(1)ミレニアム開発目標(MDGs):達成期限は2015年末 2000年9月に採択された「国連ミレニアム宣言」と1990年代に開催された主要な国際会議などで採択された国際開発 目標を統合し共通の枠組みとして2001年にまとめたものが「ミレニアム開発目標」。8ゴール(目標)、21ターゲット、60 指標で構成されており、1990年を基準年として2015年末が達成期限。 目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅 • 1日1.25ドル未満で生活する人口の割合を 半減させる • 飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる 目標5:妊産婦の健康の改善 • 妊産婦の死亡率を4分の1に削減する 目標2:初等教育の完全普及の達成 • すべての子どもが男女の区別なく初等教 育の全課程を修了できるようにする 目標6: HIV/エイズ、マラリア、その他の 疾病の蔓延の防止 • HIV/エイズの蔓延を阻止し、その後減 少させる 目標3:ジェンダー平等推進と女性の 地位向上 • すべての教育レベルにおける男女格差を 解消する 目標7:環境の持続可能性確保 • 安全な飲料水と衛生施設を利用できな い人口の割合を半減させる 目標4:乳幼児死亡率の削減 • 5歳未満児の死亡率を3分の1に削減する 目標8:開発のためのグローバルな パートナーシップの推進 • 開放的で、ルールに基づく、予測可能で かつ差別的でない貿易及び金融システ ムを構築する 1 (2)MDGsからSDGsへ 1)MDGsからSDGsへ 2)途上国開発を取り巻く環境の変化 MDGsは途上国の貧困削減を目指した 単純・明快・期限付きの数値目標を示したことが評価される。 国際社会の政策決定、リソース配分等に影響する「開発分野 の羅針盤」的存在に。しかし、以下のような問題点も。 ・スコープ:横断的理念や哲学がなく解決策に結びつかない。 援助手法への言及がなく効果向上の視点が希薄。 ・設定指標:マクロ統計指標(数値目標)のみを使用したため 国内格差に目が届かない。 ・策定プロセス:国連事務局内で閉鎖的に取りまとめた。 国際化の進展 ヒト、モノ、カネ、情報の国境を越えた移動/影響の拡大 途上国の急速な経済成長と新興国の台頭 資源・食糧需要拡大等による資源・食糧価格の高騰、 新興国等の政治的発言力強化、新興ドナーの勃興 中所得層の拡大、格差の拡大 「地球規模外部性」の影響拡大 気候変動等による災害の拡大、甚大化 生物多様性低減 課題横断的に地球規模で取り組むべき課題が増加 3)目標設定の方向性 持続可能な開発の3つの側面(経済、社会、環境)に統合的に対応する、 先進国含め、すべての国を対象とする普遍的(Universal)な目標 ・行動指向型で完結かつ野心的な目標。 ・MDGsや2015年以降の開発アジェンダとの整合性を確保。 ・オープンかつあらゆるレベルの参加を得て包摂的に儀路。 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> (3)ポスト2015に向けた日本の主要課題 現行MDGsを基礎とし,その経験と教訓を踏 まえる。 簡素・明快さ維持(目標の整理・統合も)。 貧困撲滅中心に(かつ、持続可能な開発 にも配慮する)。 野心的かつ動員力のある目標策 定を主導。 成長・雇用に光を当てる。 成長・雇用は富を創出する源。 質の高い成長(グリーン・包摂的成長)を 目指す。 日本の技術の活用。 この10年間の国際社会の変化に対応す る。 人間の安全保障を指導理念の一つに 位置づける。 保健,教育等の主要分野で課題・指標 を改善(保健ではユニバーサル・ヘルス・ カバレッジを重視)。 防災、食料安全保障・栄養など新たな 課題に対処。 ジェンダー主流化 質の高いインフラ 民間セクターの関与。新興国、NGOな どの役割。 国内格差の拡大に目を向ける。 世界の貧困層の約4分の3が中所得国 に居住。 衡平性・包摂性が鍵。 日本らしい支援と新たなパート ナーシップの確立。 途上国のオーナーシップを推進する。 ガバナンス強化・途上国内の資源の動 員の促進。 日本企業の進出先であるアジア も重視。 開発効果の向上。脆弱国にも 配慮。 外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/p_mdgs/pdfs/gaiyo_j.pdf)参考に企画部作成。 (4)ポスト2015採択までの交渉プロセス 2015年 11月30日12月11日 2015年9月25-27日 ポスト2015開発アジェンダ (2030 Agenda)採択 第70回国連総会 <国連サミット> 2015年7月13-16日 ポスト2015 合意文書 2015年 1月~7月 2013年3月~ 2014年7月 2014年12月 SDGs OWG 成果文書 SDG Open Working Group (全13回) ※30グループ、70加盟国 2012年6月 リオ+20 非公式政府間交渉 (全8回) ※全加盟国 国連事務総長 統合報告書 【有識者】 ハイレベル パネル 【市民】 コンサル テーショ ン 気候変動枠組条約 第21回締約国会議 (COP21) (パリ) 開発資金 文書採択 第3回開発資金 国際会議 (アディスアベバ ) 【国連】 タスク チーム 【研究機関・ 大学】 SDSN 2015年3月14-18日 国連防災枠組 仙台宣言採択 第3回国連防災 世界会議(仙台) 6.国連事務総長統合報告書 (5)ポスト2015の中身とは?→成果文書の合意 成果文書 “Transforming Our World: 2030 Agenda for Sustainable Development” • • 2015年8月2日夜、政府間交渉にて合意された。 9月25-27日の国連サミットにて各国首脳により採択予定。しかし、現在の成果 文書から内容は変更されない見込み。 • 2016年1月から、新アジェンダの実施期間が始まる(2030年まで)。 • MDGsで残された課題(教育、母子保健、衛生等)と、この15年間で顕在化した課題に 対応。 • 日本や他先進国を含む全ての国に適用される普遍性(Universality)が最大の特徴。 • 成果文書の構成 ①序文 ②政治宣言 ③持続可能な開発目標 →いわゆる「SDGs」(ゴール・ターゲット) ④実施手段(MOI)およびグローバル・パートナーシップ ⑤フォローアップ・レビュー 成果文書 https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/7891Transforming%20Our%20World.pdf (6)成果文書 ①序文 • 持続可能な開発の重要分野として、 「人々(People)」 「地球(Planet)」 「繁栄(Prosperity)」 「平和(Peace)」 「連帯(Partnership)」 の5つのPを例示。 ②政治宣言 • 誰一人取り残さない(no one will be left behind) • 包摂的で人間中心のゴールとターゲットを決定。2030年までに完全に実施する。 • 先進国にも途上国にも等しく適用されるユニバーサルなゴールとターゲット。 • MDGsを基礎に、同目標で達成できなかった課題を解決。 • ODA数値目標(0.7%目標およびLDC向け0.15-0.20%目標)を再確認。ODAは他の 開発資金の触媒。 6 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> 6.国連事務総長統合報告書 (7)成果文書 ③持続可能な開発目標(SDGs) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 貧困撲滅 飢餓・食糧安全保障・栄養・持続可能な農業 健康 質の高い教育・生涯教育 ジェンダー平等・女性のエンパワーメント 水衛生 エネルギー 経済成長・雇用 インフラ・産業 不平等削減 都市・居住 消費・生産行動 気候変動 海洋資源・海洋 生態系・森林・砂漠・土地・生物多様性 平和で包摂的な社会・正義・能力のある組織 実施手段・グローバルパートナーシップ 17ゴール(目標) 169ターゲット 指標(策定作業中) 2016年3月の 国連統計委員会にて 策定予定 SDGsは普遍的に適用されるが、 各国の異なる事情を考慮。 各国はこのグローバルな目標をいかに 各国政策等に反映させるかを決定する。 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> 6.国連事務総長統合報告書 (8)成果文書 ④実施手段(MOI)およびグローバル・パートナーシップ • 政府、市民社会、民間セクター、国連機関等、全てのアクターが利用可能な資源を活 用し、グローバル・パートナーシップの下でゴールとターゲットの実施にあたる。 • 7月に採択された第3回開発資金会議(FfD)の成果文書(アディスアベバ行動目標) は、ポスト2015新アジェンダの統合的部分(integral part)である旨言及。 • 持続可能な開発を支援するために、技術移転促進メカニズム(TFM: Technology Facilitation Mechanism)を立ち上げる。TFMは、先進国の技術と途上国ニーズのマッ チングを図る機能として、途上国からの強い主張により反映された。 