(1月~6月)高圧ガス事故報告

平成27年上半期高圧ガス事故報告について(速報)
平成27年8月
九州産業保安監督部
保
安
課
※当該データについては、現時点での速報値であるため、今後情報の追加・訂正等により数値等が変わる
ことがありますので予め申し上げます。
1.上半期の累積月別災害報告件数
40
35
34
30
25
20
0
6
3
1月
0
2
1
2月
3月
4月
5月
6月
26年
14
11
8
5
27年
19
10
10
30
23
16
14
15
5
27
23
7月
25年
8月
9月 10月 11月 12月
図1.累積月別災害報告件数
【災害件数】上半期で23件。前年同時期(11件)に比べ、倍を超えた。
「噴出・漏えい」事故が約8割を占めている(前年は9割)
。件数内訳として、噴出漏え
い事故が18件(前年10件)
、爆発0件(前年1件)、火災3件(前年0件)、破裂・破損
1件(前年0件)
、その他1件(前年0件)であった。
25
20
21
19
21
21
21
21
15
27年
10
5
0
6
2
1
1月
0
2月
0
3月
3
0
4月
0
25年
2
1
5月
26年
7
6
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
図2.累積負傷者数
【負傷者数】上半期で7名。前年同時期(2名)に比べ、5名増。消費中の事故の増に伴
い増加(消費事故4件で負傷者5名、ほかに機器据付工事中、定期点検中の2件で2名)。
2.特記事項
(1)
【傾向】:
“漏えい”事故が大半であることは例年同様。
・上半期は、下の図のとおり、冷凍事故報告の件数が急増。前年の倍以上。特に、6月に
急増。
(5件→12件:+7件)
→なお、本年 4 月から、冷凍設備の所有者・管理者に漏えい報告と簡易点検の義務付けとな
った「フロン排出抑制法」が施行されている。
14
12
12
27年一般
27年液石
10
27年コンビ
8
6
0
5
2
0
27年冷凍
27年消費他
4
4
2
7
6
5
26年一般
26年液石
3
1
26年コンビ
1
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
26年冷凍
図3.累積発生事業所別件数推移
・6月末時点での累積件数の占める割合でみると、図4のとおりである。
17%
22%
4%
4%
27年液石
27年コンビ
27年冷凍
52%
27年消費他
26年一般
9%
36%
45%
27年一般
9%
26年液石
26年コンビ
26年冷凍
26年消費他
図4.26-27 年上半期累積発生事業所別割合
・前年に比べ、負傷者を伴う高圧ガスの“消費中”の事故が増加。
(2)
【事故原因の推定】
:
・負傷者事故は5件で7名の負傷者(重傷1名、軽傷者6名)
。
負傷者事故のうち、設計不良の疑いのあるCO中毒(軽傷)1 名(1 件)を除けば、4件
の人身事故の原因として、当事者の不注意、作業ミス、誤判断・誤操作によるものであ
った。
(以下(3)を参照のこと。
)
・漏えい事故の機器について、設置後20年以上の施設が約3割を占めている。
(3)
【人的被害を伴う事故について(5件)
】
○人損事故としては、以下の消費段階(①、③、④)と非定常時(②、⑤)
。
①液化酸素による破裂・破損事故:
“液化酸素による破裂事故”
液化酸素の充てん販売を行っている事業者の場内でエレベータ工事の際に、部品のプー
リーからシャフトが抜けない状態であったため、工事業者が発注元である当該事業者に
相談したところ、事業者側からこれを冷やして外す方法(冷やしばめ)の提示があり、
冷却には場内にある「液化酸素」を使うこととした。当初、液化酸素を吹き付けたが効
果なく、液化酸素を容器に溜め、これにプーリー等を浸して冷却して、金属ハンマーで
