プリント

中間テスト
この授業は前半が力学(吉田担当)、後半が電磁気学(彦坂担当)ですが、前半の最後(第7回6月5日)
に力学の分(範囲は第6回までの分)の中間試験します。期末試験は電磁気学のみとします。
実習と補講
3回の実習はお知らせしたとおり(6/29,7/6,7/13)ですが、新入生合宿研修で潰れた分を6/22に補講(彦
坂)を行います。
Q&A
Q: 物体が耐えられる力には上限があるのでしょうか?例えばリンゴを握り潰す人がいるけれど、
あれは指がリンゴを押す力とリンゴが指を押す力のつり合いがくずれて、リンゴが潰れるのでしょうか?
A: 物体に力が加わると変形しますが、力がある一定値を超えると壊れてしまいます。その意味で上限
はあります。作用・反作用の法則は常に成り立ちます。指がリンゴを押す力とリンゴが指を押す力は、常
に逆向きで大きさが等しいのですが、指がリンゴを押す力を大きくしていくと、リンゴが潰れ、リンゴが指
を押す力が急に弱くなります。その時は、指がリンゴを押す力も同じく弱くなります(押せなくなる)。です
ので、「つり合いがくずれる」という表現はあまり適切でないと思います。作用・反作用の法則は常に成り
立つのですから。
Q: 地球と月に間にも引力が働いていて、近づいているというのは本当ですか?
A: 地球と月の間には、万有引力が働いています。これによって月は地球のまわりを公転しています。
もう少し後で等速円運動を勉強します。その時に解説します。近づいているか遠ざかっているかに関し
ては、少しづつですが遠ざかっています。地球の自転や月の公転に起因する月の引力の変化によって
地球では干潮、満潮などの潮の満ち引きが起こります。その際に地球の自転にはブレーキがかかり(エ
ネルギーは減少)、月の公転のエネルギーは増大します(全体のエネルギーは保存)。その結果、月は
年に数cmですが、遠ざかっています。この説明には角運動量等の知識が必要ですが、残念ながら、こ
の授業ではそこまで勉強しません。
Q:後でかまいませんので、重要な公式をまとめたプリントを作っていただけるとありがたいです。
A:プリントの
で囲った部分が重要です。穴埋め問題になっている語句も重要です。
練習問題中の数値を入れる穴埋めは、特に重要ではありません。力学に関しては、昨年度の試験問題
も公開します。これらを参考にして下さい。
Q:後ろの方の人が、うるさかった。
A:授業中は静かにして下さいね。授業を聞いてくれている人の邪魔にならないようにお願いします。
第4回(5/15)
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[問題] 下の図はジェットコースターのコースの一部分の高低差を表した図である。空気抵抗や摩擦を無視
すると、コースターが一番速いときと一番遅いときはコースターがどの位置にいるときか?
上
下
ヒント:コースターの位置エネルギーが
一番大きいときと、一番小さいときはどこか?
( 教科書 p44 )
熱量
1 g の水の温度を 1℃ 上げるのに必要な熱量は1 cal (カロリー)である。
ちなみに水 1 g の体積は 1 cm3 です。(1 cc ともいう cubic centimeter )
熱はエネルギーの形態の一つで、 cal (カロリー)はエネルギーの単位である。
1 cal ≒ 4.18 J ≒ 4.2 J ≒ 4 J
(cal はMKS単位系の単位ではない)
絶対温度は熱運動の激しさで、理想気体では分子1個あたりの運動エネルギーに比例している。
微視的にみると、熱は分子や原子の運動エネルギーである。
問題: やかんの中に 20 ℃の水が 1 リットル( 1000 cm3 = 1000 g )入っている。この水の温度を100 ℃
まで上昇させるに必要な熱量を求めよ。
[求め方]
栄養学におけるカロリー
ダイエット等でおなじみの消費・摂取カロリーは、エネルギーの単位です。
(成人男子の平均的な1日の栄養摂取量は約2500 kcal ) 1 kcal = 1000 cal
「キロ」を省略することがあるので注意
問題: 4ページの問題でA君の位置エネルギーの増加(120000J)を cal, kcal で答えよ。1 cal は 4 J とせよ。
答:
cal,
kcal
登山で体が消費したエネルギーは 100 % 位置エネルギーに転化するわけではない。筋肉の効率も 100 % でないし、筋
肉を動かすためには、心臓・肺を動かすためのエネルギーも必要である。実際の消費カロリーは上の答えの数倍である。
第4回(5/15)
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[問題] コーヒー用の砂糖のスティックは 3 g のものが多いです。体重 60 kg のB君が
スティック1本分のカロリーを消費するには、段差 20 cm の階段を何段上がる必要があるか?
