工場ルポ No.344 エアツールのロボット塗装 株式会社東洋空機製作所 〒849-0102 佐賀県三養基群みやき町大字簑原 5733 1.会社の沿革 今回で第 344 回目を迎えた工場ルポは、佐賀県三養基群みやき町に本社工場を構える㈱東洋空機 製作所を取材して紹介する。 本社工場は、敷地面積が 30978m2,建屋面積が 14304m2 を誇る広大なファクトリーである。 同社は、土木・鉱山用・自動車整備用エアツール,油圧ブレーカー,エアホイストなどの製造を行って いる。 まずは、同社の沿革から紹介しよう。 創業は 1937 年 2 月 11 日に遡(さかのぼ)る。 昭和 12 年 12 月 資本金 20 万円で株式会社を設立 同 20 年 4 月 疎開命令により福岡に移転 同 38 年 4 月 佐賀工場操業開始 同 48 年 10 月 杵島工場操業開始 同 58 年 4 月 上峰工場(福岡工場)操業開始 同 59 年 10 月 上峰工場(簑原工場)操業開始 平 成 2 年 10 月 広川工場操業開始 同 13 年 5 月 本社工場(中原工場)操業開始 ISO 9001 認証取得 同 14 年 6 月 ISO 14001 認証取得 同 23 年 5 月 基山工場操業開始 現在に至る。 2.工場設備の概要 本社工場は、土木・建設用エアツールおよび産業用エアツールの製品群を製作している。 製造の各工程は、合理化・ライン化を積極的に推し進めた工場で、製品の焼き入れを行う「熱処理工場」, 性能試験のための「製品試験室」,品質と信頼性を高めるための「品質管理室」などから構成されている。 (1)塗装設備と前処理工程の概要 ①前処理ライン 塗装の前処理は、塗装ラインとは分離独立しており、前処理は専用ラインとして稼動している。 その工程は、ハンガー掛けの後にシャワー式の前処理設備にワークが流れて行くが、プロペラ式の 回転式シャワー方式により前処理効果が高く、塗料の付着力のアップが図られた。 ラインスピードは、0.9m/min。全長は、60m。水切り乾燥温度は、180℃,時間は 20min。 前処理を終えたワークは、塗装ラインへと掛け替えられる。 ②塗装ライン その工程は、ハンガー掛け→水洗塗装ブース(塗装ロボット・塗装ロボット(ガンはエア静電自動ガン・ EAB90 を装着(旭サナック㈱)))→焼き付け乾燥(温度は 180℃×35min)→取り外し ラインスピードは 0.9m/min。全長は、90m。 以上の工程で塗装が完了する。 付帯設備として、塗料の供給システムにギアポンプ CCV2 式が導入されている。 ③塗装データ 同社で製造されているエアツールの素材は、アルミニウム,スチール,鋳物。 塗料はアクリル樹脂塗料を採用している。 塗色は赤が 80%と主流。 以下黄色,ブルーなどがある。 膜厚はワークにより、40~80µ を確保しているが、MAX は 120µ まで対応できる。 今回、塗装ロボット機器・設備が導入されたのは、2013 年 9 月。 これまでは、レシプロケーターによる自動静電塗装システムが稼動していたが、ワークの形状が 複雑で品質面と生産効率へのレベルアップが期待されていた。 こうした状況を踏まえて、塗装ロボットによるワーク形状の入り込み性の向上を目指して、現状 設備が稼動したのは、昨年秋のこと。 導入に当たっての効果がこの一年間で顕著に現れ出している。 その導入メリットの一つとしてまずは、品質面。塗膜品質が安定して、平滑した仕上がり具合が 確保できている。 さらに、生産効率の向上だ。 ブレーカー,エアチェーンブロックなどで月産 3500~4000 台と生産効率がアップした。 限られたスペースに塗装ロボットが 2 基,効率的に配置されており、さらにギアポンプの導入効果が 重なり、コンパクトに効率的にワークが移動するコンベヤー運行は、実に壮観である。 今後の展望として、塗料のさらなる節約を期待しつつ、塗装のグレードアップに取り組みたいと している。 また、今回の新規設備導入による環境改善の進展があったことも見逃せない大きなメリットである。 今回の取材に当たっては、福山 茂製造部長ならびに黒田 彰規中原工場長をはじめ、現場スタッフ の方々に大変お世話になりました。 厚く御礼を申し上げます。 (野) 前処理/自動静電塗装ラインの概要 ▲ロボット塗装システムの全景 ▲右側が水きり乾燥炉出口, 左側が焼き付け乾燥炉入り口 ▲前処理ラインのハンガー掛けコーナー ▲ 塗装 ロボッ トに 装着す るガ ンは エア静電自動ガン EAB90
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