■ベートーヴェン/ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲ハ⻑調 Op.56 「エロイカ」交響曲を構想し始めていた 1803 年に着⼿して、翌年、完成されたベートー ヴェンの三重協奏曲は、ピアノとヴァイオリン、チェロという3つの楽器がおのおの華麗な 技巧を繰り広げていく、きわめて近代的な協奏曲である。2管編成のオーケストラも色彩豊 かに配合され、これらの独奏楽器と対話したり、応酬したり、背景となって支えたりする。 じつに素材が豊かで、作曲家自身、いくらかもてあましている感もあるが、3人のソリスト の名妓をたっぷり楽しめる作品となった。 3楽章構成で、第1楽章アレグロは協奏風のソナタ形式。第1主題はチェロで呈示され、 途中、第2主題を挟みながら、ヴァイオリン、ピアノのパートに現れる。経過部で3つの楽 器の技巧が凝らされたのち、第2主題部となり、チェロとヴァイオリンが第2主題を呈示す る。再び技巧的なパッセージが織り込まれたのち、展開部となる。再現部でも呈示部と同じ く、ソリストの妙技が堪能できる。最後はテンポをあげて、華やかなコーダで閉じられる。 第2楽章ラルゴは短い緩徐楽章。カンタービレの主題がチェロで呈示され、変奏される。終 わり近くに独奏楽器によるカデンツァ風の一節があって、終楽章へと続く。第3楽章ロン ド・アラ・ポラッカは、ロンド形式で書かれた軽やかな雰囲気の音楽。ポロネーズのリズム が快活な雰囲気を⽣み出す。最後にはオーケストラとソリストの華麗な協演が展開される。 白石美雪 ※掲載された曲目解説の無断転載、転写、複写を禁じます。
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