ー構成概念モデルと演習形態モデルとの対比一

「
C-2
アセスメントセンターにおける2つのモデル
ー構成概念モデルと演習形態モデルとの対比一
I
A1temativcModelsofA悪巳韓mfmtCenters:
ACompaIisonBetweentheConsmlctModelandtheMeUlodModel.
OilH橋潔高井1W夫外凡裕片岡大輔[(株)日本鮨率協会マネジメントセンター]
KjycshiTBkahashLHi麺oTakaipYutakaTbshima・andDaisukeXataoka(』.M,A,MnnaBcmentCem“Inc.)
包括的人材評価技法であるアセスメントセンターは、
-に対して寄せられている。まず第1に、アセスメント
わが国においてもアセスメント研修として広く知られて
センターは他の人材評価方法と比ぺて費用が割高である
おり、符理職の選抜、配皿、管理能力の早期発見、昇進・
昇格、キャリア閲発、自己啓発、教育RⅡ練濯ど、様々な
ことが挙げられる(Gatewood&FCildD11g46ScImeider&
ScImjIt,1986)。第2に、少なからぬ数の人々にとってア
目的で用1,,られてきている。この方法は、①研修参加者
セスメントセンターは不安・緊張の源であり、糖神的負
担となる(Schneider&SchmitLI985)。第3に、アセスメン
トセンターでの評価には対比効果が現れるため、センタ
が小人数のグループを組み、②職務状況をシミュレート
した複数の状況課題や演習を受鱗し、③その演習課題の
中で表出された行動を、④専門的経験を持つ数人の評価
者が、⑤職務分析によって規定された複数のディメンジ
ョン(評価項目)に基づいて個別に評価し、⑥それぞれ
ーでの呼価が偏向してしまうことが考えられる(GaugIe『
&Rudolph,19”九
の結果を評価者INIの討錨を通じて総合することによって、
⑦研修参加者の将来の職務遂行能力や符理職としての適
性をアセスメント(評価)する技法であるといえるTinkIe,
節4に、アセスメントセンターで評価者が適切に呼価
できるディメンジョン数は、仮定されている数より少な
く、実際にはかなり限定された数の属性しか評価されな
いことが指摘されている。たとえばSchmjtt(1177)は、17
l176iMuchins跡1990;Rcberlsom&IIBs,l988iSaal&
のデイメンジョンについて4人の専門評価者が101人の
中堅管理職を評価した結果を主成分分析し、業務遂行ス
キル・対人関係スキル・活動性(活力)の3つの因子が
Knighl,1988)。
アセスメントセンターには、その艮所としていくつか
の特徴がある。まず第1に、この技法で管理職に昇進す
抽出されたことを報告している。またshore,T1uomtoIL&
る可能性の高い従業員を早期に発見できることが挙げら
shore(1910)は、4演習を通して11のディメンジョンから
れる旧my&CamPbeIIp1166iBray,Cmupbell,&Gmnt,1974;
Himichs,1178;McEvoy&Beatlybll896Ritchie&Moses,
1983)。第2に、管理者の将来の職務行動を予測する力が、
適性検査や面接といった伝統的方法と比ぺて、同等もし
くはそれ以上であることが知られている(Byham,11705
411人の石油会社従業員を評定した結果を因子分析し、
大きく業繍デイメンジヨンと対人デイメンジヨンの2因
子を見出している。同様にJonesoHeuTiot,Long,&Dmkeley
(1111)は、1790人の大英海軍下士官応騨者を4デイメン
ジョンで評定した結果を因子分析し、性格・人格・リー
CohenMosesi&Byham,1174;GaugIeretaL,ID876ScIumitt
eta1.1184)。第3に、アセスメントセンターは管理職の
ダーシップ因子と知性因子の2因子を抽出している。
職務をシミュレートしているため、適抜方法として受け
る方法(演習内容)に大きく依存してしまい、センター
最後に、アセスメントセンターでの評価は、用いられ
入れられやすいことが挙げられる(Schneider&SchmjlL