ただし、砂糖 1 g は 4 kcal、1 cal = 4 J、消費カロリーの 20 % が位置エネルギーとなったとせよ。
(位置エネルギーの増加の5倍のエネルギーを消費した)
J≒
1段あたりの位置エネルギーの増加は
cal =
1段あたりの消費カロリーは
砂糖 3 g はカロリーは
cal
kcal
kcal
階段を何段上る必要がある?
エネルギー保存則
段
(教科書 p52)
エネルギーはいかなる形に変換されても増減はなく、一定である。
[問題]上の問題において、エネルギーが保存するなら、残りの 80 % は主にどのような形態のエネルギー
になったと考えられるか?
エネルギーの変換とエネルギー保存則
[問題] 自由落下、山登り、電気ストーブ、太陽光発電、乾電池、蛍の光 はどのような矢印に相当するか?
他にもたくさんあるので考えてみよ。
エネルギーが熱等に逃げていかない場合のみ
力学的エネルギー保存則が成り立つ
位置エネルギー
熱
運動エネルギー
電気エネルギー
化学エネルギー
例:蛍光灯
原子力・核エネルギー
光・電磁波のエネルギー
教科書の52ページに色々な例が載っています。
第4回(5/15)
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仕事とエネルギーまとめ
仕事W=(力F)×(力の方向に動いた距離s)
(単位:ジュール[J] )
エネルギー:外部に対して行うことができる仕事量(単位:ジュール[J] )
位置エネルギー
高い位置にある物体はエネルギー(位置エネルギー)を持っている
位置エネルギー U は、物体の質量 m と高さ h に比例する。
U = mgh
運動エネルギー
運動している物体はエネルギー(運動エネルギー)を持っている
運動エネルギー K は、物体の質量 m に比例し、その速度 v の2乗に比例する。
1
K = mv2
2
力学的エネルギー = 運動エネルギー + 位置エネルギー
摩擦等がなく、エネルギーの散逸がない場合、力学的エネルギーは保存する。
(力学的エネルギー保存則
力学的エネルギー保存則)
力学的エネルギー保存則
エネルギー保存則
エネルギーはいかなる形に変換されても増減はなく、一定である。
(常に厳密に成り立つ)
問題: 現在、省エネ等の技術開発が盛んにおこなわれているが、エネルギーが常に厳密に保存するなら、
そのような必要はないようにも思われる。この矛盾を説明せよ。
第4回(5/15)
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摩擦力と垂直抗力
垂直抗力(復習)
接触面を通して面に 垂直
に相手の物体に作用する力を垂直抗力という
物体
重心:そこで支えるとつり合う点
対称的な物体なら中心
W : 物体に作用する重力 (重力は物体の各部分に作用するが、物体の重心に全重力が作用している
としてよい。)
N : 床からの垂直抗力 (垂直抗力は、接触面の各部分にも作用するが、この場合は接触面の中心に作用
しているとしてよい。)
床
(教科書 p18 )
摩擦力
接触する2物体が互いに接触面に 平行
に作用し合う力。静止摩擦力と動摩擦力がある。
静止摩擦力
物体
静止摩擦力
2物体の速度に差がない場合の摩擦力
(すべってない時の摩擦力)
摩擦力 F = -f
W
N
左の図では、摩擦力 F は、指で加えた力 f と同じ大きさで逆向き
f
F
床
床から受ける力のうち、
面に垂直な成分を垂直抗力
平行な成分を摩擦力
と考えるとわかりやすい
F と f で、物体を左回りに回転させようとするが
W と N は物体を右回りに回転させようとする。
結果として、物体はどちらにも回転せず静止している。
垂直抗力の作用点は、そういった事情で
上の図より左側にずれている。(テストには出ない)
最大摩擦力
物体を押す力がある限度を超えると物体は動き出す
この限度の静止摩擦力が最大摩擦力
