聴覚障害者福祉施策に関する問題提起

聴覚障害者福祉施策に関する問題提起
1.は じめに
現 在、多摩市における聴 覚障害 者福祉は 、「市」レベル では高水準 の部類であり、行政努力により向上
が図られ てきた 。
し かし 、多摩 市行財 政診 断建白 書に見られるように多摩市の財政はか なり逼迫し た状況 であり、か つま
た、国の福 祉施策転換(介護保険 、支 援費制 度等)により今後は不 透明な状況 である。
行 財政再建 プラン(素案 )では 福祉施 策の後退は 「ない」と されているものの聴覚障害者 福祉を見直 すに
はタ イムリーな時期ではないかと考え今回の 問題提起 を行う。一市 民の 意見とし て議員の 皆様に市政 へ
の参考と し て論議し ていた だける事を切 に願う。ただ、問 題の底 辺にあることの 解決は行政 努力だ けでなく
障害者当 事者の 努力 や事業の遂行などの付帯し た条件も伴うもの であること も事実 であるため、実施にあ
たっては 様々なレベル での討論も必要 であること を付け加えておく。
2.高 齢聴覚障害者 に関する問題
多 摩市の場合 、都 内でも比較 的新し い街 であり、市制 がスタ ートし てか ら多摩 市に移住し てきた聴覚障
害者が多 いと思われ る。
私 が見聞した範囲 では聴 覚障害者には50代くらいが一番多 く、早 急な高齢 化の問 題は少ないのではな
いかと考 えていた。
し かし 、聴覚 の機能 を喪 失した中途失 聴者や難聴者 を含めて考 えた場 合、実情がどうなのかは定か で
なく、高齢聴覚 障害者 に対 する施策については今から検 討し ていか なければならない事だ と痛感 する。
現実的には東 京都レ ベル でも高齢聴 覚障害 者に対する具体的施策は施 されておらず、法制度を見ても高
齢者福祉 の部類 にあては まる状況でもあるが 、権限委 譲により市町 村レ ベルに福祉 施策が 今後 委譲され
ていく事 を考えれば出来るだけ早 く検 討に入 り具体策を検討し て頂 きたい。
聴 覚に障害が ある場合 、外部からは 疎外された環境 であることは勿論コミュニケーションに問 題がある
ため、健常者の高齢 者と同 列に扱う事 が難し い。そのこと を最初に理 解し て頂 きたい。具体 的には 以下 の
ようなプランを提起する。
・聴 覚及 び聴力に障害のある方向 けの ヘルパ ー確保(コミュニケーションスキルの高 いヘルパーの確保 )
本来 なら手話の出来るヘルパ ーと 言う位 置付 けで提起するもの であるかも知 れないが 、将来 の事 を考
慮 した場 合、高齢性の難 聴者も視野 に入れ なければならない。高齢性の難聴 者の 場合手 話の取 得が可
能 であるかどうかの想定 が難し く、単一の スタンスでは 対応 できないだろうと推測さ れる。
故 に、聴覚に障害 を持った場合 全体 を考慮し「手 話」「ノートテイク」「触 読手話 」「指点字」等の音声言 語
にこだわ らないコミュニケ ーションスキルを備 えた ヘル パ ーの確保が望まれる。全てのスキルに通じた ヘ
ル パーの確保は難 しいと 思われ るが 、手話 なら手話、ノートテイクならノートテイクの専門 性 を持 った ヘル
パ ーを確保し ながら、全体 で学習していけばサービスを受ける障害 者にも選択肢が 広が り、派 遣する立
場 にと っても有意義 であると思 われる。介護 保険 、支援費等 では民間に委託する形 であり行政の介入は
難 しいと も思われるが、条 件面 での要望や対応可能か の調査 は行政側から十 分可能であり、養成面 でも
行 政が主 導した講習会の開催 等 でプッシュしていくことが可能 であり、か つまた行政 責任 であるとも言 え
る。本格的に取 り組 んで頂きたい。10 年20年後には間違いなくニーズが生まれるそ れに備えること は必
然 的なものでもある。
・聴 覚及 び聴力に障害のある方向 けの グル ープホ ームの設置
上記ヘルパ ーの 問題も付帯 し なが らグル ープホームの設 置に取 り組 んで頂きたい。単 刀直入に言 えば
専 用老人 ホームの建 設を実現し て頂 きたいのだ が、財政面での負 担が大 きく実現性が低 いと 思われ るた
めグループホ ームか ら着 手し、ささやかなが ら快 適な空 間を提 供し 、高齢 者の 社会参 加を促進 するた め、
聴 力にこだわらない事業 を立案し(給食サ ービス等)ある程度の生活の 支 えと なればと考 える。もっともプ
ランだけで現実的な実現性 には 乏し いかも知れ ないが 聴覚障 害者 が事業を行うと仮定し(NP O取得)今ま
での福祉 に依存し ない環境を自 らの手 で作 り上 げ、本 来のノーマライゼーションに取 り組 める社会の一 助
になれば と考 える。グループホ ームの 定義そ のものとは 相違しているか も知れ ないが 、根本的 には社会
参 加を促進し、生活 の糧 を得て、少し でも楽 しく生きて頂きたいと願 う。健 常者 にも同じ事が言えるのだが、
健 常者 には「シルバ ー人材センタ ー」等が存 在し 、カル チャー教室に通うなど本 人が望み適応し ていけば
