まとめ - Greenpeace

グリーンピース・ジャパン ブリーフィングペーパー 2015 年年 1 ⽉月 環境保全型農業の農産物についての、 都道府県と消費者へのアンケート調査について はじめに 環境負荷が低く、⽣生物多様性を重視した農業に対する認識識が広く消費者に共有され、社会
環境が整い、有機農業をはじめ持続可能な農業がより⼀一般的なものとなるには? 消費者と⽣生産者が近くなり、環境保全につながる農産物を選ぶよう⾏行行動が変わっていくこ
と、そして消費者が選べるように、有機や無農薬の農産物で認識識・評価される市場がつく
られていくことが重要な鍵の⼀一つです。 有機、無農薬や、農薬や化学肥料料を減らした栽培など、「環境保全型」のいろいろな取り
組みが⽇日本各地で⾏行行われており、そうしてつくられた農産物にはエコファーマーマーク、
特別栽培農産物、有機 JAS、都道府県や⺠民間で認証する環境保全型農業による農産物など、
さまざまなマークもつくられています。 グリーンピースではこれまで、有機栽培や農薬不不使⽤用で農業を⾏行行う⽣生産者の⽅方々を訪ね、お話を 聞かせていただきましが、その中で多かった意⾒見見(悩み)の⼀一つが、無農薬でつくっても農薬を つかったものと⼀一緒に出荷され、消費者にわからない、というもの。 消費者がお⽶米や野菜を買うとき、農産物の情報はどのように伝わっているのでしょうか。 さらに、ネオニコチノイド系農薬は、残効性の⾼高さゆえに、「農薬の使⽤用回数を減らす」
という理理由で、植物に浸透して効き⽬目が⻑⾧長く続く農薬として使われる傾向があります。し
かし、これらの農薬は、環境、特にミツバチ等の花粉媒介⽣生物への影響から、EU で 2013
年年末から⼀一部使⽤用制限が開始され、⼦子どもの脳や神経の発達への影響も指摘されています。
「環境保全型」の農業にネオニコチノイド系農薬を使うことを、早急に⾒見見直す事が必要で
す。 ネオニコチノイド系をはじめ、農薬の使⽤用状況を、農産物を購⼊入する消費者が知る⼿手段は
あるのでしょうか。 このような問題意識識から、国際環境 NGO グリーンピース・ジャパンでは、環境保全型の
農産物について、下記の観点で、エコマークをつけることを認定する主な団体の⼀一つであ
る都道府県と、消費者、それぞれにアンケート調査を⾏行行い、その結果をまとめました。 ・ ラベル表⽰示について ・ 表⽰示を消費者がどう受けとめているのか ・ ネオニコチノイド系農薬はどのように扱われているのか ・ 有機・無農薬の農業につなげる⽀支援策になっているのか ・ 栽培の努⼒力力と消費者の観点は合っているのか 概要 環境にやさしい農業にとりくむ農家を認定する 1)エコファーマーのマーク、2)都道府県が国の特別
栽培ガイドラインに沿って認証を⾏行行うマーク、3)その他都道府県独⾃自のマークの運⽤用の有無を聞いた
ところ、3)のケースが多く 31 県に上りました(便便宜上都道府県を県に統⼀一します)。多くの県で、独
⾃自の⼯工夫や環境保全の観点を盛り込んだマークや規定を作っていることがわかりましたが、今回のグリ
ーンピースの調査では、農薬の観点に着⽬目してまとめました。 近年年注⽬目されている環境要素:ネオニコチノイド系農薬の使⽤用や、農薬の空中散布の環境への影響が指
摘されている今⽇日、環境保全型とされる農業ではどのような基準になっているかを調査したところ、県
で認証する特別栽培農産物で、ネオニコチノイド系農薬を使わない規定をもうけている県は無かったも
のの、県認証以外では、ネオニコチノイド系農薬を含むいくつかの系統の農薬を使わないことを基本と
したマークが運⽤用されていることがわかりました。また、環境保全型農産物に農薬の空中散布(航空防