記号:F0
静止摩擦係数
最大摩擦力 F0 は 垂直抗力 N
の大きさにほぼ比例する
F0 = µN
上の式の比例定数 µ が 静止摩擦係数
接触する2つの物質の材質で決まる定数(滑りにくさの指標)
接触面の面積にはあまり関係しない。
第4回(5/15)
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実験・問題:(1)下の図のような水平面と角θ をなす斜面の上に、物体が静止している。
物体に働く重力 W 、斜面からの垂直抗力 N 、静止摩擦力 F を図示せよ。
物体に働く力はつり合っていることに注意すること。
(2)N とF の大きさをW とθ を用いて表せ
ヒント:まず重力を書け
静止摩擦力の図と同様に
同じ理由で垂直効力と
摩擦力の矢印の始点は
中心ではない。
(3)θ を大きくしていくと、θ max になったとき
物体は滑り出した。静止摩擦係数 µ とθmax
の関係を求めよ。
θ
(4)実験をして静止摩擦係数 µ を求めよ。直方体の向き(底面の面積)を変えたり、裏返して材質を変え
て実験してみよ。
木・アルミ(底面積大): µ =
木・アルミ(底面積小): µ =
ゴム・アルミ(底面積大): µ =
滑りにくいトレイで実験:ゴム・トレイ: µ =
動摩擦力
(教科書 p18 )
物体は床の上をすべっている
動摩擦力
2物体の速度に差がある場合の摩擦力
(すべっている時の摩擦力)
摩擦力の方向は相対運動を妨げる方向(接触面に平行)
物体
v
W
f
N
F
床
静止摩擦力の図と同様に
垂直効力と摩擦力の矢印の始点は
中心ではない。
動摩擦係数
動摩擦力 F も、垂直抗力 N の大きさにほぼ比例する
F = µ’N
上の式の比例定数µ’が動摩擦係数
µ’は接触する面の大きさや滑る速度にほとんど無関係
一般に µ > µ’> 0
第4回(5/15)
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問題:体重が60 kgのA君がスケートをしている。氷とスケート靴のブレードとの動摩擦係数を 0.005 とする
と、滑っている時の動摩擦力の大きさはいくらか?重力加速度 g は 10 m/s2 とせよ。
角の国際単位: [rad](ラジアン)
(教科書 p146 )
1 rad の定義:半径と弧の長さが等しいときの中心角が 1 rad
円弧の長さ s は、中心角θ に比例
s∝θ
θ の単位を rad にすると比例定数は半径 r
弧の長さ
s=r
弧の長さ
s = rθ
1 rad
円の中心O
radius
半径は記号 r
角は記号 θ を
使うことが多い
(θ = 1のとき、s = r)
1 rad の定義
中心角が360°のとき、
円弧の長さは円周 2πr なので
半径 r
s = rθ = 2πr
正三角形
に近い
θ = 2π
つまり、360°は 2π [rad]
1 rad =
360°
≒ 57.3° 正三角形に近い
2π
授業、教科書では、角の単位としてラジアンを用いる。
問題:次の角は何 rad か?(360°は 2π rad)
180°= π
rad,
90°=
rad,
60°=
rad,
45°=
rad,
30°=
rad
0.57°
問題:角 θ が 0.01 rad の時、計算機で、次の値を求めよ。
(1)sin θ = 0.0099983・・・ (2)tan θ = 0.01000033・・・
角 θ が十分に小さいとき( θ << 1 ) sin θ ≒ θ
よく使う近似式 , rad の利点
第4回(5/15)
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≒ tan θ
(教科書 p32 )
等速円運動
直交座標 x,y と極座標 r,θ
等速円運動の場合: x,y はどちらも変数
y
r は定数、変数は θ だけ。
