1.県民の就業構造の変化 ∼第 3 次産業の就業者数が大きく伸びる

∼四半世紀前からの足跡∼
熊日調査研究所
研究員
池田
よく 10 年ひと昔、と言われますが、現代社会はそれ以上の速さで時(とき)を
刻んでいるように思われます。それが、バブル景気より以前の四半世紀も前なら
ば、かなり遠くに感じられます。
四半世紀前の 1980 年ごろは、経済安定成長期と言われ、人々の暮らしは、今よ
りも穏やかだったのではないでしょうか。そこで、熊本県民の特性が 1980 年前後
からどのように変化し、現在に至ったかを、県民の「就業構造」、
「年齢構成」、
「人
口動態」、「世帯構造」を通して明らかにしました。
1.県民の就業構造の変化
∼第 3 次産業の就業者数が大きく伸びる∼
熊本県民の就業構造を 1980 年と 2000 年で比較すると、1980 年には第 1 次産業
と第 2 次産業の就業者がともに 20 万人、第 3 次産業が 45 万人でした。それが 2000
年には第 1 次産業の就業者数が半減して 11 万人、第 2 次産業は 2 万人増の 22 万
人、第 3 次産業の就業者数が 10 万人増加して 55 万人となっています。この 20
年間で第 3 次産業の就業者数が大きく伸び、就業者数の 3 分の 2 近くを占めるに
至っています。
産業3分類別就業者数の推移
0
200,000
400,000
600,000
201,543
第1次産業
107,480
197,104
第2次産業
218,013
448,518
第3次産業
554,938
分類不能の産業
473
6,456
※総務省「国勢調査」
1
1980年
2000年
進
産業3分類別就業者数構成比の変化
0.0%
1980年
2000年
20.0%
40.0%
23.8
60.0%
80.0%
23.3
12.2
100.0%
52.9
24.8
63.0
※総務省「国勢調査」
第1次産業
第2次産業
第3次産業
∼農業人口が半減、サービス経済化が進行∼
県内の就業者数を産業分類別の構成比でみると、1980 年には農業県を反映して
「農業」が最も多く 21.3%、次いで「卸売・小売・飲食店」の 20.8%、「サービ
ス業」の 19.1%、「製造業」の 13.0%の順でした。それが 2000 年には、「サービ
ス業」が 28.4%と大きく上昇、次いで「卸売・小売・飲食店」が 21.1%、「製造
業」が 13.0%とともに上昇したのに対して、「農業」は 10.9%と半減しました。
熊本県でもサービス経済化が大きく進行しているのがわかります。
産業大分類別就業者数構成比の推移
0.0
10.0
農業
林業
漁業
鉱業
1980年
2000年
1 .9
1.0
0.5
0 .1
9.8
10.5
13.0
1 3 .9
0 .5
0.5
5 .6
5.1
運輸・通信業
2 0 .8
21.1
卸売・小売業・飲食店
2 .1
2.3
金融・保険業
0.4
0 .7
1 9 .1
サービス業
他に分類されない公務
2 1 .3
0.6
0 .3
製造業
不動産業
30.0
10.9
建設業
電気・ガス・熱供給・水道業
20.0
28.4
4.4
4.5
※総務省「国勢調査」
2
∼医療業、社会保険・社会福祉分野の従業者数が大きく増加∼
サービス業の業種別従業者数をみると、2001 年では「医療業」が最も多く 5 万
4 千人、次いで「社会保険・社会福祉関連」、「洗濯・理容・浴場業」、「専門サー
ビス業」の順です。この 20 年間での増減をみると、
「医療業」が 2 万 5 千人増加、
「社会保険・社会福祉」が 1 万 1 千人増加しています。熊本県では医療や福祉分
野の割合が高く、事業所サービス業や専門サービス業等の割合を上回っています。
熊本県のサービス経済化の進行は全国平均や大都市圏とは異なり、医療・福祉分
野が先導している格好となっています。
サービス業の業種別従業者数増減ランキング( 民営)
(2001年−1981年)
サービス業の業種別就業者数の変化( 民営)
0
20,000
40,000
60,000
-5,000
0
5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
29,141
医療業
医療業
54,476
7,154
社会保険・社会福祉
18,466
14,587
17,998
洗濯・理容・浴場業
8,145
専門サービス業
その他の事業サービス業
17,446
9,30 1
娯楽業(映画制作等除く)
16,405
11,482
14,477
旅館、その他の宿泊所
1 0,247
その他の専門サービス業
6,158
その他の事業サービス業
11 ,312
社会保険・社会福祉
6,482
情報サービス・調査業
3,486
娯楽業(映画制作等除く)
5,667
12,149
洗濯・理容・浴場業
3,4 11