除)を認めていない・またはなんらかの規制をもうけている県は 5 県(東京、⼤大阪、岡⼭山、⾼高知、神奈奈
川)でした。 消費者への浸透:⼀一⽅方、消費者への浸透度度についての質問では、「環境保全型農産物表⽰示ラベルは知ら
れているが、意味はあまり理理解されておらず、特に購⼊入の基準になっているとまではいえない」とした
県が最も多く 21 県、マーク⾃自体が知られていないとする県も 12 県あり、消費者の選択の⽬目安にはま
だなり得ていないと⾔言える。マークは、⼤大半の県で、県内市場で販売される農作物につけられており、
地元産で環境に配慮したものを選ぶ機会を提供していると⾔言えます。 ⼀一⽅方マークが県外(全国)の⼤大きな市場でも販売される農作物についているのは 3 県でしたが、このう
ち、⾼高知県の受粉昆⾍虫や天敵を活⽤用したエコシステム特別栽培が含まれることには注⽬目すべきといえま
す。 消費者の意識識:並⾏行行して消費者アンケート調査では、特別栽培の認知度度は低く、意識識して購⼊入する⼈人は
特別栽培について聞いたことのある⼈人で 11%にとどまりました。特別栽培=無農薬と解釈している回
答や(複数回答で 28.6%)、ネオニコチノイドを使っていないと思う栽培⽅方法に特別栽培(13%)や減
農薬(8%)を挙げる⼈人が⼀一定程度度あり(複数回答)、実態と消費者の認識識には、ずれがあることがわか
りました。さらに、消費者が、このマークがついていれば選ぶ、としたものは「無農薬(農薬不不使⽤用)
であることがわかるマーク」が最多で、特別栽培で記載することになっている「農薬の使⽤用回数」がわ
かるマークは 5 番⽬目でした。 まとめ:今回の調査で多くの県で、独⾃自の⼯工夫や環境保全の観点を盛り込んだマークや規定を作ってい
ることがわかりましたが、農薬の観点では、下記のことが⾔言えます。 1) ネオニコチノイド系農薬や農薬空中散布など、最近問題になっている観点は特別栽 培をはじめ、環境保全型農業の観点にほとんど取り⼊入れられておらず、早急に反映 する必要がある。 2) 消費者は農薬が使われていない有機栽培など、わかりやすいものを選ぶとしていま す。消費者と⽣生産者をつなぐマークの⼀一部は、消費者の誤解を招いており、消費者 にとってわかりやすいことが重要である。 3) マークの存在意義は、消費者と⽣生産者を結ぶこと。消費者が選びたい無農薬(農薬 不不使⽤用)や有機農産物を⼀一⾒見見で⾒見見分けられるマークを設け、そうした栽培をしようと する⽣生産者のインセンティブを強化する必要がある。 2
1. 都道府県へのアンケート調査 都道府県へのアンケート調査の結果をまとめ、各都道府県の、有機農業推進及び環境保全型農業の推進施
策について条例例、基本計画などを調査した結果は*参考資料料 1 にまとめました。
(*http://goo.gl/7AyJbu) ■ エコファーマーマークはどうなっているの? 全国規模の取り組みとして、環境にやさしい農業にとりくむ農家を認定する、 エコファーマーのマークについて調査しました。 認定⾃自体は全国で⾏行行われているものの、マークの使⽤用は 2011 年年に全国的な使⽤用は
停⽌止となり、今は使っているのは 12 府県でした。マークの使⽤用にあたり、府県独⾃自の基準をつくって
いるのは 7 府県。基本的に持続性の⾼高い農業⽣生産⽅方式の導⼊入に関する認定のため、農薬などの削減基準
値など数値的な⽬目標を満たすことは必須となっていないが、化学農薬の使⽤用回数や化学肥料料の使⽤用量量を
