サッカー及びフットサルにおける股関節の内旋・外旋可動域がバランス

サッカー及びフットサルにおける股関節の内旋・外旋可動域がバランス能力へ及ぼす影響
二宮翼 ¹
末吉のり子 ¹ 尾山裕介 ¹ 村山敏夫 ²
¹ 新潟大学大学院 ² 新潟大学
はじめに
はじめに
姿勢制御系に関与する身体要素
姿勢と姿勢制御
姿勢を保持するためには、
姿勢を認知し調節する姿勢
制御が必要である
環境条件
・水平床面or坂面
・外力の有無
身体拘束条件
・身体自由度
・関節可動域
・身体の大きさ
体性感覚系
感覚系
・体性感覚系
・前庭系
・視覚系
皮膚感覚と深部感覚
・皮膚感覚
触覚、圧覚、痛覚、などの皮膚
や粘膜からの感覚
・深部感覚
体の位置や動き、振動や深い
ところの痛みなどの感覚
サッカー及びフットサルの競技特性
姿勢保持のための運動戦略
姿勢を保持するために重心を支持基底内
にとどめる運動が行われる
姿勢制御への貢献が
見直されている
足関節戦略
股関節戦略
伸展
・片脚で支持しボールを蹴る動作が多い
・ダイナミックな状況で両脚・片脚立位での
高いバランス能力が要求される
・キック動作時、蹴り脚及び支持脚では多く
の股関節の動作が伴う
・ディフェンスの際、相手との対峙時に股関節
の動作が伴う
中枢神経系
・感覚情報の統合
・運動指令の生成
運動系
・筋の特性
・関節の特性
支持脚着地前
サッカー及びフットサルに
おいて股関節の重要性が
注目されている
運動課題
・静止立位
・随意的動揺運動
・外乱応答
姿勢制御系
の機能
キック動作時の股関節動作
アプローチ
伸展
↓
屈曲
内転
内旋
外旋
インパクト
外旋から
内旋へ
フォロースルー
屈曲
内転
内旋
屈曲
内旋
股関節に着目
本研究の目的
踏み出し戦略
本研究では、サッカー及びフットサルの競技性をもとに、股関節の可動域に
着目、股関節の可動域と柔軟性がバランス能力へ及ぼす影響を検証する。
3
2
 測定内容
・60秒間の静的立位姿勢を、開閉眼条件
1
それぞれ1試技ずつ行った。
0
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5
・開眼条件では、正面の高さに設定された
視点を注視するように指示した。
・閉眼条件では、同視点を注視した後に
閉眼するように指示した。
 測定項目
 Wii balance board
・総軌跡長(cm)
を使用
・矩形面積(cm²)
(任天堂社製)
・実効値面積〔RMS〕(cm²)
・単位時間軌跡長(cm/sec)
以上、5項目とした。
統計解析ソフトRを使用
・結果・考察 1において相関分析を行い、相関図
を用いて検証を行った
・結果・考察 2-1においてクラスター分析を行い、
グループ分けをし、一元配置分散分析、多重
比較を実施、検証を行った
・結果・考察 2-2においてクラスター分析を行い、
グループ分け、外れ値の排除をし、一元配置
分散分析、比較を実施、検証を行った
階層的クラスター分析(閉眼時の重心動揺-4項目)
(deg)
総軌跡長
(cm²)
***
120
矩形面積
***
**
8
90
-0.4
(cm²)
4
0.6
30
2
0.3
0
0
0
G‐2
G‐1
G‐3
G‐2
G‐3
30
30
30
y = -0.3323x + 70.824
R² = 0.337
40
60
G‐ 3
Sub.B
Sub.D
Sub.L
Sub.K
Sub.G
Sub.A
Sub.H
Sub.C
Sub.F
Sub.E
Sub.M
Sub.I
Sub.N
Sub.J
20
120
40
(cm)
90
(cm)
(cm/sec)
6
(cm²)
結果・考察 2-2
-40
2
0
Sub.D
Sub.L
Sub.A
Sub.H
Sub.C
Sub.G
Sub.K
Sub.B
2
-30
3
-20
4
0
(cm/sec)
1
2
3
4
(cm/sec)
体性感覚及び
閉眼立位姿勢
に着目
-10
0
10
20
40
0
30
**
K‐ 2
外旋
K‐ 1
K‐ 2
**
K‐ 1
K‐ 1
60
50
40
30
K‐ 2
10
***
K‐ 2
内旋
(deg)
60
40
20
0
0
-20
10
(deg)
0.2
K‐ 2
外転
60
50
K‐ 1
0.0
K‐
1
Comp.1
20
K‐ 2
-0.2
(deg)
**
30
内転
-0.4
-40
-30
-0.4
-0.6
N
I
D
F
M
2
Sub.B
3
Sub.J
伸展
-10
0.2
-0.2
0.0
25
0
***
135
125
115
105
G‐3
n.s.
