博士(医学)の学位論文提出要項 乙∴類

授与機関名
順天堂大学
学位記番号
甲第 1531 号
Output Factor Determination based on the Monte Carlo Simulation for Stereotactic
Radiosurgery in 10 MV Photon Beam
(モンテカルロ計算を用いた 10MV 定位照射ビームの出力係数決)
深田
恭平(ふかた きょうへい)
博士(医学)
論文内容の要旨
腫瘍に対し、局所的に高線量を集中させる放射線治療法として定位照射がある。定位照射で
は、通常よりも小さい照射野を用い、大線量を少ない回数で照射するため、線量測定の精度
に対する要求は通常の照射法と比較して高いものとなる。ところが、定位照射に用いられる
小照射野における測定は、側方荷電粒子平衡が成立し難い状況であることや、検出器の体積
平均効果などが顕著に効いてくるために正しく評価することが難しく、注意深く測定を行っ
ても検出器によっては線量にして最大 10%以上の差異が見られる可能性が指摘されている。
特に、線量を計算するために必要な出力係数の測定は、治療に用いる線量に直接影響を及ぼ
す量であるが、この検出器による測定値の違いをどのように扱うかについては、各施設に一
任されているのが現状である。本研究では、4 種類の検出器 (PinPoint 3D ion chamber, SFD,
Edge Detector, EBT2) を用いて8個(直径 7.5 mm ~ 30.0 mm)の定位照射用コリメータの
出力係数を測定した。検出器による測定値の違いは最大のもので 19%であった。また、モン
テカルロシミュレーションコード EGSnrc を用いて出力係数を計算した。モンテカルロシミュ
レーションは当施設のリニアック Varian 21EX 10MV ビームのコミッショニングデータに基づ
いて基礎パラメータを決定したものを用いた。シミュレーションでは、出力係数として通常
計算される水中での線量の他に、検出器の形状と材質を模擬した計算領域を作成することで、
各検出器の線量応答特性を評価し、補正係数を算出した。補正係数を乗じた測定値とモンテ
カルロ計算の比較では各照射野につき最大で、PinPoint3D ion chamber で 2.6%、SFD で 1.2%
の相違となり、測定結果は計算により良く再現された。よって水中でのモンテカルロシミュ
レーションの結果を出力係数とすることにより、モンテカルロシミュレーションと、補正さ
れた測定値に対して矛盾ない出力係数を決定した。