生 活の クオリティを上 げることは 十分可能 である。しか し 、「聞こえない」場合カスタ マイズされた 場所が な
ければ どうにもならず、自分たちで作 り上げていくかなければ どうにもならない。
そ のた めには行 政側が 十分 な理解と援 助 を行う必要がある。これは一部の エゴではない。だれでも高
齢 になれ ば「聞こえなくなる」事は ありえる。そのた めに必要 な事であるの では ないでしょうか。
3.特 別支援教育へ の取り組み
東京都は 新たに特別 支援教 育への取 り組み を発表し、特殊教育を変 えようとし ています。
教 育行政 は常時試行錯誤が繰 り返され、それは 今に始 まった事ではなく是非 を論議しても仕方 ない。
し かし 、多摩 市が今まで特殊教育に対し て現 実的な対応 をしてきたと は考えられ ず効果 も希薄 である
と一市民とし ての所 感とし て申し上げます。
今回 東京都 が新たに特 別支援教育に対 する取り組みを発 表したことから、行政としても対応策が 協
議 されるべきだと考 えます。具体的には専門の相談窓口を開設し 専門 の相談 員を設置し て頂 きたい。
これは 特別支援教育に対し 専門的 な知識 を有 する相談員 を設 置し市と しても相談 員を核に諮 問機関
を設ける事に繋がっています。
聴覚 に障 害があり、ろう学校に通う障害児(障 害学生)と 親の負 担はか なりのもの です。多摩 市でもそ
の 負担 を軽減 する施策が必要 である。(他 の障害 の方 にも該当)是非考 えて頂きた い。
4.聴 覚及び聴 力に障害の ある方向けの情 報保障 について
現在 多摩市 における情報保障については手話通訳派遣制度があり、行政側の 努力により制度面と し
ては他区市 よりも先進的 な取 り組み で効 果 をあげています。しかし 、現行の制度は派遣 について細か い
条 件と制 約が あり利用者には覚えき れずトラブル が発生し ています。これでは どんなに制度を充実さ せ
ようと 行政が 努力し ても本 末転倒の結果になってしまう。これ では実の ある制度と は言い難い。制度 面を
整 理し て聴覚障害 者全員 にわ かりや すくアナウンスする事 を求める。
そし て、多摩市の手話 通訳者の待 遇をもっと向上させ るべきであると強調する。手話通訳は 誰にでもで
き ると言 うもの では ない。特殊 な技術 を習得 した立場 である、技術 を取 得した媒体が行政側の用意し た
手 話講習会の場であるとしても現行の謝 礼金が 学生の アルバイト賃金 並なの は多摩市の恥だと明 言す
る。早急 に多摩市の手話通訳 者の 待遇を改善し ていた だきたい。その 上 で、手話通訳者 の再試 験と再
教 育を行い聴 覚障 害者の 情報保障のクオ リティを更 に向上させるべき である。
是非手話通訳者 につながる手話講 習会 の見直し(市の委 託事業 の見直し)と 手話 通訳者 の再試験再
教 育を検討し て頂 きたい。手話 通訳者は公僕の一員 であり、人権の擁 護者。技術や モラルを磨 くのは 当
然 の事 。行政側の 責任問 題にもなりますの で早急に検討し て頂きたい。
他 には要約筆記 者の派 遣問 題があります。現 行 では要約筆 記者の派遣制 度はないが潜 在的 なニーズ
は かなりある。制度 化へ実現 できるように検討し て頂きたい。
5.聴 覚及 び聴 力に障害の ある方向けのIT教育と ネットワーク構築
今は 聴覚及 び聴力に障害のある方向けの IT教育が行わ れなくなり、もう一度教育 を受けたいと考 える
聴 覚障害者は いても市内 では実現 できない状況 です。以前 NPO団体が多摩市の 聴覚障 害者団 体に委
託 する形で開 催し て頂き ました が、講師の 条件 が厳し く、能 力の ない講師が指導したた めに数 々の トラ
ブルが 発生し 効果は皆無 でし た 。
それ でもIT教育 に対するニーズは 高くIT教育 を受けたいとの声は大きい。是非検 討し て頂きたいと思
う。
そし て、IT教育の成果 が現れ れば 「多摩 市障害 者ネ ットワーク」を構築し、障害者に対 する情 報提供 を
構 築し ながら就労援 助のための施策 に結 びつけて頂きたい。
時 代は ITの活用と自己努力なし ではこれか らの時代に適応 でき ない。障 害者 こそ ITの恩恵を受けて大き
く社会に羽ばたいて行か なければならない。為政者にはその援助 をする義務があると考 える。
6.多 摩市障害者人 権擁護条例 の制定
国連が障害者の 人権擁 護のために差別禁止 条約の制定 に向かっていること は大きな進展である。国
レ ベル 、地方公共団体レベル でも対応し ていく必 要が あると 思われ る。多摩市 でも障害者の人 権擁護 条
例 を制定する方向に向か って欲しい。多摩 市にはそれ だけの力が あり福 祉施策に対する今までの努力
を公知し てもらうた め一市 民とし て提起する。障害者の人権 は確保 され ているよう で軽視さ れている。早
期 条例の制定 に向 け検討 して頂き たい。
以上