事業概要資料 - スマートウェルネス住宅等推進モデル事業

障害者
H27.4 公開
障害者を地域で支える「安寧の社会(まち)」拠点整備事業~発達障害者等の暮ら
し安心応援プロジェクト(選定年度:平成 23 年度)
■代表提案者:社会福祉法人湖南会
■事業場所:滋賀県野洲市
障害者
〔事業概要〕
社会福祉法人が、地方都市の市街地で改修による災害時緊急一時シェルターと市民ギャ
ラリーを併設した障害者の生活介護施設を整備し、サービスの提供を行う事業である。
〔提案の評価概要〕
障害者のための日中活動の場や緊急一時シェルターの整備によって、障害者の生活の質
の向上に資する点、提案施設の整備により、障害者の在宅生活の居住安定化の関連が構想
の中に明確に位置づけられている点が評価された。
(1)提案概要
①提案時の事業背景
湖南会が事業実施エリアとしている湖南 4 市(草津市、
守山市、栗東市、野洲市)において、年々療育手帳所持者
数が増加している。しかし、障害者の中でも、特に「行動
障害」のある発達障害者等については、ハード面・職員体
制の面で既存事業所による受け皿整備は進んでいない。さ
らにこうした方は、その障害特性ゆえに災害時に公共の避
難所で生活することが極めて困難であるが、現時点では具
野風草
体的な支援や配慮も講じられていない。一方で、こうした
障害者が地域でともに暮らしていることを地域住民が全く
認知していないケースが多いことも課題となっていた。
位置図
②提案時の事業概要
障害者が、安心して地域で暮らし続けることが出来るよう、中心市街地の空き店舗を活
用し、ハード面では専門家からの助言を得て障害特性に配慮した環境づくりに努め、新た
な日中活動の場を整備する。また災害時を想定し、事業所の一角に発達障害者等が家族単
位で利用できる「緊急一時シェルター」を整備し、通常の生活が復旧するまでの間、安定
的な避難生活が送れるよう支援する。さらに、地域住民が発達障害などの障害者と共に暮
らしていることを認知できるよう、空き店舗の展示機能を活かした地域交流の取り組みと
して、
「市民ギャラリー」を一般開放し、地域のサークル活動等と連携した定期的な作品展
示等を通じて、発達障害者等に関して日常的に周知・理解浸透を図る提案である。
(2)建物概要(竣工時)
野風草
名 称
施設類型
生活介護事業所(利用定員 20 名)
敷地面積
1,251.390 ㎡
延床面積
388.840 ㎡
鉄筋コンクリート造・2 階建
構造・階数
利用開始年月
平成 24 年 8 月
災害時等緊急一時シェルター、市民ギャラリー
併設施設
改修にあたっては、行動障害の特性を踏まえ、半個室的な空間を複数確保、玄関の複数
設置、強化ガラス採用など、快適かつ安全に過ごせる空間づくりを意識した。また、改修
前(事務所)の間取りや設備を生かすことで、コスト縮減に努めている。居住の安定確保
については、同法人の他施設とも連携しながら対応しているほか、通所者の自立訓練や、
家族の負荷軽減、将来の生活設計にも寄与している。
(3)運営状況
①野風草利用状況
野洲市
守山市
草津市
栗東市
計
男
性
3
3
3
1
10
女
性
5
3
1
1
10
8
6
4
2
20
計
50 歳~
0
40 歳~49 歳
1
30 歳~39 歳
3
20 歳~29 歳
4
~19 歳
2
1
4
3
4
2
2
1
12
1
・利用者平均年齢:30.15 歳、最年少者:19 歳(女性)、最年長者:48 歳(男性)
・発達障害者:14 名、自閉症:7 名(重複者有)、その他の病症:8 名
②緊急一時避難シェルター
事業所の 2 階(和室、多目的室、プレイルーム)の一部を、地震や風水害、事故や火災等
の発生で、居住地が使えない時に発達障害・行動障害のある方や重度知的障害者とその家族
が、家族単位で仕切られた部屋に一時避難できる専用避難スペースを確保した。
③市民ギャラリー
バス停前という立地を活かして旧施設のショールームスペースを、前面道路からいつでも
誰でも鑑賞可能な「市民ギャラリー」スペースを確保した。地域のサークル活動等との連携
を通じて、日常的に障害者等に関する周知、理解浸透に努めている。障害児者による出展に
とどまらず近隣のデイサービス事業書等にも声かけし、高齢者からの出展も得られるように
なっている。
(4)提案内容の達成状況・課題
他の公的な障害者支援施設では受入が困難な「行動障害」のある発達障害者等に対し、日
中の自宅以外の居場所を確保できている。これにより、接する相手が家族のみだと、甘えや
乱れが生じる在宅生活者に対しても、他の居場所ができて家族から離れる時間が設けられた
ことで、生活にリズムもできたり、落ち着く効果もみられた。また、災害時等に有用な緊急
一時シェルターや、市民ギャラリーといった併設機能も、提案どおり確保されている。
今後の課題としては、地域との連携の推進や認知の向上(市民ギャラリーの効果的な活用、
緊急一時シェルターの有効活用の検討(法令に抵触しない範囲での有効活用)
、日中の過ごし
方の検討(専門家の助言によるプログラムの導入等)が挙げられる。特に、緊急一時シェル
ターについては、災害時等の避難場所として整備されたが、現状はスタッフが有事に備えて
シェルター運用の訓練を行っているのみで、実際に運用された実績はない。この点について
は、災害時のみならず、例えば家庭内 DV 等に対する一時避難など、法令に抵触しない範囲で、
シェルター機能を有効活用することなどが考えられる。
〔事業実施後の評価委員の所見〕
障害児者が地域で安心して生活できる体制を構築していくことが喫緊の課題となって
いる。そのために、住居の確保は大きな課題であり、グループホーム等の整備が進んで
いるが、在宅における行動障害など重度の方々の日中の活動の場の確保も大きな課題で
ある。
当該事業においては、行動障害等重度の知的障害者等の日中の活動の場、震災等のリ
スクに備えての住居の確保、地域の人たちの交流の場としてのギャラリーの整備等がお
互いに関係性をもって機能していた。
施設福祉から地域福祉への移行が急務の中、社会福祉法人湖南会の当該事業を活用し
ながら入所施設中心の支援から新たな地域における支援への取り組みは、多くの社会福
祉法人等の今後の実践のモデルとなるのではないだろうか。緊急一時シェルターが、こ
の事業の範囲において、虐待やDVの地域の避難所としても機能することを期待する。
〔資料等〕
外観
利用者の作品
緊急一時シェルター
市民ギャラリー
1階平面図
2階平面図