チリ経済情勢報告(2015年9月)

2015年 10月 16日
在チリ日本大使館経済班
チリ経済情勢報告(2015年9月)
<概要> 景気は停滞している。
● 消費は停滞している。
● 生産は弱含みが続いているが,企業マインドは改善がみられる。
● 失業率はやや高くなっている。
● 消費者物価は大きく上昇している。
● 貿易は輸出の減少により赤字に転じた。
● 銅価格,為替,株価はいずれも低調が続いている。
先行きについては,引き続き米国金融政策などの動向を注視する必要がある。また,銅価格及び為替
の動向が国内経済に与える影響には引き続き留意する必要がある。
1.経済指標
(1)経済活動指数( IMACEC)-前年同月比
1.1%-
8月のIMACECは前年同月比1.1%と予想(同2.
5%)を下回る結果となった。季節調整済前月比は
▲1.0%となった。中銀によると,サービス業がプラス
要因となる一方,鉱業及び製造業がマイナス要因と
なった。
中銀アンケートによる10月のIMACECの予想は
前年同月比1.8%(中央値)となっている。
(2)消費-停滞している-
① 8月の小売商業販売指数(実質,INE公表)は,
前年同月比1.9%となった。同指数(除く車)は同2.
4%となった。
② 8月のスーパーマーケット販売額(実質,INE公表)
は,前年同月比0.2%となった。
③ 8月の商業販売額(チリ商工会議所公表,サンテ
ィアゴ首都圏,暫定値)は前年同月比0.0%となっ
た。
④ 8月の消費者認識指数(CIEN公表)は88.6と前
月(999.0)から若干悪化した。現状指数(88.2),将
来指数(88.9)はともに悪化している。
⑤ 9月の新車販売台数は28,669台(前年同月比▲3.6%)とマイナスが続いている。
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(4)鉱工業生産,電力-生産は弱い-
8月の工業生産指数は,前年同月比▲1.4%とな
った。セクター別ではたばこ製品が49.8%,ゴム・プラス
チック製品が同12.4%とプラスに寄与したが,非金属
鉱物製品が同▲30.0%,機械・設備が同▲10.3%,
コークス・石油精製品が同▲10.2%とマイナスに大きく
寄与した。
8月の鉱業生産指数は前年同月比▲9.3%となり,
うち銅は同▲8.3%となった。
8月の電力指数は前年同月比2.4%となった。
(4)企業の業況判断-改善がみられる-
9月のIMCE(企業業況判断指数)は45.28ポイント
と,2009年3月以来の30ポイント台であった先月より大
幅に改善した。前年同月差は2.12ポイント,前月差は
5.62ポイントとなった。内訳を見ると,50ポイントを維持
したのは鉱業が64.90(同13.05ポイント)だけであったが,
各産業ともに改善が見られ,商業が49.07(同4.15ポイ
ント),製造業が39.38(同3.41ポイント),建設業が31.
99(前月差4.53イント)となった。
(5)不動産-持ち直しつつある-
8月の建築許可面積(INE公表)は前年同月比▲6.
3%(3か月移動平均)とマイナスが続いているものの,
持ち直しつつある。内訳を見ると,住居が同▲2.0%,
非住居は同▲8.9%と引き続きマイナスが続いている。
(6)雇用-失業率はやや高くなっている-
6~8月期の失業率は6.5%と横ばいが続いている。
前年同期比で見ると,労働力人口は169,795人増加
(前年同期比2.0%),就業者数は178,405人増加
(同2.3%),失業者数は▲8,611人(同▲1.5%)の減
少となった。セクター別の就業者数伸び率では,金融仲
介(同12.7%),ホテル・レストラン(同10.8%)が大幅
なプラスとなった一方,自営業者(同▲10.7%)が大き
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なマイナスとなった。
8月の賃金は,名目は前年同月比5.8%,実質は同0.8%となった。
(7)物価-大きく上昇している-
9月の消費者物価指数(総合)は,前月比は0.
5%,前年同月比は4.6%となった。品目別に前年同
月比の動きをみると,主にアルコール飲料・タバコ(10.
9%),食料品・飲料品(7.2%)中でも特に生鮮野菜
果物(16.2%),レストラン・ホテル(7.6%)が大きく上
昇した一方,燃料(▲13.6%)が低下している。生鮮
野菜果実及び燃料を除くコア指数は,前月比は0.
4%,前年同月比は5.4%となった。
中銀アンケートによる10月の消費者物価指数(総
合)の予想は前月比0.2%となっている。インフレ期待
は1年後:3.5%(前月3.7%),2年後:3.0%(前月3.
0%)と引き続き安定している。
8月の生産者物価(全産業)は,前月比は▲2.7%,前年同月比は▲10.5%となった。
(8)貿易-輸出の大幅な減少で貿易赤字に-
① 9月の輸出額(FOB)は49.0億ドル(前年同月比
▲15.6%)となった。内訳を見ると,鉱業品26.4億ド
ル(同▲18.9%),農林水産品2.1億ドル(同6.2%),
製造業品20.5億ドル(同▲12.9%)となった。鉱業品
のうち銅は24.4億ドル(同▲18.9%),銅を除いた輸
出総額は24.5億ドル(同▲17.3%)となった。
② 9月の輸入額(FOB)は49.9億ドル(前年同月比
▲8.0%)となった。内訳(CIF)は,消費財15.5億ドル
(同▲9.6%),中間財26.7億ドル(同▲14.5%),資
本財10.7億ドル(同14.0%)となった。
③ 9月の貿易収支(FOB)は▲8.5億ドルと赤字が続いている。
(9)対日・中・韓貿易
① 対日貿易(FOB):8月の貿易額は,輸出額3.7億ドル(前年同月比▲32.3%),輸入額2.0億ドル(同▲15.
