1 化学の有用性を実感させる実験の工夫 化学の授業を通して、その有用

平成 26 年度 愛媛県総合教育センター 学力向上推進講座
【県立・理科】専門性を高める化学領域
1 化学の有用性を実感させる実験の工夫
化学の授業を通して、その有用性について生徒に考えさせたい。今回は、身近な洗剤
を教材として研修しました。
(1)水の性質を知る -汚れを落とすために-
水の表面張力について実感してもらった後、水の表面張力低下
作用について研修する。
(2)界面活性剤について ―水の表面張力を弱める物質―
石けんや洗剤の主成分である界面活性剤のはたらきについて検
討する。
界面活性剤の四つの性質
①浸透作用 ②乳化作用 ③分散作用 ④再付着防止作用
これらの4つの性質が総合的にはたらき、石けんや洗剤の洗浄力が発揮されている。
(3)合成洗剤の濃度と洗浄力
洗剤の濃度と洗浄力を調べてみた。合成洗剤1mLを水で薄
めて10mLにしたもの(10倍に薄めたもの)を用意し、それを
さらに薄め、100倍、1000倍、1万倍、10万倍、100万倍に洗剤
を薄めた。それぞれに油を2滴入れ、ゴム栓をして振ると右の
ようになった。1000倍以上に薄めたとき、泡立ちについては低
下したものの、どの濃度でも乳化が観察できた。
2 化学実験における安価な計測器の活用
計測器を利用することで、化学実験の幅が広がり、生徒の
興味・関心や探究心を高める実験が可能になる。今回は学校現
場で利用できる比較的安価なデジタルマルチメータを利用した
化学実験について検討しました。
(1)塩化ナトリウムの融点の測定と電気伝導性
イオン結晶である塩化ナトリウムは、固体状態ではイオンが
移動できないため、電気を通さない。しかし、固体を融解して
液体状にすると(約800℃)、ナトリウムイオンや塩化物イオ
ンが移動できるようになるため、電気を通すようになる。また、
その後、冷やして固体に戻ると、電気を通さなくなる。計測器
を使いながら融点も測定した。
(2)氷の表面の温度変化の測定
氷の表面の温度変化を応答性の高いK型熱電対で測定した。
氷の表面に食塩を加えたときの瞬間の温度変化を測定すること
で、氷の表面で起こっている状態変化について考察できた。
(3)過熱水蒸気の温度変化の測定
水を熱して発生した水蒸気と湯気の違いを確認させる。
次に、水蒸気をさらに加熱して、300℃以上の「過熱水蒸
気」に変化させ、その性質を確認した。
3 金属樹に関する実験の工夫
(1)イオン化傾向の違いによる金属樹の成長リアルタイム観察
イオン化傾向の大小を利用して、水溶液中の金属イオンに電
子を与えることで、樹枝状の金属単体を析出させることができ
る。これを金属樹といい、金属樹の形状はその金属により異な
る。通常、試験管で行うことが多いが、今回は、少量の試薬を
用いて、リアルタイムに金属樹ができる様子を観察する。
【マイクロスケールでの実験例】
スライドガラスの中心に、紙やすりで磨いた銅板(約1mm
×1mm)を置き、これに6mol/L硝酸銀水溶液を3滴程度かけ、
双眼実体顕微鏡等で観察する。銅がイオン化して青色になって
くるのも観察できる。
(2)金属の性質 ―金属光沢について―
金属結晶の特徴として、電気伝導性、延性、展性、金属光沢
などを学習する。ここでは、金属の光沢は何か、簡単な実験を
通して実感させる。
銀樹
スズ樹
4 言語活動を充実させるための実験の工夫
主に状態変化に関する実験を行い、その現象が起こる理由について、自分の言葉で説
明する活動を行いました。
(1)氷の融解について考えさせる実験
同じ質量の氷を、食塩水に浮かべたときと蒸留水に浮かべたときでは、どちらが早く
融けるか。結果と理由を説明せよ。
(2)ドライアイスの白い煙について考えさせる実験
ドライアイスを水中に入れると白い煙のようなものが発生し、下方に流れた。「白い
煙」とは何か。また、下方に流れた理由を説明せよ。
(3)水の加熱について考えさせる実験
右図のように、丸底フラスコに水を入れ、
加熱すると、最初は、水を満たしたメスシリ
ンダーに気体が集まるが、水が沸騰し始める
とフラスコ内では気体が発生しているにもか
かわらず、メスシリンダーには気体が集まら
なくなる。
この現象について考察した。
○メスシリンダーに集まった気体の大部分は
何か。
○丸底フラスコの底から激しく泡が出続けているのに、メスシリンダー内の気体の体積
が増加しなくなったのはなぜか。
連絡先 教科教育室