K‐ 1
K‐ 2
K‐1とK‐2の間に、内旋以外の項目で有意差が認められた。内旋以外でK‐2は、K‐1
より可動域が高い傾向を示した。つまり、K‐2の被験者は股関節可動域が高く、柔軟性が
優れていることが考えられる。この結果から、結果・考察2-3では、2-1と2-2の検証を行う。
まとめ・課題
Ⅰ
開・閉眼時の重心動揺と股関節可動域の相関
・開眼時は有意差なし。閉眼時は5項目で有意差が認められた。
・閉眼時における股関節可動域と重心動揺の間には、ある程度の関係性が示唆
され、閉眼時の姿勢制御に体性感覚情報が影響を与えることが考えられる。
Ⅱ
グループ分けによる検証
・重心動揺及び股関節可動域におけるクラスター分析により、グループ分けを行った。
・グループ間に有意差が認められた。
重心動揺及び股関節可動域において、共通して
当てはまる被験者が認められた。
両方に属する被験者は、
・高いバランス保持能力と股関節の柔軟性を持つ可能性が示唆される。
・閉眼時における重心動揺測定であることから、体性感覚系が優れている
ことが示唆される。
より詳細に、グループ間の違い、サッカーとの関係性を見ていく必要がある。
さらに、長期的な股関節トレーニングの介入によって、股関節可動域がバランス能力
へ及ぼす効果を検証する必要がある。
以上の被験者6名は、両項目において高い数値を示したグループに属していた。よって、特に高い
バランス保持能力と股関節の柔軟性を持つ可能性が示唆される。さらに、閉眼時における重心動揺
測定であることから、体性感覚系が優れていることが示唆される。
共通の被験者と外れ値の被験者について
競技歴の点からみると共通の被験者のみは平均20.3±2.3年、それ以
外の被験者は平均17.3±2.7年であった。また、外れ値の被験者は競技
歴が15年であった。これらのことから、競技歴による経験の差がないとは
言い切れない。さらに、共通の被験者のポジションをみたところ、サイドの
ポジションではなくセンター付近でプレーする機会が多い選手であった。
サイドの選手は姿勢の向きなど偏る可能性が考えられるが、センターの
選手は中央で両サイドのバランスをとるプレースタイルともいえ、偏る可
能性が低いと考えられる。今後、より詳細に検討していく必要がある。
1
F
Sub.A 1 Sub.L
1
1
Sub.K 1Sub.H
3
3
Sub.E
Sub.G
33B
3
1
Sub.D
Sub.C
D C
E
3
Sub.I Sub.M
A
Sub.N Sub.F
O‐ 1
K‐ 1
K‐ 2
Observation Number in Data Set Dataset
屈曲
Method=complete; Distance=euclidian
(deg)
30
20
10
0
O‐ 1
1
-0.6
(deg)
K‐ 1
0
20
***
K‐ 2
20
2つのグループに分けることができた(O‐1は外れ値)
グループをそれぞれK‐1、K‐2、とした
•
C
単位時間軌跡長
G‐2
30
階層的クラスター分析(股関節可動域)
•
股関節可動域6項目
Cluster Dendrogram for Solution HClust.6
Height
20
G-1
G‐1
y = -10.091x + 68.522
R² = 0.3319
結果より、開眼時の股関節と重心動揺を関連づけることは難しい。しかし、
閉眼時における股関節と重心動揺の間には、ある程度の関係性が示唆され、
閉眼時の姿勢制御に体性感覚情報が影響を与えることが考えられる。
(deg)
4
G‐3
y = -9.9705x + 70.824
R² = 0.337
20
L
Comp.1
G
-2
60
開眼時では有意差は認められなかった。しかし、閉眼時では5項目、特に外
旋・内旋において中程度の負の相関を示し、有意差が認められた。
両方に共通して当てはまった被験者(共通の被験者)
視覚系の遮断の点から
ブラインドサッカーが
注目されている
目隠しをして行うが、他の
視覚障害者スポーツとは異
なり、制限が少なく普通の
サッカーのルールと変わら
ないため、健常者と一緒に
プレーもできる
100
0.6
股関節可動域4項目
G‐ 2
80
y = -2.7066x + 55.406
R² = 0.3403
20
140
0
2
4
10
0.4
結果・考察 2-1 及び 2-2 より
重心動揺と股関節可動域に共通する被験者からの検証
G‐ 1
40
5
0.2
6
閉眼時の重心動揺4項目
50
30
-10
Sub.B 2
G‐3とG‐1,2の間に、有意差が認められた。G‐3において、他のグループよりRMS以外
で低い数値を示した。つまり、G‐3の被験者はバランス保持能力が高いと考えられる。
この結果から、結果・考察2-3では、2-1と2-2で得たグループ分けで検証を行う。
結果・考察 2-3
50
40
30
0.0
RMS
G‐2
50
40
K‐ 1
G‐1
60
40
y = -0.3364x + 68.522
R² = 0.3319
10
-0.2
0.9
60
60
40
O‐ 1
1.2
6
G‐1
n.s.