叩いたところ、プーリーの台部が破裂し、周囲の作業者に破片が飛び散り怪我を負わせ
た。
(軽傷3名;作業指示した事業者1名と工事業者2名)
②冷凍機据付工事中の事故:
“同時作業”
ターボ冷凍機用圧縮機の冷凍機への取付け工事の際、作業員の 1 人が蒸発器吸込ガス配
管側に取り付けていた塞ぎ蓋を取り外そうとボルトを少し緩め、そのままの状態で付近
で別作業を行っていたところ、吸込ガス配管内圧力により蓋が吹き飛び、蓋が作業者の
足を直撃し、負傷を負った。
(重傷 1 名)
③CO中毒事故:“設計不良の換気”
ジャム製造所の調理室で、業務用ガスレンジ(5口)を燃焼中、従業員が体調不良を訴え
病院へ搬送され、診断の結果、CO中毒であった。
(軽症 1 名)
CO検知器、ガス漏れ警報器は設置していたが、作動しなかった模様(ただし検査の結果
機器には異常なし。)。換気扇は当時、従業員の話では作動していたという。現地調査の
結果、再現試験ではCOは発生せず、給気口フィルターの目詰まりが確認された。また、
給気口と排気口に適切な離隔は無く、設計で計算ミスが有り、排ガス量に対する排気風
量が不足していることが判明。
(軽症 1 名)
④養鶏舎の火災事故:
“漏えいガスに引火”
農場の鶏舎を巡回中、養鶏用暖房機のガスブルーダーに火が着いていないことに気づき、
ライターで点火。その後付近のヒヨコの囲い内で火が上がり、暖房効率を上げるための
カーテンに燃え移り火が広がった。鉄骨平屋プレハブ鶏舎約 1000m2 が全焼。設置してい
た LPG 容器 50kg 容器 16 本からガスが放出、うち 1 本が破裂。1名が火傷で、雛 4,800
羽が全滅。調査の結果、火が付いていなかったブルーダーは、安全装置が正常に機能せ
ず、漏えいして滞留していたガスにライターの火が引火し火災に至ったと推定。
(軽傷 1
名)
⑤陶磁製造場での火災事故:
“こぼした液化ガスに引火”
作業員2人(点検責任者+研修員)で貯蔵設備の定期点検で、作業員のうち研修員(有資
格者ではあるが、経験不足)が気化器下部から液化ガスを抜く作業を行っていた。作業
では、通常より多くの液化ガスが液受けの缶に出てしまい、直後に缶の中の液化ガスに
引火。慌てた研修員は、点検責任者を呼び、点検責任者が、火のついた缶をもって安全
な場所に移動するため、飛び降りた。その際に液化ガスがズボンに付着し、両足にやけ
どを負った。当日の現場は2件目で、前の作業を見ていた研修員が自分でもできると思
い、当該作業を行った結果、発生したもの。
(軽傷 1 名)
【まとめ】平成27年前半は、前年に比べ事故報告件数が増加傾向にある。漏えい事故が
大半であることは前年と同様ではあるが、消費中の事故が増え、負傷者も増加している。
主に消費中の事故で負傷者を出す事故はLPガスによるものが多いが、今回は、液化酸素
による事故で負傷者3名を出している。液化酸素を日頃扱っている業者でありながら、事
故時の扱いとして疑問を感じる事故であった。また他の人損事故の要因を見ても、人為的
なミスによるものが多いのが懸念される。
<参考資料>
<平成 27 年上半期分>
発生日
事象
県別
ガス種
概要
1/18
漏えい
福岡
LNG
予備ボイラー不調警報でリセット後
(食品)
負傷者
に設備点検したところ、食品製造
事業者の No.1LNG 貯槽加圧蒸発器
の液入口ラインに着氷があったため、
保冷を取り除き調査したところ溶
接部よりガス漏れを確認。第三者分
析機関によると LNG 特性に伴う圧
力振幅や消費変動による LNG 気化
位置が破損部位周辺で激しく推移
し、繰り返し熱応力による疲労割
れが生じたと推定。
1/23
CO 中毒
福岡
LPG
(食品)
食品製造事業者のジャム製造所の調
理室で業務用ガスレンジで燃焼中、従
業員1名が体調不良を訴え、病院
