き不向きがあることと同様に女性が得意な点、苦手な 務するようになってから、工場内が綺麗に保たれるように 点が存在する。それを見極めた上で、それぞれに適した なった。また、それまで殺伐としていた工場内の雰囲気 職場に配属すれば男性以上に活躍できることもある。 」と が明るくなり、従業員の人間関係がより良好になった。 他方で、女性を採用するためには、ハード面・ソフト 面での環境整備が必要になる。同社では女子学生の採用 続ける。同社において女性の能力を活かす取組は広がり を見せており、プレス作業の国家資格を取得する女性従 業員も登場し、今後は管理職登用も検討中とのことである。 を機に、職場環境の整備を行っている。 ハード面では、女性用トイレの整備や安全措置の仕組 みの強化を行った。それまでも大事を防ぐための安全管 理は行ってきたが、女性が働くことになってからは、プレ ス機器の周りを安全柵で覆うなど、小さな怪我でも未然 に防止できるように安全措置の仕組みを強化した。 また、ソフト面では、育休や半休等、子育てをしなが らでも働き続けられるような制度に加え、女性従業員が社 内で相談しやすい環境を作ることに配慮したという。例え ば、同社では 1 年半の育児休暇を認めており、子供の病 気や学校からの呼び出しがあった際に家庭を優先できる ように遅刻、早退等に対しても柔軟に対応しているという。 また、女性を採用する際には 1 人ではなく、複数名を同 202 2015 White Paper on Small and Medium Enterprises in Japan 同社の作業風景
© Copyright 2024 ExpyDoc