滋賀医科大学 消化器・血液内科 西田 淳史 「免疫細胞の腸炎誘導性の

滋賀医科大学 消化器・血液内科 西田 淳史
「免疫細胞の腸炎誘導性のユニークな糖鎖構造 ― その機能から探る炎症性腸疾患の病態
理解と新規治療の模索」
潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される炎症性腸疾患は、再燃・寛解を繰り返す腸管の慢性
炎症性疾患であり、その罹患患者数は、日本を含め世界的に増加をしている。その病因につい
ては、様々な方面から研究がなされてる。
炎症性腸疾患マウスモデルを用いた検討では、腸炎時に、glycan-modifying-enzyme の
一つである core-2β1,6-N-acetylglucosaminyltransferase(C2GnT)1 の発現低
下による memory CD4 陽性 T 細胞上に誘導されるユニークな糖鎖構造(colitisassociated-glycome:CAG)を形成することで腸炎悪化に関与していた。
(1)T 細胞以外の免疫担当細胞上の糖鎖修飾酵素(glycan-modifying-enzyme)
の発現の検討。WT、DSS 腸炎モデル、慢性腸炎モデル(TCRαKO)の大腸より B 細胞、樹
状細胞、マクロファージを FACS を用いて単離し、主な糖鎖修飾酵素の発現を real-time
PCR 法にて確認した。いずれの酵素にも炎症による有意な変化は認められなかった。
(2)炎症性腸疾患の治療において、その腸炎重症度および治療効果判定は薬物投与量
や治療薬変更などを考える上で、非常に重要である。このため、CAG 形成に関わる C2GNT
の大腸組織中での発現および血中での発現と臨床重症度との相関および治療前後での
C2GNT 発現量変化と臨床重症度との相関を検討することで、C2GNT が炎症性腸疾患の
バイオマーカーとして用いることができるか検討を行いたい。
(2)-1:内視鏡重症度と C2GNT1 発現の相関が得られた。重症度が高くなるに従い、
大腸組織の C2GNT1 の発現が有意に低下していた。
(2)-2:臨床重症度(partial mayo core)と C2GNT1 の発現の相関が得られた。
(2)-3:治療効果があった症例について C2GNT1 の発現を治療前後で検討を加えまし
た。治療効果があった症例では組織内の C2GNT1 発現の上昇が認められました。
今後は、治療予後判定などに用いられないかを検討していきたいと考えてます。