20〜~30%減らすという基準をあるところもありました。 Q. エコファーマーのマークを使⽤用していますか? A. 使っているが独⾃自の基準はない:5 県 ( 城、富山、長野、静岡、沖縄) B. 使っており、独⾃自の基準がある:7 県 (群⾺馬、神奈奈川、福井、京都、⿃鳥取、島根、⾹香川、沖縄) C. 使っていない:35 県 ※便便宜上、都道府県を「県」に統⼀一しています。 ■ 特別栽培って何、どういうしくみ? 農林林⽔水産省省の特別栽培農産物ガイドラインでは、特別栽培の原則を、「農業の⾃自然循環機能の維持増進
を図るため、化学合成された農薬及び肥料料の使⽤用を低 減することを基本として、⼟土壌の性質に由来す
る農地の⽣生産⼒力力を発揮させるとともに、 農業⽣生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培
⽅方法を採⽤用して⽣生産すること」としています。具体的には、各都道府県が、従来からの使⽤用レベルとし
て決めている化学合成農薬*を使う回数を 50%以下、化学肥料料の窒素成分の量量を 50%以下に減らして
栽培された農産物をさします(*有機農業で使ってよいとされている以外の化学合成登録農薬)とされ
ています。1このガイドラインに沿って、独⾃自の認証を⾏行行っているかどうかと、概要を尋ねました。 Q.都道府県の施策として、特別栽培農産物ガイドラインに基づく表⽰示について化学合成の農薬や肥料料の
使⽤用量量や使⽤用⽅方法など段階に応じた独⾃自の基準(規格)や認証、表⽰示ラベルがありますか? A. ある:31 県(岩⼿手、宮城、秋⽥田、福島、茨城、栃⽊木、群⾺馬、千葉葉、東京都、新潟、福井、⼭山梨梨、 ⻑⾧長野、三重、滋賀、和歌⼭山、⼤大阪、兵庫、⿃鳥取、島根、広島、⼭山⼝口、徳島、愛媛、福岡、 佐賀、⻑⾧長崎、熊本、⼤大分、⿅鹿鹿児島、沖縄) B. ない:16 県(北北海道、⻘青森、⼭山形、埼⽟玉、神奈奈川、富⼭山、⽯石川、岐⾩阜、静岡、愛知、京都府、 奈奈良良、岡⼭山、⾹香川、⾼高知、宮崎) 1農林水産省ウェブサイト「特別栽培農産物とは「その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われて
いる節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が 50%以下、化学肥料の窒素成分量が
50%以下、で栽培された農産物です。」
3
※各マークについては参考資料料 2 をご参照ください。 http://www.greenpeace.org/japan/ecolabel 2. 消費者との関係 ■ 環境保全型農業の農産物は主にどこで買えるの? 各マークが消費者とどのように接点を持っているのかを調べるために、販売エリアを尋ねたところ、県内
を主とするところが半数を超え、県外が主と回答したのは岩⼿手県、千葉葉県、⾼高知県の 3 県でした。 Q. 有機農業をはじめ環境保全型農業による農産物であることを⽰示す表⽰示ラベル(以下、環境保全型農産
物表⽰示ラベル)をつけた貴都道府県産の農産物の、主な販売エリアを教えてください。 A. 県内が主:25 県(北海道、青森、宮城、山形、福島、栃木、群馬、埼玉、東京、石川、福井、三重、
滋賀、大阪、兵庫、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、福岡、大分、沖縄) B. 県外が主(県内でも売っているが県外の⽅方が多い場合を含む):3 県(岩⼿手、千葉葉、⾼高知) C. 県内と県外おなじくらい:0 県 D. わからない:17 県(秋田、 城、新潟、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、京都、和歌山、香
川、愛媛、佐賀、長崎、熊本、鹿児島)
■ 消費者にはどう伝えているの? 消費者へ、特別栽培の農産物をどのようにアピールしているかを尋ねたところ、主な回答は、ホームペー
