第2章 各論 (虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病性腎症の減少を目指して) 虚血性心疾患予防のための保健事業計画 1 基本的な考え方 虚血性心疾患の発症は、加齢や遺伝などに加えて、メタボリックシンドローム、肥 満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、慢性腎臓病など介入可能な危険因子の関与 が明らかにされていますが、肥満、脂質異常症、耐糖能異常などに代謝疾患が大幅に 増えて虚血性心疾患の増大が危惧されています。 今回のデータヘルス計画における中長期的な目標の一つに虚血性心疾患の死亡率 の減少を掲げています。その目標達成のため、以下に基づき、指導の実施及び評価を 行います。 ・標準的な健診・保健指導プログラム(改訂版) ・虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012改訂版) ・動脈硬化性心疾患予防ガイドライン(2012年版) 2 目標設定 虚血性心疾患の危険因子となるメタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、 耐糖能異常に介入し、虚血性心疾患発症率の減少をめざす。 3 保健事業実施のための健康課題の把握 (1)医療(レセプト)分析結果 第1章の総論で述べたように、ひと月100万円以上の高額となる疾患は、虚血 性心疾患が9.8%、脳血管疾患5.9%を占め、脳血管疾患より高い状況にありま す。表1の最小分類(82)の千人当たり件数で同規模と比較すると、男性は入院・ 外来ともに高く、狭心症で治療を受けています。 (表1) 表1) 狭心症 最小分類(82) 千人当たり件数 入院 外来 心筋梗塞 町 同規模 男性 1.277 0.642 0.000 0.075 女性 0.079 0.252 0.000 0.019 男性 8.939 7.803 0.000 0.437 女性 4.728 5.215 0.236 0.117 34 町 同規模 次に虚血性心疾患で治療している状況を見ると、男性が61人、女性が50人。 年齢別にみると、男性は、40歳代から50歳代にかけ発症率が3倍に増え、60 歳代になるとさらに7倍になります。50歳代で虚血性心疾患を発症した者は、全 員糖尿病でした。また、全年齢で見ると、高血圧と脂質異常の割合が高い状況です。 また、3割が脳血管疾患を併発しており、心原性の脳梗塞も課題となります。 女性は、60歳代から患者数が増え、加齢に伴い比率が高くなっています。 (表2) 予防の視点からターゲットは、40歳代、50歳代の男性になります。しかし、 30歳代から発症している者がおり、特定健診の対象年齢以前からの健診受診も重 要です。30歳代で虚血性心疾患を発症した男性は、メタボリック症候群で高血圧、 糖尿病、脂質異常症を治療していました。 表2)H25年5月レセプト 男性 ~30歳代 40歳代 50歳代 60~64歳 65~69歳 70~74歳 合計 女性 ~30歳代 40歳代 50歳代 60~64歳 65~69歳 70~74歳 合計 被保険 者数 326 95 147 131 156 157 1012 被保険 者数 296 90 133 160 178 184 1041 1ヵ月の 虚血性心疾患 脳血管疾患 レセ件数 人数 % 人数 % 139 29 69 93 138 145 613 1 0.9 1 1.1 5 3.4 10 7.6 25 16.0 19 12.1 61 6.0 0 0 2 1 6 9 18 0.0 0.0 40.0 10.0 24.0 47.4 29.5 1ヵ月の 虚血性心疾患 脳血管疾患 レセ件数 人数 % 人数 % 137 37 81 117 136 201 709 1 0.5 0 0.0 3 2.3 7 4.4 9 5.1 30 16.3 50 4.8 0 0 0 2 3 6 11 0.0 0.0 0.0 28.6 33.3 20.0 22.0 人工透析 人数 % 高血圧 人数 % 0 0.0 0 0.0 1 20.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 1 1.6 人工透析 人数 % 0 0 0 0 0 0 0 1 100.0 4 4 18 17 44 80.0 40.0 72.0 89.5 72.1 高血圧 人数 % 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 次に血管の状態を知るためにKDB(疾病管理一覧 0 0 2 5 8 27 42 0.0 0.0 66.7 71.4 88.9 90.0 84.0 脂質異常症 人数 % 1 1 3 7 16 13 41 100.0 100.0 60.0 70.0 64.0 68.4 67.2 脂質異常症 人数 % 1 0 3 5 8 18 35 糖尿病 人数 % 1 100.0 5 4 13 14 37 100.0 40.0 52.0 73.7 60.7 糖尿病 人数 % 100.0 0.0 100.0 71.4 88.9 60.0 70.0 0 0 2 4 3 13 22 高尿酸 人数 % 0 0 2 1 5 3 11 高尿酸 人数 % 0.0 0.0 66.7 57.1 33.3 43.3 44.