円運動を取り扱うには極座標の考え方が不可欠
x = r cos θ
y = r sin θ
P
y
r
r = √ x2 + y2
r sin θ
θ
O
r cos θ
角θ は、+x軸を基準とし、
質点が反時計まわりに動くと角θ は増加する。
質点が時計まわりに動くと角θ は減少する。
(θ はマイナスの値もとり得る)
x
x
質点 P が原点 O を中心とする半径 r の円周上を一定の速さ v で運動する場合、
角 θ は、単調増加する。
(対応)
等速直線運動
等速円運動
θ (t) = ωt
角速度 :ω =
x(t) = vt
θ は単調増加する。
dθ
dt
速度 v =
単位時間( 1 s )あたりの回転角
x は単調増加する。
dx
dt
単位時間( 1 s )あたりの変位
問題:ひもに付けられたおもりが等速円運動しており、1.50 秒で 1 回転している。
このおもりの角速度 ω を求めよ。π は 3.14 として計算せよ。(周期が 1.50 s の等速円運動、周期は後で勉強する。)
第4回(5/15)
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サーモビールの動作原理
プロペラ
形状記憶合金のワイヤー
滑車
張力
張力
冷えてまた
やわらかくなる
単なるひもと考えて良い
70度以上になると、
もとの形(まっすぐ)に
戻ろうとする
冷えるとやわらかくなる。
ワイヤーはゆるく張ってある。
だんだん温まる
70度以上になって
まっすぐになろうとする
お湯
張力の大きさは
どこも同じ
同じ体重の人がシーソーに乗った時、
支点から遠い所に乗った人に
働く重力の方向に回転する。
張力
下の滑車
滑車の支点から
遠いところに張力が働く
支点
中心
左右対称なので、どちらにも回る
第4回(5/15)
8 ページ
学生番号:
氏名:
この講義に関する意見・要望・感想、質問、取り上げてほしい話題等、何でも自由に書いて下さい。
超常現象(火の玉、幽霊、UFO等)の体験等があれば書いて下さい。
第4回 5月15日
学生番号:
氏名:
この講義に関する意見・要望・感想、質問、取り上げてほしい話題等、何でも自由に書いて下さい。
超常現象(火の玉、幽霊、UFO等)の体験等があれば書いて下さい。
第4回 5月15日
練習・復習問題
速さ 5 m/s (18 km/h )の自転車が急ブレーキをかけたところ、両輪とも回転が止まった。自転車の質量を
20 kg,運転者の質量を 60 kg, タイヤと路面の動摩擦係数を 0.5 として以下の問いに答えよ。重力加速度
g は 10 m/s2 とせよ。(自転車の構造を無視して単なる直方体のような物体と考えてもよい。)
(1) タイヤと路面の間に働く動摩擦力の大きさを求めよ。
(2)自転車が停止するまでの時間を求めよ。
(参考)ウイングとダウンフォース
リア・ウイング
フロント・ウイング
F1のタイヤと路面の
静止摩擦係数 1.6
一般のタイヤ 0.7
ウイング:飛行機の翼を上下逆にしたような構造で走行時は下向きの力(ダウンフォース)が働く
問題:ウイングをつける意味は何か?(ヒント:車は摩擦力で加速・減速する。)
ダウンフォースが十分に(重力以上)あれば、理論上、天井を走ることもできる。
練習・復習問題(解答)
(1) F = µ’N = µ’mg = 0.5×( 20+60)×10 = 400 [N]
(2)
F = ma = µ’mg
a = µ’g
= 0.5×10
=5
F = ma = 400
a = 400/(20+60) =5
∆v = a×∆t
5 = 5×∆t
∆t = 1 [s]
ダウンフォースをFdとすると、
最大摩擦力は Fmax = µN = µ(mg+Fd) となり、
走行時は最大摩擦力が増大する。
具体的には、(1)ブレーキをかけたときにスリップしにくくなる。(2)カーブでスリップしにくくなる。