ストレスチェック制度について - 社会保険労務士法人横浜中央

VOL.123
平成 27 年 8 月号
ストレスチェック制度について
【1】ストレスチェック制度創設の背景
厚生労働省が精神疾患等について毎年 6 月 30 日付で調査している、いわゆる 630 調査によりますと精神疾患により医療機関
における受診者は毎年増加し 300 万人を超えるような状況が報告されています。これを受けて国としてこのストレスチェック制
度に取り組まざるを得ない状況となり、労働安全衛生法を改正し、本年 12 月1日から実施されることになりました。
以下にその概要をまとめます。
※メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は、年々増加しており平成 25 年度においては、60.7%となっておりま
す。国としては、今後、平成 29 年度には 80%、そして平成 32 年度にはメンタルヘルス対策に取り組む企業の割合を 100%と
する最終目標を掲げています(労働者健康状況調査報告)
本ストレスチェック制度がこの目標達成にどの程度有効となるか注目されるところです。
【2】ストレスチェック制度の概要
平成 26 年 6 月の改正労働安全衛生法で示された主な実施内容は、以下①~④のとおりです。
①事業者は、常時使用する労働者に対し 1 年に 1 回以上、医師等(産業医・保健師、または外部の医師・保健師)による心理
的な負担の程度を把握するためのストレスチェックを行わなければならない。
※対象となる事業場・・・常時使用する労働者(月の勤務日数には関係なくパート・アルバイト・派遣社員なども含む労
働者)が 50 人以上所属する事業場(50 人未満の事業場においては、当分の間、努力義務です。)。
※常時使用する労働者・・・定期健康診断対象者と一致します。すなわち、期間の定めのない契約か更新により 1 年以上
雇用されるか、またはその予定である者で、かつ通常の労働者の 1 週間の所定労働時間数の 3/4 以上の就労状況の者で
す。なお、派遣労働者については、派遣元が事業者として責務を負うものとされていますが、施行通達で、派遣先事業
所においても実施することが望ましいとされています(派遣労働者は、派遣元、派遣先でそれぞれストレスチェックを
実施する場合もあることになります。)
②検査結果は、検査を実施した医師等から直接本人に通知され、医師等は本人の同意を得ないで検査結果を会社に提供するこ
とはできません。会社が結果を知るためには、本人からの同意が必要です。この同意は、ストレスチェック実施前に同意を
得る必要があります。従って、実施時の調査票に同意の有無を記述させたりすることはできません。
ただし、本人から面談の申出があった場合は、本人の同意の有無に関わらず同意があったものとみなします。
このように強いプライバシー保護の要求がありますが、一方で会社には安全配慮義務があるため労働者の健康状況を知って
おく必要もあり、会社が一定の配慮を要するような高ストレス状態の労働者については、実施した医師等が同意を得るよう
にして会社に結果を提供することが望まれます。
なお、ストレスチェックの受検は労働者の義務ではないので、強制的に受検させることはできません(一般健康診断の受
診は、労働者の義務です。)
③事業者は、検査の結果、厚生労働省令で定める要件に該当する労働者から申出があったときは、概ね 1 ヶ月以内に医師によ
る面接指導を行わなければなりません。また、事業者は、申出を理由として不利益な取扱いをしてはなりません。
④事業者は、面接指導の結果に基づき医師の意見を聴き、必要があるときは就業上の措置を講じなければならなりません。
※医師の判断として、「通常勤務」「就業制限」「要休業」等の就業区分と具体的な就業上の措置が示されますので、事
業者は医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転
換、労働時間の短縮、深夜業の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会等への報告等の適切な措置を
講じなければなりません。
【3】実施時期等について
ストレチェックの実施は、来年 11 月 30 日までに実施する必要がありますが、初めての試みでもあり制度の実施状況を見極め
てから実施する方が、効率の良い制度利用となるのではないかと予測しています。
常時使用する労働者が 50 人未満の事業場においては、当分の間、ストレスチェックの実施は努力義務とされていますので、
この制度の実施状況が明確になってから実施するのが良いと思います。なお、50 人未満の事業所が実施する場合には次の事項を
除き法令・指針に従う必要があります。
【4】常時 50 人以上の労働者を使用する事業者は、1年ごとに1回、ストレスチェックの下記内容の検査結果報告書を所轄労働基準
監督署長に提出しなければなりません。
❶ストレスチェックの実施時期 ❷ストレスチェックの対象人数 ❸ストレスチェックの受検人数 ❹面接指導の実施人数
なお、検査結果報告書の提出時期は、事業者が決定します。報告書を提出しない場合は、労働安全衛生法 100 条1項違反で罰
則があります。(同 120 条の 5、50 万円以下の罰金)
(文責 K.I)
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