6%),貿易総額では5.7億ドル(同▲27.3%)となった。
② 対中貿易(FOB):8月の貿易額は,輸出額13.2億ドル(前年同月比▲4.0%),輸入額12.7億ドル(同3.
3%),貿易総額では25.9億ドル(同▲0.5%)となった。
③ 対韓貿易(FOB):8月の貿易額は,輸出額2.7億ドル(前年同月比▲22.3%),輸入額1.5億ドル(同▲12.
9%),貿易総額では4.3億ドル(同▲12.5%)となった。
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2.市場の動き
(1)国際銅価格-低調が続いている-
9月の国際銅価格は,1ポンド2.31105ドル(1日)で
始まり,1ポンド2.31015ドル(30日)で終了した。月初
は,前月の大幅な下落に対する反発と,中国経済に
対する楽観的な見通しにより上昇局面が続いたが,米
国が金利を維持したこと,また年内に利上げすると情
報により,再び降下する傾向こととなった。前月末比▲
0.0%で終了した。
9月の銅在庫は,524,617トン(1日)から510,597ト
ン(30日)と前月末より減少した。
(2)為替-ペソ安が続いている-
9月の為替は,1ドル695.25ペソ(1日)で始まり,コ
キンボにおける大規模な地震が発生した翌日(17
日)には680.16ペソで落ち着く気配を見せた。しかし
連休明けから再度上昇した結果700ペソを超え,月
末は704.68ペソ(30日)で終了した。中国や米国の
景気統計が発表されるたびに方向性が変わる,乱高
下の展開となった。前月末比3.61ペソのペソ安・ドル
高で終了した。
(3)株価-低調が続いている-
9月のIPSA値(サンティアゴ主要株式指数)は,37
86.22ポイント(1日)で始まり,3685.18ポイント(31
日)で終了した。月初は前月の急落に対する反発と
中国経済に対する楽観的期待があったものの,銅価
格の下落やFRBの金利維持など国際情勢の悪化に
より再び3600ポイント台に下降し始め,結果的には
前月末比▲4.0%で終了した。
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3.経済トピックス
(1) 鉱物価格下落で鉱山メジャーも危険水域
世界の主要鉱物は,数年高値が続いたが,2015年になって価格崩壊に直面している。多くの企業
はコスト・人員削減,株の売却などで調整を図っているが,利益を急激に減らしており,いくつか
の企業ではすでに多額の損失を出している。BHPビリトン社によれば,2019年にならなけれ
ば銅価格が再び上向くことはない。これは2019年までに動き出す新規の鉱山プロジェクトがあ
ること及び中国市場の需要低迷が影響している。アングロ・アメリカン社は,今後12~18ヶ月
間は銅価格が不安定になるとの見通しは正しいと述べている。アントファガスタ社は,銅価はいず
れ回復するが回復時期の特定は難しく,中国が引き続き主たる消費国である。一方,インド及び東
南アジアといった魅力的な消費の拡大も見込まれるとした。鉱山業界の危機の影響は,鉱山メジャ
ーを抱える各国のマクロ経済指標にも現れている。
(2)インフラ投資による競争力確保
8月23日,インフラ政策委員会(フレイ,ラゴス両元大統領,ピニェラ前大統領,閣僚,企業家で構成され
る公的機関)のダニエル・ウルタド委員長は新聞記者のインタービューに応じたところ概要は以下の通り。
低迷するチリ経済への取組みには,公共インフラへの民間投資が重要なツールとなる。現在,政府は新
規公共工事の資金に充てるインフラ基金立ち上げを進めている。同基金は財務大臣と公共事業大臣によ
って策定され,今月中にはバチェレ大統領に対して正式に提案される。資金規模は,3,700万米ドルを上
限と見通している。
(記者から,インフラ政策委員会は最近中国を訪問しているが,建設分野で中国から投資を誘致するこ
とは可能かと問うたところ)チリにはしっかりした建設業者がおり,中国企業と協力関係を築くことはできる
だろう。しかし,中国は世界中で投資しており,対チリはそのオプションの一つであるべき。鉄道や港湾分
野で中国の投資家を誘致したい。
(3)チリ・アルゼンチン鉄道の再開見通し
アントファガスタ・サルタ鉄道は,チリ・アルゼンチンを接続する唯一の鉄道で1938年に敷設された。
走行距離は900キロで4,475メートルの高地にあるが,2010年にアルゼンチン側の事故発生を機に
廃線となっていた。同鉄道は数年後に再開する予定で,鉱業関連貨物の運搬を想定しているが,将来的
には農産物の運搬もあり得る。再開は26カ所の国境検問所の改善にも資する。鉄道の管理は,チリの
民間企業フェロノル社とアルゼンチンの国有企業ベルグラノ・カルガス社が行う。
2012年にはアルゼンチン政府とフェロノルの間で再開させることに合意していた。当該合意のおかげ
で「フェ」社はアルゼンチンに機関車を納入し,チリ市場への参入を考えているアルゼンチン企業へのサ
ービス提供が可能となった。
アルゼンチンのサルタ州は鉄道再開により,アジア市場へ製品が供給できることに期待を示している。
(以上)
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