(deg)
50
20
単位時間
軌跡長
-0.355
-0.226
-0.509
-0.298
-0.579 *
-0.576 *
単位時間軌跡長
単位時間軌跡長
(deg) と内旋
と外旋
(deg)
50
Sub.F
1
G-3
Observation Number in Data Set Dataset
Method=complete; Distance=euclidian
矩形面積と外旋
0
0.2
0.0
Comp.2
Sub.J
Sub.C
Sub.N
Sub.I
Sub,A
Sub.M
Sub.H
Sub.E
Sub.F
Sub.L
Sub.G
Sub.K
Sub.B
Sub.D
-0.2
1
Sub.A
3
Sub.G
Sub.M
1
3
1
Sub.I
Sub.L
G-3
-0.084
-0.158
-0.005
-0.409
-0.318
-0.139
60
-20
0.4
(cm)
G-2
A
CD
B
1
-0.4
G-1
Sub.N
1
-0.260
-0.303
-0.256
-0.526
-0.583 *
-0.375
60
40
0.6
30
20
10
0
Height
1
Sub.C
1
Sub.J
Sub.E
2
Sub.D
3
Sub.K
総軌跡長と内旋
(deg)
40
1
Sub.H
-0.354
-0.227
-0.507
-0.297
-0.580 *
-0.576 *
Comp.2
30
RMS
35
20
矩形面積
*** p<0.01 ** p<0.01 * p<0.05
総軌跡長と外旋
30
10
総軌跡長
20
0
-0.272
0.011
-0.096
-0.358
-0.202
0.074
15
-10
0.059
0.228
0.13
-0.092
0.124
0.237
単位時間
軌跡長
-0.32
-0.297
-0.358
-0.437
-0.286
-0.223
閉眼両脚立位時
• 3つのグループに分けることができた
閉眼時の重心動揺4項目
• グループをそれぞれG - 1、G - 2、G - 3とした
Cluster Dendrogram for Solution HClust.3
-20
-0.315
-0.427
-0.498
-0.395
-0.229
-0.395
屈曲
進展
外転
内転
外旋
内旋
E
結果・考察 2-1
統計処理
RMS
K
日本整形外科学会と日本
リハビリテーション医学会
が定める「関節可動域表示
ならびに検査法」に従い、
測定を行った。
注意点として、代償運動が
ないように測定を行った。
 測定項目
股関節
・屈曲 ・伸展
・外転 ・内転
・外旋 ・内旋
 ゴニオメーター
「関節可動域表示ならびに測定法」
(日本整形外科学会、日本リハビリ
を使用
テーション医学会、1995)
矩形面積
G
股関節可動域測定
閉眼両脚立位
総軌跡長
A
健常な成人男性14名
年齢
27.0±8.2歳
身長
172.7±9.4cm
体重
68.2±16.2kg
競技歴 18.6±3.6年
開・閉眼時の重心動揺と股関節可動域の相関
開眼両脚立位
H
被験者
結果・考察 1
J
重心動揺測定
B
研究方法
Ⅲ
今後の課題
・グループ間の多方面からの検討
・具体的なサッカーとの関係性の検討
・長期的な股関節トレーニングの介入に
よる効果の検証