ジ、チラシ、イベント、広告でした。このほか、販売店や直売所を把握してポスター掲⽰示やレシピメモに
記載して配布しているところ、販売店の店頭のポップでの注意喚起など、より消費者に近いところでの情
報提供をしているとの回答もありました。さらに、販売店を指定し看板を交付する(岡⼭山県)、農家の宣
⾔言とそれを応援する消費者の応援宣⾔言を募集するウェブサイトを作成し、双⽅方向からの認知度度アップを⽬目
指すとりくみ(熊本県)など独⾃自の取り組みの紹介もありました。 ■ 消費者にはどれくらい知られているの? 都道府県の環境保全型農産物表⽰示ラベルが、それぞれの販売エリアで(県内、全国など)、消費者にどの
程度度広まっているかを訪ねたところ、下記のような回答が得られました。 データに基づいているところ
と、そうでないところがありますが、環境保全型の農産物である旨のラベルが購⼊入の基準になっていると
認識識している都道府県はなく、また、認知度度についても、意味があまり理理解されていない、マーク⾃自体が
知られていない、をあわせて 32 都道府県と、⾃自⼰己評価はかなり控えめな結果となりました。 Q. エコラベルがのどくらい消費者に伝わっていると思いますか? A. 広く知られており、よく理理解されていて、この環境保全型農産物表⽰示ラベルのついた商品は選んで購
⼊入されている:0県 B. 広く知られており、よく理理解されているが、消費者がそれを重視して購⼊入しているほどではない: 5 県(秋⽥田、栃⽊木、群⾺馬、⼭山梨梨、岐⾩阜) C. 環境保全型農産物表⽰示ラベルは知られているが、意味はあまり理理解されておらず、特に購⼊入の基準に
なっているとまではいえない: 21 県(北海道、山形、埼玉、千葉、新潟、福井、静岡、三重、滋
4
賀、京都、兵庫、和歌山、鳥取、島根、山口、徳島、愛媛、高知、熊本、大分、沖縄) D. マーク⾃自体があまり知られていない: 12 県(⻘青森、福島、 城、東京、石川、長野、奈良、広島、
愛媛(複数回答)、福岡、佐賀、熊本) ・選択肢以外:広く知られ、よく理解されるまでには至ってないが、購入の目安となっている。(岡山)
・該当なし、未回答、不不明など:8 県(岩手、宮城、神奈川、富山、愛知、大阪、長崎、宮崎) 3. 「環境保全型」の中⾝身について ■ 環境保全型の農業で、農薬の空中散布はできますか? 農薬の空中散布は、散布される農薬の濃度度が⾼高いことや、霧状の⾶飛沫が流流れていくエリアが広がる恐れな
どから、環境⾯面の問題が指摘されています。このため環境保全型の⼀一つである特別栽培では農薬の空中散
布をどのように取り扱っているのか調査しました。 農薬の空中散布を⾏行行っている場合、各都道府県の基準(規格)では、環境保全型農産物の認証を取得する
ことができるかどうかを調査したところ、できるとしたところが 37 県にのぼり、できないとしたのは、
東京都、⼤大阪府と岡⼭山県の 3 都府県のみでした。 また、未回答・該当なし、とした県の中で、⾼高知県は、「県の基準による認証は⾏行行なっていないが、⾼高知
県園芸連のエコシステム栽培という認証では、空中散布を⾏行行なっている⽔水稲は含まれない」と回答してお
り、神奈奈川県は「神奈奈川県内で航空防除(農薬の空中散布)は⾏行行われていない」との回答がありました。 ◾ ネオニコチノイド系農薬は使えますか? ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチの消失や、⼤大量量死の原因の⼀一つとされ、ヨーロッパでも 2013 年年か
ら使⽤用規制が始まり、アメリカのオレゴン州では花粉媒介者保護を⽬目的として 2013 年年に暫定的な規制措