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 1 14.3 0 0.0 1 25年度累計)から虚血性 心疾患を治療中の男性40歳代、50歳代の3疾患の率、重なりを見ると、40歳 代、50歳代は糖尿病が75%を占め、重なりを見ると、3疾患の重なりが33. 3%と高くなっています。60歳代では、高血圧が89.7%を占め、血圧と脂質 の重なりや3項目の組み合わせが多くなっています。 (表3、表4) 虚血性心疾患1次予防ガイドラインでは、糖尿病と虚血性心疾患の発症の間に血 糖因子以外の背景因子が存在することが示唆されています。また、高血圧は、虚血 性心疾患発症の独立した危険因子でもあり、男性では、正常高血圧レベルから心筋 梗塞発症のリスクが優位に高い報告があります。高血圧に糖尿病が加わるとさらに 発症する危険性が高まることがわかっており、結果にも表れています。 健診で発見された時点で、血圧、血糖、脂質を是正していくことで虚血性心疾患 を予防することが可能であり、医療費適正化の面でも期待できます。 35 40.0 10.0 20.0 15.8 18.0 2.0 表3)虚血性心疾患を発症した40歳代~60歳代男性の3疾患の割合 年代 実人数 40 歳代 糖尿病 高血圧 脂質異常 脳梗塞 脳出血 18 17 15 3 0 75.0 70.8 62.5 12.5 17 35 28 4 43.6 89.7 71.8 10.2 24 50 歳代 39 60 歳代 透析 1 4.2 0 0 下段~年代に占める割合 表4)虚血性心疾患を発症した40歳代~60歳代男性の3疾患の重なり 組 み 合 わ 血圧 脂質 糖 血圧 脂質 血圧 糖 糖 脂質 せ 血圧 脂質 糖 40 歳代 8 5 5 2 1 1 50 歳代 33.3 20.8 20.8 8.3 4.2 4.2 10 3 2 15 6 1 2 25.6 7.7 5.1 38.5 15.4 2.6 5.1 60 歳代 無 0 2 8.3 0 下段~年代に占める割合 (2)特定健診分析結果 (ア)メタボリックシンドローム該当者 虚血性心疾患一次予防ガイドラインでは、肥満も危険因子の一つになってい ます。男性は、40歳代からメタボリックシンドローム該当者が25.5%(1 2人)おり、60歳代になると33.3%(52人)に増えます。また、血圧、 血糖、脂質の重なりが40代10.5%から70~74歳は31.0%と約3 倍に増えます。予防介入のポイントは、40歳代、50歳代の健診受診率の向 上と、40歳以前から健診をうけるように未受診者対策を実施していく必要が あります。 女性のメタボリックシンドローム該当者は、40歳代0人が、60代になる と10.8%(21人)と一気に増えます。閉経後は、動脈硬化が進展しやす くなるため、注意が必要です。 36 表5)メタボリックシンドローム該当者 (様式6-8) 有所見の重複状況 肥満 被保険者 数 健診受診者 男性85cm以上 女性90cm以上 腹囲のみ 該当者 D A 男 性 女 性 B B/A C C/B (腹囲+2項目or3項目) メタボリック D/C E E/B 3項目全て 血糖+血圧 血圧+脂質 F G H F/(E+J) 1 G/(E+J) 2 血糖+脂質 I H/(E+J) 3 I/(E+J) 4 総数 697 369 52.9% 208 56.4% 24 11.5% 119 32.2% 41 22.3% 21 11.4% 51 27.7% 6 3.3% 40代 96 47 49.0% 28 59.6% 9 32.1% 12 25.5% 2 10.5% 1 5.3% 7 36.8% 2 10.5% 50代 152 68 44.7% 31 45.6% 7 22.6% 11 16.2% 3 12.5% 2 8.3% 5 20.8% 1 4.2% 60代 290 156 53.8% 89 57.1% 6 6.7% 52 33.3% 18 21.7% 7 8.4% 25 30.1% 2 2.4% 70-74 159 98 61.6% 60 61.2% 2 3.3% 44 44.9% 18 31.0% 11 19.0% 14 24.1% 1 1.7% 総数 731 408 55.8% 79 19.4% 5 6.3% 59 14.5% 18 24.3% 4 5.4% 34 45.9% 3 4.1% 40代 89 36 40.4% 3 8.3% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 50代 127 58 45.7% 11 19.0% 2 18.2% 6 10.3% 3 33.3% 1 11.1% 1 11.1% 1 11.1% 60代 327 194 59.3% 25 12.9% 1 4.0% 21 10.8% 5 20.8% 1 4.2% 13 54.2% 2 8.3% 70-74 188 120 63.8% 40 33.3% 2 5.0% 32 26.7% 10 26.3% 2 5.3% 20 52.6% 0 0.0% (イ)肥満と非肥満の高LDL 動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012版)では、高LDLコレステロール は独立した冠動脈疾患の病態であるとされ、メタボリックシンドロームと高LD Lコレステロールが合併する場合は、虚血性心疾患の可能性がより高まります。 