(地方公共団体金融機構寄付講座) 「第三セクター等のあり方 ー健全化と活用の両立を目指してー」 関東学院大学経済学部・教授 望月 正光 2015.10.6(火) 2015.10.6 1 講演の目的 • 経済理論の立場から「第三セクター」分析 :経営学、行政学、政治学等の包括的分析必要 :健全化と活用の両立を目指して 1.欧米のサード・セクター(公民連携) ↓ 2.わが国の第三セクターの現状:意義と分類 (ⅰ)社団法人・財団法人→非営利・公益性 (ⅱ)会社法法人→地域利益目的 →利潤最大化と矛盾 ※地方三公社、独立行政法人(H.18)存在 ↓ 3.わが国の第三セクターの問題点と指針の策定 (ⅰ)社団法人・財団法人→公益性基準 (ⅱ)会社法法人→地域利益基準(損失拡大リスク) →健全化と活用の両立 2015.10.6 2 1.欧米のサード・セクター(公民連携) • Evers & Laville[2004]のサーベイ (1)アメリカにおけるサード・セクター NPO(非営利団体)を中心とした理論 :サード・セクター=市場と政府の失敗を補完 (2)ヨーロッパにおけるサード・セクター 相互扶助組織を中心とした理論 :サード・セクター=協同組合等を含む定義 2015.10.6 3 (1)アメリカにおけるサード・セクター Weisbrod[1988]の説明 2015.10.6 4 (2)ヨーロッパにおけるサード・セクター Pestoff[1992]の説明 2015.10.6 5 2.わが国の第三セクターの現状 (1)第三セクターの経緯 • 1960年代後半 :「第3セクターの復活」(サード・セクター紹介) • 1973年「経済社会基本計画」 :官民共同出資の株式会社=「第三セクター」 ↓ • 1980年代後半:設立ラッシュ • 1986年「民活法」 • 1987年「リゾート法」 • 1988年~1996年:第三セクター設立数最大 2015.10.6 6 (2)意義と分類 • 総務省の定義:第三セクター等 ①第三セクター (ⅰ)一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の規 定に基づいて設立されている社団法人、財団法人及び特例 民法法人(以下「社団法人・財団法人」という。)のうち、地方 公共団体が出資を行っている法人 (ⅱ)会社法の規定に基づいて設立されている株式会社、合 名会社、合資会社、合同会社及び特例有限会社(以下「会 社法法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行ってい る法人 ②地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社(以下 「地方三公社」という。) ③地方独立行政法人 2015.10.6 7 (3)欧米との比較 ①第三セクター設立形式による区分 (ⅰ)社団法人・財団法人 :旧民法第34条根拠=「非営利目的」 :公益法人改革=現行制度移行「公益性基準」 ⇩ 福祉混合基準の①部分 (ⅱ)会社法法人 :旧商法根拠=「営利目的」 :会社法=現行制度移行「株主利益最大化」 ⇩ 福祉混合基準の②部分 「サード・セクター」範囲外=「わが国の本来の第三セクター」 ※②地方三公社、④地方独立法人が加わる。 2015.10.6 8 3.わが国の第三セクターの問題点と指針の策定 (1)社団法人・財団法人 :旧民法=非営利、公益性 (個別法による医療法人、学校法人、宗教法人、 社会福祉法人除外) 社団法人、財団法人 :現行制度(公益法人改革以降)=公益性基準 ア.公益社団法人、公益財団法人 イ.一般社団法人、一般財団法人 ウ.特例民法法人 ※特例民法法人の移行問題 2015.10.6 9 (2)会社法法人 わが国では、本来の第三セクター :旧商法根拠=「営利目的」 :会社法(現行制度移行) ↓ 第三セクター目的「地域利益の最大化」 (官民共同出資、人事権、雇用など) ↕ 矛盾の問題(損失拡大要因) 本来目的「利潤の最大化」 2015.10.6 10 (3)会社法法人の基本モデル:James & RoseAckerman[1986] 2015.10.6 11 (4)固定額タイプ補助金のケース 2015.10.6 12 (5)生産比例タイプ補助金のケース 2015.10.6 13 (6)指針の策定 • 第三セクター(会社法法人) (ⅰ)現行の第三セクター →生産拡張的要因保持(損失拡大リスク) →人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化 (ⅱ)経営方針「地域利益の最大化」 →「利潤最大化基準との両立」、「健全化と活用」 (ⅲ)地方公共団体の補助金 →第三セクター等の公共性、公益性 (ⅳ)第三セクターの経営者 →実質的な決定権と経営責任 2015.10.6 14 [参考文献] • • • • • • • • • • • • • Evers,A.&J.L.Laville(eds.)[2004],The Third Sector in Europe, Edward Elgar Publishing. James,E.&S.Rose-Ackerman[1986],The Nonprofit Enterprise in Market Economies, Harwood Academic Publishers (田中敬文訳『非営利団体の経済学』多賀出版,1993年). Pestoff,V.A.[1992],“Third Sector and Co-operative Services-An Alternative to Privatization”, Journal of Consumer Policy,No.15,pp.21‐45. Weisbrod,B.A.[1988],The Nonprofit Economy, Harvard University Press. 今村都南雄編著[1993],『「第三セクター」の研究』中央法規出版社. 自治総合センター[2003],『第三セクターに関する研究会報告書』. 総務省[2014],「第三セクター等の経営健全化の推進等について」(平成26年8月5日付け 総財公第102号自治財政局長通知). 総務省[2015],『第三セクター等の状況に関する調査結果』. 砂川福七郎[1981],「都市開発における第3セクター方式の役割と限界」『都市問題』第72 巻第12号,28~39ページ. 第三セクター等のあり方に関する研究会[2014],『第三セクター等のあり方に関する研究会 報告書』. 遠山嘉博[1975],「第三セクター―地域開発における新しい経営形態の実験―」『公益事業 研究』第27巻第1号,27~60ページ. 堀場勇夫・望月正光[2007],『第三セクター:再生への指針』東洋経済新報社. 御船洋[1998],「公共部門の範囲」(田中廣滋他著)『公共経済学』第6章,108~133ページ 2015.10.6 15 • • • 宮木康夫[2000],『第三セクターとPFI―役割分担と正しい評価―』ぎょうせい. 山内直人[1997],『ノンプロフィット・エコノミー―NPOとフィランソロピーの経済学』日本評論 社. 讀谷山洋司[2004],『第三セクターのリージョナル・ガバナンス―経営改善・情報開示・破綻 処理―』ぎょうせい. 2015.10.6 16
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