置、ワシントン州シアトル市議会でも 2014 年年9⽉月、ネオニコ系農薬の使⽤用と購⼊入を禁⽌止する決議が全会
⼀一致で可決しています。 国際⾃自然保護連合(IUCN)に助⾔言する科学者グループ浸透性農薬タスクフォースの報告書でも、⽔水に溶
けやすく、環境に広がりやすいこの種の農薬は「⼟土壌と堆積物、地下⽔水と地表⽔水に、(中略略)⼤大規模な汚
染を引き起こし、蓄積の可能性をもたらす。」と指摘し、
「規制当局がネオニコチノイドとフィプロニルに
対して予防原則とより厳格な規制を適⽤用し、全世界での段階的廃⽌止の計画を⽴立立て始めるか、少なくとも世
界規模における使⽤用を⼤大幅削減するための構想を⽴立立て始めることを強く提⾔言」しています。 しかし、⽇日本での使⽤用はこの 15 年年で 3 倍にものび、厚⽣生労働省省が農産物への残留留基準の引き上げを検討
している最中です。 このため、今回のアンケート調査では、各都道府県で認証する特別栽培農産物に、ネオニコチノイド系農
薬は使⽤用できるかどうかを尋ねました。 その結果、
「d. すべてできる。今後も特別栽培の農産物への使⽤用を制限する予定はない」とする都道府県
が 36 にのぼりました。制限する予定はないとする理理由については、多くの県が、「国が農薬登録してい
る農薬だから制限する必要はないから」、
「特別栽培のガイドラインでは農薬の散布回数を規定しているだ
けで、種類を規定していないから」制限する必要はない、という趣旨の回答をしています。 5
「農⽔水省省の調査結果や消費者の不不安の度度合いなど今後の動向を注視していきたい。」(北北海道)「⼀一部農薬
抵抗性発達の理理由でネオニコチノイドの使⽤用を制限しているが、(中略略)今後、安全性について、国から
科学的根拠が⽰示されれば、検討していく。」(静岡県) といった回答もありましたが、独⾃自の取り組みがみられませんでした。 Q. 県で認証する特別栽培農産物にはネオニコチノイド系農薬は使⽤用できますか? A. すべてできるが、⾒見見直しを検討しているものが⼀一部ある:0 県 B.使⽤用できるものとできないものがある:0 県 C. すでに⼀一部で使⽤用していないが、不不使⽤用の範囲を広げる可能性を検討している :0 県 D. すべてできる。今後も特別栽培の農産物への使⽤用を制限する予定はない:36 県 未回答 11 県(⼭山梨梨、富⼭山、岐⾩阜、岡⼭山、愛媛、⾼高知、宮崎、愛知、滋賀、三重、⻑⾧長崎) 農林林⽔水産省省によれば、特別栽培ガイドラインは、それを満たしていることを本⼈人や第三者が記録やほ場で
確認すれば表⽰示ができるというもので、県の認証の内容を規制するものではない、としており、都道府県
独⾃自で認証する場合には、農薬を選択的に制限することを妨げてはいません。ネオニコチノイドを使わな
いものに都道府県レベルで認証を与えることも不不可能ではありません。 群⾺馬県の回答では、県内の⾃自治体で、有機リン系およびネオニコチノイド系農薬を使⽤用しない農産物への
認証制度度を実施しているとの事例例が紹介されています(次項参照)。地⽅方⾃自治体レベルで使⽤用を禁⽌止する
ことは難しくても、⾃自治体が認証する特別栽培などの農産物の認証条件を設定することはできるので、現
場から積極的な試みを期待します。 ■ 事実上ネオニコチノイドを使っていない認証マークもある 都道府県で、なるべく使わないよう推奨している農薬はあるか調査したところ次のような回答がありまし
た。 ⾼高知県:「⾼高知県園芸連のエコシステム栽培、特別栽培農産物ともに、使⽤用を制限している農薬はありま
せん。ただし、特別栽培農産物では、天敵類への影響の⼤大きい、有機リン剤、合成ピレスロイド剤、カー