また、肥満のない場合でも虚血性心疾患予防のためにLDLコレステロール対策 は重要です。 特定健診の結果では、LDL140~179の受診勧奨レベルの場合、肥満な しの方が多い状況でした。 (表6) 表 6)H25年度 LDL分類 肥満なし 肥満あり 140~159 54(5) 46(8) 160~179 24(3) 13(1) 180 以上 4 10 82(8) 69(9) 合計 4 受診勧奨レベルの肥満の有無( )LDL治療中 保健指導対象者の明確化 (1)優先順位は、メタボリック該当者のうち1番に3項目全て、2番に血糖と血圧、 3番に血圧と脂質、4番に血糖と脂質にします。(表5)①~④の順。 また、40~64歳代の男性を優先します。 (2)(図1)重症化予防対象者のうち治療なしの者 (3)治療中で血圧、脂質、血糖コントロールの悪い方 37 図1) 重症化予防対象者 健康日本21 (第2次)目標 目指すところ 脳血管疾患 脳出血 脳梗塞 (7%) (18%) (75%) 心原性 脳塞栓症 ラクナ 梗塞 (27%※) (31.9%) 高血圧症 科学的根拠に基づき 健診結果から 対象者の抽出 高血圧治療 ガイドライン2009 (日本高血圧学会) 重症化予防対象 Ⅱ度高血圧以上 777 CKD診療ガイド 2012-2013 (日本糖尿病学会) 2012 (日本腎臓病学会) 労作性 狭心症 心筋梗塞 安静 狭心症 アテローム 血栓性 脳梗塞 (33.9%) 非心原性脳梗塞 心房細動 心房細動 脂質異常症 メタボリック シンドローム 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版 (日本動脈硬化学会) メタボリックシンドロームの 診断基準 LDL-C 180㎎/dl以上 中性脂肪 300㎎/dl以上 メタボ該当者 (2項目以上) 糖尿病 慢性腎臓病(CKD) 糖尿病治療ガイド CKD診療ガイド2012 (日本腎臓病学会) 2012-2013 (日本糖尿病学会) HbA1c(NGSP) 6.5%以上 (治療中:7.0以上) 蛋白尿 (2+)以上 eGFR50未満 70歳以上40未満 重症化予防対象者 (実人数) 29 3.7% 5 0.6% 14 1.8% 13 1.7% 178 22.9% 61 7.9% 12 1.5% 19 2.4% 250 32.2% 治療なし 15 3.3% 2 0.6% 13 2.8% 7 1.5% 16 5.0% 26 4.0% 2 0.6% 2 0.7% 46 14.5% (再掲) 特定保健指導 5 17.2% 0 0.0% 4 28.6% 3 23.1% 16 9.0% 6 9.8% 1 8.3% 0 0.0% 23 9.2% 14 4.4% 3 0.7% 1 0.3% 6 2.0% 162 35.2% 35 41.7% 10 2.2% 17 3.9% 204 44.3% 対象者数 治療中 5 糖尿病治療ガイド (2005年度合同研究班報告)) クモ膜下出血 ※脳卒中 データバンク 2009より 優先すべき 課題の明確化 による年間新規透析導入患者数の減少 虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版) (循環器病の診断と治療に関するガイドライン (脳卒中合同ガイドライン委員会) レセプトデータ、 介護保険データ、 その他統計資料等 に基づいて 健康課題を分析 糖尿病性腎症 の年齢調整死亡率の減少 脳卒中治療ガイドライン2009 科学的根拠に基づき 受診者数 虚血性心疾患 の年齢調整死亡率の減少 保健指導の実際 (1)学習教材の活用 メタボリックシンドロームが虚血性心疾患を発症する危険因子であることをイ メージできるよう「からだノート」を教材として活用します。 (2)2次健診の実施 2001年から厚生労働省と日本医師会は、労災2次給付事業として、マルチプ ルリスクファクター症候群(肥満、高血糖、高血圧、脂質異常の重複)を心血管病 の重点予防対象者にし、心血管病の二次健診や健康指導、食事指導、運動指導に給 付が受けられる制度がスタートしています。 特定健診では、見えない糖代謝の状態や血管の状態をみる健診が2次健診です。 2次健診の結果をもとに、内臓脂肪の減少を目指した保健指導を実施します。 ○2次健診の検査項目として下記の項目が考えられます。 ・75g糖負荷試験(耐糖能異常を見る) ・HOMA―R(インスリン抵抗性の簡便な指標) ・微量アルブミン尿(血管内皮細胞障害を反映する) ・頸動脈エコー(頸動脈所見は、心血管発症の独立した危険因子) 38 6 医療との連携 (1)2次健診対象者の結果で、医療機関の受診が必要と判断された場合においては、 対象者を介した医療機関との連携を行います。主治医のいない場合は、主治医を 持つように支援します。また、結果に関わらず、メタボリックシンドロームは、 心血管病易発症状態のため、2次健診の結果をもとに、内臓脂肪の減少を目指し た保健指導を行います。 (2)治療中断者をKDBシステムで確認して受診の必要性を説明し、治療再開後も 必要な保健指導を行います。 (3)受診勧奨判定値の者が、医療機関を受診したかKDBシステムで確認し、保健 指導を継続します。 7 保健事業の評価 (1)長期目標 虚血性心疾患の減少 (2)短期目標 ・メタボリックシンドローム該当者・予備群の減少 ・基礎疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常)の改善 39 脳血管疾患予防のための保健事業実施計画 1 基本的な考え方 血圧が高いほど、脳血管疾患、虚血性心疾患、慢性腎臓病の罹患率が高くなります。 高血圧の影響は心筋梗塞よりも脳血管疾患で特異的であることから、脳血管疾患の減 少を目指すために高血圧を入り口として以下のガイドラインに基づき、保健指導対象 者の明確化、保健指導の実施及び評価を行います。 ・高血圧治療ガイドライン2014 ・脳卒中治療ガイドライン2009 ・動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012 ・標準的な健診保健指導プログラム[改訂版] 2 保健事業の目標設定 脳卒中治療ガイドラインでは「収縮期血圧160mmHg、拡張期血圧95以上程 度から介入して高血圧治療をすることにより、脳卒中の発症を低下させる」ことから 健診受診者におけるⅡ度高血圧者の減少を目指します。 3 保健事業実施のための実態把握 (1)介護保険の状況 介護保険を利用している40歳から74歳の原因疾患の1位は脳血管疾患です。 大樹町は、平成18年頃から64歳以下の介護保険2号認定者の割合が増加し、国 や道や同規模保険者と比べて高い状況です。また、平成15年度から17年度まで は、脳出血のみでしたが、近年は、脳梗塞が多くなり、内訳を見るとアテローム血 栓性脳梗塞と心原性脳梗塞が増加しています。心原性脳梗塞は、他の脳梗塞に比べ て梗塞の範囲が広くなるため、寝たきりになる頻度が高く、入院期間が長くなり医 療費も高額で、介護の負担も大きくなります。 表1)2号認定者(40~64歳)における介護保険認定疾患の状況 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 認定者数 2 3 6 9 9 13 18 15 15 15 15 脳出血 1 2 2 3 3 2 2 2 2 3 4 2 3 4 3 4 5 4 4 1 2 2 2 2 2 6 9 7 6 6 5 脳梗塞 くも膜下出血 その他 1 1 4 4 3 (年度内認定者数) 40 (2)高額医療費該当レセプトで脳血管疾患があった者の実態 平成20~25年度の該当者をみると、脳梗塞が6割を占め、男性は女性の3倍 となっています。脳梗塞のタイプでは、アテローム血栓性脳梗塞が多く、近年は心 原性脳梗塞が増加しています。アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿病、脂質 異常などが原因で起こりやすく、心原生脳梗塞は、心房細動などが主因です。いず れも、動脈硬化が原因であり、メタボリックシンドロームが深く関連しています。 年代別でみると、男性は、60歳代で増加しますが、40歳代から発症している者 もいるため、より早期からの予防が必要です。 発症時の生活習慣病の治療状況は、全員治療中で、高血圧と糖尿病の割合が多く、 1人を除き健診未受診でした。健診を受けていた者は、血圧、血糖、脂質を治療中 でした。 表2)脳血管疾患の内訳 病 型 計 男 女 脳出血 1 5.2% 1 0 脳梗塞 12 63.2% 9 3 6 31.6% 1 5 くも膜下出血 表3)脳血管疾患の年代別の内訳 脳梗塞 男 40 歳代 脳出血 女 男 年代別 人数 女 2 50 歳代 2 1 60 歳代 3 1 70 歳代 4 1 計 9 3 1 1 5 5 1 0 13 (脳梗塞内訳 12人分) アテローム血栓性脳梗塞6、心原性脳梗塞3、ラクナ梗塞2、タイプ不明1 41 表4)基礎疾患の重なり 表5)発症時の治療の状況 脳出血 脳梗塞 人 % 血圧 1 糖 健診なし+ 人 50.0 % 1 未治療 5 41.8 0 2 16.6 血圧+糖 0 4 33.3 血圧+糖+脂 0 1 8.3 脳血管疾患 (脳出血+脳梗塞) 治療のみ 12 健診+治療 1 13人 (3)健診受診者の状況 健診受診者の状況を見ると、血圧の有所見者は国と比較して割合は低くなってい ます。