協同組合
12,452
10,296
旅館、その他の宿泊所
6,552
7,904
教育
物品賃貸業
6,548
5,542
自動車整備業
その他生活関連サービス
2,99 5
2,309
1,372
その他生活関連サービス
4,122
5,494
教育
1,352
情報サービス・調査業
1,265
4,751
機械・家具等修理業
1,175
宗教
3,071
3,985
廃棄物処理業
1,150
物品賃貸業
1,411
3,720
宗教
政治・経済・文化団体
2,960
3,460
914
広告業
513
廃棄物処理業
1,566
2,716
政治・経済・文化団体
500
機械・家具等修理業
1,490
2,665
学術研究機関
1 98
広告業
754
1,267
駐車場業
1 68
駐車場業
796
964
放送業
1 17
放送業
728
845
映画・ビデオ制作業
△ 54
その他のサービス業
△ 88
保健衛生
1,143
694
その他のサービス業
451
363
学術研究機関
80
278
映画・ビデオ制作業
249
195
保健衛生
1981年
2001年
自動車整備業
協同組合
総務省「事業所・企業統計」
△ 449
△ 1,006
△ 2,156
総務省「事業所・企業統計」
3
25 ,335
2.県民の年齢構成の変化
∼少子高齢化が急速に進行。50 歳代がピーク、次いで 40 歳代の順に∼
県民の年齢構成は、1980 年までは若年齢階級ほど多いピラミッド型でしたが、
2004 年には団塊の世代が含まれる 50 歳代がピークとなり、次いで 40 歳代が多く、
若年層においては下の年齢階級ほど減少するまさに少子高齢化の進行が顕著とな
っています。その結果、0∼14 歳の年少人口比率は 1980 年に 22.1%だったものが
2004 年には 14.5%まで急激に低下、これに対して 1980 年には年少人口比率の約
半分の 11.7%に過ぎなかった 65 歳以上の老年人口比率(高齢化率)が 2004 年に
は倍増して 23.2%と急激な上昇となっています。また、15∼64 歳の生産年齢人口
比率もこの 24 年間で 3.9 ポイント低下しています。
年齢階級別人口の推移
34
680
100歳以上
2 ,87 1
2 0 ,70 5
90∼99歳
1980年
2004年
3 5 ,49 6
80∼89歳
9 5,6 2 0
1 0 0 ,0 7 3
70∼79歳
2 0 1 ,7 8 4
1 5 3,8 1 1
60∼69歳
22 2 ,3 8 6
2 2 4,7 0 5
50∼59歳
2 6 9,9 7 2
2 4 5,0 6 1
2 3 4 ,43 8
40∼49歳
30∼39歳
2 5 5 ,27 0
2 1 4 ,73 3
20∼29歳
24 8 ,2 16
2 1 4,0 1 6
2 61 ,2 2 5
10∼19歳
2 0 5,2 6 7
2 6 3 ,3 9 4
0∼9歳
17 2 ,5 34
0
100,000
200,000
300,000
※総務省「国勢調査」「推計人口調査」
年齢3 区分別人口構成比の推移
0.0%
1980年
2004年
20.0%
40.0%
60.0%
22.1
14.5
80.0%
66.2
11.7
62.3
※総務省「国勢調査」「推計人口調査」
年少人口
4
100.0%
23.2
生産年齢人口
老年人口
3.県民の人口動態の変化
∼総人口はすでに減少局面。転出入者数は総人口の 2%程度∼
県内の総人口はこの四半世紀で 3.5%増加していますが、すでに人口は減少局
面に入っており、2004 年には年間で 1 万 5 千人減少しています。出生者数が大き
く減少したのに対して、死亡者数が増加したため、自然減が 1 万人を超えたこと
が人口減の主な要因です。また、1980 年と比べ 2004 年は転入者数、転出者数と
も減少しましたが、2004 年には転出者数が転入者数を上回り、社会増減において
もマイナスになっています。転出入者数の総人口に占める割合は 1980 年では約
3%程度だったのが、2004 年では約 2%程度に低下しています。
■熊本県の人口動態
1980年
2004年
人 口(人)
1,790,327
1,852,135
61,808
3.5
出 生(人)
24,446
16,313
△ 8,133
△ 33.3
死 亡(人)
転入者数(人)
13,594
48,671
17,076
33,321
3,482
△ 15,350
25.6
△ 31.5
転出者数(人)
47,452
35,490
△ 11,962
△ 25.2
人口増減(人)
12,071
△ 2,932
△ 15,003
−
自然増減(人)
10,852
△ 763
△ 11,615
−
社会増減(人)
1,219
△ 2,169
△ 3,388
−
11,600
1,865
9,288
3,959