で測るぺき榊成概念(評価ディメンジョン)の鞄ウ性に
1986)。筋4に、アセスメントセンターでは、シミュレー
対して重大な疑問が投げかけられている。たとえば
トされた状況の中で他の符理職(もしくは管理職予伽
軍)がとる行動を体系的に観察・評価するため、センタ
SackeIt&D「Eh2T(1,82)の発見的因子分析研究では、3つ
ーでの演習に参加することによって、他者を査定すると
たアセスメントセンターで、いずれの場合にも、はっき
の組織(多国締企業・役所・小売店)に対して実施され
いう符理職としての責任をまっとうするための貸亜な経
りした演習因子の存在を見出した。また、BWiqAlvaJes,
験を積むことができる(Lo『pnzooI984)ことなどが挙げら
&Hah、(1987)の砿征的因子分析とSchneider&SCImjtt
れる。
(I”2)の碗狂的因子分析では、いずれもディメンジョン
これに対して、吹の5つの批判がアセスメントセンタ
全部に負荷をもつ、被評価者のスキル・能力全般を映し
産業・組織、理学会第12回大会(1996年9月21,22日)
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出している1つの因子(g因子)の存在を碗証している
笠記式ケース課題で使われた事例について自由に肘錨す
が、それと比ぺて、演習(方法)による因子の影響の方
る。対象者の肘錨内容や行動・態度などは、経験のある
がより大きいことを示している。
3名の評価者によって、主導性、脱得・傾聴、役割意職
以上見てきたように、アセスメントセンターにおいて
の3つの観点から観察・記録された後、全グループ肘騒
経験のある評価者が行う評価のメカニズムとして、2つ
が終了した段階で評価者が合錨を行ない、各対象者の呼
のモデルが示唆される。第1の榴成概念モデルに従えば、
価結果が5点満点で決定された。
アセスメントセンターで評価される項目は、職務遂行ス
キルや対人MU係スキルといった少数の榊成概念にまとめ
解析され、先に述ぺた柄成概念モデルと演習形態モデル
このようにして得られた評価結果は砿証的因子分析で
られる可能性がある。呼価者は、アセスメントセンター
から仮定される構造の適合性が検肘された。碗証分析に
技法それ自体が暗黙に仮定しているのとは遮って、披胖
あたっては、構成概念モデルが正しければ、呼価される
価者のスキル・能力・行動を、多岐にわたる桶成概念(評
価ディメンジョン)からそれぞれ別々に昭職・解価する
ことばない。この多面的な評価は、経験のある評価者に
とっても鯉知的に困難な作業であるため、代わって、職
項目が大きく職務遂行スキルに関わる領域(要点把握・
務遂行や対人関係といった少数の栴成概念から評価して
式に従って、罐記ケース解釈課Hgに関わる領域(要点把
いる可能性が考えられるのである。第2の演習形態モデ
ルに従えば、評価者は、個別の演習における被評価者の
行動上の特性を娚的に評価してしまうため、評価結果に
は演習形態による影響が大きく反映してしまうことが仮
握・対策立案・人間関係配慮)とグループ討鎚に関わる
定される。
仮定が砿証されたのである。
対策立案・主導性)と対人関係スキルに関わる傾城(人
間関係配慮・脱得傾聴・役割意餓)に2分され、反対に
演習形態モデルが正しければ、評価項目は2つの菰習形
領域(主導性・脱得傾聴・役割意職)とに2分されるで
あろうことが、2つのモデルから仮定された。したがっ
て、実際のアセスメントセンターの結果から、これらの
本研究の目的は、したがって、アセスメントセンター
での評価に対して、上述した栂成概念モデルと横習形態
結果
モデルのいずれが妥当であるかを検肘することである。
6つの評価ディメンジョンから職務遂行スキルと対人
関係スキルが呼価されることを仮定した榊成概念モデル
方法
を、最尤推定による硴証的因子分析によって解析した結
本研究では、大手製造会社の課長昇進験験の一顧とし
果、構成概念モデルの全体的適合性があまり望ましいも
て、89名の従業員に対して実施された簡易版アセスメン
のでなし、ことが見出された(X?=2,76;炉Bi〆・OOIi
トセンターの結果が分析された。対象者は全側男性で、