血圧分類でみると、脳血管疾患発症につながりやすいⅡ度以上高血圧者は減 少しています。 表6)血圧の有所見の比較 男 性 収縮期血圧 130 以上 割合% 女 拡張期血圧 85 以上 性 収縮期血圧 130 以上 割合% 割合% 拡張期血圧 85 以上 割合% 全国 49.4% 23.9% 全国 43.2% 14.5% 道 49.5% 24.5% 道 43.4% 15.7% 大樹町 154 42.4 73 20.1 大樹町 165 41.7 43 10.9 40 歳代 10 21.7 7 15.2 40 歳代 8 23.5 4 11.8 50 歳代 25 36.8 18 26.5 50 歳代 13 22.8 9 15.8 60~64 歳 28 45.2 20 32.3 60~64 歳 35 38.9 13 14.4 65~69 歳 46 50.5 15 16.5 65~69 歳 47 47.5 10 10.1 70~74 歳 45 46.9 13 13.5 70~74 歳 62 53.4 7 6.0 42 表7) 血圧の年次比較 正常 血圧測定者 保健指導判定値 正常 正常高値 人数 割合 人数 B B/A C A 受診勧奨判定値 Ⅰ度 Ⅱ度 Ⅲ度 割合 人数 割合 人数 割合 人数 C/A D D/A E E/A F 割合 F/A H21 630 350 55.6% 108 17.1% 138 21.9% 27 4.3% 7 1.1% H22 706 429 60.8% 132 18.7% 116 16.4% 19 2.7% 10 1.4% H23 769 459 59.7% 133 17.3% 144 18.7% 30 3.9% 3 0.4% H24 756 427 56.5% 138 18.3% 153 20.2% 33 4.4% 5 0.7% H25 777 438 56.4% 157 20.2% 153 19.7% 25 3.2% 4 0.5% 4 保健指導対象者の明確化 (1)健診受診者の高血圧者の状況を見ます。 (2)高血圧者を降圧剤治療の有無で見ます。 高血圧フローチャート 成人における血圧値の分類 (mmHg) ★特定健康診査受診者数 777 健 診 人 受診率 分類 54.4% 健診結果 階層化 保健指導対象者の明確化について 「高血圧治療ガイドライン」を判断基準に置く 3疾患治療中 460 高血圧治療中 321 保 健 指 導 対 象 者 の 明 確 化 人 69.8% 人 Ⅰ度高血圧以上 (受診勧奨レベル) 139 人 30.2% 62 人 拡張期 かつ <85 130~139 または 85~89 Ⅰ度高血圧 140~159 または 90~99 Ⅱ度高血圧 160~179 または 100~109 ≧180 または ≧110 高血圧治療ガイドライン2009 317 高血圧治療なし <130 正常高値血圧 Ⅲ度高血圧 3疾患治療なし 59.2% (糖尿病・脂質異常症治療中) 収縮期 正常血圧 人 40.8% 正常高値血圧以下 255 19.6% 33 血圧分類 人 12.9% 特定保健指導として実施 人 80.4% 222 人 87.1% 特定保健指導以外の 血圧分類計 保健指導として実施 133 人 41.4% 94 人 67.6% 正常血圧 16 人 48.5% 195 人 87.8% 438 人 56.4% 84 人 26.2% 29 人 20.9% 正常高値 17 人 51.5% 27 人 12.2% 157 人 20.2% 90 人 28.0% 14 人 10.1% 49 人 79.0% Ⅰ度 21 人 28 人 153 人 19.7% 12 人 3.7% 2 人 1.4% 11 人 17.7% Ⅱ度 4 人 7 人 25 人 3.2% 2 人 0.6% 0 人 0.0% 2 人 3.2% Ⅲ度 1 人 1 人 4 人 0.5% (3)降圧治療のない者を血圧に基づいた脳血管疾患リスク層別化を行います。 43 血圧に基づいた脳心血管リスク層別化 特定健診受診結果より(降圧薬治療者を除く) 至適 血圧 正常 血圧 正常高値 血圧 Ⅰ度 高血圧 Ⅱ度 高血圧 Ⅲ度 高血圧 低リスク群 血圧分類 (mmHg) 130~139 /85~89 140~159 /90~99 160~179 /100~109 180以上 /110以上 中リスク群 3ヶ月以内の 1ヶ月以内の 指導で 指導で 140/90以上 140/90以上 なら降圧薬治 なら降圧薬治 療 療 高リスク群 ~119 /~79 120~129 /80~84 186 119 73 63 13 2 3 39 36 40.8% 26.1% 16.0% 13.8% 2.9% 0.4% 0.7% 8.6% 7.9% 65 40 13 8 3 1 0 14.3% 21.5% 10.9% 11.0% 4.8% 7.7% 0.0% 242 96 64 35 38 53.1% 51.6% 53.8% 47.9% 60.3% 149 50 42 