バメート剤、ネオニコチノイド剤は基本的に*使⽤用されていません。」
(*禁⽌止ではないため、⼀一回だけネ
オニコが使われる場合がある) ⻑⾧長崎県:「平成 21 年年に蜜蜂の⼤大量量死が発⽣生し、ネオニコチノイド系農薬「クロチアニジン」の影響も考
えられたことから、本薬剤の使⽤用の多い⽔水稲栽培において代替可能な農薬を使⽤用するように指導し、産地
で使⽤用の⾃自主規制をしている。」 東京都:
「病害⾍虫防除指針によるとし、毒物に該当する農薬(例例:硫硫酸ニコチン、EPN)、吸引毒性が強い
農薬(メソミル)等を制限している。」 宮崎県:
「本県においては、特定の化学合成農薬の削減を⽬目的とした取組は現在推進していないが、IPM に
より、化学合成農薬だけに頼らない防除を推進している。」 6
また、都道府県内の⾃自治体などでの取り組みについて尋ねたところ、 群⾺馬県(渋川市):「群⾺馬県渋川市の認証(愛称「しぶせん」)では、ネオニコチノイド系および有機リン
系農薬の使⽤用をしない農産物を認証が運⽤用されている。」 と回答がありました。 ■ 環境保全型のラベルは、無農薬や有機をめざす農家さんの応援にもなっているか? 環境保全型農作物ラベル表⽰示には、⽣生産者が継続して化学農薬の使⽤用を削減していき、最終的に有機栽培
につなげるインセンティブや奨励・⽀支援の制度度があるかどうかを調査したところ、あると答えたのは「ス
テップアップシールになっている」とした東京都のみでした。 しかし、各府県から提供された資料料や関連ウェブサイトをみていくと、ステップアップ型をとりいれてい
るところや、化学合成農薬や化学肥料料を使っていない農産物が識識別できるマークをとりいれている県が
13 県(宮城、秋⽥田、⼭山形、福島、福井、島根、⼭山⼝口、愛媛、⾼高知、佐賀、熊本、⼤大分、⿅鹿鹿児島)ありま
した。具体的なマークはウェブサイト上で⼀一覧できる資料料 1 図にまとめました。 また、インセンティブの⼀一環として熊本県は、環境保全型の栽培をする⽣生産者の宣⾔言と、それを応援する
消費者の宣⾔言を募集しており、「H26.10 月末時点で生産宣言 13,397 件(県内の販売農家戸数約
46,000 戸の3割)、応援宣言 9,042 件。H27 年度末目標:生産宣言 23,000 件、応援宣言 10,000 件」
と回答がありました。
⼀一覧は参考資料料 2 を参照してください。 Q. 環境保全型農作物ラベル表⽰示には、⽣生産者が継続して化学農薬の使⽤用を削減していき、最終的に有機
栽培につなげるインセンティブや奨励・⽀支援の制度度がありますか? A. ある:1 県(東京都) B. ない:37 県 他は未回答。ただし、「ない」や「未回答」でも、宮城、秋⽥田、⼭山形、福島、福井、島根、⼭山⼝口、愛媛、
⾼高知、佐賀、熊本、⼤大分、⿅鹿鹿児島の各県ではラベルに段階がもうけられており、ステップアップや、消
費者が店頭で判別が可能な表⽰示となっている。 7
4. 消費者への意識識調査 スーパーマーケットで主に野菜を買うという消費者が 95%以上2にのぼると⾔言われています。店頭では農
産物の栽培⽅方法などの情報が得られるとは限りません。消費者はどう受け⽌止めているのでしょうか。 ⾷食や⾷食の安全に関⼼心がある、有機農産物や環境問題に関⼼心がある、⽣生協など利利⽤用したり、健康管理理を意識識
して⾷食品を選んだことのある⽅方々500 ⼈人を対象にオンラインでの意識識調査を実施しました。(実施機関:
楽天リサーチ(株) 実施⽇日:2014 年年 12 ⽉月 1 ⽇日〜~3 ⽇日)。 対象を⾷食に関⼼心のある⼈人にしぼった理理由は、⾷食に関⼼心の⾼高い⼈人々は、全体と⽐比べて環境保全型農業のラベ
ル等をみる⼈人やそれらを選ぶ可能性のある⼈人であり、マークのついた農産物がまず対象としている購買層