GFI=885;AGFI=、691;RMSR罠.131)。図1に示したように、
当餓企業で数回にわたって実施された筆記賦験によって、
榊成概念モデルでは、主導性が廠務遂行スキルに対し、
約400名の中から適抜された。最終i拭験となるアセスメ
また脱得・傾聴と役割意戯が対人関係スキルに対し相対
ントセンターでは、週考に残った対象者が一所に無ぬら
的に高い負荷を持っている。したがって、評価されたす
れ、笠記式のケース解釈腺図、グループで行う肘雛演習、
並びに自己の経歴に関する役員面接の3つの課題が実施
された。しかし役風面接は、他の2つの減習とは違って、
対象となった企業の役貝が呼価者となっているため、今
ぺての項目が仮定された構成概念に対し同等の影轡を持
回の分析には用いられなかった。
対人関係との間に適度に強い関係性が見られた仲=.40)た
つというのではなく、職務遂行スキルと対人関係スキル
のいずれの桶成概念も、グループ肘麟で評価された項目
に負荷を持っているように思われる。また、職務遂行と
筆記式のケース解釈課題は、小銭形式で香かれた率例
め、この2つの梢成概念は互いに独立であるとはいえな
を読み、問題点の把握とそれに対する対策案を記述させ
いだろう。
るものである。香かれた答案は、経験のある3名の評価
者によって、要点把握、対策立案、人間関係配忠の3つ
の観点から各5点満点で呼価された後、評価者間の合駿
習方法が評価に対して及ぼす影響を仮定した演習形態モ
デルを、最尤推定による碗証的因子分析によって解析し
によって最終得点が決定された。
た結果は、繭習形態モデルの適合性が高いことを示して
同様に、鋪記ケース解釈問題とグループ討鹸という演
グループ肘醗では、対象者が5人から6人のグループ
いる(Xz=9.896⑳凸85辰.27,几s,BGFI=g63iAGFI=.,O2i
を組み、司会や香記といった役割をあらかじめ決めずに、
RMSR=、066A図2に示したように、演習形態モデルでは、
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要点把握・対策立案・人間関係配鹿が筆記ケース解釈問
題を表わす潜在凌数に対し、また、主導性・説得傾聴・
役割意戯がグループ討融を表わす潜在変数に対し、ほぼ
同等の貢献をなしている。またケース解釈問題とグルー
プ討雛をそれぞれ表わす潜在変数間に強い関係性は見ら
れなかった昨」2)。したがって、2つの演習で評価され
る資質が独立していることがわかる。
要約すれば、アセスメントセンターにおいては、それ
ぞオ1独立に評価された項目が大きくMH務遂行と対人関係
とに概念的に分けられる桝成概念モデルではなく、用い
られた演習の内容に評価結果が左右される菰習形態モデ
ルの方が現実に即していることが示唆されたのである。
っているのかという問題はしばしば践蟻を呼んできた。
この問題に対し本研究では、呼価されるディメンジョン
が、職務遂行と対人関係という管理者に必要なスキルの
まとまりを表わすのではなく、実際には、ディメンジョ
ンごとの評価が、個別演習の内容を端的に反映してしま
っていることを示した。言い換えれば、アセスメントセ
ンターにおいては、いくら多面的な評価項目が股定され
ていようとも、評価者はそれを適切に弁別できず、結果
としてだされた呼価は、使われた演習課題での被評価者
の出来不出来を蝋的に反映している可脂性が高いのであ
る。したがって、とくに昇進・昇格賦験の一貧としてア
セスメントセンターを用い、従業員のスキルや能力につ
考察
いて多面的かつ妥当な評価を行っていくためには、詳価
項目を多概化するのでなく、実施される課題の数を多く
アセスメントセンターにおいて、評価がディメンジョ
することが必要だといえるだろう。
ン(評価項目)を反映しているのか、あるいは方法に依
(1.00)61
(1.00)&
(1.05)&
主導性
↓(、40)
(9,64
(.58)酌
。、得・傾瞳
(.4,56
図1J機成概念モデルに関する確柾的因子分析結果
(、71)51
(、66)凸
。,)6〕
主導性
(.54)60
人間DEm正
巾(、12)
(、58)酌
。s)比
世劃茸匝
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