30 22 32.7% 26.9% 35.3% 41.1% 34.9% ただちに 降圧薬治療 リスク層 (血圧以外のリスク因子) 456 リスク第1層 リスク第2層 リスク第3層 再 掲 ) 重 複 あ り 糖尿病 慢性腎臓病(CKD) 3個以上の危険因子 4 3 2 8 1 61.5% 50.0% 4 1 30.8% 50.0% 41 13 10 8 7 2 1 27.5% 26.0% 23.8% 26.7% 31.8% 50.0% 100.0% 57 17 18 11 10 1 0 38.3% 34.0% 42.9% 36.7% 45.5% 25.0% 0.0% 75 27 20 15 12 1 0 50.3% 54.0% 47.6% 50.0% 54.5% 25.0% 0.0% 1 3 1 0 100% 2.6% 0.0% 38 9 97.4% 25.0% -- -- -- (参考)高血圧治療ガイドライン2014 日本高血圧学会 優先順位対象者 (優先度が高い順)①15人 ②22人 ③38人 ④3人 (4)優先順位対象者を見ます。 優先すべき対象者(①~④)が明確にされたら、次に保健指導対象者をどこまで とするか、町の体制を考慮しながら今年度の保健指導対象者数を決めていきます。 (5)保健指導対象者の一覧名簿の作成 保健指導対象者名簿を作成し、担当地区・担当責任者を置き保健指導を実施します。 5 保健指導の実際 (1)学習教材の活用 対象者が血圧と自分の体がイメージできるように「からだノート」を学習教材と して活用します。 (2)家庭血圧の勧め 高血圧治療ガイドライン2014では「高血圧は患者の診察室血圧及び家庭血圧 レベルによって診断されます。両者に格差がある場合、家庭血圧による高血圧診断 を優先する」ことから家庭血圧を勧めていきます。 (3)2次健診の実施 脳血管疾患発症予防に向けて対象者の血管変化を確認するため、対象者の状況に 合わせて以下の2次健診を実施します。 44 27 75.0% 40代 メタボ 50代 60代 70代 75g糖負荷試験・インスリン濃度検査 頚部エコー検査.血圧脈波 非メタボ 微量アルブミン尿 頚部エコー検査.血圧脈波 6 医療機関との連携 (1)未治療者で健診結果および2次健診の結果、家庭血圧測定結果から医療機関受 診が必要と判断された場合 医療機関を受診する際は、健診結果、二次健診結果、家庭血圧測定記録等を持参 してもらうことで、担当医師に適切な治療の判断をしてもらうことができ、対象者 を介した医療機関との連携となります。 (2)治療中断者からの医療機関との連携 ア KDBシステムの疾病管理帳票を活用し、治療中断者リストを作成します。 イ 治療中断者には、訪問等で医療機関受診にむけた支援を行います。 (3)健診中断者からの医療機関との連携 ア 健診中断者のうちⅡ度高血圧者で未治療者のリストを作成します。 イ 対象者名簿をもとに訪問等で健康実態の把握を行い、必要に応じて健診受診、 医療機関受診を勧めていきます。 (4)治療中にある者の血管リスク低減に向けた医療機関との連携 治療中であるが、血管内皮のリスクコントロール不良の場合は、健診データや医 療機関の検査データ等を通して医療機関と連携を行い血管リスク低減に向けた保 健指導・栄養指導を行います。 7 保健事業の評価 標準的な健診保健指導プログラム[改訂版]では、「対象者個人を単位とした評価 は、肥満度や検査データの改善度、または行動目標の達成度、生活習慣の改善状況な どから評価可能である。」ことから以下の手順でKDBシステムや健診データを用い て評価を行います。 45 (1)長期目標 脳血管疾患の減少 (2)短期目標 (ア)継続受診者の血圧の改善 (イ)Ⅰ度高血圧以上の割合の減少 (ウ)重症化予防対象者の減少 46 糖尿病性腎症(CKD)予防のための実施計画 1 基本的な考え方 糖尿病性腎症は、新規透析導入の原因疾患第1位です。CKD診療ガイド2012 では「糖尿病性腎症の発症・進展抑制には、厳格な血糖値と血圧のコントロールが重 要」「糖尿病性腎症は、腎症の進展とともに脳血管疾患や心血管疾患の合併リスクが 高くなるため、肥満、脂質異常症、喫煙などの危険因子の管理も重要」となっていま す。脳血管疾患や心疾患、人工透析は、個人の生活に多大な影響を及ぼすだけでなく、 国保の医療費の増加につながることから、CKD対策に取り組む必要があります。 早期発見によってCKDの進展予防、治療が可能であることがわかってきたことか ら、科学的根拠に基づき、課題設定、保健指導対象者の抽出を行い、一人一人のリス クに応じた保健指導を行います。 ・CKD診療ガイド2012 ・エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013 ・科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010 ・日本人の食事摂取基準2015年 ・慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年 2 目標設定 糖尿病性腎症による新規透析患者数の減少を目指します。 