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> (9)成果文書 ⑤フォローアップ・レビュー Vertical 国・地域・グローバルレベル Horizontal 政府、市民社会、民間などあらゆるアクター 国主導・ボランタリー。国レベルのフォローアップ・レビューが基礎。 各国の異なる現状、能力、開発レベルを配慮。政策、優先事項を尊重。 目的:市民への説明責任、効果的な開発、好事例・共通課題の共有、相互学習等。 課題 グローバル (thematic) 地域 (既存メカニズム活用) 国 ハイレベル政治 フォーラム(HLPF) 各地域 フォーラム 全途上国 全先進国 9 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> (10)成果文書(フォローアップ・レビュー) ⑤フォローアップ・レビュー 国レベル 基本は国主導・ボランタリーであり、各国に任されているが、 全ての国は、実践的レスポンスの早急な作成が推奨されている。 (既存の国家開発計画・戦略からSDGsへの移行のため) 定期的で包摂的(inclusive)な進捗レビュー(国・サブナショナル)の 実施を推奨。(政府以外にも市民社会、民間、原住民など、あらゆる ステークホルダーの協力を得る。国会議員の役割も重要。) 地域レベル グローバル ピア・ラーニング、好事例共有や共通課題の議論に有益。 国レベルのレビューを活用、グローバル・レビューに貢献する。 既存メカニズムの活用が重要。 全ての国は、最も適切な地域フォーラムの特定が推奨されている。 →国連地域委員会(ESCAP、ECA、ECE、ECLAC、ESCWA)の サポート推奨。 10 (11)成果文書 ⑤フォローアップ・レビュー グローバル・レベル 「ハイレベル政治フォーラム(HLFP)」が中心的役割を担う。 年4回(ECOSOC主催)が基本。 年1回(国連総会主催)は最上位の政治的ガイダンス(次回は2019年)。 国連総会、ECOSOC等と連携。 他の国連会議・プロセスとの効果的連関を追求。 分野課題レビュー(クロスカッティング含む)も対象。 開発資金や実施手段(MOI)のレビューも統合して行う。 (ただし、2015年7月採択のアディス合意にて、ECOSOC年次フォーラムでも別途 開発資金のフォローアップ・レビューを行うためダブルトラック) HLPF向けに、2種類の報告書を作成・提出。 ①SDG Progress Report 国連事務総長作成、UNシステムと連携(これまでのMDG進捗レポートと同様)。 ②Global Sustainable Development Report HLPF事務局作成。科学と政策のインターフェースの強化。エビデンス・ベース。 詳細スコープ、方法論、頻度、SDG Progress Reportとの関係は未定 (2014年HLFP閣僚宣言にて決定)。 11 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> (12)指標/インディケーター ※2016年3月策定 ●グローバル指標は、 2016年3月の国連統計 委員会にて承認予定。 National:各国 の状況・能力に 応じて各国で設 定。Non-Official データも採用。 Regional:地域の状況に応じ て各地域で設定。ナレッジ・ シェアリングのプラットフォー ムにもなり得る。既存地域メ カニズムを活用。 Global: (適用外を除き) 全世界向けのuniversal指 標。「ハイレベル政治フォ ーラム(HLPF)」にてモニタ リング・レビューを行う。 Officialデータのみ活用。 Thematic: 各セクターの specialized agencies中心に 整備。 SDSN Indicators Report 12 http://unsdsn.org/resources/publications/indicators/ 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> (13)JICA事業の課題 1.対途上国 (1)グローバルレベルの目標設定の議論から、 各国レベルの目標設定の議論へ 国連の場でのグローバルな開発目標の検討と並行し、 各国の状況に合わせたターゲットの設定と実施の議 論は既に始まっている。各国レベルの目標設定と行 動計画策定、モニタリング体制に、どうアラインす るか?多様なステークホルダーを巻き込む各国プロ セスの進捗を把握し、各国レベルでこれに参加する 必要がある。 2.対日本国内 (1)ポスト2015開発目標は日本にも適用される 日本が国内でどのようなターゲットを設定し、行動計画 をどのように策定し、FURをどのように行うのかは、ま だ議論が始まっていない。 (2)我々自身の意識の変革、ライフスタイルの変 更が求められる 「持続可能な消費・生産」に加え、貿易自由化や外国人 出稼ぎ労働者の受入れ等、一貫性のある国内政策、対外 政策が取られているかが問われるようになる。「持続可 能な開発のための教育(ESD)」の普及は、JICAにとっ て新たな国内アクターとの関係構築のチャンス。 (2)課題部横断的な課題への取組み (3)国内課題への取組と海外課題への取組の同 ①都市や母子保健、小島嶼国等、ターゲットを絞っ た総合的な取組み、②水とエネルギー・食糧安全保 障間のトレードオフ関係のように、希少資源を複数 セクター間で有効活用していく取組み、③防災や ジェンダー等の主流化の取組み等の有効性を確保で きる実施体制とはどうあるべきか? 環境未来都市、防災、高齢化への取組等は、国内での先 行経験を共有するだけでなく、各国間で問題認識を共有 し、同時進行で課題解決に取り組むことも必要。国内の アクターと海外のアクターをつなぐ場づくりがJICAに求 められる。 (3)統計に関する取組みの拡充 実行性確保はSDGsのキモ。統計整備は今後大幅に 進む。統計キャパビルのニーズにJICAはどう応える か?サブナショナル・レベルの統計リテラシー向上 にどう協力するか?JICA事業の統計情報をSDGsに どう合わせるか? 時進行 (4)開発協力NGOと国内NPOとの交流拡大 国際開発NGOと、ESD推進等に従事する国内NPOとは接 点が少なく、相互理解が進んでいない。両者をつなぐ場 づくりに、JICAも貢献できる。 (5)日本の経験の整理 日本国内の課題解決に向けた取組のうち、既に結果が明 らかなものについては、その経験を整理し、他国がアク セス可能な形のコンテンツに纏めておく必要がある。 2015年度在外事務所長会議<SDGs資料> 9. 開発資金国際会議 (14)開発資金国際会議(FfD: Financing for Development)とは? 開発資金国際会議は,途上国の開発資金確保のための具体的方策及び課題を議論す るために国連が開催する会合。 1)第1回(於メキシコ・モンテレー) 2002年3月18日~22日開催。成果文書として、開発資金確保の必要性及びそのため の方策を盛り込んだ「モンテレー合意」が採択された。同合意の主要6分野として、① 国内資金の動員、②海外直接投資及び他の民間資金フロー、③国際貿易、④資金・ 技術協力、⑤対外債務、⑥国際金融システムが挙げられている。 2)第2回(於カタール・ドーハ) 2008年11月29日-12月2日開催。「モンテレー合意」の進捗状況を検討し、新たな課題 の確認を行うためフォローアップ会合として開催された。成果文書として,モンテレイ合 意の主要6分野,開発資金の新たな課題(世界金融・経済危機,気候変動等)を網羅し た「ドーハ宣言」が採択された。 3)第3回(於エチオピア・アディスアベバ) 2015年7月13-16日開催。 14 (15)「第3回開発資金国際会議」(2015年7月)の結果 • 約210の国・機関等が参加。過去2回の会議結果を踏まえつつ、 9月の国連サミットに先駆け、 ポスト2015年開発アジェンダ実施のための資金動員と実施手段について議論。政治的コミット メントとして成果文書「アディスアベバ行動目標(Addis Ababa Action Agenda)」が採択された。 • 途上国含む世界では、経済成長や科学技術革新により開発に進展が見られる一方、地域・国 内格差の拡大、女性や脆弱グループが取り残されていることに加え、自然災害や気候変動、 感染症、グローバル経済危機等のリスクが顕在化。包摂的で持続可能かつ強靭な開発の重要 性が認識された。 • モンテレー合意以来のODAコミットメントの達成は重要としつつも、持続可能な開発の達成に必 要な資金規模は、ODA総額規模の数10億ドルから数兆ドルとの試算であり、ODAだけでは絶 対的な資金不足との認識。よって、国内資金など広範な資金動員の必要性と動員のための ODA含む国際公的資金の触媒的役割の重要性が強調された。 成果文書では、 ①国内の資金動員と公共政策の改善、制度整備 ②国内外の民間ビジネスとファイナンス ③国際開発協力(国際開発金融機関、グローバル・イニシアティブ等) ④国際貿易 ⑤債務の持続可能性 に言及されている。 • Addis Ababa Action Agenda http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/CONF.227/6
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