へ搬送。CO 中毒の診断を受け、帰
宅。ガスレンジからの CO 発生と推測。
ガス漏れ警報器作動せず。CO 検知
器、警報器について異常なし。事
故当時、換気扇は作動していた模
様。(給気は自然給気式)
1/26
漏えい
佐賀
アンモニア
(食品)
食品製造工場のガス検知器の作動
により散水装置が作動し、アンモニア
漏えいを検知。調査したところ、
停止していたコンプレッサーのボックスライン
からの漏えいを確認。ガス回収ライ
ンの回収ポット側で結晶物がライン w
の閉塞し、これによるライン昇圧で通
常流れないガスの流れが発生し、
テープ養生された配管切り離し部
から漏えいした。
2/1
漏えい
(民家)
熊本
LPG
午前 3 時頃、自動車が道沿いの民
家のLPガス接触し、LPG容器
の調整器を損傷し、バルブが緩ん
軽1
で漏えい。
2/10
漏えい
福岡
フルオロカーボン
半導体製造工場の冷凍機用圧縮機
重1
の定期分解整備中、据付工事の際、
蒸発器吸込ガス配管側に取り付け
ていた塞ぎ蓋(ビクトリィジョイントタイプ)
を取り外すときにボルトを緩め、
そのまま別作業を行っていたとこ
ろ、塞ぎ蓋の取り付け時に配管内
の加圧を行っていないことから、
吸込配管内の残留していた冷凍機
油に含まれていたガスの昇圧によ
り蓋が吹き飛び足を直撃したもの
と推定。
2/27
漏えい
佐賀
フルオロカーボン
(食品)
巡回中、冷凍機下部にオイル漏れを発
見。冷媒配管とバイパス配管が振動
による接触から配管に穴が開いた
ものと推定。漏えい量 13kg
3/7
爆
発
佐賀
LPG
(畜産)
鶏舎を見回り中、雛を暖めるブルー
ダー(ガスヒーター)のうちの1つが消
えていたのでライターで火をつけたと
ころ、1,2 秒後、付近のヒヨコの囲い
内で火が上がり、ブルーダー付近のカ
ーテンに引火し燃え広がった。そ
の後鉄骨平屋建てプレハブ鶏舎約 1
千m2 が全焼。設置していた 50kg
容器 16 本からガスが放出し、内 1
本は破裂。場長が火傷を負い飼育
されていた約 4,800 羽の雛が全
滅。ブルーダーの安全装置が正常に機
能せず漏えいし滞留していたガス
に着火した火が引火し火災につな
がったと推定。
3/16
漏えい
(食品)
佐賀
フルオロカーボン
冷凍機の温度管理が不調なため、
透明で中を確認できる冷媒配管を
確認したところ、気泡が入ってい
たため、メーカーに連絡。調査の
軽1
結果、電磁弁 O リングからの漏えい
を確認。経年劣化による破損と推
定。
3/23
漏えい
長崎
フルオロカーボン
製氷用冷凍機の不良により、冷媒
ガスの不足異常と推定。業者の調査
により、水冷凝縮器の外部腐食に
よる配管部のピンホールによる漏えい
と推定。製氷用ブラインの塩化カルシ
ウム容器の冷却機結露水が水冷凝
縮器の外部に滴下し外部腐食が進
行し、水冷凝縮器の液出口配管に
ピンホールが発生したと推定。
3/24
漏えい
福岡
BF3
(大学)
職員が 4 年間使用した BF3 ボンベ
の交換を行う際、窒素パージ用ライン
を閉止しているプラグユニオンを緩め
たときに、漏えい。容器交換のサ
の真空引きについて窒素用パージラ
インは常時バルブが閉鎖されている
こと、4 年前に窒素パージを行って
いることから、真空引きの必要性
無しと判断し、メイン配管のみに
しか行わなかった。その状態で交
換を行ったところ、白煙が生じ、
漏えいを確認。直ちにシリンダーキャビ
ネットを閉め退避した。30 分後残留
していないことを確認し、器材の
除染作業を行った。パージラインに加
圧状態での BF3 が存在していたこ
とについては、BF3 配管と窒素パー
ジ配管を分けるバルブを何らかの
原因で開操作を行った可能性、あ
るいは少量のリークが 4 年間蓄積
した可能性が考えられる。
4/2
火
災
鹿児島