3 保健事業実施のための実態把握 (1)医療(レセプト)の分析 ア 糖尿病患者の状況 大樹町は、生活習慣病に占める糖尿病の医療費は、国、道、同規模平均に比べ高 く、糖尿病治療中者の約1割に糖尿病性腎症がみられます。 イ 糖尿病 糖尿病性腎症 H24 年度 331人 28人 H25 年度 338人 31人 人工透析患者の状況 平成25年度大樹町国保における人工透析患者数は2人で糖尿病性腎症以外が 原因でした。大樹町は、同規模保険者に比べて糖尿病性腎症からの人工透析患者の 割合は低く、CKDの栄養指導に取り組んでいる成果で人工透析患者が減少してい 47 ます。 図1)人工透析患者数の推移(国保以外、後期高齢者も含む) 12 10 8 6 腎炎他 4 糖尿病性 2 0 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 (2)特定健診の分析 総論で述べたとおり、特定健診の結果ではメタボリックシンドロームと非肥満高 血糖の者が多い特徴があります。HbA1cの受診勧奨判定値となった者のうち、 糖尿病の治療なしの割合は、道平均より低く、すでに治療につながっている割合が 多いことがわかります。 治療中でも肥満があると、血糖値が下がりにくいため、コントロールが悪いこと が考えられます。 また、初回受診者は、未治療で血糖値の悪い者が多いため、健診未受診者を減ら すことが重要です。そして、糖尿病の治療につなげることが重症化を予防すること になります。 表1)高血糖の割合 男 糖尿病 空腹時血糖 HbA1c 100以上 人数 全国 大樹町合計 割合 26.5 女 糖尿病 空腹時血糖 HbA1c 5.6以上 人数 割合 50.8 100以上 人数 割合 15.9 5.6以上 人数 割合 50.9 152 41.9 224 61.7 118 29.8 214 54.0 40-64 56 31.8 97 55.1 41 22.7 90 49.7 65-74 96 51.3 127 67.9 77 35.8 124 57.7 48 表2)糖尿病の受診勧奨判定値の割合(HbA1c6.5%以上) 大樹町 治療なしの割合 人数 割合 割合 大樹町 北海道 H24年度 75 10.5% 7.8% 21.3% 47.0% H25年度 83 11.3% 7.1% 31.3% 43.6% 19 22.4% (再掲)H25 新規受診者 4 北海道 36.8% 保健指導対象者の明確化 (1)健診受診者のうちCKD該当者を見ます。 CKD診療ガイド2012によると、「CKDの疾患概念は、特にたんぱく尿の 存在と腎機能の低下が重要です。また、CKDの重症度は、原因、腎機能(GFR)、 たんぱく尿(アルブミン)による分類で評価され、重症度は、死亡・末期腎不全・心 血管死亡のリスクで色分けして示されています。 」 糖尿病 正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿 高血圧・腎炎など 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿 A1 A2 A3 原疾患 尿蛋白区分 尿検査・GFR 共に実施 GFR区分 (ml/分/1.73㎡) (-)or(±) 677 711 人 人 95.2% G1 正常 または高値 90以上 G2 正常または 軽度低下 60-90 未満 G3a 軽度~ 中等度低下 45-60 未満 中等度~ 高度低下 30-45 未満 高度低下 15-30 未満 G3b G4 G5 末期腎不全 (ESKD) 120 119 人 16.9% 482 462 人 97 93 7 2 人 1.0% 0.6% 1 15未満 0 人 0.1% 0.0% 49 1 0.1% 0 人 人 0 人 0.0% 人 0 人 4 人 2 人 0 人 0.6% 人 1 0.0% 1 人 人 100.0% 1 5 0.0% 1 人 人 0.7% 0.0% 0.1% 0.1% 0 人 0 0.0% 人 40.0% 4 人 2 6 人 1.5% 人 0.0% 人 0.1% 1 人 15 人 0 3 0.6% 0.3% 4 1 人 11 人 30.4% 人 2.1% 13.1% 13.6% 7 人 0.1% 人 (2+)以上 【再掲】 尿潜血+以上 3.2% 65.0% 人 23 人 16.7% 67.8% (+) 0.3% 人 0.0% 保健指導を優先すべき対象は? 