(I)イオン高選択的な蛍光レシオセンサーの開発とその応用

第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙
AM コンタクトを用いた銀(I)イオン高選択的な蛍光
レシオセンサーの開発とその応用
Development of highly selective ratiometric fluorescent sensor for
silver ion based on AM contact
鐘ヶ江
杏菜 1、髙嶋 一平 1、杉本 学 2、王子田
(九大院薬 1、熊大院自然科学 2)
彰夫 1
当研究室では、金属イオンに対する新たな蛍光センシングモードとして AM コンタクト
(Arene-Metal ion contact)を提唱してきた。AM コンタクトとは、色素芳香環–金属イオン間の
近接により蛍光スペクトルのレッドシフトを生じる現象である。これまでに当研究室において、金
属イオン滴定に伴い AM コンタクトに由来する蛍光レシオ変化を有する 2 つのリガンド部位をもつ
蛍光プローブやビフェニル型構造の蛍光プローブの開発を行ってきた。今回、検出金属の選択性と
感度の向上を目的として、新たに環状リガンドを導入した蛍光プローブを設計した。
環状リガンドの大きさや蛍光色素が異なる複数の蛍光プローブを
合成し、それぞれのプローブの金属イオン滴定に伴う蛍光スペクト
ル変化を評価した。その結果、化合物 1a が Ag(I)イオンに対して著
しい蛍光レッドシフトを生じることを見出した (下図中央) 1)。一方
で、アルカリ、アルカリ土類、3d-遷移金属イオンでは蛍光変化は生
じず、Ag(I)イオンに対する高い選択性が確認された。また、アントラセン類似体 1b を用いてメカ
ニズムの検討を行ったところ、1b の Ag(I)錯体の X 線結晶構造解析から、アントラセン 9 位の炭素
原子(C9 炭素)と Ag(I)イオンとが両者のファンデルワールス半径内で近接していることが確認され
た(下図右)。さらに 13C-NMR 測定では、Ag(I)イオン滴下に伴い C9 炭素のピークのみ大幅に高磁
場シフトしたことから、蛍光レシオ変化が AM コンタクトによるものであると示唆された。
1a の Ag(I)イオン滴定時の模式図(左)と
蛍光スペクトル変化(中央)、及び 1b の
Ag(I)錯体の X 線結晶構造解析(右)
ファンデルワールス半径の和
3.49 Å(C:1.77,Ag:1.72)
<参考文献>
1)I, Takashima; A, Kanegae, et al. Inorg.Chem. 2014, 53, 7080
発表者紹介
氏名
鐘ヶ江 杏菜(かねがえ
あんな)
所属
九州大学大学院薬学府
学年
修士課程
研究室
生体分析化学分野(王子田研究室)
2年