4報告書

⑦ Wal-Mart Discount Store
【視察先概要】
・1963年創業の同社は、この業態の多店舗展開により、1990年に売上で当時トップの
Searsを追い越し、全米NO.1小売業チェーンに上り詰めた。その成功主要因は、特売の
新聞折込を必要としない、後にEDLPと呼ばれる低価格政策、田舎市場ドミナント出店戦略、
物流センターを基点とする面による市場戦略、積極的な業務IT化と情報管理能力、その上に
築かれた卓越したロジスティクス能力等である。
・自社物流を基本とする同社のロジスティクス業務は、全てが社内作業ではない。1980年代
後半、Wal-MartはQuick Responseコンセプトを取入れてベンダーとのパートナリングを進
め、継続的商品補充プログラム ( CRP ~ Continuous Replenishment Program )の
「ベンダーによる在庫管理」( VMI ~ Vender-managed Inventory )を導入した。これは、
物流センター在庫とPOSデータをベンダーにオープンにして適切な商品補充をベンダーの責
任で行うというものである。
・当時はまだ、FDI( 一対一のElectronic Data Interchange )であったが、1995年になっ
てWal-Martは、ベンダーがリアルタイムで物流センター在庫、POSデータ、店頭在庫を把握
できるWebベースの「RetailLink」というプラットホームを構築した。
・Wal-Martのディスカウントストアには、衣料品、アクセサリー、家庭雑貨全般、ホームエレ
クトロニクス、CD/DVDのエンターテイメント、調剤薬局、自動車関連およびタイヤ、ガーデ
ニング等の部門があり、そのSKUは80,000を超えるという。Wal-Martは、今年に入って
から業績好調であるが、サブプライム問題が発端となりアメリカの景気は停滞気味から不況
へと悪化してきており、更にガソリン価格の急騰の追い討ちもあり、低価格とワンストップショ
ッピングを求めてWal-Martで買い物をする消費者が増えている。
⑧ Toyota Motor Sales,U.S.A.,Inc.
【視察先概要】
・1957年創業、社員6,500人(日本からの派遣は50人程度)。日本では、自工と自販が
統合されているが、アメリカでは生産と販売が分かれたままである。
・今回の視察では、Toyota社のアフターマーケット用パーツ事業の概要について話を伺った。
・アメリカにおける同社の昨年の新車販売台数は260万台、シェアーでは16.2%とGMに
次いで2位、今年上半期(1月から6月では16.7%)であった。Toyota、Sion、Lexusの3
ブランドをToyota-Sionが1,500ヶ所、Lexusが200ヶ所のディーラーを通して販売してい
る。パーツ事業は、新車登録されてから廃車になるまでの全てのToyota車が対象となるが
(現在アメリカ国内に2,460万台あり)、そのパーツ・アクセサリーの売上は39億3,000㌦
(およそ4,200億円)であった。
・同社のパーツ物流フローは、「二層物流」システムと呼ばれている。日本のトヨタ本社および
部品メーカーからの商品は、南カリフォルニアのOntarioと中西部のCincinnatiにある2ヶ所
のマスターパーツセンターに納入される。どちらのセンターに納入するかは、ロッキー山脈が
その区分けラインとなっている。マスターパーツセンター(PC)からは、一旦北米13ヶ所にあ
るToyota社の「パーツディストリビューションセンター(PDC)」に、そこからディーラーに配送
される。独立系修理工場は、地域のディーラーからパーツを仕入れている。
・2ヶ所のPCの在庫金額はおよそ120億円、1.2ヶ月分の在庫量である。PCからPDCへの
出荷は鉄道輸送かトラック便が使用されるが、基本的にはオンタリオからは鉄道便、シンシナ
ティからはトラック便が主要手段となっている。オンタリオから東海岸のボストンやフロリダまで
は鉄道便で8日、シンシナティから西海岸まではトラック便で7日かかるので、リードタイムは
10日と設定している。 トラックは53’コンテナーが主流である。PDCからディーラーへは、
受注翌日のトラック配送を原則としているが、地域によっては2日3日後の配送となる場合も
ある。現時点のPDCの平均在庫量は1.3 ~ 1.4ヶ月であるが、ディーラーも約1ヶ月の
在庫量を持っているので、まだ削減の余地があると考えている。
・作業シフトや時間は、PDCで異なっている。受発注及び配送管理のWebシステムが導入さ
れており、ディーラーはそれを利用して発注する。注文の波に対しては残業で対応するが、時
には翌日配送できないケースもあるが、ディーラーからの注文は基本的に補充在庫なので、
数日の遅れが問題となることはない。
・同社では、QC活動も行われているが日本のように現場主導ではなく、どちらかと言えば社員
教育システムの中で行なう会社主導的なものとのこと。パーツ事業部は物流業務であるものの
、販売会社であるため「トヨタ生産方式」に対する認識は若干弱く、部内で職位階層毎にその
教育を行っている。そのプロセスでリーダーの役割、改善ポイント発見のための物の見方考え
方、提案書の書き方、ケーススタディー等を教え、その後の理解力と行動力を査定し、資格証
を与えている。また、PDC単位で改善目標が設定されており、その評価も行われている。
PDC関係者会議がハワイとかフロリダで適時開催されることがあり、改善貢献者へのインセン
ティブはこの会議に招待されることだという。
・パーツ事業部としてのサステイナビリティー対応は、現在約50%のパーツが通い箱(return
able box)で納入されているが、その比率を高めること、もう一つはコンテナー積載率を高め
トラックの便数を削減すること。特に後者はコスト削減に直結しているので、同社として力を入
ている。
【視察風景】