LPG
鉄骨平屋造の豚舎増改築の電気溶
50kg
容
接作業中、建物に飛び火して出火。 器 71 本
その出火が豚舎内の LPG 容器に引
焼失・使
火し豚舎5棟全焼。
4/3
漏えい
福岡
アンモニア
(食品)
用不可
前月 3 月 10 日付け完成検査証受領 調査中
後、3 月 21 日から運転開始したと
ころ、4 月 3 日、ガス検知器がアンモニ
アを検知し、冷凍機異常停止及び除
外散水を開始。過去の経緯から圧
縮機シャフトシールからの漏えいと推定。
4/22
破裂・破
福岡
液化酸素
損
金属部品のプーリーとシャフトを分離さ
軽3
せるため、これを冷却するため液
化酸素を容器に溜めて、これに浸
し、そして金属ハンマーで叩いて抜こ
うとしたところ、破裂し、周囲に
いた3人に飛び散り怪我を負わせ
た。
4/27
漏えい
鹿児島
フルオロカーボン
巡視点検の際、サーモ停止中の圧縮機
圧力の低下を確認し調査したとこ
ろ、冷却機よりガス漏れ音を確認
したため、冷凍機を停止し、修理
完了まで運転禁止とした。
5/13
漏えい
鹿児島
フルオロカーボン
冷房運転の点検時に、冷媒系統の
水熱交換器(蒸発器)の冷媒側配
管溶接部からガス漏れを発見。経年
による劣化と推定。
5/31
漏えい
福岡
LNG
タンクヤードのガス検知器が発報。現場
確認したところ、出口ライン圧力計取
出し元弁付近で霜付きを発見し、
漏えいを推定。
6/1
漏えい
福岡
フルオロカーボン
スケート場リンク内東側配管のフランジ
と配管溶接部にピンホールが発生し、
かつその配管のフランジからガス
の漏えいを発見。配管とフランジ溶接
部の腐食によりピンホールが発生しガ
ス漏れが発生。
6/1
漏えい
宮崎
フルオロカーボン
冷凍機のブラインチラーが設定温度を超
えアラームが発報。設備を停止し
点検したところ、異常が認められ
調査中
ず電気系統の不良と判断したが、
メーカー点検したところ、冷媒漏
れは発見できなかったが、ブラインタ
ンク内に油膜を確認し漏えいがある
ことを特定。熱交換器のろう付け
部からの漏えいと推定。漏えい量
18.2kg。稼動状況により熱交換器
の疲労は考えにくく、ろう付け部
の製作不良か腐食と思われる。
6/2
漏えい
佐賀
フルオロカーボン
(食品)
朝の点検時に液面計から冷媒が減
っていることに気づき、業者点検の
結果、膨張弁フレアーの破損による
漏えいと判明。漏えい量 104kg 推定
6/5
漏えい
福岡
フルオロカーボン
定期修繕中試運転したところ、異
常のランプが点灯したため、冷凍
機の運転を停止。メーカー点検の
結果、圧縮機側から水が確認され
たため、蒸発器の破損による漏え
いと断定。蒸発器チューブの破孔と特
定。原因として、チューブの汚れから
冷水側からの銅チューブの腐食と推
定。
6/10
漏えい
長崎
フルオロカーボン
(食品)
スクリュー式冷凍設備のエコノマイザと蒸発
器の間の高圧ラインの銅配管のチーズ
の根元に亀裂があり、漏えい。特
定の運転条件で配管内の圧力脈動
によりエコノマイザ配管の振動が大き
くなることに起因して披露が進行
したと推定。
6/18
漏えい
熊本
フルオロカーボン
冷凍機の据付工事中、冷媒ガス封入
作業で屋外に約1ヶ月ブルーシー
トで仮置きしていた容器14本の
うち9本の溶栓部からガスが漏え
い。直射日光により容器が暖めら
れ40度を超え溶栓が作動した。
6/23
火災
佐賀
LPG
定期点検中、作業員(研修員:有
資格者であるが経験不足)が気化
器下部から液ガスを抜こうとして、
ガスをこぼし、気化器の種火に引火
して火災が発生。慌てた研修員は
点検責任者を呼び、点検責任者は
気化器近くから移動するため、火
がついた缶を持って高台から飛び
降り、その際缶に入っていた液化
ガスがズボンに付着し両足にやけ
どを負った。
軽1