総数 人 2 人 29 人 ①グループ 重症度分類:赤 治 療 な し 0.0% ②グループ 重症度分類:オレンジ ③グループ 重症度分類:黄色 ④グループ 276 重症度分類:緑 人 ①グループ 重症度分類:赤 治 療 中 ③グループ 重症度分類:黄色 ④グループ 435 重症度分類:緑 人 50代 0 人 0 人 1 人 51 人 -- 0.7% 245 88.8% 10 2.3% 人 80 人 2.1% 336 人 1 人 77.2% 人 人 11 人 人 人 0 人 1 人 35 人 96 1 人 4 6 31 人 6 人 60.0% 人 2 人 22.2% 人 40.0% 175 人 12.7% 人 66.7% 32 11 37.9% 人 40.0% 10.4% 人 50.0% 人 39.2% 0 0 -- 37.9% 1.3% 3.3% 1 11 人 0.0% 1 人 50.0% 0.0% 1.3% 人 6 70-74歳 0 -- 27.3% 0 11.1% 18.4% 人 67 0.0% 9 0 20.7% 20.8% 人 人 0.0% 3.4% 人 60代 0 -- 0.0% 10.5% ②グループ 重症度分類:オレンジ 40代 0 46 人 57.5% 人 52.1% 115 人 34.2% *尿検査・GFR共に実施した者で計上 (2)CKD重症化分類を、生活習慣病治療の有無で分けます。 未治療者の課題解決を考えます。 (3)優先すべき対象者を明確にします。 ア「糖尿病」を優先的に考えます。 糖尿病性腎症の発症・進展抑制には、厳格な血糖値と血圧のコントロールが重要 です。特に、未治療者は優先度が高いです。 イ 対象者の①~③の優先度を明確にします。 ① 赤ランクの者・・・・・・・徹底して受診勧奨を行う ② オレンジランクの者・・・・GFR G3b、尿検査A3 ③ 黄色ランクの者・・・・・・尿検査A2、GFR G3a ウ 「高血圧、高尿酸、その他の腎炎」の未治療者 蛋白尿が2+以上でも生活習慣病が基盤にないタイプなども混在しており、「尿 蛋白」の原因を精査し、解決を優先します。 腎臓専門医へ紹介することが望ましい基準 (CKD診療ガイド2012) 1.高度の蛋白尿(2+以上) 2.蛋白尿と血尿ともに陽性(1+)以上 3.GFR50未満(70歳以上は40未満) 50 5 保健指導の実際 (1)対象者に応じた保健指導を行います。 ア 健診経年結果表 イ 腎臓の働きと健診結果 ウ 学習教材(からだノート) ・自分の検査結果値から、腎障害の存在と腎機能の低下を確認し、赤ランクの場 合は、腎臓専門医による検査が必要であることが確認できる保健指導を行います。 ・糖尿病性腎症では、腎症の進展とともに大血管障害の合併リスクが高くなるた め、肥満、高血圧、脂質異常、喫煙等の危険因子の管理も重要です。 (2)対象者に応じた2次健診の実施 アルブミン尿検査は、糖尿病性腎症の最も早期の診療マーカーで、早期腎症の指 標です。また、心血管疾患の予測因子の1つとして考え、重症化予防を抽出するた めの意義があると考えられます。 微量アルブミン尿は、可逆的で治療効果が高く、この段階で治療をすると腎症が 予防できる可能性があります。しかし、この検査は高額で糖尿病以外では保険適応 になっておらず、特定健診結果の個々人のデータより判断し、アルブミン測定実施 を検討します。 最もアルブミン測定の意義のある対象者 糖尿病・糖尿病疑い(HbA1c6.5%以上) GFR:G1~G3a 尿検査:-、± (CKD診療ガイド2012、糖尿病治療ガイド) (3)栄養指導 CKD重症度分類のステージにあわせて、栄養指導を行います。 ア CKDの発症予防 CKDの発症予防として、耐糖能異常や糖尿病、高血圧、脂質異常、高尿酸血症、 メタボリックシンドロームなどがあります。これらの危険因子を有する方に対して、 体重、血液データ、尿検査を見ながら、かかりつけ医と連携をとり、個々に応じた 栄養指導を行います。 イ CKDの重症化予防 CKDが進行して、腎機能が低下してくることによって腎臓から排泄されるべき 物質が体内に蓄積し、高カリウム血症、アシドーシス、体液量の異常、高リン血症 等の代謝異常が生じます。その代謝異常を防ぐために、早期からの食事療法や薬物 51 療法により対処することが必要です。 腎障害(尿蛋白) 、腎機能低下(GFR)の値、そして他の検査結果を総合的に 判断し、個人の生活や環境などに合わせ、きめ細やかな病態に応じた栄養指導を行 います。総合的な代謝を管理する栄養指導を行うために必要な医療との連携が必要 になります。 6 医療との連携 (1)健診受診後、医療機関の受診が必要と判断された場合 健診結果経年表やKDBデータを活用した経年経過表(I 表)を持参してもらうこ とで、担当医師に適切な治療の判断をしてもらうことができ、対象者を介した医療 機関との連携になります。 腎機能に関する情報を統合した経年経過表(I 表)は、遺伝・家族歴・現病歴等と 検査値の変化を合わせて読み取ることができ、腎機能低下の要因を考えるために必 要なことから、KDBのレセプト情報等を活用し作成します。 (2)治療中断者からの医療機関との連携 KDBシステムを活用し、糖尿病等の治療中断者がいないか確認し、訪問等で受 診に向けた支援を行います。 7 保健事業の評価 (1)長期目標 糖尿病性腎症による新規人工透析患者の減少 (2)短期目標 ア 糖尿病コントロール不良者の割合の減少 イ 糖尿病有病者の増加抑制 ウ CKDの重症者の増加抑制 52
© Copyright 2024 ExpyDoc