と考えられるためです。 (1)環境に配慮した農産物や農業の⽅方法として、聞いたことがあるものを、有機農業、特別栽培、環境
保全型農業、減農薬、無農薬、⾃自然農法の中から選んで(複数可)もらった結果、最も多く挙げられたの
は「有機農業」、「無農薬」、「減農薬」、「⾃自然農法」の順であり、特別栽培は 5 番⽬目でした。 (2)特別栽培について聞いたことのある⼈人は 500 ⼈人中 160 ⼈人(32%)。この中で、
「意識識して購⼊入」
(11%)
にとどまり、意識識していないが買ったことがある⼈人(45.6%)と合わせて、買ったことのある⼈人は 56.6%
でした。 (3)特別栽培の農産物を購⼊入した理理由を尋ねたところ、
「健康によいと思ったから」)が最多で、それに
次いで「環境にやさしいと思ったから」、「無農薬だと思ったから」、が続きました。 (4)ネオニコチノイド系農薬を使っていないと思う農産物を複数回答で選んでもらったところ、特別栽
培や減農薬の農産物など、ネオニコチノイド系農薬が使⽤用されている可能性の⾼高い表⽰示を選ぶ⼈人も⼀一定数
おり、消費者の認識識とのずれがあることがわかりました。 (5)環境に配慮してつくった農産物のマークで、もしついていればその農産物を選ぶと思うものを聞い
たところ(複数回答)、「無農薬であることがわかるラベル」が最多で、「有機栽培であることがわかるラ
ベル」、
「環境に影響の⼤大きい農薬を使っていないことがわかるラベル」の順でした。特別栽培の基準を説
明した「農薬の使⽤用回数が書いてあるラベル」を選んだ⼈人は最も少ない結果となりました。 2農林水産省「平成 19 年度 食と農への理解を基礎とする新たなライフスタイルの確立に関する調査結果」
、JA 総研「生鮮
野菜の購入先と選択理由」JA 総研レポート/ 2009 /秋/第 11 号
8
特別栽培の定義は、化学農薬の散布回数と化学肥料料(窒素成分)の使⽤用量量が慣⾏行行レベルの 1/2 以下であ
ることです。「特別栽培」が必ずしも農薬不不使⽤用とは限らないにもかかわらず、無農薬と理理解している消
費者も少なくないといえます。 消費者の意識識としては、農薬を使っていないことをラベル⾃自体が伝えているもの、中⾝身を説明しているも
の、を求めていることもうかがえます。なお、特別栽培のマーク以外に表⽰示すべき情報のうち、使⽤用して
いる農薬の成分や使⽤用回数はインターネットでの提供でもよいとされていますが、消費者が購⼊入する⽬目安
としては商品への表⽰示や売り場への掲⽰示が必要です。 都道府県レベル無農薬や有機栽培を⼀一⾒見見してわかるマークなどでカテゴリわけをしているのは 2 割程度度
(14 都県)にとどまり、使⽤用回数は減らしていても残留留性の⾼高いネオニコチノイド系農薬が使われてい
ることが店頭ではわからない場合が多いことから、具体的な情報をわかりやすく伝えることが消費者にも、
農薬を使わない努⼒力力をしている⽣生産者にも有益なことといえます。 参考資料料1:http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20150129_̲reference1.pdf 参考資料料2:http://www.greenpeace.org/japan/ecolabel 9
<お問い合わせ> 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン 東京都新宿区⻄西新宿 8­−13­−11­−2F tel 03-‐‑‒5338-‐‑‒9800 fax. 03-‐‑‒5338-‐‑‒9817 www.greenpeace.org/japan 10