△ 2,312
2,094
△ 19.9
112.3
婚 姻(件)
離 婚(件)
差
増減率(%)
出生率(人口千対)
13.7
8.8
△ 4.9
−
合計特殊出生率
1.83
1.47
△ 0.36
−
死亡率(人口千対)
7.6
9.3
1.7
−
転入率(人口千対)
27.2
18.0
△ 9.2
−
転出率(人口千対)
26.5
19.2
△ 7.3
−
婚姻率(人口千対)
離婚率(人口千対)
6.5
1.0
5.0
2.1
△ 1.5
1.1
−
−
※県統計調査課「熊本のデータ」
5
∼福岡県への転出入が年間 1 万人程度∼
熊本県からの転出入者数の多い都道府県は、転入者数、転出者数とも圧倒的に
福岡県が多く、年間で転入者数は約 9 千人、転出者数は約 1 万人です。次いで転
入者数では鹿児島県が多く、転出者数では東京都が多くなっています。
また、転入者超過先としては、宮崎県、北海道の順で、転出者超過先では、福
岡県、東京都の順となっています。
以前、転出入先として最も多かった大阪府の比重は低下し、福岡県とのつなが
りがより強まっている格好となっています。
県内からの転出入者の多い都道府県(2004年)
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
8,897
福岡県
9,963
鹿児島県
3,126
2,937
東京都
2,541
3,149
宮崎県
2,045
1,721
長崎県
1,922
1,743
大分県
1,680
1,755
大阪府
1,591
1,581
神奈川県
1,262
1,660
佐賀県
1,057
922
愛知県
1,037
1,375
転入者数
転出者数
※熊本県統計調査「熊本のデータ」
■転入者超過の都道府県(転入者数−転出者数)■転出者超過の都道府県(転出者数−転入者数)
1970年
2004年
1970年
2004年
324
1位 北海道
234 宮崎県
1位 大阪府
6,581 福岡県
1,066
267
2位 長崎県
193 北海道
2位 愛知県
5,169 東京都
608
189
3位 佐賀県
40 鹿児島県
3位 東京都
4,000 神奈川県
398
179
4位 福島県
28 長崎県
4位 神奈川県
2,947 愛知県
338
135
5位 高知県
9 佐賀県
5位 兵庫県
2,833 千葉県
208
33
6位 岩手県
6 山梨県
6位 福岡県
2,537 山口県
128
富山県
28
7位
7位 千葉県
1,394 京都府
125
島根県
16
8位
8位 京都府
950 埼玉県
123
岩手県
14
9位
9位 広島県
911 大分県
75
新潟県
12 10位 岡山県
10位
849 広島県
42
※熊本県統計調査課「熊本のデータ」
※熊本県統計調査課「熊本のデータ」
6
4.世帯構成の変化
∼単独世帯数の割合が大きく上昇∼
県内の総世帯数は 20 年間で 53 万世帯から 65 万世帯へと 12 万世帯増加してい
ます。一方、世帯当たり人員は 3.41 人から 2.87 人へと 3 人を割り込み、家族の
少人数化が進行しています。
また、一般世帯数に占める家族類型別世帯構成比は「単独世帯」の割合がこの
20 年間で 17%から 25%へと大きく上昇し、全体の 4 分の 1 を占めるまでになっ
ています。その一方で、3 世代家族を中心とした「その他の親族世帯」の構成比
は大きく低下しています。
総世帯数と世帯当たり人員の推移
世帯
1,000,000
人
3.5
3.41
2.87
3.0
800,000
2.5
647,216
600,000
525,564
2.0
1.5
400,000
1.0
200,000
0.5
0
0.0
1980年
※総務省「国勢調査」
2000年
総世帯数
世帯当たり人員
家族類型別世帯数構成比の推移
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
0.2
1980年
56.8
2000年
56.2
25.6
17.4
0.3
※総務省「国勢調査」
核家族世帯
18.4
その他の親族世帯
※一般世帯数に占める割合
7
非親族世帯
25.0
単独世帯
以上、熊本の市場特性の変化を、熊本県民の就業構造、年齢構成、人口動態、
世帯構成の 4 つの面(属性)からみてきましたが、この四半世紀で大きく変化し
ているのがわかります。また、それらの属性については数年後どうなるかも、デ
ータを追うことによって予想することができます。しかし、県民のライフスタイ
ルについては、近年の情報革命によって予想ができないほど劇的に変化していま
す。特に 2000 年前後に転換点を迎えた現象が多くみられます。さまざまなデータ
と絡ませながら、5 年後、10 年後の私たちのライフスタイルや市場がどう変わっ
ているか、いろいろ想像してみるのも楽しいと思います。
8